ルノー ルーテシアE-TECHフルハイブリッド燃費・試乗評価 約850㎞走行時の実燃費は、まさかの・・・
CORISM / 2023年3月15日 18時18分
指令。 横浜から松山まで、ルーテシアE-TECハイブリッドで燃費を競え!
2022年に日本に上陸してメカマニアを驚かせたのが、フランスのルノーが投入したアルカナのハイブリッドシステムだ。欧州のエンジニアはマイルドハイブリッドを好むが、クロスオーバーSUVのアルカナに積まれていたのは、優れたドライバビリティに加え、燃費向上を期待できるストロング(フル)ハイブリッドだった。
ルノーがF1でのノウハウを駆使して独自開発した「E-TEC」ハイブリッドで、アルカナに続いてルーテシアとキャプチャーにも搭載されている。
ルノー自慢の「E-TEC」ハイブリッドをラインアップに加えたルーテシアは、高効率で滑らかな走りに加え、燃費がいいのもセールスポイントだ。アルカナより軽量なルーテシアのWLTCモード燃費は25.2km/Lと発表されている。
ちなみに市街地モードは21.9km/L、欧州での使用状況に近い郊外モードでは26.2km/Lだ。高速モードも25.5km/Lと、優秀な数値をマークする。もちろん輸入車としては、トップの燃費性能だ。エコ減税の対象となっているのは言うまでもない。
ルノー ルーテシアの燃料タンク容量は42Lだから、エコ運転すれば満タンの状態から1000km以上は走れる計算になる。ルーテシアの試乗会では撮影しながら、WLTCモード燃費に迫る数値を叩き出した。だから丁寧な運転を心がければ、1000km走破は難しくはないはずだ。
自慢の「E-TEC」ハイブリッドの真の実力を引き出してもらおうと、ルノー・ジャポンがロングドライブでの燃費チャレンジを提案してきた。スタート地点は横浜駅近くにあるルノー・ジャポンの駐車場だ。
そして、ゴールは瀬戸内海を越えた愛媛県松山市の松山城近くに建つ「萬翠荘」の駐車場である。萬翠荘は、大正11年(1922年)に建設されたフランス風洋館。国重要文化財になっている。つまり、フランス車に乗ってフランス風洋館「萬翠荘」へ行くという、フランスつながりのロングドライブということになる。
総走行距離は約850㎞
さて「萬翠荘」までの道のりをGoogleマップやAppleカープレイで調べてみると、「萬翠荘」までの距離は横浜から約850kmほど。所要時間は約11時間だった。
愛媛まで行くには、いくつかのルートがある。燃費チャレンジに参加した我々3人は、シンプルに横浜をスタートして東名高速道路に入り、新東名、新名神高速道路と乗り継ぎ、瀬戸内海を越えるのは神戸から明石海峡大橋を渡って淡路島、徳島へと入るルートを選ぶことにした。
このルートなら、おおむね平坦だし、渋滞しそうな箇所もそれほどない。燃費をよくするためには夜遅くに横浜を出て、深夜に高速を走り、明け方に淡路島に到着するのがいいと思う。
だが、仕事が立て込んでいたし、深夜の走行は危険もはらんでいる。そこで前日の夕方にルーテシアを借り出し、早朝5時に家を出て松山に向かうことにした。
ドッグクラッチを使ったユニークなE-TECハイブリッド
ルーテシアに搭載された「E-TEC」ハイブリッドは、日産のHR16系エンジンの流れを汲む1597ccのH4M型直列4気筒DOHCに、メインとサブ2つのモーターを組み合わせている。
ユニークなのは、トランスミッションだ。ラリーカーやレーシングカーなどに好んで使われているドッグクラッチを採用し、シンクロメッシュやトルコンを用いないで直接ギアを噛み合わせて変速を行う型破りな機構である。
ルノーのマルチモードATはエンジン側に4速、モーター側に2速のギアを備え、走行状況に応じて最適なギアを自動的に選び、巧みな制御プログラムによって滑らかに変速させる。
ドッグクラッチの回転合わせを行うのは、サブモーターだ。ギアは4段だが、メインモーターの2速と合わせて8速になり、これにエンジン駆動時の4速とモーター駆動による2速が加わっている。計14速になるが、2つは同じギア比になっているから、実際は12速だ。この12速を走行状況に応じて最適に自動変速させるのである。
1.6Lエンジンは、最高出力67kW(91ps)/5600rpm、最大トルク144Nm(14.7kg-m)/3200rpmのスペックだ。モーターは2つあり、メインモーターは36kW/205Nm(49ps/20.9kg-m)を発生。サブモーターは15kW/50Nm(20ps/5.1kg-m)を発生する。
低速でも気難しさを感じないスムースなE-TECハイブリッド
スターターボタンを押して起動し、ドライブモードを「エコ」モードにセットした。発進はモーターが担当し、街中ならモーター走行になることが多い。
エコモードでも流れに乗って走るのは難しくなかった。応答レスポンスのいいモーターに加え、車両重量もアルカナより160kg軽いから、軽やかな加速を披露する。
アクセルを強く踏み込んでもグッとくるパンチ力は薄いが、ゴーストップの多い街中では優れたドライバビリティを披露した。やんわり加速を心がければモーター走行のシーンが増え、電気も貯めやすくなる。だが、バッテリーの電気残量が半分を切るとエンジンがかかった。
アクセルを閉じたり、ブレーキを踏むと回生も行う。Bレンジに入れれば、さらに強力な回生も得られる。パドルシフトで回生量を調整できれば、さらに燃費向上を期待できる。
ルーテシアE-TECハイブリッドは、どのギアを使っているのか分からないほど変速は巧みだ。3人目のクルーをピックアップしたときに、通勤渋滞に巻き込まれた。だが、低速走行、ゴーストップの繰り返しでもフレキシブルな走りを見せ、気難しいところはなかった。
約250㎞を走行して、燃費は27.0㎞/L! すでにカタログ超え!!
最初の休憩は、新東名高速道路の掛川パーキングエリア(PA)で取ることになった。ここまでの距離は、途中スタッフをピックアップしたこともあり約250kmだ。メーター内の燃費計は、3.7L/100kmを指している。
これは、100kmの距離を走ってガソリンを3.7L使ったということだ。日本式の平均燃費に換算すると27km/Lになる。大井松田から先は、坂がきつかったことを考えると悪くない燃費だ。もちろん、WLTCモード燃費は超えている。
ルーテシアは、エコランのために得られる情報は少ない。だが、スピードメーターの左外側にあるパワー/チャージのゾーンを刻んだエネルギーフローメーターとEV走行時に点灯するグリーンの表示灯は大いに重宝した。
「E-TEC」ハイブリッドは、丁寧な運転をしてもすぐにはEV走行に移行しないし、アクセルワークとリンクしていないシーンも多かったが、平坦路で早めにアクセルを緩めるとEVモードに入りやすいことは分かった。
早めにアクセルを戻すだけで、誰でも燃費アップが可能!
道路の勾配とクルマの流れを読み、急加速やラフなアクセルワークを封じた穏やかな運転に徹すれば、おのずと燃費はよくなる。下り坂だけでなく平坦路でも早めにアクセルを戻す習慣をつければ、燃費の悪化を防げる。
淡々と走る高速走行ではエンジンが主役だ。加速時などはモーターが上手にアシストするし、平坦路では、EVモードに入ることも意外に多かった。
ちなみに新東名高速道路では120km/hでクルージングできる区間が増えている。何度か120km/hまでスピードを上げて走ってみたが、空気抵抗の壁は厚く、燃費は20km/Lを下回った。高速道路では100km/hを上限と考えた方がエコだ。
また、登り勾配の道では瞬間燃費が12〜13km/Lまで落ち込んでいる。履いていたコンチネンタル製のエコタイヤ(205/45R17のエココンタクト6)は、転がり抵抗が少ないはずで、燃費向上に少なからず貢献していたようだ。
走行中は、燃費に影響を与えるエアコンを切り、シートヒーターを使って寒さを凌ぐことにした。当然、高速道路では適度な車間距離を保ち、一定のスピードで流れに乗って走ることを心がけている。
また、長い下り坂ではアクセルを閉じ気味にして走るとEVモードに入るから、ジワジワと燃費は向上していく。新東名から新名神に入り、亀山から先はジワっとした上り坂が続いた。
残りの20㎞で、まさかの失態発覚!? でも、29.4㎞/L達成!
そこで、甲南PAで休憩するとともにドライバーを交代する。ここまでの走行距離は約470km、平均燃費は3.5L/100kmまでアップした。一般的な燃費表示では28.5km/Lと、かなり優秀だ。
この先で名神高速道路と合流し、渋滞のメッカだった京都、天王山は混んでいたが、ゆっくりとしたペースで走り抜け、大阪の渋滞も回避できた。神戸を横に見て、明石海峡大橋から淡路島に入る。
ここで一度、一般道に下り、景観のいい道の駅で遅い昼食を取った。また、まったく撮影していなかったので、この付近でルーテシアの置き写真を撮る。
ここまでで約600㎞。このとき燃費計は3.4L/100kmを指していた。平均燃費は30km/L目前の29.4km/Lまで伸びている。予想以上の好燃費だ。
鳴門西PAで約650kmを走行。天気がよかったので気分よく鳴門海峡を渡り、四国に入る。その後も、法定速度で流れに乗って走り、クルーズコントロールも使ってみた。ルーテシアのクルコンは、前にクルマがいないと猛然とダッシュするが、なかなか賢い。
夕陽が沈みかかる頃、松山自動車道の桜三里PAで最後の休憩を取る。ここから松山市内までは、20km足らずの距離だ。メーター内の燃費計は依然として3.4L/100kmを指している。
出発するときに、燃費計を見ると3.5L/100kmの表示が出た。これをみて気がついたのである。ルーテシアのドライブモードは3つあり、「エコ」、「My Sense」(ノーマル)、そして「スポーツ」を選択できるのだ。
始動すると、前回は「エコ」や「スポーツ」に入れていても初期設定の「My Sense」に戻ってしまうのである。3人ともデフォルト設定のことを忘れていた。
つまり掛川PAから約600kmほどノーマルモードで走り続けていたのだ。これは痛恨のミスである。ここからは「エコ」モードを使って走り、夜の7時過ぎに松山市の中心部に到着した。
翌朝、愛媛県庁からほど近い松山城下の萬翠荘を目指す。最後の1kmは上り坂ばかりだが、効率よくEV走行できたため、燃費計の数値は変わっていない。横浜から萬翠荘までの総走行距離は約850kmで、平均燃費は3.4L/100km(29.4㎞/L)だった。最初から最後まで「エコ」モードを使い、トラックを風よけに使うなどのテクニックを駆使すれば、平均燃費は確実に30km/Lの大台に乗ったと思う。
だが、ノーマルモード主体、流れに乗って走って29.4km/Lの平均燃費は立派だ。一般のユーザーでもちょっと走り方に気を遣えば、WLTCモードに近い数字はマークできるはずである。
今回のロングドライブで、ルーテシア「E-TEC」ハイブリッドの凄さと制御の賢さに驚かされた。このくらい燃費がよければ、プレミアムガソリンが指定でも文句は出ないだろう。ルノーの「E-TECハイブリッド恐るべし、である。高速安定性やハンドリングも優れているなど、ファミリーカーとしての総合性能も高かった。
<レポート:片岡英明>
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ルノー ルーテシア価格
ルーテシアE-TECH ハイブリッド レザーパック | 3,540,000円 |
ルーテシアE-TECH ハイブリッド | 3,390,000円 |
ルーテシア インテンス テックパック | 3,090,000円 |
ルーテシア インテンス | 2,860,000円 |
ルノー ルーテシア スペック
代表グレード | ルーテシアE-TECH ハイブリッド レザーパック |
---|---|
全長×全幅×全高、ホイールベース | 4,075mm×1,725mm×1,470mm、2,585mm |
定員 | 5名 |
車両重量 | 1,310kg |
タイヤサイズ、最小回転半径 | 205/45R17、5.2m |
サスペンション(フロント/リヤ) | マクファーソン/トーションビーム |
エンジン型式種類、排気量 | H4M型直4DOHC、1,597cc |
最高出力 | 67kW<91PS>/5,600rpm |
最大トルク | 144N・m<14.7kgf・m>/3,200rpm |
メインモーター最高出力 | 36kW<49PS>/1,677-6,000rpm |
メインモーター最大トルク | 205N・m<20.9kgf・m>/200-1,677rpm |
サブモーター最高出力 | 15kW<20PS>/2,865-10,000rpm |
サブモーター最大トルク | 50N・m<50.1kgf・m>/200-2,865rpm |
ミッション | ドッグクラッチ マルチモードAT |
WLTCモード燃費 | 25.2km/L |
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