スバル インプレッサ試乗記・評価 五臓六腑に染みわたる「人、中心」のスバル哲学
CORISM / 2023年4月24日 16時39分
いつもと違う開発?
フルモデルチェンジして6代目となったCセグメントのコンパクトハッチバックである新型スバル インプレッサ。
この新型インプレッサ、従来とは違う手法で開発された。今までは、まずインプレッサを開発。その後、インプレッサをベースにしたクロスオーバー車であるXVが開発されてきた。
ところが、世界中でSUVブームが続いている。スバルの主戦場である北米では、よりSUVが求められている。こうしたマーケットの要望を受け、なんとクロスオーバー車である新型クロストレックを最初に開発。今までとは逆の手順になったのだ。
開発エンジニアも、やや戸惑いがあったという。こうしたこともあり、クロストレックが先に販売。インプレッサが遅れて登場した。
開発の順番はさておき、パワーユニットやボディなど、ほとんどの部分がクロストレックとインプレッサは共通。クロストレックが登場した時、スポーティな走りとその完成度の高さに驚いた。それだけに、インプレッサはどうやってクロストレックと差別化するのか? に、とても興味がわいたのを覚えている。
そして、目の前に並べられた新型インプレッサとご対面。うーん、代わり映えしまぜんねぇ・・・。フロントフェイスは、グリルは異なるもののヘッドライトは共通。バンパーの基本的な形状は同じ。せめて、バンパーの基本形状くらい変えたら? と、思えたほど。クロストレックより、少し大人しいコンサバなデザインだ。
![新型スバル インプレッサ](https://www.corism.com/review/wp-content/uploads/sites/3/2023/04/4.11_WAVE1_B_015.jpg)
新型インプレッサとクロストレックの違いは?
こうした見た目の情報から、思わず「そこに、走る楽しさはあるんか?」と感じた。だが、そこは走りにこだわるスバル。試乗会場となった千葉県のサーキット、袖ヶ浦フォレストレースウェイの1コーナーを抜けた瞬間、クロストレック以上の楽しい走りに驚いた。
クロストレックと大きく異なる部分は車高。インプレッサの全高は1,515mm(ST-H)。クロストレック比-60mmとなった。最低地上高は-65mmとなっている。まず、これにより重心高は大幅に下がっている。
タイヤサイズは、インプレッサが215/50R17(ST-H)、クロストレックが225/55R18(リミテッド)となった。クロストレックは、オールシーズンタイヤだったが、新型インプレッサでは通常のタイヤに変更されている。
![スバル クロストレック](https://www.corism.com/review/wp-content/uploads/sites/3/2023/04/D55A7708.jpg)
![新型スバル インプレッサ](https://www.corism.com/review/wp-content/uploads/sites/3/2023/04/D55A9976.jpg)
際立つ軽快さとAWDの安定感
走り出してすぐに気が付くのが「軽快さ」だ。タイヤも変更され、全高も下がったこともあり、新型インプレッサはステアリング操作に対して、より反応がよく機敏に動く。
最近のスバル車は、ステアリング操作に対する操舵遅れが少ないのが特徴。この動きの早さは、スポーツカー並みだ。機敏だが、神経質ではないところも美点。だから、誰もが安心して走りを楽しめる。
こうした軽快感だけでなく、安定感もプラスされている。コースには、2か所のスラローム用パイロンが設置。このパイロンの位置が、なかなか意地悪な設定となっていて、速度を上げて侵入すると、外輪に旋回Gが残ったままフルブレーキングすることになる。
内輪がフロントのグリップは無くなり、かなり不安定な姿勢のままスラロームに進入。普通のクルマであれば、車体の姿勢をコントロールするのに難儀するのだが、新型インプレッサは車体が不安定になるシーンでも驚くほど車体が安定している。車体姿勢のコントロールをするための操作はとくに必要もなく、クルリと向きを変えた。
FF(前輪駆動)車の場合、完全にフロント内輪側のグリップが無くなると、やや車体の姿勢をコントロールするステアリング操作が少し必要だった。それでも、並みのFF車とは比べものにならない安定感だ。
そんな状態を何事もなかったように走り抜けたのが、AWD車だった。インプレッサのAWDは、アクティブトルクスプリットAWDを採用。前60:後40のトルク配分を基本とした安全・安定性を重視したAWD機能だ。
このAWDは、滑り出してからAWDになるオンデマンド式と異なり、常時AWDとなっているのが特徴。安心・安定感では、大きな違いになっている。
安全・安定感重視のAWDとしているものの、走りにこだわるスバルのAWDらしく、意外なほどスポーティなフィーリングだった。
フロント内輪側のグリップが失ったと感じる前に、後輪側にトルクを瞬時に配分。車体の姿勢変化もほとんどなかった。だから、そのままステアリング操作した状態でスラロームも難なく抜けていく。さすが、アクティブと名乗るAWDだ。
タイトターンでも、よりAWDのトラクション性能がよく分かった。FF車では、タイトターン出口でアクセルをドンと全開に踏み込むような荒い運転をすると、タイヤのトラクションが抜ける傾向にあった。
だが、アクティブトルクスプリットAWDを搭載した新型インプレッサだと、アクセルを踏んだ瞬間、グッと駆動力が後輪側に移り、後から押されるようなFR(後輪駆動)車のような動きをみせた。荒いアクセル操作でも、抜群のトラクション性能でタイトターンを抜けていく。ラフロードや雪道など、滑りやすい路面でも安心してアクセルを踏み込めそうだ。
その上、とにかく新型インプレッサはコントローラブル。多少タイヤが滑ろうが、大きく姿勢を乱そうが、なんとかコントロールできる懐の深さがある。ピーキーさが無いので、次に起きるクルマの挙動が読みやすい。運転スキル問わず、安心して気持ちよく走れるクルマだ。
しかも、2.0L e-BOXERもいい仕事をしていた。小さな出力のモーターなので、あまり電動車っぽくないのは相変わらずだが、制御を一新。
瞬時に最大トルクをアウトプットするモーターの特性を生かし、アクセルを踏み込んだ瞬間、しっかりとエンジンをアシスト。アクセルレスポンスに優れた走りを披露した。また、エンジンの剛性アップも効いていて、スムースで振動のない加速が気持ちよい。
![新型スバル インプレッサ](https://www.corism.com/review/wp-content/uploads/sites/3/2023/04/D55A0049.jpg)
![新型スバル インプレッサ](https://www.corism.com/review/wp-content/uploads/sites/3/2023/04/D55A9713.jpg)
新開発シートの効果は絶大
試乗時には、先代インプレッサとの比較もできた。大きな差と感じたのは、カーブでロール(車体の傾き)が少なさだ。新型インプレッサは、ロール量を抑えたフラットライドな印象を強く持ったのだ。
ところが、なんとそれは錯覚だったことが判明。開発エンジニアは「ロール量そのものは先代と同等」と説明してくれた。なぜ、錯覚に陥ったのか? その理由は、シートにあるという。
新型インプレッサでは、骨盤をシッカリと支える新型のシートを開発。仙骨と呼ばれる部分をしっかりと抑えると、上体や頭があまり揺さぶられにくいというのだ。
つまり、頭が揺さぶられていないので、あまりロールしていないと錯覚したのだ。また、体や頭が揺さぶられにくいということは、疲労軽減やクルマ酔いなどにも効果がある。ロングドライブでも疲れにくいということは、集中力も維持できるので、より安全に走り続けることができることになる。
![新型スバル インプレッサ](https://www.corism.com/review/wp-content/uploads/sites/3/2023/04/D55A9719.jpg)
![新型スバル インプレッサ](https://www.corism.com/review/wp-content/uploads/sites/3/2023/04/D55A9726.jpg)
![新型スバル インプレッサ](https://www.corism.com/review/wp-content/uploads/sites/3/2023/04/D55A9911.jpg)
新型スバル インプレッサ解説 はこちら
新型インプレッサの乗り心地は、先代比20%アップ!?
今回の試乗は、サーキットのみということで、乗り心地に評価は難しい。ただ、少し縁石に乗り上げた時のショックの伝わり方は非常にマイルドだった。
新型インプレッサでは、サスペンションの取り付け部の剛性アップ、ボディ剛性のアップなど多くの改良を加えている。これらにより、よりサスペンションがスムースに動くようになったことで、先代インプレッサよりバネレートを少し下げるなどして乗り心地も向上させたという。開発エンジニアのイメージだが、20%くらいは乗り心地が向上しているという。
![新型スバル インプレッサ](https://www.corism.com/review/wp-content/uploads/sites/3/2023/04/D55A9679.jpg)
![新型スバル インプレッサ](https://www.corism.com/review/wp-content/uploads/sites/3/2023/04/D55A9688.jpg)
瞬時に馴染む運転のしやすさは「人、中心」の開発哲学によるもの
そして、新型インプレッサで一番感心したのが、ドライバーとの馴染みやすさだ。初めて乗るクルマは、ある程度の時間を費やさないと、ドライバーと馴染んでこない。乗り慣れないクルマを運転していると、緊張が続きやや疲れる感覚になるのが普通だ。
ところが、新型インプレッサは、初めてステアリングを握り、サーキットを1周走ったくらいで、まるで4、5年乗り続けている愛車のような一体感が生まれ、リラックスして運転できた。何度も色々なクルマで走ったコースだが、これだけ一瞬にして馴染んでしまったのは異例。
これは、やはりスバルの「人、中心」による開発哲学が生きているのだと感じた。スバルの目指すあらゆる環境下で、誰もがコントロールしやすいクルマ造り。新型インプレッサには、それがある。
<レポート:大岡智彦>
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![新型スバル インプレッサ](https://www.corism.com/review/wp-content/uploads/sites/3/2023/04/4.11_WAVE1_B_032.jpg)
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新型スバル インプレッサ価格
・インプレッサST FF 2,299,000円/4WD 2,519,000円
・インプレッサST-G FF 2,783,000円/4WD 3,003,000円
・インプレッサST-H FF 2,992,000円/AWD 3,212,000円
新型スバル インプレッサ燃費値
・インプレッサ燃費(WLTCモード) 2.0L e-BOXER車
FF 16.6㎞/L 4WD 16.0㎞/L
・インプレッサ燃費(WLTCモード) 2.0L車
FF 14.0㎞/L 4WD 13.6㎞/L
新型スバル インプレッサ燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード インプレッサ ST-H 4WD
全長×全幅×全高 mm 4,475×1,780×1,515
ホイールベース mm 2,670
トレッド(前/後) mm 1,540/1,545
最低地上高 mm 135
最小回転半径 m 5.3
車両重量 kg 1,540
エンジン型式 FB20
エンジンタイプ 水平対向4気筒 DOHC16バルブ
総排気量 ㏄ 1,995
最高出力 kW(ps)/rpm 107(145)/6,000
最大トルク N・m(kgm)/rpm 188(19.2)/4,000
モーター型式 MA1
モーター最高出力 kW(ps)/rpm 10(13.6)
モーター最大トルク N・m(kgm)/rpm 65(6.6)
電力用主電池 リチウムイオン電池
駆動方式 4輪駆動(4WD)
トランスミッション CVT
サスペンション 前:ストラット 後:ダブルウイッシュボーン
タイヤ 前後 215/50R17
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