メルセデス・ベンツGLC試乗記・評価 期待を裏切らない高完成度のSUV
CORISM / 2023年7月8日 11時11分
電気自動車化を急ぐメルセデス・ベンツだが・・・
昨年から電気自動車(BEV)を街中でみかける事が多くなった。2010年に大手自動車メーカーとして初めて日産自動車がBEVのリーフの量産を開始した。しかし価格、航続距離、充電設備の普及の問題があり売れ行きは良く無かった。
また、後に続く自動車メーカーもテスラを除けば少なかった。しかし、最近はヨーロッパの自動車メーカーを中心にあらゆるクラスにBEVが投入され、一気に「BEVの花」が咲いたように乗る人が増えた。
メルセデス・ベンツは「2030年には全てのモデルをBEVにする」と宣言し、急速にBEVモデルを投入している。
メルセデス・ベンツらしいスタイリッシュなスタイリング
今回の試乗車であるGLCはメルセデスのベストセラーSUVで、初めてのフルモデルチェンジで2代目となった。2025年以降の新型車はBEVのみと言っているので、エンジン車としては最後のモデルになるかもしれない。
メルセデスは沢山のSUVをラインナップしているが、GLCは車体のサイズ、価格のバランスの取れたミドルサイズSUVである。全長は先代より50mm大きくなり4,725mm、全幅は変わらず1,890mmで日本の道路事情ではベストバランスの大きさである。
一方、全高は僅かであるが-5mmの1,635mmとなり、最近のメルセデスのスポーティなデザインを取り入れ、何処から見てもメルセデスであり、SUVとしては低めのシルエットがクールである。
試乗車は、オプションのAIRMATICサスペンションを装備されていて、「Sport」モードでは車高は約15mm下がり、更にカッコ良さが増す。
電気自動車のEQモデルに似たインテリア
2代目新型メルセデス・ベンツGLCのフロントグリルには、メルセデスのスポーツモデルの定番である「スリーポインテッドスター」が輝いている。私は30年以上前に父親の450SLを乗り回し、その後500SLを購入したが、当時のメルセデスはクーペやSLの高級スポーツモデルにのみフロントグリルのスリーポインテッドスターは採用されていた。現在は多くのモデルにも採用され、私の様に古い人間はプレミア感が薄れたように感じるが、こちらの方のフロントグリルの方がカッコイイから仕方ない。
新型GLCのエクステリアは、何処から見ても一目でメルセデスだとわかる。しかし確実に前モデルより新鮮でよりスポーティなスタイルとなり、保守的でありながら先進性を感じる。
インテリアは大きく変わりフルモデルチェンジを実感する。ダッシュボード中央には11.9インチ縦型の大型ディスプレイ、運手席には12.3インチのディスプレイが備わりSクラスの装備が駆け足で新がtGLCにも採用された。
ダッシュボードの上部には、エアコンの丸いダクトが3個設置されアクセントとなっている。その他のインテリアデザインは、全体的にレトロなスポーツカーのイメージで、大きなディスプレイには種々の情報、設定が可能でBEVに極めて近いインテリアになっている。
高機能な予防安全装備に、分かりやすいARナビ
大型ディスプレイだけでなくSクラスに搭載されている最新の安全運転支援システムも採用された。「アクティブステアリングシステム」、「アクティブエマージェンシーストップアシスト」、「アクティブブレーキシステム」、「緊急回避補助システム」、「アクティブレーンキーピングアシスト」、「アクティブブラインドスポットアシスト」など、沢山あり過ぎて理解するには、とても時間がかかる。何だか分からないが、普段知らなくて良いが、いざとなれば「アクティブ」に運転を補助してくれる心強いシステムである。
対話型インフォテイメントシステム「MBUX」も採用され、「ハイ、メルセデス」と呼びかければ、目的地、電話、音楽、空調を調整出来る。またAR(拡張現実)ナビゲーションをオプションで選択可能で、ナビゲーション中は現実の景色がディスプレイに写しだされ、その画面に進むべき道路が矢印で示される。インテリア、装備を見ていると、このままエンジンからBEVに置き換わっても違和感を感じない。
静粛性に優れた室内
新型GLCのエンジンは、2.0Lディーゼル直列4気筒ターボエンジン(197PS、440N・m)にマイルドハイブリッドシステムISGにより短時間、最大で23PSをブーストする。
9速オートマチックトランスミッションを組み合わせて、四輪にパワーを伝える。アイドリング時のみディーゼルを意識するが、少しでも走り出してしまえば、走行音にかき消されてエンジン音は耳に届かない。
アクセル開度と加速感は一致していて約2トンの重い車重を意識する事がないのはISGが黒子に徹して必要な時にアシストしているからだろう。
高速道路は快適過ぎて退屈?
高速道路の走行はAIRMATICサスペンションによりマイルドな乗り心地で、ストレスなく加減速が出来るので疲労は少ない。燃費の良いディーゼルエンジン、運転支援システムを使って数百キロ走っても疲労は最小限である。
新型GLCの走りは、高速道路では楽すぎて退屈であった。だが、峠道を走行したらGLCの印象が大きく変わった。勿論スポーツカーの様な速さは無いが、充分以上のエンジンパワーしかも気持ち良い出力特性はドライバーをやる気にする。
マイルドだと感じたサスペンションも「Sport」モードにすると固すぎない、しなやかで、ピッチングは少なく、適度なロールを許すのも良い。ステアリングからのインフォメーションは、しっかりとドライバーに伝わって来てタイヤのグリップ感が分かりやすい。アンダーステアリングも軽く、かつオーバーステアにはならないので安心してコーナーを楽しめる。重いクルマだが、下り坂でも攻めたくなってしまう。
SUVは重心が高く、車重を感じる事が多いがGLCはスポーツセダンと言っても過言ではないレベルに仕上がっていた。
日本では効果てきめん! 標準装備化を望みたいリア・アクスルステアリング
試乗車の新型GLCには、オプションのリア・アクスルステアリング(後輪操舵システム)を搭載していた。後輪の動きは自然で違和感がない。一方で最小回転半径が5.1mと小さく、狭い道、駐車するときも楽であり、日本では標準装備が良いと思った。
新型GLCは、メルセデスの主力モデルであり、かなり力を入れて開発したのだろう。SUVでありながら空力的にもCd値は0.29と優れていて、燃費は前モデルより19%改善し、更にラゲッジスペースも拡大している。
路面を選ばず、使い方も選ばない、全てがジャストサイズで、どのような人が乗っても期待を裏切らないはずだ。電気自動車(BEV)が普及してきた今だからこそ、完成度の高いディーゼルエンジンを安全に楽しめる最後のチャンスかもしれない。
ちなみに、ガソリン価格の高止まりはしばらく続きそうで、ハイオクガソリンは190円/L前後。それに対して、ディーゼルエンジンに使う軽油は150円/Lを少し下回っている。ガソリン車より燃費に優れ、燃料費も安価。今後、ガソリン車が追加されたとしても、維持費を考えるとベストバイはディーゼル車だろう。
<レポート:丸山和敏>
メルセデス・ベンツGLC価格
GLC 220 d 4MATIC 8,200,000円
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メルセデス・ベンツGLC燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード GLC 220 d 4MATIC(ISG搭載モデル)
全長×全幅×全高 mm 4,720×1,890×1,640
ホイールベース mm 2,890
トレッド(前/後) mm 1,625/1,640
最低地上高 mm 180
最小回転半径 m 5.5
車両重量 kg 1,930
エンジン型式 654M
エンジンタイプ 直列4気筒
総排気量 ㏄ 1,992
最高出力 kW(ps)/rpm 145(197)/3,600
最大トルク N・m(kgm)/rpm 440(-)/1,800-2,800
モーター型式 EM0023
モーター最高出力 kW(ps)/rpm 17(-)
モーター最大トルク N・m(kgm)/rpm 205(-)
電力用主電池 リチウムイオン電池
駆動方式 4輪駆動(4WD)
トランスミッション 9速AT
タイヤ 前後 235/60R18
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