フォルクスワーゲン ID.4試乗記・評価 後輪駆動のEVは、雪道にも強い!?
CORISM / 2023年12月19日 7時7分
フォルクスワーゲン車、唯一の電気自動車がID.4
フォルクスワーゲン期待のバッテリーEVが「ID.4」だ。2022年11月に日本デビューを飾った。日本で発売されているのは、高性能版のProとリーズナブルな価格設定のLiteの2グレードだ。
上級グレードのID.4 Proは、モーターの最高出力が204ps(150kW)/4621〜8000rpmである。バッテリーも77kWhの大容量だ。
ベースグレードのLiteは最高出力を170ps(125kW)/3851〜15311rpmに抑え、バッテリー容量も52kWhにとどめた。
フォルクスワーゲンは、今のところ日本ではID.4だけの販売だが、グローバルでは多くのEVを発売している。いずれも採用しているのは、MEB(モジュラー・エレクトリックドライブ・マトリクス)と呼ばれるEV専用に開発した共用プラットフォームだ。
後輪駆動でも、滑りやすい路面は前輪駆動車より得意!?
小型化した駆動用モーターをリアに搭載し、後輪を駆動する。だが、後輪駆動だと、滑りやすい雪道ではフラついて安定性を欠くのでは、と心配する人も少なくないようだ。VWジャパンの広報マンも、ユーザーの不安と不満を感じていたのだろう。クローズドコースで限界性能を体験する取材会を催してくれた。
最初のステージは、低ミュー路での坂道発進だ。10%勾配の登り坂には雪道や凍結路と同じようなミューの低い特殊舗装路面が用意されている。しかも、左右で摩擦係数が異なるスプリットミューの路面もあるから、難易度はかなり高い。
まずは、雪道に近いミューの路面での発進だ。アクセルをジワッと踏んでも、ちょっとラフに踏み付けても後ろにずり下がることはなかった。
スプリットミューは、ちょっとラフにアクセルを踏むとタイヤが空転するが、すぐに後輪にトラクションがかかり、息絶えることなくジワジワと登っていく。
このステージに比較車として用意されていたのが、ディーゼルターボのTロックだ。同じスプリットミューの坂を登ったが、前輪が路面を掻きむしるだけでその場から上がることができなかった。さらに、アクセルを踏み込むとリアが挙動を乱してヒヤッとさせられたのである。
ID.4は、モーターが瞬時にパワーを伝達するし、後輪に荷重をかけやすいから登坂路でもトラクションがかかりやすい。乗り比べて、ID.4の真の実力が分かった。
後輪駆動だけに、ハンドリングは最高!
次は、パイロンスラロームである。等間隔にパイロンが置かれ、その左右を走り抜けるのだが、驚くほど舵の利きがいい。ホイールベースは2770㎜と長いのだが、リズミカルにパイロンの間を駆け抜け、スピードが乗った後でもコントローラブルだ。
ウエット路面でも軽やかな身のこなしを披露した。後輪駆動で舵の切れ角が大きいため、ボディの大きさを感じさせないのである。
また、直線路でBレンジに入れて回生ブレーキの効果もチェックしたが、50km/hからのブレーキングを含め、自然な減速感が好印象だ。ただ、BMWのi3に乗っていた筆者は、回生ブレーキの味付けにちょっと物足りなく感じる。もう少し強めてもいいし、パドルシフトで回生の強弱をコントロールしたい気もするが、多くの人は違和感のない自然な減速感を好ましく感じるだろう。
楽しかったのは、ハンドリング路だ。タイトなコーナーが連続する難コースだが、ID.4は軽やかな身のこなしを披露した。後輪駆動らしい後ろからのプッシュを感じながら、狙ったとおりにクルマが気持ちよく向きを変える。
背の高いSUVだが、フロア下にバッテリーを敷き詰めていることもあり、ロールを上手に抑え込んで舵の利きがいい。2トンを超える重量ボディでありながら、ミッドシップに近い軽快な操舵感を味わえた。
雪道を模した路面では、驚くほどコントロール幅広く運転しやすい!
散水したウエットのスキッドパッドでは、トレース能力の高さとコントロール性の高さに目を見張った。ミューが低いから、アクセルを強く踏み込むとリアが流れて挙動を乱す。
だが、限界を超えると挙動安定制御のESC(横滑り防止装置)が介入し、舵が利くから立て直すのは楽だ。ESCの介入は自然な感覚で、運転が上手くなったような気にさせる。ESCを解除すれば、アクセルとステアリング操作で気持ちよくクルマの向きを変えられるし、華麗なドリフトを決めることも難しくない。コントロールできる領域は驚くほど広い。
ID.4はシームレスで滑らかな加速に加え、驚くほど静かだ。また、最小回転半径は5.4mと、取り回し性も優れている。2023年、ID.4はドイツでの生産工場を変更し、新たな生産体制を築いた。
それに伴い、アップデートを行なっている。最大の変更点は、制御系の見直しと回生ブレーキの改良だ。この変更によって航続距離は10%ほど向上しているという。23年アップデート仕様は、8月から販売を開始した。最新モデルはベースグレードのLiteでも航続距離の安心感が増している。が、上級のProも同様に魅力を増しているから、どちらがいいか迷うところだ。
<レポート:片岡英明>
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フォルクスワーゲン ID.4価格
・ID.4 Lite 5,142,000円
・ID.4 Pro 6,488,000円
フォルクスワーゲン ID.4電費、航続距離、ボディサイズなどスペック
代表グレード:フォルクスワーゲン ID.4 Pro
ボディサイズ[mm]: 全長4,585×全幅1,850×全高1,640
ホイールベース[mm]: 2,770
最小回転半径[m]: 5.4
車両重量[kg]: 2,140
リヤモーター最高出力[kw(ps)]:150 (204)
リヤモーター最大トルク[N・m(kg-m)]:310(31.6)
駆動方式:RWD
一充電走行距離WLTCモード[km]: 618
バッテリー 種類:リチウムイオン
総容量[kWh]: 77.0
サスペンション前/後:ストラット/マルチリンク
タイヤサイズ前後:前235/50 R20 後255/45 R20
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