トヨタ ハリアーvsマツダCX-60 XD-ハイブリッド比較・評価 失敗・後悔しないためのクルマ選び
CORISM / 2023年5月19日 20時3分
マツダCX-60 XD ハイブリッド VS トヨタ ハリアーハイブリッド失敗・後悔しないクルマ選び
2022年9月、マツダは新型SUVであるCX-60を投入。FR(後輪駆動)ベースの新プラットフォーム(車台)を開発。48Vマイルドハイブリッドと直6 3.3Lディーゼルターボエンジンというユニークな組み合わせで、CO2低減に挑戦している。
そして、比較するのは、ラグジュアリーSUVで圧倒的な人気を誇るトヨタ ハリアーハイブリッド。
今回は、マツダCX-60 XDハイブリッドと、トヨタ ハリアーハイブリッドのラグジュアリーSUV対決だ。走りや燃費、室内スペースなど徹底比較評価。失敗・後悔しないクルマ選びの参考にして欲しい。
高級SUVの代名詞といえるハリアー
トヨタ ハリアーの特徴
4代目トヨタ ハリアーは、2020年6月にデビューした。1997年に登場した初代ハリアーは、高級SUVというカテゴリーを開拓して大ヒットを果たした。それ以降、歴代ハリアーは一貫して高級SUV路線を突き進み、高級SUVの代名詞的存在となった。
4代目ハリアーは「見て、乗って、走り出した瞬間に心に響く感性品質」を目指して開発された。2022年の改良では、PHEVも投入されている。
プラットフォーム(車台)も一新され、5代目RAV4と同じGA-Kプラットフォームが採用されている。パワーユニットなどもRAV4と共通だ。
最新2.5Lハイブリッドシステムは、エンジンの最大熱効率を41%とし低燃費化に成功した。このクラスでは、RAV4と同じく世界トップレベルの超低燃費性能を誇る。さらに高級SUVらしく、RAV4よりも静粛性や乗り心地がアップしている。
歴代ハリアーは、鷹のエンブレムがお馴染みだ。3代目ハリアーまではエンブレムが鷹だったが、4代目からトヨタエンブレムに変更された。しかし、ドアパネル表皮などには型押しされた鷹のエンブレムが残されている。
走行性能を重視したFRベースのCX-60
マツダCX-60 XDハイブリッドの特徴
マツダCX-60は、2022年9月に登場した新型車だ。ラージと呼ばれる新開発のプラットフォーム(車台)を採用している。マツダにとってラージは、ロードスターを除くと久し振りのFR(後輪駆動)ベースのプラットフォームだ。
サスペンションには、フロントにダブルウィッシュボーン式、リヤにマルチリンク式を採用。まるで、スポーツカー並みのサスペンション形式だ。大きな車体ながら、FRベースモデルらしいスポーティな走りを実現している。
搭載されたパワーユニットである48Vマイルドハイブリッド+直6 3.3Lディーゼルのe-SKYACTIV D。パワーを追求するというより、CO2減を狙ったパワーユニットだ。CX-5などに搭載されている2.2Lディーゼルエンジンより大幅に排気量を増やしているのに、燃費は同等レベルとなっている。
驚異的なCX-60の燃費。経済性ではハリアーハイブリッドを超えた!
1.燃費比較
ハリアーハイブリッドの評価 4.5
CX-60 XDハイブリッドの評価 5.0
トヨタ ハリアーハイブリッドと、マツダ CX-60 XDハイブリッドの燃費は以下の通りだ。(すべてWLTCモード)
FF | 4WD | |
---|---|---|
ハリアーハイブリッド | 22.3km/L | 21.6km/L |
CX-60 | - | 21.0km/L |
ハリアーハイブリッドのパワーユニットは、2.5LエンジンをベースとしたTHS-II、4WDシステムは後輪側にモーターを設置したE-Fourだ。
対するCX-60 XDハイブリッドには、e-SKYACTIV D 3.3が採用された。これは3.3L直6ディーゼルに48Vマイルドハイブリッドが組み合わされたものだ。4WD車は、電子制御多板クラッチ式を採用している。
この2台、ハイブリッドも4WDも全く異なるシステムが使われているのが特徴だ。
4WDの燃費値に関しては、ハリアーハイブリッドが若干上回る数値となった。しかし、大きく異なるのがエンジンである。ハリアーハイブリッドはレギュラーガソリンを使うが、CX-60は軽油を使うディーゼルだ。燃料費差は20円/L前後と大きな差がある。
仮にWLTCモード値で1,000km走行した時の燃料費を計算してみよう。
燃料費 1,000km走行時の燃料費
燃料費 | 1,000km走行時の燃料費 | |
---|---|---|
ハリアーハイブリッド | 165円/L(レギュラーガソリン) | 約7,600円 |
CX-60 | 145円/L(軽油) | 約6,900円 |
このように、燃費値ではハリアーハイブリッドがCX-60を上回るものの、20円/L前後も安価な軽油を使うCX-60が燃料費という面では、ハリアーハイブリッドを上回る結果となった。ただし、その差は僅かだ。
ほぼ同等レベルの価格
2.価格比較
ハリアーハイブリッドの評価 3.5
CX-60 XDハイブリッドの評価 3.5
トヨタ ハリアーハイブリッドとマツダCX-60 XDハイブリッドの新車価格は以下の通りだ。
エントリーグレード | 最上級グレード | |
---|---|---|
ハリアーハイブリッド | 3,938,000円(Sグレード E-Four) | 5,148,000円(Zレザーパッケージ E-Four) |
CX-60 XD | 5,054,500円(XDハイブリッド エクスクルーシブスポーツ 4WD) | 5,472,500円(XDハイブリッド プレミアムモダン 4WD) |
エントリーグレードでの価格差比較では、ハリアーハイブリッドが110万円以上も安価な設定となっている。これはCX-60が、グレード間の格差をつけていないことが大きな理由だ。CX-60は基本的に同じような装備で、そのグレードの世界観によって構成されている。そのため、グレード間の価格は約42万円。対するハリアーハイブリッドは、121万円と価格差が大きい。
全般的にハリアーハイブリッドより、CX-60の方が、装備が豪華で充実している傾向にある。その分、少し車両価格は高い。
最上級グレードであるハリアーハイブリッド レザーパッケージとCX-60 XDプレミアムモダンでの大きな装備差は以下の通りだ。
ハリアーハイブリッド | CX-60 | |
---|---|---|
レザーシート材質 | 一般的なレザーシート | ナッパレザーシート |
シート(運転席) | 8way | 10way |
シート(助手席) | 4way | 10way |
タイヤ&ホイール | 225/55R19 アルミホイール | 235/50R20 アルミホイール |
その他、CX-60にありハリアーハイブリッドにない装備として、ボーズサウンドシステムがある。多少装備差はあるものの、全般的にややCX-60の方が充実した装備になっている。最上級グレードの価格差は、約32万円。装備差や質感の差をも含めると、同等レベルの価格と言えそうだ。
厳しい値引きのCX-60。交渉次第のハリアー
3.購入時の値引き術
ハリアーハイブリッドの評価 3.0
CX-60 XDハイブリッドの評価 2.5
ハリアーハイブリッドは、2020年6月に発売された。その後、2022年9月に一部改良が施されている。改良直後かつ超人気車なので、本来ならば値引きは厳しい。
しかし、未だ納期不明状態が続いており、お詫びという名目で一定の値引きが出ているようだ。ただし、何もしなければ値引きはゼロに近くなるので、必ずCX-60や日産エクストレイルなどのモデルと競合させることが重要だ。
商談中に長い納期の話になった場合、「待つので、その分値引きを」とするのもよい。下取り車の車検が近い場合は「車検を取って待つので、車検代以上の値引きが欲しい」などと交渉するのもよいだろう。
マツダは、大幅値引きをしない方針を貫いている。しかも、デビュー直後の新型車であるCX-60から値引きを引き出すのは難しい。
何もしなければ値引きゼロになるので、ハリアーハイブリッド同様、競合させることが重要だ。それでも、しばらくの間15万円位が限界値だろう。CX-60の場合、大幅値引きを引き出すのは、かなり難しい。大幅値引きが期待できる状態は、半導体・部品不足が完全解消され、年度末2~3月の決算期で、在庫車があり余っている場合くらいだ。そんな状態がいつ来るか分からないので、じっくり長めに商談し徐々に値引きを上乗せさせるか、用品サービスなどに変更するしかないだろう。
よりラグジュアリーSUV感のあるCX-60
4.デザイン比較
ハリアーハイブリッドの評価 3.5
CX-60 XDハイブリッドの評価 4.0
SUVのデザイントレンドは、大きな顔と大きなグリルにある。フェイス上部に入れられた薄型LEDライトも外せない。トヨタは、ミニバンで徹底したマーケットインなデザインを取り入れ、どのモデルもよく売れている。
しかしハリアーのフェイスデザインは、小さな顔に小さなグリル、シャープな薄型ヘッドライトの組み合わせだ。SUVのデザイントレンドと合致しているのは、薄型ヘッドライトくらい。
マーケットインのデザインというより、プロダクトアウトなデザインといえる。トレンドから外れていても売れるのは、まさに強力なハリアーブランドだからこそだ。
だがリヤビューは、SUVデザイントレンドのど真ん中をいく。やや高めの位置に設置された横一文字のリヤコンビネーションランランプは、まさにSUVデザイントレンドの最たるものだ。ウインカーの位置が低く後続車から見えにくいのが惜しい。
全体のデザインは、さすがトヨタといったところ。全体のバランスがよく、上手くまとまっている。個性をアピールしながら、好き嫌いが出ないデザインにまとめた。
対するCX-60は、マツダのデザインテーマ「魂動(こどう)-SOUL of MOTION」のさらなる進化に挑戦し、自然と調和する日本人の感性を活かしたタフさと緻密さを表現したという。
このCX-60で強調されているのが、長いボンネットと短いフロントオーバーハングだ。ひと目でFR(後輪駆動)車ベースのモデルであることをアピールするためのデザインである。このシルエットは、他のFF(前輪駆動)ベースのマツダSUVにはできないシルエットだ。
その上で、「引き算の美学」のもとにシンプルながら強い面の張りで力強さを演出。リヤビューはどっしりとしたSUVらしい安定感を表現している。
この2台のボディサイズはそれほど大きな差はない。若干CX-60が大きい程度だ。しかし、CX-60の方がひと回り大きく立派に見える重厚なデザインとなっている。逆に、スポーティで軽快感があるデザインなのがハリアーハイブリッドだ。
目指すデザインの方向性が異なる2台。このあたりは評価が分かれるが、両車のラグジュアリーSUVという個性を加味すると、わずかにCX-60がリードするように見える。
優れた使い勝手を誇るCX-60
5.室内空間と使い勝手
ハリアーハイブリッドの評価 3.0
CX-60の評価 4.0
トヨタ ハリアーハイブリッドと、マツダ CX-60のボディサイズ、ホイールベース、荷室容量は以下の通りだ。
全長×全幅×全高 | ホイールベース | 荷室容量 | |
---|---|---|---|
ハリアーハイブリッド | 4,740mm×1,855mm×1,660mm | 2,690mm | 409L |
CX-60 | 4,740mm×1,890mm×1,685mm | 2,870mm | 570L |
ハリアーハイブリッドとCX-60のボディサイズは、全長が同じで、全幅はCX-60の方がやや大きい。
ホイールベースはCX-60の方が180mm長い。ホイールベースの長さは、室内スペースに直結する。そのため、室内の広さはややCX-60が上回る印象だ。ハリアーは、クーペ風のルーフラインをもつことが影響しているのか、とくに後席の頭上スペースがCX-60と比べるとタイトだ。背が高い人が後席に乗る場合は、しっかりとチェックしておきたい。
横方向のスペースも、全幅の広いCX-60の方が少し余裕もある。同様に、荷室もCX-60の方が広い。荷物をたくさん載せる人には、CX-60がお勧めだ。
ハリアーハイブリッドの最小回転半径は、5.5(17~18インチホイール)~5.7m(19インチホイール)だ。最上級グレードのZを選ぶと5.7mなので、狭い駐車場では少々扱いにくさを感じる。FF(前輪駆動)ベースのプラットフォーム(車台)を使っていることも理由のひとつだ。FFベースだと、エンジンが横置きになるため、タイヤの切れ角が取りにくい。
対するCX-60の最小回転半径は、5.4mだ。この数値は、なかなか優秀である。マツダはかなりワイドなボディサイズを気にしていて、最小回転半径にはこだわった。
これは、ハリアーハイブリッドとは逆で、FR(後輪駆動)ベースのプラットフォームが大きな影響を与えている。FRベースだと、エンジンは縦置きになり、タイヤの切れ角が取りやすくなるからだ。
しかも、CX-60のホイールサイズは、ハリアーハイブリッドより大きい20インチだ。FRベースとはいえ、5.4mという数値は世界的にみても小回りがきくSUVといえる。
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両車、高レベルの予防安全装備
6.安全装備の比較
ハリアーハイブリッドの評価 4.0
CX-60の評価 4.5
ハリアーハイブリッドは、2022年10月の改良で予防安全装備パッケージ「トヨタセーフティセンス」の機能が向上した。
自動ブレーキは、以下を検知出来るようになった。
昼夜の歩行者
昼間の自転車
右左折時の横断歩行者
右折時の対向直進車
右左折時の対向方向から横断してくる歩行者
改良により、ハリアーハイブリッドの予防安全性能は大幅に向上している。ただ、後側方車両接近警報などのローテク予防安全装備が一部オプションなのが惜しい。
CX-60 XDハイブリッドの予防安全装備は、非常に高いレベルにある。自動ブレーキ機能は、歩行者や自転車に加え自動二輪も検知可能だ。右左折時の歩行者と自転車検知に加え、右折時の車両も検知し衝突回避・被害軽減を行う。
検知対象はハリアーハイブリッドに似ているものの、自動二輪を検知できるなど、ややCX-60が上回る。
さらに、CX-60XDハイブリッドには、DEA(ドライバー異常時対応システム)が標準装備されている。ハリアーハイブリッドには用意されていない。DEAは運転の継続が困難になった場合に、車両を減速・停止させる機能である。停止させることで、衝突の回避や被害の軽減を図る。暴走するリスクも下がるので、二次被害の軽減にも効果がある。停車後は、ドア解錠やヘルプネット自動接続による緊急通報も行い、早期のドライバー救護・救命に寄与する。特に持病を持つ人や高齢ドライバーにとって、大きなメリットとなる予防安全装備だ。
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物足りない乗り心地となったCX-60
7.走行性能の比較
ハリアーハイブリッドの評価 4.0
CX-60の評価 3.5
トヨタ ハリアーハイブリッドと、マツダCX-60XDの出力と車重は以下の通りだ。
出力 | 車重 | |
---|---|---|
ハリアーハイブリッド | 222ps(E-Four) | 1,690kg(Zレザーパッケージ) |
CX-60XD | 254ps&550Nm | 1,940kg(プレミアムモダン) |
ハリアーハイブリッドのシステム出力なら、十分に力強い走りが可能だ。後輪側のモーターも54ps&121Nmとまずまずの出力があるので、悪路などではドリフト走行できるくらいの実力だ。オンロードでも軽快で気持ちよく走る。
乗り心地や静粛性も高く、粗が見当たらないほどの完成度を誇っている。
CX-60 XDハイブリッドは、550Nmという大トルクをアウトプットする。自然吸気ガソリンエンジン換算だと、約5.5Lクラスだ。
だが直6 3.3Lディーゼルエンジンの出力は、少々控えめだ。欧州系の直6 3.0Lディーゼルエンジンだと、700Nm前後が相場である。CX-60の最大トルクが控えめなのは、主に燃費を重視したからだ。
控えめなスペックとはいえ、大トルクがあるため、アクセルをグッと踏み込むと豪快に加速する。車重は重いものの、CX-60の加速力には、ハリアーハイブリッドも敵わない。
CX-60はKPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)によって安定してカーブを曲がることが出来る。大きな車体ながら、軽快な走行フィールが持ち味だ。
4WD機能は、電子制御多板クラッチ式だ。機械式なので、前後輪間でより多くのトルクを緻密に配分出来る。ハリアーハイブリッドのモーター式E-Fourと比べると、悪路走破性は高い。
CX-60 XDハイブリッドの静粛性は、ハリアーハイブリッド並みに高いレベルにある。開発当初から、オーディオの音質を上げるための設計が施された。そのため、標準のオーディオシステムでも高いレベルのサウンドが楽しめる。
だが、乗り心地に関してはハリアーハイブリッドの圧勝だ。CX-60は独自のサスペンション思想を投入し、上下バウンスによる動きで車両を安定させる。だが高速道路では縦揺れが収まらない。硬いサスペンションと相まって、腰に負担がかかる乗り心地となっている。
<レポート:大岡智彦>
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