トヨタ シエンタvsホンダ フリードを徹底比較・評価 失敗・後悔しないためのクルマ選び
CORISM / 2023年6月18日 18時8分
失敗・後悔しないためのシエンタ&フリード選び
3列シートをもつミニバンの中でも、最も小さなクラスとなるコンパクトミニバンが人気だ。ファミリーカーとして、日々使う生活の足にレジャーとフレキシブルに使えることが大きな魅力だ。
そんな大人気カテゴリーであるコンパクトミニバンで人気を二分しているのが、トヨタ シエンタとホンダ フリードだ。そのシエンタは、2022年8月にフルモデルチェンジ。最新テクノロジーを満載したモデルとなった。その一方、根強い人気でロングセラーとなっているフリード。そんなシエンタとフリードを徹底比較・評価。後悔・失敗しないクルマ選びの参考にして欲しい。
コンパクトミニバンが売れている
ミニバンは、日本独自に進化したカテゴリーだ。日本人が日本人のために開発したモデルなので、痒い所に手が届く、使い勝手に優れたモデルが多い。
ミニバンは、大きさによりLクラス、Mクラス、Sクラスと3カテゴリーに分類できる。その中で、コンパクトミニバンとも呼ばれるSクラスミニバンの人気が高い。
トヨタ シエンタは、2022年8月にフルモデルチェンジし3代目となった。半導体不足により、納期が長期化しているものの販売は好調。
ライバル車であるホンダ フリードは、2016年に登場したモデル。すでに、いつフルモデルチェンジしてもおかしくないほど。しかし、根強い人気と納期がシエンタより短いこともあり、モデル末期でも販売は絶好調。
2022年度の登録車販売台数ランキングでは、シエンタが5位。フリードが6位という状況。まさに、トヨタとホンダ双方にとって、国内販売を支えるとても重要な車種なのだ。
すべてが飛躍的に性能向上した新型シエンタ
トヨタ シエンタの特徴
3代目トヨタ シエンタは、2022年8月にデビューした。2代目シエンタは、歌舞伎の隈取のようなデザインが特徴だった。しかし、3代目シエンタは、カジュアルでツールらしいデザインへ大きく方向転換し、アウトドアの要素もプラスされている。
メカニズム面も刷新された。クルマの基本性能を決めるプラットフォーム(車台)は最新のGA-Bベースとなり、軽量・低重心化が図られた結果、運動性能が飛躍的に向上している。
さらに、1.5Lハイブリッドも最新仕様にアップデートされ、燃費性能が大幅にアップした。
予防安全性能も最新の「トヨタセーフティセンス」となり、非常に高い機能や性能を誇る。2代目シエンタの予防安全性能は物足りなかったが、3代目シエンタは、このクラスで世界トップレベルと言える予防安全性能を手に入れている。
センタータンクレイアウトによる高効率パッケージが魅力
ホンダ フリードの特徴
2代目ホンダ フリードは、2016年に登場。フリードは、コンパクトカーであるフィットのプラットフォーム(車台)やパワーユニットを共用しながらも6、7人乗りを可能とした。
フリードに採用されているプラットフォームのスペース効率は、非常に高い。ホンダ独自のセンタータンクレイアウトが採用されており、広い室内や優れた積載性などを実現している。このスペース効率の高さが、フリード最大の特徴でもある。
搭載されている1.5Lハイブリッドシステムは、1モーター式のi-DCDだ。すでに、ホンダは2モーター式でシリーズハイブリッドシステムを使う1.5Lハイブリッドシステム「e:HEV」へシフトしている。旧式となったこともあり、i-DCDは燃費面でやや厳しい状況になっている。
燃費性能はシエンタが圧勝!
1.燃費比較
シエンタの評価 4.0
フリードの評価 3.0
トヨタ シエンタと、ホンダ フリードの燃費は以下の通り(全てWLTCモード、FF)。
1.5Lハイブリッド車 | 1.5Lガソリン車 | |
---|---|---|
シエンタ | 28.2~28.8km/L | 18.3~18.4km/L |
フリード | 20.9km/L | 17.0km/L |
燃費比較では、ハイブリッドとガソリン共にシエンタの圧勝だ。シエンタは最新1.5Lハイブリッドを搭載する野に対し、フリードは旧型の1.5Lハイブリッドを積んでいる。残念ながら勝負にならず、約27%もの差が付いた。
カタログ燃費値で、1万km走った時のガソリン代を比較する(レギュラーガソリン代@160円/L計算)。シエンタが約5.6万円に対し、フリードは約7.7万円と、かなり大きな差になることが分かる。
ガソリン車の燃費もシエンタが約8%差で優れている。この差であれば、それほど燃費を気にしない人にとって許容範囲内だろう。
だが、シエンタの1.5Lエンジンには、アイドリングストップ機能が搭載されていない。これさえあれば、さらに燃費値を向上させることができると思うと、物足りなさを感じる。カーボンニュートラル時代であることを配慮すると、シエンタの大きなマイナス要因といえる。
フリードよりも高性能・低価格なシエンタ?
2.価格比較
シエンタの評価 3.0
フリードの評価 2.5
トヨタ シエンタとホンダ フリードの新車価格は以下の通りだ。
1.5Lハイブリッド車
エントリーグレード | 最上級グレード | |
---|---|---|
シエンタ | 2,380,000円(ハイブリッドX FF 5人乗り) | 3,108,000円(ハイブリッドZ 4WD 7人乗り) |
フリード | 2,633,400円(ハイブリッドG FF 6人乗り) | 3,067,900円(ハイブリッドクロスター 4WD 6人乗り) |
1.5Lガソリン車
エントリーグレード | 最上級グレード | |
---|---|---|
シエンタ | 1,950,000円(X FF 5人乗り) | 2,560,000円(Z 4WD 7人乗り) |
フリード | 2,275,900円(G FF 6人乗り) | 2,737,900円(クロスター 4WD 6人乗り) |
販売台数では常勝であるトヨタにとって、目の上のタンコブのような存在がフリードだ。トヨタの営業力をもってしても、なかなかフリードに勝てない状況が続いていた。そのためシエンタの価格は、エントリーから最上級グレードまでフリードを下回る価格設定としているのが特徴である。
燃費や走行性能、予防安全性能は、シエンタが大きく上回っている。装備を抜きにして、この圧倒的な性能差を加味すれば、シエンタの価格はとてもリーズナブルといえる。
ただし、リーズナブルという表現はフリードと比較した場合に限る。シエンタの最上級グレード(FF)の新車価格は約300万円だ。プラットフォームやパワーユニットなどを共用するアクアの最上級グレードZの価格が約240万円であることを踏まえると、シエンタも高価に感じる。
商談次第で値引き大のフリード
3.購入時の値引き術
シエンタの評価 2.5
フリードの評価 3.5
2022年12月現在、トヨタ シエンタは登場したばかりの新型車だが、すでに納期が分からない状況だ。そのため値引き交渉をしても、納期遅れによるお詫び程度のわずかな値引き額(10万円前後)しか引き出せないだろう。
だが何もしなければ、値引きはゼロベースで商談が進んでしまう。少しでも値引きを引き出すコツは、営業マンにライバル車が本命かのように思わせることだ。
策のひとつ目は、フリードの見積りを先に取ってから商談に向かうことだ。ふたつ目は商談中にもライバル車と比較することである。フリードのほうが勝る点(短納期など)を挙げるのだ。また現金値引きが厳しくなった場合、用品オプションなどのサービスに切り替えることも効果的だ。
対するホンダ フリードは、2023年中にフルモデルチェンジするのでは、と噂されている。現時点ではシエンタがフルモデルチェンジを果たし、商品力に大きな差が出ている。そのため大幅値引きで対抗するしかない。
フリードは、納期の短さと値引きで勝負してくるはずだ。先にライバル車であるシエンタの見積りを取り競合させれば、30万円越えの大幅値引きも十分に期待できるだろう。
両車共に注意したいのが、下取り車の処理だ。
コロナ禍で新車納期が大幅に伸びた影響で、高年式の中古車価格が軒並み上昇している。この状況だと、ディーラー下取よりも買取店での売却が有利になる。買取店は、より直近の中古車マーケットの状況に合わせて買取価格を決めるからだ。同時に中古車も販売する店であれば、オークションを通さずに仕入れができるため、より高値で買取ることができる。
まずは複数の買取店で査定し、下取り価格と比べることからスタートしたい。
万人受けするシエンタ、やや古さを感じさせるフリード
4.デザイン比較
シエンタの評価 4.0
フリードの評価 3.0
トヨタ シエンタは、愛着の湧く可愛さとツール感を表現したデザインだ。キーワードは「アクティブなツールを手に入れて気分を盛り上げたい」、「日常を彩り、愛着が沸くちょっといいモノ」とした。
シエンタは、角を丸くした「シカクマル」をテーマに外観デザインを構築している。クリっとしたヘッドライトを組み合わせ、可愛らしさをアピール。さらに、ボディサイドにプロテクションモールを追加しツール感を表現している。
どこかで見たようなデザインだが、トヨタの狙い通りのスタイリングになっている。
インテリアは、水平基調でカジュアルなデザインだ。ダッシュボードもスッキリとしていて、視界も良好である。カップホルダーなどのデザインにも、外観デザインのシカクマルを採用し、共通のイメージでまとめられた。
トヨタは「コンパクトミニバンはどんなデザインが好まれるか」を徹底的に調べ上げている。シエンタにはマーケットインなデザインが施されており、万人に好まれるデザインだ。
対するフリードは、ホンダ車らしくスポーティな外観デザインとなっている。
フロントフェイスは、ボンネットを高く設定することで大きな顔とし、コンパクトカーであっても迫力あるフェイスを実現した。さらに切れ長のシャープなヘッドライトを組み合わせ精悍さも併せ持つ。
サイドにシャープなキャラクターラインを入れることで、軽快感やスピード感を表現している。
インテリアは少し前のホンダ車らしい、メカニカルで少しゴチャゴチャしたデザインだ。
メーターは、2016年当時の流行りであるダッシュボード奥に設置されたタイプだ。さすがに古さを感じさせる。
両車、一長一短
5.室内空間と使い勝手
シエンタの評価 3.5
フリードの評価 4.0
トヨタ シエンタ(FF)と、ホンダ フリード(FF)の室内サイズ、ホイールベースは以下の通りだ。
*室内サイズは、各社独自測定のケースが多いため参考値
室内長×室内幅×室内高 | ホイールベース | |
---|---|---|
シエンタ(7人乗り) | 2,545mm×1,530mm×1,300mm | 2,750mm |
フリード(6/7人乗り) | 3,045mm×1,455mm×1,275mm | 2,740mm |
トヨタ シエンタは、5人乗りの2列シートか、7人乗りの3列シートだ。2列目シート仕様はフリード+という別の車種設定となっている。
対するフリードは基本的に3列シートのみの設定で6人もしくは7人乗りになる。2列目シートが2人か3人かの違いだ。
単純な室内の広さでは、フリードがやや勝る。2016年デビューと設計が古いうえに、参考値とはいえ、室内長は50mmも違う。特に2列目や3列目シートの広さの差は大きい。この広さがモデル末期でも売れている理由のひとつだ。
室内空間の差は、プラットフォーム(車台)の差によるものだ。フリードにはホンダ独自のセンタータンクレイアウトという技術が使われている。後席下に設置された燃料タンクを薄型化しフロントシート下付近に設置し、後席や荷室のスペースをより広く確保できたのだ。
広さではフリードだが、ユニバーサルデザインでは、シエンタが上回る部分もある。フリードのスライドドア開口幅は665mm、ステップ高は390mmだ。これに対して、シエンタの開口幅は670mm、ステップ高は330mmとなっている。ステップ高は60mmもシエンタが低い。ステップ高が低いほど、乗り降りがしやすくなり、小さな子供やお年寄りに優しいクルマといえる。
乗り降りのしやすさを重視するか、それとも室内の広さを優先するかは、使い方によって異なる。どんな使い方をするのかじっくりと考えて選択するとよい。
大差をつけたシエンタの予防安全装備
6.安全装備の比較
シエンタの評価 4.5
フリードの評価 2.5
トヨタ シエンタの予防安全装備パッケージ「トヨタセーフティセンス」は最新世代のもので、クラス世界トップレベルの実力を誇る。自動ブレーキは以下に対応し、衝突回避・被害軽減が可能だ。
・昼夜の歩行者
・昼夜の自転車
・昼間の自動二輪
・右左折時の歩行者
・右折時の対向車
自動ブレーキ機能の他、シエンタにはPDA(プロアクティブドライビングアシスト)が標準装備された。システムがリスクの先読みを行い、ドライバーの安全運転をサポートする機能だ。横断中の歩行者を発見すれば、減速操作をアシストする。路肩を歩行中の歩行者や自転車、駐車車両があれば近付き過ぎないように、減速やステアリング操作をアシストしてくれる。
疲労軽減にも役立つ機能が、先行車を検知する減速支援だ。アクセル操作がオフであれば、先行車との距離と保ちながら減速する。停止こそブレーキ操作が必要だが、ブレーキ操作から解放されるのでドライバーの疲労軽減に効果がある。
対するホンダ フリードの安全装備は2016年デビューのモデルであるため、やや物足りない。自動ブレーキは歩行者と車両のみで、右左折時の歩行者などには非対応だ。自動ブレーキの機能だけでも大差が付いた。
さらに、フリードは、サイド&カーテンエアバッグが一部グレードでは非装着、オプションという設定だ。これくらいの装備は標準装備化してほしかった。なおシエンタは、標準装備されている。
だがシエンタも完璧とは言えない。後側方車両接近警報であるBSMやパーキングサポートブレーキ(後方)などは、エントリーグレードではオプション設定になっている。
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加速感は同等だが、カーブでの安定感はシエンタが上回る
7.走行性能の比較
シエンタの評価 4.0
フリードの評価 3.0
トヨタ シエンタと、ホンダ フリードの出力、車重は以下の通り。
1.5Lハイブリッドシステム
システム出力 | 車重(FF) | |
---|---|---|
シエンタ | 116ps | 1,330~1,370kg |
フリード | 137ps | 1,410~1,430kg |
1.5Lガソリン
システム出力 | 車重(FF) | |
---|---|---|
シエンタ | 120ps&145Nm | 1,270~1,300kg |
フリード | 129ps&153Nm | 1,350~1,380kg |
トヨタ シエンタは1.5Lハイブリッドシステムを刷新したことで、よりパワーアップされている。先代シエンタの力強さは、高速道路の合流や急勾配の登り坂でやや物足りなさを感じた。
しかし、ハイブリッドシステムが刷新されパワーアップされ、物足りなさを払拭しキビキビとした走りができるようになった。
特に1.5Lガソリン車はエンジン変更によって、先代シエンタの109ps&136Nmから129ps&153Nmに進化し、パワフルになっている。高回転型のエンジンらしく、回すとよりパンチのある加速が楽しめる。だが、高回転域になるとかなりエンジン音が賑やかになり、3気筒エンジンの振動も少し感じる。
ホンダ フリードの1.5Lハイブリッドシステムは、1モーター式で7速DCTと呼ばれる機械式のギヤを用いたミッションとつながっている。シエンタと比べると、ダイレクト感あるフィールが特徴的だ。アクセル操作に対するレスポンスもよい。システム出力もシエンタを上回るが、フリードは車重が少し重いため、加速感にそれほど大きな差は感じない。
フリードのガソリン車も、シエンタを上回る出力を誇る。さすがホンダのエンジンで、高回転域まで気持ちよく回る。
エンジンの回転フィールは、4気筒のフリードが勝る。だが加速感はフリードの車重が重いこともあり、同等程度だ。
乗り心地は、両車やや硬めで、タイヤのゴツゴツ感は十分に伝わってくる。だがシエンタはそれほど不快な印象はない。振動の抑え方が上手く、ゴツゴツ感がシッカリ感に変換されたよう感覚だ。
ハンドリングは、シエンタが上回る。低重心化されたGA-Bプラットフォームの恩恵で、背の高さをあまり感じさせない。ハイブリッドはさらに良く曲がる。後席下付近に重い駆動用バッテリーが設置されたことで、より操縦安定性が増したからだ。カーブでも背の高いクルマにありがちなグラグラ感が無いため、不安なく走れる。
フリードはセンタータンクレイアウトなので、フロア高と重心がやや高い。そのため、スポーティな走りはやや苦手だ。シエンタと比べると、重心は明らかに高く感じる。カーブでの車体の傾きは不安に感じるレベルではないものの、シエンタより大きい。
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現行フリードは、早めな売却がお勧め。両車、高リセールバリューを維持
8.リセールバリュー比較
シエンタの評価 4.0
フリードの評価 4.0
トヨタ シエンタは、まだ発売されたばかりのモデルなので、今後のリセールバリューがどうなるかは不明だ。しかし先代シエンタのリセールバリューがとても高いレベルを維持し続けているので、新型シエンタも高リセールバリューが十分に期待できる。
最近は新車の納期が超長期化しており、高額転売目的で仕入れた新車を未使用車として販売している中古車店も多く見受けられる。この要因が、今後の高年式シエンタのリセールバリューをさらに押し上げる可能性がある。逆に新車納期が短縮されれば、異常に高かったリセールバリューが急激に下がり通常レベルに戻る可能性がある。売却時のタイミングには注意が必要だ。
ホンダ フリードも根強い人気を保っており、リセールバリューもとても高い水準を維持している。ただしフリードの場合、2023年中にフルモデルチェンジの可能性が高いため注意が必要だ。フルモデルチェンジのタイミングがアナウンスされると、一気にリセールバリューが下がることが予想される。
新型が登場すれば、旧型のリセールバリューは下がる。新型フリードが登場してしばらくすると、下取りに入った旧型フリードが中古車マーケットに多く流入してくる。流通台数が需要より多ければ、中古車価格が下がりリセールバリューも下落する。
現行フリードの売却を考えているのであれば、とにかく早めがよい。
<レポート:大岡智彦>
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