BMW iX1試乗記・評価 高速道路での電費に優れるユニークな電気自動車
CORISM / 2024年3月19日 18時18分
電気自動車に積極的なBMW
スポーティな走りのクルマづくりを得意とする、ドイツの老舗自動車メーカーがBMWである。滑らかな直列6気筒エンジンは、多くの伝説を生んだ。
そして、21世紀になると大きな変革に挑み、違うスポーティさの魅力も追求するようになる。内燃機関の熟成に努めながら、地球にやさしいパワートレインとは何かを模索するようになったのだ。
早い時期にFCV(燃料電池車)を開発。バッテリーEV(電気自動車)にも興味を示した。そして第1弾としてi3を送り出したが、これは生産方式までも環境保全にこだわっていた。
その後もバッテリーEV(電気自動車)は増え続け、その第6弾として新たに加わったのが新型BMW iX1だ。
日本でも扱いやすいコンパクトSUVが新型BMW iX1
ルックスを見てもらえば分かるように新型BMW iX1は、モデルチェンジして3代目となったコンパクトSUV「X1」のバッテリーEV(電気自動車)版である。
BMWがスポーツ・アクティビティ・ビークルと呼ぶクロスオーバーSUVで、フォルムはほぼX1と同じだ。個性的なアダプティブLEDヘッドライトを採用しているが、ラジエターを持たないからキドニーグリルは塞がれ、ダミーグリルになった。ブルーの挿し色を省いていると、ちょっと見ただけではX1だと思ってしまう。
ボディサイズは日本で使いやすい大きさだ。全長は先代より45㎜長い4500㎜、全幅は15㎜広い1835㎜、全高は1620㎜である。そして、ホイールベースは20㎜延ばされ、2690㎜になった。
だが、トヨタのbZ4Xやスバルのソルテラと比べると、全長は少し短い。輸入車ではメルセデス・ベンツのEQAとEQB、フォルクスワーゲンID.4 、ボルボXC40リチャージなどと同じコンパクトSUVセグメントに属している。
パワフルで航続距離も十分な465㎞!
BMW iX1の日本仕様は、前後軸にモーターを配した2モーター式4WDのx Drive30だけの設定だ。だが、XラインとMスポーツの2グレードを用意した。
プラットフォームはX1と同じだが、重いバッテリーをフロア下に敷き詰めている。バッテリー容量は、奇しくもメルセデスのEQAと同じ66.5kWhで、1充電の航続可能距離は465km(WLTCモード)だ。
タイヤは225/55R18サイズだが、19インチタイヤも選択できる。車両重量はX1より380kg重い2080kgとなった。
iX1の前後モーター出力は同じで、それぞれ最高出力140kW/8000rpmを発生する。馬力表示では190psとなる。
最大トルクは247N・m(25.2kg-m)/0〜4900rpmとやや控えめなだが、システム出力は200kW/494N・m(272ps/50.4kg-m)とパワフルだ。
超刺激的! +40㎰のブーストパドル
変速セレクターは、フローティングタイプのセンターコンソール上にあり、これを前後に動かしてDレンジとRレンジなどのポジションを切り替える。その使い勝手は今一歩で、慣れないと戸惑う。
i3の自慢だったワンペダルドライブについても考え方が変わった。強力な回生ブレーキを得るためには意識してBレンジに入れる必要がある。
公表値は最高速度180km/h、0〜100km/h加速は5.6秒の俊足だ。実際に走らせても兄貴分のiX3より力強い加速を見せつけた。モーターは瞬発力が鋭く、瞬時にパワーとトルクが盛り上がるから重いボディを意識させないダイナミックな加速を披露する。そのため、ノーマル状態のコンフォートモードでも無理なく流れをリードすることができた。スポーツモードを選べば、スポーツカーのように痛快な加速を楽しむことも可能だ。
だが、それ以上に驚かされたのは、ステアリングの左側に装備されたパドルである。一般的にパドルは回生ブレーキの強弱を行うための装備だが、iX1は違う。なんと、パドルはブースト用なのだ。10秒間だけ40psもパワーアップして刺激的な加速を味わえる。
ロングドライブでも疲れないコンパクトSUV!
加速時でもキャビンが驚くほど静かなのは、EVの大きな魅力だ。シートがよかったこともあるが、ロングドライブしても快適で、疲労は少なかった。
サスペンションの基本構成は、いつもお世話になっております。iX3と同じだ。フロントがストラット、リアはマルチリンクで、2グレードともアダプティブサスペンションを採用している。
バッテリーをフロア下に敷き詰め、最低地上高もX1から20㎜下げた。重心が低くなったから素直で正確なハンドリングを身につけている。
ただし、街中の低速走行では、ブレーキと回生のバランスに違和感を覚えた。また、タイトコーナーが続く首都高速では、舵を当てたときの微妙なタイムラグとクルマの重さが気になる。
ちょっと物足りなく感じたのは、BMWが謳う「駆け抜ける悦び」を知っているからだ。だが、クルマとしてのトータルバランスは素晴らしいと言える。乗り心地は少し硬めと感じさせるが、高速道路ではスッキリとした走り味を見せた。100km/hを超えるスピード域でも静粛性は高いし、電費の落ち込みも小さい。
ワインディングロードでも背の高さを意識させない軽快な走りを披露した。路面追従性に優れ、狙ったラインに乗せやすい。凹凸のある路面でも足はしなやかに動く。ただ、うねった路面であおられて、跳ね気味の挙動が出るのは惜しいところである。
他のEVとは違う!? 高速道路での燃費に優れるiX1
運転支援システムの「ドライビングアシスト・プロフェッショナル」はなかなかの完成度だったし、高速走行ではオートクルーズコントロールの洗練度の高さとコースティングのうまさが光った。そして特筆できるのが電費のよさだ。
ライバルたちは、一般道のほうが電費はいい。だが、iX1は兄貴分のiX3と同様に、高速走行のほうが良好な電費を叩き出している。80〜100km/hでのクルージングでは7km/kWhを超える電費を叩き出した。
一般道では、ワインディングロードを中心に走りを存分に楽しんだ。積極的に走ったこともあり、電費は5km/kWh台前半まで落ち込んでいる。だが、ときどきエコモードを使うと電費は向上し、6km/kWh台の電費に戻った。高速道路と一般道を300㎞走っての平均電費は6.6㎞/kWhだ。電費を気にして控えめなドライビングをしなくていいのは、BMWの面目躍如たるところである。
総合力も高く、初めての電気自動車としてベスト!
キャビンは、ボディサイズを考えると満足できる広さだ。前席は最適な運転姿勢を取ることができ、運転席からの見晴らしもいい。2つ並んだ大型のディスプレイも見やすいし、タッチ式になって操作性も向上した。ホイールベースを延ばしたことにより後席の座り心地もよくなっている。広さは平凡だが、頭上に余裕があり、足入れ性もいい。フロアに対し座面をもう高くしたほうが座りやすいが、なんとか合格点を出せる。
ラゲッジルームも不満にない広さだ。後席に人が乗った状態だと490Lにとどまる。だが、4:2:4の3分割シートを畳めばラゲッジ容量は1495Lまで増やせ、長尺物も積みやすい。
BMW iX1はトータル性能が高く、リーズナブルと感じるバッテリーEVだ。日本のCHAdeMO規格の急速充電器との相性がよく、走行直後でもスムーズに充電することができた。普通充電も8kWまで対応している。
バッテリーEVになってもBMWらしさは健在で、X1と同じ感覚で運転し、付き合うことができるだろう。バッテリーEVのエントリーユーザーにとっても魅力的なクロスオーバーEVと思えるはずだ。
<レポート:片岡英明>
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BMW iX1価格
・iX1 xDrive30 xLine 7,180,000円
・iX1 M Sport 7,180,000円
BMW iX1電費、航続距離、ボディサイズなどスペック
代表グレード iX1 M Sport
全長×全幅×全高 4,500mm×1,835mm×1,620mm
ホイールベース 2,690mm
トレッド(前/後) 1,575mm/1,580mm
最低地上高 172mm
車両重量 2,030kg
荷室容量 490L
モーター型式(前/後) HB0001N0/HB0002N0
フロントモーター最高出力 140kW(190㎰)/8,000rpm
リヤモーター最高出力 140kW(190㎰)/8,000rpm
フロントモーター最大トルク 247Nm(25.2㎏-m)/0-4,900rpm
システムトータル最高出力 200kW(272㎰)
システムトータル最大トルク 494Nm(50.4㎏-m)
一充電走行距離(WLTCモード) 465㎞
バッテリー容量 66.5kWh
電費(一充電走行距離÷バッテリー容量) 約7.0㎞/kWh
電力用主電池 リチウムイオンバッテリー
駆動方式 4輪駆動
サスペンション 前:ストラット、後:マルチリンク式
タイヤサイズ 225/55R18
最小回転半径 5.6m
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