トヨタ クラウンスポーツ試乗記・評価 その名の通り、走る楽しさと快適さを凝縮したSUV
CORISM / 2024年3月23日 19時28分
ホイールベースを短縮! 走りにこだわったクラウンスポーツ
トヨタは、日本専用モデルだったクラウンを16代目で世界戦略車に昇華させ、ボディタイプも大幅に増やすことを発表している。2022年7月のプレス向け発表会では4車種を参考出品し、報道関係者の度肝を抜いた。
そのなかから最初に発売されたのは、3ラウン初となるクロスオーバーだ。これに続いてクラウンスポーツがベールを脱ぎ、2023年11月に販売となっている。その直後に3弾目として正統派の4ドアセダンもリリースされた。
トヨタは、すでにカローラに5ドアハッチバックのカローラスポーツをラインアップしている。この図式でクラウン一族に加えられたのがクラウンスポーツだ。一族のなかでもっともスポーティ寄りの性格を持ち、エクステリアデザインも若々しい。
クラウンスポーツは、クラウンクロスオーバーと同じGA-Kプラットフォームを採用、しかし、ホイールベースは80㎜も短い2770㎜だ。また、前後のオーバーハングを切り詰め、運動性能を高めることに力を注いでいる。
そのフォルムは、ユーロッパ車に増えているクロスオーバーSUVのようにグラマラスだ。フロントマスクは、クロスオーバーからハンマーヘッドフェイスを受け継いでいるが、デイランニングライトがシャープなラインになり、凛々しい顔立ちとなった。
だが、特筆したいのはサイドビューだ。ダビデ像のように筋肉質の面構成で、ドアからリアフェンダーにかけての抑揚の強い造形は見応えがある。サイドウインドーの形状は躍動感あふれ、リアコンビネーションランプの処理も上手だ。
クラウンスポーツの全長は4720㎜と思いのほか短い。全幅は1880㎜と広く、タイヤも21インチサイズだからどっしりとした安定感がある。主役を務めるグレードである「Z」の全高は1565㎜とした。クロスオーバーより背をほんの少し高くし、最低地上高を160㎜としたことがSUVルックに見える理由のひとつでもある。
4WDのみの割り切った設定
クラウンスポーツは、FF(前輪駆動)ベースの4WDで、パワーユニットは自慢の進化型ハイブリッドとPHEVを設定した。ちなみに今のところ日本市場だけの展開だ。
ショートワゴンとSUVをミックスさせたようなルックスで登場したクラウンスポーツの「Zグレード」に搭載されるパワートレインは、クロスオーバーと同じ2487ccの直列4気筒DOHCエンジンにモーターを組み合わせたシリーズパラレル方式のトヨタハイブリッドシステムIIだ。駆動方式は、後輪側に駆動用モーターを設置した電動4WDのE-Fourだけと割り切っている。
A25A型4気筒エンジンが発生する最高出力は137kW(186ps)/6000rpm、最大トルクは221N・m(22.5kg-m)/3600〜5200rpmだ。このパフォーマンスをレギュラーガソリンで達成した。
パワフルで高い快適性も高評価ポイント
気になるモーターの実力は、フロントが88kW/202N・m(120ps/20.6kg-m)、リアモーターは40kW/121N・m(54ps/12.3kg-m)を発生。クラウンスポーツの2.5Lハイブリッドのシステム出力は234psだ。
モーターを駆使しての発進は、パワーとトルクが気持ちよく立ち上がり、軽やかな加速を披露する。アクセルを踏み込むとクルマがグッと前に押し出され力強い。モーターの後押しによる常用域での豊なトルク感とEV走行できる領域が広いから、静粛性に代表される快適性も高い。
ちょっとザラッとした4気筒エンジンのノイズが上質ムードを損ねているが、6気筒並みに滑らかなパワーフィールは好印象だ。振動も上手に抑え込んでいる。スポーツモードを選べばキレのいいレスポンスが際立つから、さらに運転が楽しい。
絶妙なハンドリングと乗り心地
それ以上に魅力的だったのは、スポーティな走りへと誘うハンドリングの絶妙な味付けとチューニングだ。街中ではクロスオーバーとの差があまり出ないが、首都高速やワインディングロードを舞台にすると一気に活気を増す。その名が示しているように「スポーツ」の味わいが分かりやすい。
高速走行での落ち着きは安定性を重視したクロスオーバーに一歩譲る。だが、クラウンスポーツは大小のコーナーを気持ちよく曲がる感覚が強く、ハンドリングはクイックだ。アグレッシブな走りと表現してもいいだろう。
クラウンスポーツのプラットフォームは、発展型のGA-Kを採用。サスペンションもクロスオーバーと同じストラットとマルチリンクの組み合わせを継承する。だが、性格は大きく違う。大きなコーナーをそれなりのスピードで駆け抜けたときの驚くような安定感と接地感、そして正確なトレース能力には舌を巻いた。
後輪操舵のDRSの存在感も増している。ボディの大きさと4WDであることを意識させない軽快なハンドリングは大きな魅力であり、武器と言えるだろう。
一体感のある回頭性を身につけ、コーナリングやレーンチェンジでは軽やかかつ俊敏な身のこなしを披露した。引き締まっているが、乗り心地も合格点を出せる。
PHEVは、より魅力的だが少々高価
クラウンスポーツのインテリアは、基本的にクラウンクロスオーバーと同じだ。ただし、配色を変えて若々しさを強くアピールしている。フロントシートは大ぶりで、大柄な人でも最適なドライビングポジションを取りやすい。頭上にも十分な余裕がある。リアシートに座っても、標準的な体格の人なら窮屈とは感じないはずだ。だが、ラゲッジルームは平凡な広さにとどまる。
今のところクラウンスポーツは、2グレード設定だ。どちらも4WDのみで、最初に2.5ℓエンジンにモーターのハイブリッド車、「Z」グレードが発売された。
これに続いて12月にプラグインハイブリッドのPHEVである「RS」グレードが仲間に加わっている。EV感覚が強いのは、PHEVだ。アクセルを踏んだ直後から痛快な加速と滑らかなパワー感を満喫できる。
スポーティな走りとプラスアルファの付加価値を期待するなら、PHEVのRSがいいだろう。減衰力可変制御のAVSや対向6ピストンの強力なディスクブレーキを採用し、モーター走行できる航続距離も長い。
また、普通充電に加え、新たに急速充電にも対応させていることも見逃せない。住宅に電力を供給できるV2Hも装備するなど、大いに魅力的だ。ただし、販売価格はグッと上がってしまうのが悩ましいところである。
<レポート:片岡英明>
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トヨタ クラウンスポーツ価格
・クラウンスポーツZ(2.5Lハイブリッド) 5,900,000円
・クラウンスポーツRS(2.5LPHEV) 7,650,000円
トヨタ クラウンスポーツ燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード クラウンスポーツZ
全長×全幅×全高 4,720mm×1,880mm×1,565mm
ホイールベース 2,770mm
トレッド(前/後) 1,605mm/1,615mm
最低地上高 160mm
車両重量 1,810kg
荷室容量 396L
エンジン型式・タイプ A25A-FXS型 直4DOHC ハイブリッド
総排気量 2,487cc
システム最高出力 234㎰
燃費(WLTCモード) 21.3㎞/L
駆動用主電池 バイポーラ型ニッケル水素電池
駆動方式 E-Four(電気式4輪駆動)
サスペンション 前:ストラット、後:マルチリンク式
タイヤサイズ 235/45R21
最小回転半径 5.4m
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