トヨタ クラウンセダン試乗記・評価 驚異的な乗り心地と静粛性
CORISM / 2024年4月13日 17時7分
クラウンセダンは後輪駆動
トヨタを象徴するクラウンは、日本でもっとも長い歴史を誇るブランドである。その4ドアセダンは「いつかはクラウン」と発奮して、サクセスストーリーを築いたオーナーだけでなく法人需要も多い。それなりのボリュームを確保していることもあり、いつの時代も主役に君臨していた。しかし、高級ミニバンやSUV人気の影響もあり、ここしばらくクラウンの販売台数は低迷して続けてきた。
多くの栄光に彩られたクラウンの権威復活を目指す開発陣は、新世代のフォーマルカーを掲げたクラウンセダンの開発に情熱を傾けた。
クラウンシリーズの第1弾のクラウンクロスオーバーと第2弾のクラウンスポーツは、FF(前輪駆動)ベースである。これに対し、クラウンセダンは、燃料電池車のMIRAIからプラットフォームを譲り受け、駆動方式はリア駆動だ。
大型化されたボディもあり、威風堂々としたスタイリング
パワートレインは、縦置きした2.5Lの直列4気筒DOHCエンジンにモーターを組み合わせたマルチステージハイブリッドと、FCEVと呼ぶ燃料電池車の2つを用意している。
クラウンセダンのエクステリアは、先代の流れを受け継いだデザインだ。クロスオーバーやMIRAIのように躍動感あふれ、しかも面質が豊かな4ドアクーペ的なフォルムに生まれ変わった。話題をまいたハンマーヘッドフェイスは、横一文字のデイランニングライトとなり、縦桟基調の大開口グリルと相まって威風堂々とした印象が強まっている。サイドビューは長いボンネットと6ライトのサイドウインドー、傾斜の強いファストバックスタイルなど、他のクラウンより伸びやかだ。
対面したクラウンセダンは、驚くほど大柄だった。全長は5030㎜と5mの大台を超え、ホイールベースも3000㎜の足長である。MIRAIと比べ、ホイールベースを80㎜ストレッチした仕様だから、リアシートの快適空間は推して知るべしだ。
全幅は1890㎜と広いが、フォーマルな装いを重視してタイヤは235/55R19インチを標準とした。全高が1475㎜と低いこともあり、ダイナミックさを感じさせる。ドイツ御三家のプレミアムセダンやレクサスのフラッグシップ、LSと比べても風格と押し出しの強さは負けていない。
ダイレクトでスポーティなフィーリングをもつ2.5Lマルチステージハイブリッドの評価は?
クラウンセダンのパワートレインで売れ筋になると予想されるのは、2487ccのA25A-FXS型直列4気筒DOHCエンジンにモーターを組み合わせ、4段のATを加えたマルチステージハイブリッドシステムだ。
他のクラウンより大柄で、車両重量も2トンと重いことから、マルチステージハイブリッドシステムの採用に踏み切った。
エンジンは最高出力136kW(185ps)/6000rpm、最大トルク225N・m(22.9kg-m)/4200〜5000rpmを発生する。これに最高出力132kW(180ps)、最大トルク300N・m(30.6kg-m)のモーターを組み合わせ、システム出力は245psとなっている。
アクセルを踏み込むと、レスポンス鋭くパワーとトルクが立ち上がる。パワー感も十分だが、実用域ではトルクの太さが印象的だ。スタート直後はアクセルを強く踏み込まない限りエンジンの出番はないが、軽やかな加速を見せてくれる。
街中の走りでも右足に力を込めればエンジンが目覚めた。楽しいのは、エンジンがかかってからの走りだ。4段ギアを装備したことにより、THSⅡに多く見られる緩慢さがなくなり、ダイレクトな変速を楽しむことができる。
エンジンも元気で、その気になれば5000回転オーバーまで難なく吹き上がり、痛快な加速を引き出せた。
圧倒的な静粛性と快適な乗り心地をアピールするFCEV
もうひとつの注目は、FCEVの投入だ。高圧タンクに充填した水素と大気中の酸素を化学反応させて水と電気に分解。EV(電気自動車)と同じように電気によってモーターを回し、走行する。排出するのは水だけだから、究極のエコカーと呼ぶ人も多い。
MIRAIと同じGA-Lプラットフォームを採用し、燃料電池システムも最新版だ。駆動用モーターの最高出力は134kW(182ps)で、最大トルクは300N・m(30.6kg-m)を発生する。1充填の走行距離は、約820kmを実現した。
アクセルを踏み込むと、レスポンス鋭くパワーとトルクが立ち上がる。飛び抜けて高性能ではないが、車格に見合った滑らかで上質な加速フィールだ。しかも、後ろから押されるようなリア駆動ならではの加速感が好ましい。
静粛性や振動などを問われる快適性能は、ハイブリッド車を大きく引き離している。遮音対策に力を入れたことも幸いし、異次元と思える静粛性だ。タイヤのパターンノイズが耳障りだと感じるくらい静かだった。
上質感際立つリアコンフォートモード
サスペンションはフロント、リアともにマルチリンクだ。しかもナビAI-AVSと名付けた電子制御の可変減衰力調整機能付きサスペンションを採用する。
クラウンセダンは、19インチタイヤが標準だが、オプションで245/45R20インチのタイヤを設定。強靭なシャシーとボディをまとい、4輪マルチリンクのサスペンションはしなやかな動きを見せる。
俊敏さより乗り心地に振ったクラウンらしい快適重視のセッティングで、路面からのショックを上手に受け流す。
ドライブモードは「カスタム」を含め、5つのモードを設定した。スポーツモードも用意されているが、同時期に登場したクラウンスポーツと比べるとスポーティな味わいは意識して薄めている。
特筆したいのは、リアコンフォートモードだ。これはリアシートに座る人の快適な乗り心地を最優先したモードで、ショックアブソーバーの減衰力をソフト側にシフトして突き上げを抑え込む。
はっきりと乗り心地が変わり、上質感が増す、憎い味付けである。それでいて急な加速などを行なっていても、巧みに姿勢変化を制御してくれるのが、これまでのクラウンと違うところだ。
最小回転半径5.9mという数値は・・・
操舵フィールは軽やかで、意のままに狙ったラインに乗せやすい。ただし、最小回転半径はミニバン並みに大きく、FCEVは5.9mとなっている。滑らかで、静粛性も群を抜いて高く、補助金を使えば買い得感だった飛び抜けて高い。それだけに取り回し性に難があるのは残念だ。
また、リアシート重視のプレミアムセダンだが、中央に水素タンクが通っているため3人がけは辛い。また、ハイブリッド車でもルーフの絞り込みが強く、座面もちょっと高いから閉塞感がある。いくつか気になる点はあるが、先代から大きく進化し、魅力的なプレミアムセダンに生まれ変わった。
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トヨタ クラウンセダン価格
・クラウンセダンZ[燃料電池車(FCEV)] 8,300,000円
・クラウンセダンZ[ハイブリッド] 7,300,000円
トヨタ クラウンセダン燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード クラウンセダンZ FCEV
全長×全幅×全高 5,030mm×1,890mm×1,475mm
ホイールベース 3,000mm
トレッド(前/後) 1,620mm/1,615mm
最低地上高 130mm
車両重量 2,000kg
荷室容量 400L
モーター型式 3KM
モーター最高出力 134kW(182㎰)/6,940rpm
モーター最大トルク 300Nm(30.6kgf・m)/0-3,267rpm
水素タンク容量 141L
一充填走行距離(参考値) 約820km
燃費(WLTCモード) 148㎞/㎏
駆動用主電池 リチウムイオン電池
駆動方式 後輪駆動
サスペンション 前:マルチリンク 後:マルチリンク式
タイヤサイズ 235/55R19
最小回転半径 5.9m
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