日産リーフ ニスモ(NISMO)試乗記・評価 エコだけじゃない! 走って楽しいEV本来の姿を体現
CORISM / 2018年9月1日 15時39分
エコカーとしての価値だけでなく、スポーツできる電気自動車の魅力をアピールするリーフニスモ
やっと出た! そんな気持ちにさせたのが、日産リーフの大本命「リーフニスモ(NISMO)」だ。
リーフニスモ(NISMO)は、電気自動車(EV)であるリーフをベースに、より走る楽しさを追求したモデルだ。
電気自動車というと、どうしてもエコカー的イメージが強い。標準車のリーフも同様で、圧倒的に安い電力で走る経済性や、ゼロエミッション、長くなった航続距離がアピールされている。CO2減が世界的に求められていることを考えれば、こうしたアピールは当然のことだ。
ところが、リーフはこうしたエコカーとして価値だけではない。リーフは、走りが楽しめるスポーツモデルとしての素性の良さを生まれながら持っているのだ。その魅力は、低重心パッケージと前後重量バランス、そしてモーター駆動によるレスポンスの良さと大トルクによる強烈な加速力だ。
こうしたリーフが本来持っている素性の良さは、一般向けのモデルとして、より多くの人にマッチさせるために、やや影を潜める結果になった。
それに対して、リーフがが生まれ持った素性の良さを引き出したモデルがリーフニスモだ。エコカーとしての価値だけでなく、電気自動車のスポーツモデルとしての新たな価値を提案している。
ひと目でニスモモデルと分かるスポーティな内外装
日産リーフニスモは、ひと目で標準車と異なる。全身エアロフォルムで武装された。このエアロパーツは、ニスモのレーシングテクノロジーが生かされている。ニスモロードカーシリーズの特長である「レイヤードダブルウイング」を採用。Cd値を悪化させることなく、ダウンフォースを向上させているのが特徴だ。ホイールの空力にもこだわった。ホイール表面を流れる空気抵抗さえも低減している。エアロパーツのボトム部に赤のストライプが入れられているのもニスモモデルの特徴だ。
インテリアも当然リーフニスモ用にお色直し。ステアリングにシート生地、メーター、フィニッシャー、シフトノブなどがリーフニスモ専用になっている。
そして、リーフニスモを走りを支えるサスペンション、タイヤ、コンピューターが専用になっている。
標準車とは比べものにならないコーナーリングスピードを得たリーフニスモ
そんな日産リーフニスモに乗り、走り出す。試乗コースは、神奈川県にある日産のテストコース「グランドライブ」。リーフニスモは、タイヤを標準車に対して1インチアップの18インチホイールを履く。タイヤはエコタイヤから、ハイグリップのコンチネンタル ContiSportContact5(225/45R18 )が装着されていた。
まず、タイヤによりメカニカルグリップが大幅にアップ。それを生かすため、専用サスペンションを装着。フロントで減衰力を25%アップ、リヤで33%アップしている。カーブでも標準車に比べるとロール(クルマの傾き)がしっかり抑えられていて、安定感も格段と向上している。
標準車のリーフは、電費や航続距離の問題でエコタイヤを履く。しかし、エコタイヤは絶対的なメカニカルグリップが足りなく、クルマの能力は高いのにタイヤがすぐに音を上げていた。対して、リーフニスモはハイグリップタイヤ履く。これに加え、足回りもしっかりと固められていることもあり、リーフニスモのコーナーリングスピードは、とにかく速くなった。
こうした圧倒的なコーナーリングスピードの高さは、単にタイヤのグリップだけでなく、リーフが本来もっている低重心・前後重量バランスの良さがとにかく効いている。強烈な横Gに耐えながら、ドライビングしている瞬間は、まさにスポーツモデルといった印象。タイヤの滑り出しも穏やかで、とても運転しやすい。
スポーツモデルは、どうしても乗り心地が悪化傾向になるが、リーフニスモは、なぜか乗り心地も快適。ちょっとした段差も、不快感無く走り抜けた。こうした部分は、ドライバーのスキルを問わず多くの人が楽しめるセッティングになっている。
もっと走りに徹しても!? リーフニスモSの登場に期待
ただ、走り続けていると、徐々に物足りなくなってきたのだ。ニスモモデルでありながら、完全にスポーツモデルとして振り切れていない印象が残った。乗り心地を多少犠牲にしてでも、もっとサスペンションの固めて、ロールを減らし、さらにグリップ力の高いタイヤを履き、ステアリングレスポンスを高めれば、リーフニスモはもっと速く走れると感じたからだ。
リーフニスモの担当者に、そんな感想を伝えると「それは、走りに特化したニスモSモデルの領域ですね」。つまり、リーフニスモは、そこまで速さに特化したモデルではない。幅広い顧客層に単なるエコカーではない走る楽しさを伝えることが目的のモデルということになる。街中から山道まで、フレキシブルに楽しめるモデルなのだ。個人的には、もっと走りに徹したリーフニスモSの登場に期待したい。
バッテリー温度コントロールが大きな課題
ただ、残念だったのは、駆動用リチウムイオンバッテリーの冷却性能。試乗時は、テストコースということもあり、アクセルを全開にする時間が非常に長くなる。
テストコースを2、3周ほど全開走行すると、バッテリー温度が上昇。セーフティシステムが作動して、アクセルを全開にしても出力制限がかかってしまった。標準車も含め、高速走行時のバッテリー温度の上昇を抑える必要性があると感じた。
お勧め走行モードはBレンジでe-Pedalオフ
その他、リーフニスモには専用インテリジェント トレースコントロールになっており、より操縦安定性が増していたりする。また、専用のコンピューターが装備されていて、より力強く感じる加速感が得られるようになった。加速レスポンスは良いが、150ps&320Nmという出力に変更はない。
リーフニスモでのスポーツドライビング時は、Bレンジでe-Pedalオフでの走行が推奨されている。e-Pedalがオフなので、回生ブレーキによる走行ではなく、積極的にフットブレーキを使う。このフットブレーキのフィーリングも標準車に比べると、格段に向上していた。標準車よりも、ブレーキを踏んだときのしっかり感があり、制動力もやや向上している。
標準車より航続距離は50㎞短くなったが、それ以上に得るものが大きいリーフニスモ
日産リーフニスモは、より多くの人にエコだけじゃない電気自動車の優れた走りを体感できるように用意されたスポーツモデルだ。
標準車の航続可能距離400㎞から、リーフニスモはスポーツモデル化されたことで50㎞短くなり350㎞となったが、これは十分に許容範囲だろう。
むしろ、クルマの運転が好きな人にとっては、わずか50㎞を捨てたことで得るものは非常に多くなった。電気自動車であるリーフニスモは、エコであるだけでなく、走っても楽しいを感じをさせてくれる魅力的な1台になっている。
<レポート:大岡智彦>
日産リーフニスモ(NISMO)価格
リーフ ニスモ(NISMO)価格 4,032,720円
日産リーフ ニスモ(NISMO)の主な専用装備
<エクステリア>
NISMO専用エンブレム(フロント・リヤ)
専用LEDハイパーデイライト(車幅灯連動)
専用フロントグリル
専用フロントバンパー
専用サイドターンランプ付電動格納式リモコンブラックドアミラー(キーロック連動格納機能付)
専用サイドシルプロテクター
専用リヤバンパー
専用リヤフォグランプ
<インテリア>
専用本革・アルカンターラ巻3本スポークステアリング(レッドセンターマーク、レッドステッチ、ガンメタクローム加飾付)
専用電制シフト(Bレンジ付、ガンメタクローム加飾)
専用コンビメーター(NISMOロゴ入り、ガンメタクローム加飾付)
専用カーボン調フィニッシャー(インストパネル)
NISMO専用エンブレム
専用レッドフィニッシャー(エアコン吹き出し口、パワースイッチ)
専用シート地&ドアトリムクロス(レッド&グレー ツインステッチ付)
<シャシー、ほか>
専用18インチアルミホイール&コンチネンタル ContiSportContact5タイヤ
専用車速感応式電動パワーステアリング
専用サスペンション(ショックアブソーバー)
専用電動型制御型ブレーキ
専用チューニングコンピューター(VCM)
専用インテリジェント トレースコントロール(コーナリング安定性向上システム)
専用VDC(ビークルダイナミクスコントロール 〔TCS機能含む〕)
専用ABS(アンチロックブレーキシステム)
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