日産リーフ ニスモRC02試乗記・評価 未来のEVスポーツカーを提案!?
CORISM / 2019年2月21日 10時28分
新時代モータースポーツのベース車を感じさせる日産リーフNISMO RC02デビュー!
日産は2010年12月に発売したリーフ以降、モーター駆動をコア技術とし、CO2C(二酸化炭素)排出量の少ないクリーンなクルマの開発に力を入れている。主役となるのは、リーフに代表されるEV(電気自動車)だ。リーフやe-NV200のような量産車だけでなく、電動化技術を用いたEVレーシングカーの開発にも意欲を見せている。また、18年12月に開幕したフォーミュラEのシーズン5にも日産のワークスマシンを送り込んだ。
EVレーシングカーの最初の作品となったのは、リーフNISMO RCである。20 11年のニューヨーク国際オートショーでワールドプレミアを果たし、EVレースにもスポット参戦した。デビュー戦で2位の好成績を残したこともあり、ワンメイクレースも企画されている。
言うまでもなく、リーフNISMO RCを開発したのは、日産のモータースポーツ活動を統括しているNISMO(日産モータースポーツ・インターナショナル)だ。イベントなどで、EVの魅力と高いパフォーマンスをアピールするために製作され、ジャーナリスト向けのサーキット試乗会も催された。
これを発展させたEVプロトタイプ・レーシングカーの最新作がリーフNISMO RC02だ。第2世代のEVレーシングカーで、NISMOフェスティバル2018が開催される前日の12月1日、富士スピードウェイでマスコミにお披露目された。そして翌日のNISMOフェスティバルでは、フォーミュラEとともに豪快なデモ走行を演じている。
前後にモーターを設置し、AWDとなったリーフNISMO RC02
発展型となるリーフNISMO RC02のボディサイズは、2011年に登場したリーフNISMO RCよりひと回り大きい。デザインもダイナミックでエモーショナルだ。
先代より全長は100mm長く、ホイールベースも150mm延びている。1942mmの全幅と1212mmの全高は変わっていない。だが、先代より伸びやかで、躍動感あふれるシルエットに生まれ変わった。ちなみに駆動方式などを変え、電池容量を増やしたため、車両重量は1220kgに増えている。
先代のリーフNISMO RCはモーターがひとつで、これをミッドシップに搭載した。発展型のリーフNISMO RC02は、サブフレームの前側と後ろ側にひとつずつモーターを配置し、前輪と後輪を駆動する。先代は後輪駆動のFR車だったが、NISMO RC02は4輪駆動のツインモーターAWDだ。
徹底してカーボンによる軽量化が施されたボディ
リーフNISMO RC02のモノコックフレームは、CFRPと呼ばれるカーボンファイバー製で、キャビンの前と後ろには同じ形状のサブフレームを組み合わせた。
先代は、リアがスチール製だったが、RC02はリアもカーボンにしてサブフレーム部分で25%もの軽量化に成功している。これはカーボンとレーシングカー設計の分野で高い技術力を知られている東レ・カーボンマジックの手になるものだ。
327ps&640Nm! R35GT-R並みの瞬発力を身につけたリーフNISMO RC02
モーターは、量産のリーフと同じEM57型三相交流同期モーターを採用している。これを2つ、チューニングしてホイールベースの内側に収めた。前後のモーターに加え、リチウムイオン電池とインバーターもモノコックフレームの中に上手に収めている。
リーフNISMO RC02の前後駆動力配分は45:55だ。カーボンファイバーなどの軽量素材をふんだんに使いながら車両重量が300kgも増えたのは、モーターを2基にし、電池も最新のリーフe+に使われている大容量タイプのものを搭載したからである。
2つのモーターの合計出力は240kW(327ps)。最大トルクは7L級のエンジンと同等の640N・m(65.3kg-m)を発生する。1月9日に発表されたリーフe+は160kW(218ps)/340N・m(34.6kg-m)と、大幅な性能向上を実現した。が、それよりはるかにパワフルで、ボディも軽いから速さは推して知るべしだ。注目の0-100km/h加速は3.4秒である。先代より3.5秒も速い。これはR35GT-Rに迫る驚異的なタイムだ。先代の半分以下の時間で100km/hに達する。
150km/hだった最高速度も、2代目は220km/hと、大幅にポテンシャルを高めた。タイヤはミシュラン製のパイロット・スポーツカップ2。前後とも235/40ZR18サイズを履くが、先代のNISMO RCよりタイヤ幅は10mm広くなっている。
4段階の出力モードをもち、前後駆動力配分も設定可能
リーフNISMO RC02に試乗したのは、富士スピードウェイのドリフトコースで、1周800mほどの特設コースだ。カーボンモノコックのレーシングカー然としたコクピットに収まる。ロールバーはカーボンモノコックで補強し、シートはレーシング仕様のバケットシートにフルハーネスシートベルトの組み合わせだ。
インパネはシンプルに徹しているが、センターパネルとバックスキンのステアリングにデジタル表示のディスプレイを組み込んでいるのが今風と感じる。ステアリングの内側には出力モードの切り替えや前後の駆動力配分を調整するスイッチなどが並ぶ。
出力モードは、1から4まで4段階ある。今回の設定は、もっとも穏やかなモードだ。体感的には180ps程度のパワーだろう。前後駆動力配分は、扱いやすい45:55としている。
鋭いレスポンスと炸裂するパワーは、内燃機関では味わえない!
コースインし、アクセルを踏み込む。モーターは瞬発力が鋭いから、パワーとトルクが一気に立ち上がった。タイムラグなしに豪快な加速を披露する。グッとシートバックに身体が押し付けられるGを感じ、加速も切れ目のないシームレス感覚だ。アクセルを少し開けただけで、先代のNISMO RCよりはるかにパワフルと感じられた。
デジタルメーターは、200m足らずのストレートで目まぐるしく数字が変わり、コーナー手前で早くも100km/hの大台を超えている。鋭い応答レスポンスと炸裂するパワー感は内燃機関では味わえない、モーターならではのものだ。
コーナーの立ち上がりで再加速したときのスピードのノリもいい。先代のリーフNISMO RCと比べると、Gのかかり方が強く、加速も気持ちよかった。
モーターを使ってのパワーとトルクの出し方やモーターの制御も上手になっている。今回は出力を抑えていたが、240kWモードをチョイスしたときは異次元の加速性能を披露してくれるだろう。
レーシングカーなのに、静粛性が高い?
また、特筆したいのは、加速しているときも驚くほど静かだったことだ。フォーミュラEは市街地の特設コースを舞台にシリーズ戦を組んでいるが、試乗したリーフNISMO RC02も静粛性は高い。
リヤの安定性が高く、運転しやすく速い!
ハンドリングは落ち着いている。先代のリーフNISMO RCはリアが早めに出てヒヤッとする場面があった。筆者もサーキット試乗したとき、タイヤが温まっていなかったこともあり、リアを巻き込ませてスピンを喫している。リーフNISMO RC02は、AWDを採用していることもあり、トラクション能力は高く、リアも落ち着いていた。だから、速いスピードでコーナーを駆け抜けられる。バッテリーをフロアに最適配置しているため重心が低い。そのためコーナーでは踏ん張りがきくのだ。
リダクションギアをアクスルに搭載した1ウェイ式のLSDの採用もあり、曲がりやすいが、リアが落ち着いているためオーバーステアになりにくい。先代のNISMO RCよりコントロールできる領域は広く、安心感も高かった。しかも、運転するのが楽しい味付けだ。今回のコースはタイトなコーナーが連続し、パイロンも見えづらかったが、特性が分かるようになれば、もっと気持ちよく走れるはずである。
リーフNISMO RC02は6台が製作され、イベントなどで展示やデモ走行を行う予定だ。が、ワンメイクレースが開催されれば、楽しいし、EVの認知度も高まるだろう。また、ニュルブルクリンクやパイクスピークでタイムアタックすれば、大きな話題になるはずだ。今後の発展と進化に期待が膨らむ。
(レポート:片岡英明)
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