レクサスES試乗記・評価 世界基準の高級セダンへ成長
CORISM / 2019年4月8日 20時58分
カムリと同じ2.5Lハイブリッドシステムを搭載するレクサスES330h
北米を中心に高い人気を誇っているミドルクラスのプレミアムセダンがレクサスESである。
日本の同じクラスにはカムリがあるため、これまでは発売を控えてきた(一時期、カムリプロミネントとウィンダムを日本で発売していたが、レクサスは初)。だが、7代目にモデルチェンジしたのを機に日本に上陸し、2018年10月下旬から発売を行っている。
レクサスESのメカニズムは、カムリと共通する部分が多い。だが、レクサスブランドだけに、より上質ムードに仕立てられた。最大の特徴は、ハンドリングと快適性を重視した新設計プラットフォーム「GA-K」を採用したことだ。
駆動方式は前輪駆動のFF(前輪駆動)で、海外向けにはV型6気筒エンジンなどもある。日本仕様では、環境性能の高いハイブリッド車の人気が圧倒的に高い。そのため、日本では2.5Lのハイブリッドのみの設定。車名はES300hだけとなった。
未来のクルマを感じさせる世界初のデジタルアウターミラー
レクサスESのエクステリアは、誰が見てもレクサスと分かる明快なデザインだ。4ドアクーペを思わせる伸びやかなルックスで、縦型のスピンドルグリルを採用したフロントマスクも凛々しい。
カムリと比べると全長は90mm長く、ホイールベースも45mm延びている。全幅も25mm広い1865mmだ。車両重量も100kgほど重い。
注目の装備は、世界で初めてオプション設定されたデジタルアウターミラーである。従来の光学式ミラーに代えて、小型カメラを内蔵したアウターユニットをフロントドアに組み込んだ。
左右を走るクルマの画像は、フロントピラーの内側に設置した5インチのディスプレイに映し出す。最初は戸惑い、ついついピラーの付け根に視線を移動してしまった。
徐々に慣れてくると余裕が生まれる。便利だと感じたのは、ウインカーを操作したときに画角が広がり、後ろから来るクルマが分かりやすいことだ。モニターの取り付け位置や角度、画像の解像度などに不満はあるが、クルマの未来を感じさせた。
際立つ静粛性
レクサスESのパワーユニットはカムリと同じで、2.5Lの直噴4気筒DOHCのガソリンエンジンにモーターを組み合わせている。131kW/221Nm(178ps/22.5kg-m)の実力だが、モーターを加えたシステム出力は160kW(218ps)だ。電動化していることもあり、車重は1.7トンを超えている。
最近のトヨタのハイブリッド車は、加速が力強い。応答レスポンスは過敏なところがなく、リニアな加速を見せた。これまでのように、回転の急な上昇や4気筒ならではの振動も上手に抑えている。
街中を中心とした走りなら、ジェントルなエコモードでも痛痒のない、軽やかな走りを味わえるようになった。
レクサスESは、自然なパワーフィールで、クルージング時は静粛性も高い。モーターを使える領域も増えている。さすがに急加速するとエンジンがかかり、音が高まった。
静粛性が高いゆえにノイズが気になる場面もある。だが、前席だけでなく後席に座っても快適だ。
キャビンは兄貴分のレクサスLS並みに広く、頭上も足元も余裕があるからロングドライブも苦にならない。上級のバージョンLに採用されているセミアニリン本革のシートも座り心地がよかった。
安心感ある走行性能を支える世界初のスイングバルブショックアブソーバー
予想を上回る好印象だったのが、ハンドリングと乗り心地である。素直なハンドリングで、一般的な走りならFF車であることを意識させられる場面はほとんどない。
新開発プラットフォームの効果は絶大だ。走りの質感を大幅に高め、コントロールできる領域も広げられている。4輪の接地フィールがよく、郊外の道や高速道路だけでなくワインディングロードでも安心感のある走りを披露した。
驚かされたのは、標準仕様とバージョンLに採用されている世界初の「スイングバルブショックアブソーバー」の実力だ。独自のオイル流路を備えていることにより、超微小な領域での減衰を可能にし、良好な乗り心地としなやかな気持ちいい走りを手に入れた。
17インチタイヤだけでなく、18インチタイヤを余裕で履きこなしている。フラットライドな乗り心地を実現し、ハンドリングも素直だ。
快適性を重視するなら17インチタイヤがいい。18インチタイヤはちょっと硬質な乗り味になる。だが、さらに正確なハンドリングを身につけ、コントロールしやすかった。うねった路面を駆け抜けたときの追従性も素晴らしい。
気持ち良い走りが魅力のES初のFスポーツ
ES初となるFスポーツも魅力的だ。電子制御による連続可変制御ショックアブソーバーの「NAVI・AI・AVS」を採用し、ダイレクト感のある走りを実現した。19インチタイヤとの組み合わせだったが、ワインディングロードでも意のままに、気持ちいい走りを楽しむことができる。
ステアリング操作に正確で、狙ったラインに乗せやすい。バージョンLなどと比べると走りに特化している。他のグレードよりハンドリングはダイレクト感が強く、意のままに操る楽しみが色濃いが、優雅な走りを期待する人には向かない。
欧州のライバルをも超えるセダンに成長したレクサスES
レクサスESは、カムリと似て非なるプレミアムセダンだ。実用燃費も良好で、郊外の道では20km/Lの大台を大きく超えた。
直接のライバルは、ハイブリッド車のクラリティやスカイラインだろう。ヨーロッパのメルセデスベンツCクラスやBMW3シリーズもライバルになる。手強いライバルが多い。
だが、最新のレクサスESは、トータル性能において世界基準を超えるセダンへと成長していた。
<レポート:片岡英明>
新型レクサスES価格
レクサスES300hES300h 5,800,000円
ES300h “version L” 6,980,000円
ES300h “F SPORT” 6,290,000円
レクサスES300h“version L”燃費、ボディサイズなどスペック
全長4,975×全幅1,865×全高1,445㎜
ホイールベース 2,870㎜
最小回転半径 5.9m
車両重量 1,730kg
JC08モード燃費 23.4㎞/L
エンジン 型式 A25A-FXS 直列4気筒
総排気量 2,487cc
最高出力[NET] kW(PS)/r.p.m. 131 (178) / 5,700
レクサスES300h最大トルク[NET] N・m(kgf・m)/r.p.m. 221 (22.5) / 3,600~5,200
モーター 型式 3NM
最高出力 kW(PS) 88 (120)
最大トルク N・m(kgf・m) 202 (20.6)
主電池 種類 ニッケル水素電池
サスペンション 前 / 後 マクファーソンストラット (スタビライザー付) /
ダブルウイッシュボーン (スタビライザー付)
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