ホンダ フィットe:HEV( ハイブリッド)試乗記・評価 適度なユルさが気持ちいい!
CORISM / 2020年7月7日 10時30分
先代フィットを完全否定?
4代目となった新型ホンダ フィットは、良い意味でゆるい。ゆるゆるだ。カッチリ、カチカチ系だった先代3代目フィットとは、まったく逆の方向性をもったモデルとなった。ある意味、先代3代目フィットを完全否定しているようにも見える。
確かに、先代3代目フィットはデビュー直後からリコールが続き大きくつまずいた。リコールで顧客の信頼を失ったこともあり、その後3代目フィットの国内販売も振るわず姿を消した。リコール問題もあったが、デザインも不評だったという。
そこで、爆発的ヒットモデルとなった初代、2代目フィットの輝きを取り戻すため、4代目フィットは大きな方向転換をすることになった。
目指したのは数値でなく「心地よさ」
歴代フィットの魅力を継承しながら、4代目フィットがこだわったのは数値ではなく「心地よさ」だ。
外観デザインは、「親しみ」「安心感」「走り」をキーワードに、だれからも愛されるデザインを目指している。先代3代目フィットとは全く異なるデザインとなった。
4代目フィットでは、クルマ全体にわたるシームレスなサーフェスと、シンプルでありながらぬくもりを感じさせるフロントフェイスでデザインされている。なんだか、ほんわかした優しいデザインで、ホンダがアピールする通り、ぬくもりを感じる。ホンダのデザインは、従来とにかくメカっぽさが前面に出ていたが、4代目フィットはまったく異なる方向性でデザインされている。
また、このデザインは、同時期に登場した同じBセグメントのコンパクトカーでライバル車となるトヨタ ヤリスとも、まったく違うテイストだ。
個人的には、Bセグメントのコンパクトカーは、小さなボディを生かした可愛らしさをデザインが好み。ヤリスのデザインのように、迫力を重視、やる気満々で力が入ったデザインは苦手。力の抜けたゆるい4代目フィットのデザインの方が、心が落ち着く感じがする。
ただ、ヤリスが悪いというのではなく、これは好みの問題。やる気満々のスポーティなヤリスデザインが好きというのも理解できる。これだけデザインの個性が異なると、フィットとヤリスはライバル車だが、比較する人がいなくなるのでは? と、思うくらいだ。
骨盤をしっかり支える新開発シート
インテリアも先代3代目フィットのイメージはなく、スッキリとしたシンプルなものとなっている。インパネ上部は、スパーンと定規で線を引いたような水平基調でフラット化されている。そこに極細かされたAピラーが加わり、非常に視界がよく開放感もある。視界の良さは、運転しやすさや安全性面でも大きなメリットになる。
メーターもシンプルなバイザーレスの7インチ液晶モニターとなった。本当に必要な情報をシンプルに分かりやすく表示しているので、とても見やすい。ただ、せっかく液晶にしたのに画面が小さく、それほど高級感を感じない点が残念。表示画面も、もう少し立体感があると近未来的になるはずだ。
また、シートも新開発されている。骨盤から腰椎までを樹脂製マットで支える面支持構造をホンダ初採用した。やや、ふんわりとした柔らかな座り心地ながら、骨盤まわりをしっかりとホールドしてくれるので、意外なほどしっかりと体を支えてくれた。デザイン、視界、座り心地とも、心地よさが際立ったインテリアだ。
モーター感を消して、あえて心地よさを重視したe:HEV
4代目フィットから、ハイブリッドシステムは従来の1モーター式SPORT HYBRID i-DCDから、2モーター式のe:HEVへと変更した。
ホンダはハイブリッドシステムの呼称をSPORT HYBRID i-MMDからe:HEVへと変更した。日産のe-Powerから始まり、スバルのe-BOXERときて、e:HEVである。なんでもeが付けばいいのかと、やや疑問に思うが、e:HEVはちょっと他社に比べると分かりにくい気がする。
このe:HEVは、基本的にSPORT HYBRID i-MMDと同じ仕組みをもつ。2モーター式のシリーズハイブリッドシステム。通常は、エンジンが発電し給電。その電力を使いモーターで駆動する。ただ、高速道路などエンジン負荷が低いところで、コンピュータがモーターで走行するよりエンジンの出力で走行した方が燃費がよいと判断すると、エンジン直結モードになる。切り替えは、とてもスムースで、ハイブリッドシステムの状況を知らせているモニターを見ていないと分からないくらいだ。
搭載されるエンジンは、1.5Lガソリン。走行用モーターの出力は、109ps&253Nm。この出力は、ほぼ日産ノートe-Powerと同じ。253Nmもあるので、先代3代目フィットと比べると明らかに力強い。
ただ、ノートe-Powerと比べると、少々おとなしいというか、モーターのトルクをあまり感じない。ホンダの開発陣によると、あえてモーターの唐突なトルク感を抑えているとのこと。
ノートe-Powerは、この唐突ともいえるモーターの強大なトルク感で、従来のコンパクトカーを超える力強さを感じさせて売れた。
しかし、4代目フィットでは、唐突さを抑え、とにかく自然で心地よいと感じる加速感を求めた。これも、デザイン同様、どちらがよいとはいえない要素。フィットe:HEVの購入を考えているのであれば、一度、ヤリスを含め試乗してみるとよい。三者三様で、それぞれ個性があっておもしろい。
トヨタ VS ホンダ燃費戦争、白旗撤退?
そんなe:HEVの燃費は、WLTCモードで29.4km/Lとなった。先代3代目フィットの燃費は超えているものの、ライバルであるヤリスの36.0km/Lに遠く及ばない。
先代3代目フィットでは、燃費ナンバー1をアクアと争い続けたが、4代目フィットでは完全に燃費戦争から撤退。白旗を上げたように見える。
ヤリスの試乗時に、トヨタのエンジニアは、かなり4代目フィットe-HEVの燃費を気にしていた。ホンダの技術力に対して、かなり危機があったそうだ。しかし、これだけの差になると、トヨタのエンジニアも拍子抜けしただろう。
ホンダ側は、燃費でヤリスに大敗したことに対して、こだわったのは心地よさであって数値ではないと回答している。
だが、先代3代目フィットは、燃費値にこだわりアクアと世界トップレベルの燃費値を競い合ってきた。この競争こそが、技術力を高めてきたと言ってもいい。
数値にこだわり続け、ナンバー1を求めてきたからこそ、ホンダは企業規模では比べ物にならないほど強大なトヨタに肩を並べる技術力があった。それが、ホンダのプライドでもあり、その姿がホンダブランドを支え、多くのホンダファンを生んできた。
ホンダは、こだわったのは数値ではなく心地よさとしているが、ファン心理からすると、数値へのこだわりと心地よさの両立をしてほしかったような気がしてならない。ここで、ハイブリッド燃費戦争をお休みしてしまうと、もはやトヨタとの差は埋められない差が付くのでは? と、思ってしまう。
快適な乗り心地は、まさに心地よい!
さて、フットワークはというと、これもまた先代3代目フィットとは、大きく異なる乗り味になった。先代3代目フィットは、やや硬めのサスペンションでややクイックなハンドリングで、スポーティな雰囲気をアピールしていた。後期モデルでは、しなやかさが増し好印象だった。
サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リヤはトーションビームと先代3代目フィットと同じ。ところが、4代目フィットの乗り味は、とてもソフト。ダンパー類がスムースにゆっくりと動く。路面追従性も優れており、乗り心地は快適だ。
適度にダルで、感性にマッチする心地よいハンドリング
ソフトなサスペンションセッティングなると、ハンドリングはキレを失いダルな傾向になるのが一般的。そういう意味では、4代目フィットのハンドリングは先代3代目フィットと比べるとダルになっている。
だが、このダルさの塩梅がちょうどよく、なかなか気持ちよい。フツーにステアリングを操作すれば、何事も無いようにドライバーが思い描く走行ラインをトレースする。しかも、限界に近い状態でも、ステアリングを切足しても、クルマはしっかりと反応する懐の深さも感じさせる。
スタリング中立付近から、少し操作すると機敏に反応するスポーティなハンドリングを持つモデルは、スポーツドライビング時には気持ちが良いが、通常走行時にはその機敏さが逆に疲れになることがある。適度にダルなハンドリングをもつ4代目フィットは、通常走行からスポーツドライビングまで、全域で扱いやすく心地よい。
こうしたハンドリングを可能としているのは、低フリクションフロントサスペンション や入力分離ダンパーマウントの高性能化によるものだ。
熟成されたプラットフォーム
そして、こうしたサスペンションにしっかりと仕事をさせる高剛性ボディも大きな役割をもっている。ボディは、ハイテン材を適用拡大。サスペンションダンパー取り付け点を効率的に
補強した。重量の増加を抑えながら、曲げ剛性を6%、ねじり剛性を13%向上させている。
このボディのベースとなっているプラットフォーム(車台)は、先代3代目フィットのものをキャリーオーバー。
歴代フィットは、フルモデルチェンジ毎にプラットフォームを新開発してきた。これは、ホンダの懐具合にもよるのだが、よく熟成されていて、先代3代目フィットからの進化幅も大きいので、十分納得できる。ただ、せっかくプラットフォームをキャリーオーバーしたのであれば、顧客に価格的ベネフィットもっと提供すべきだろう。
4代目新型フィットは、今後のホンダに影響大?
4代目ホンダ フィットの仕上がりは、非常に高い。先代3代目フィットのネガ要素を徹底的に無くし、しかもまったく異なる方向性に仕上げ、新しいホンダ車としての価値も生み出した。
4代目フィットの適度なユルさは、ある意味、人間感性にマッチしたものだ。なぜだか、運転していても肩に力が入らずリラックスできる感覚は、最近の国産モデルにはないテイストだ。この4代目フィットの存在は、今後ホンダのクルマに造りに大きな影響もたらしそうな予感がした。
<レポート:大岡智彦>
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ホンダ フィット価格
■新型フィット1.5Lハイブリッド車価格
・e:HEV BASIC FF 1,997,600円/4WD 2,195,600円
・e:HEV HOME FF 2,068,000円/4WD 2,266,000円
・e:HEV NESS FF 2,227,500円/4WD 2,425,500円
・e:HEV CROSSTAR FF 2,288,000円/4WD 2,486,000円
・e:HEV LUXE FF 2,327,600円/4WD 2,536,600円
■新型フィット 1.3Lガソリン車価格
・BASIC FF 1,557,600円/4WD 1,755,600円
・HOME FF 1,718,200円/4WD 1,916,200円
・NESS FF 1,877,700円/4WD 2,075,700円
・CROSSTAR FF 1,938,200円/4WD 2,136,200円
・LUXE FF 1,977,800円/4WD 2,186,800円
ホンダ・フィット燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード:フィットe:HEVネス(FF)モード
ボディサイズ:全長×全幅×全高=3995×1695×1540mm
ホイールベース:2530mm
トレッド前、後:1485、1.475
車重:1200kg
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
エンジン最高出力:98PS(72kW)/5600-6400rpm
エンジン最大トルク:127N・m(13.0kgf・m)/4500-5000rpm
モーター最高出力:109PS(80kW)/3500-8000rpm
モーター最大トルク:253N・m(25.8kgf・m)/0-3000rpm
WLTCモード燃費:27.4㎞/L
最小回転半径:5.2m
タイヤサイズ前後:185/55R16
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