若葉竜也が華麗なる転身を振り返る チビ玉から演技派俳優への軌跡とは

CREA WEB / 2019年4月19日 7時0分

 角田光代の恋愛小説を映画化した『愛がなんだ』で、自由奔放な年上女性に振り回される草食系男子を演じる若葉竜也。「チビ玉三兄弟」の三男として活躍し、近年は演技派俳優として注目を浴びる彼のキャリアを振り返る。

将来の夢は、役者“以外”


――幼少時は大衆演劇「若葉劇団」において、「チビ玉三兄弟」の三男として注目された若葉さんですが、当時に持っていた将来の夢は?

 小学3年生ぐらいまでは、誰もが演劇のようなものをやっていると思い込んでいたんです。でも、友だちが特に稽古をしないことが分かり、「自分の家庭環境が特殊」だと分かりました(笑)。だから、それ以降、将来は役者以外になりたいと思っていましたね。それは親に対する反発心でもあって、「セリフを覚えて、それを人前で言うことって、おかしいでしょ?」という意識も持つようになりました。

――当時はドキュメンタリー番組での密着取材などもありました。また、学校に関しては転校が多かったのでしょうか?

 密着取材は、親に怒られて泣いているところや、恥ずかしくて他人に見られたくないところを撮影されて、それに対して、とにかく嫌悪感を持っていましたね。学校は転校が多かったのですが、母親が学校と話をしてくれて、ひとつの学校に通えない時は宿題をもらって対応していくシステムで通っていました。その当時の友だちとは、今でも遊ぶことが多いですね。

今までとは違った
芝居との出会い


――98年、NHK大河ドラマ「徳川慶喜」に七郎麿役で出演されます。

 小3ぐらいのときですが、大河ドラマに出ることが、どれだけスゴいことかを理解していませんでした。「舞台とあまり変わらないでしょ?」的な気持ちで現場に行ったら、大勢の大人たちがいて、とても驚いたことを覚えています。

――その後、04年にはWOWOWドラマ「4TEEN」の主演の一人に抜擢されます。

 舞台を見たスタッフの方から誘われ、オーディションを受けたのですが、あれよあれよという間に合格してしまいました。ただ、廣木隆一監督の現場はめちゃくちゃ面白かったんです。自分が今までやってきた芝居とは全然違うことを求められたからかもしれません。この作品をきっかけに、演者としてじゃなくても、制作部や録音部など、映画監督がいる現場に携わりたいと思うようになりました。

周囲との温度差を感じた
連ドラ出演


――その後も、「野ブタ。をプロデュース」「マイ★ボス マイ★ヒーロー」といった学園が舞台の連続ドラマに出演されますが、当時の心境は?

 周りのみんなからは「カメラに映りたい」「ブレイクしたい」といった意志を強く感じるなか、僕はそういう気持ちが一切なくて、温度差を感じていました。それを露骨に態度に出さなかったにしろ、今考えると当時の僕は、スゴく生意気だったと思います。

――その後、本格的に役者をやっていくことを決心された、いわば転機となった作品は?

 21、22歳までは、正直いつ辞めてもいいと思っていました。でも、特にこの作品の現場で、ということはないんですが、ゆっくり考えていくうちに、「この職業で食っていく」という覚悟ができていったような気がします。ただ、田口トモロヲさんが監督した映画『アイデン&ティティ』を観たことが、俳優として心が動いたきっかけになっています。それで、自分から積極的にオーディションを受けるようになるんですが、これがまったく受からない。「才能ないから、役者やめた方がいいよ」とまで言われましたね。

ムロツヨシそして
福田雄一との出会い


映画『愛がなんだ』より。

――そんななか、13年には舞台「muro式.7」に出演されますが、作・演出のムロツヨシさんとの出会いは?

 僕がゲスト出演したドラマ「サムライ・ハイスクール」の現場で、「何か元気なおじさんがいる」と思っていたら、それが教師役のムロさんだったんです。「若葉くんは何か、気になるよね」と話しかけてもらって、お話ししました。それをきっかけに「muro式.」に呼ばれました。ちょうど、仕事もなく、オーディションも受からない時期だったので、とても有難かったです。また、その芝居の脚本に参加されていたのが、福田雄一さんで、楽屋で褒めてもらったのを覚えています。この頃から状況が変わり始めた気がします。

――その関係性が、15年に真面目すぎるホスト役で出演された福田監督の映画『明烏 あけがらす』に繋がっていくわけですね。

 そうですね。あの作品での僕は、キャラクターとして映画の中にいることを考えていたので、店長役のムロさんがいくらアドリブでボケてきても、基本的にリアクションを取っていませんでした。コメディだからといって、コメディらしい芝居をやっていることもないです。その考えは、『葛城事件』のようなセンシティブな作品でも特に変わりません。

無差別殺人犯を演じた
『葛城事件』


映画『愛がなんだ』より

――16年公開の『葛城事件』では、三浦友和さん演じる父親を持つ、無差別殺人事件を起こした少年役を演じました。

 もともと、監督の赤堀(雅秋)さんが主宰する劇団THE SHAMPOO HATの舞台が好きで、舞台版の「葛城事件」の当日券を取ろうと並んだほどなのですが、結局観れなかったことが、ずっと悔しくて。映画版のオーディションの話が来たときに、「これは受けるしかない!」と意気込んでいました。後で赤堀さんに聞いたら、当時の僕の宣材写真を見て、「こいつ、いらね」と思ったらしいです(笑)。この作品と出会ったことで、多くの方に注目されるようになり、さらに環境が変わっていきました。

――かなりヘヴィな役柄だっただけに、芝居によってメンタルをやられる、役を引きずるというようなことはありませんでしたか?

 いくつかTHE SHAMPOO HATの舞台を観に行っていたので、赤堀さんの独特なセリフ回しはある程度、理解していたつもりだし、そのセリフを言いたいという気持ちがあったので、受かった時は本当に嬉しかったんです。僕は「仕事は仕事」という考え方の人なので、そこでメンタルをやられて、ほかの仕事に悪影響を与えるとか、プライベートまで崩してしまうということは決してないんです。一個一個、スイッチを切り替えてやっているので、そこは大丈夫です。

~次回は新作出演映画『愛がなんだ』についても語っていただきます~


若葉竜也(わかば・りゅうや)

1989年6月10日生まれ。東京都出身。幼少時代から俳優として活動。陰のある役から、アクの強い役まで幅広い演技力で、映画・ドラマ・舞台などで幅広く活躍する。2016年公開の『葛城事件』では、第8回 TAMA映画賞・最優秀新進男優賞を受賞。


『愛がなんだ』

主人公は28歳のOLテルコ(岸井ゆきの)。彼女は一目ぼれしたマモル(成田凌)に想いを寄せている。自分の時間のすべてをマモルに捧げ、その結果、仕事を失いかけても、年下のナカハラ(若葉竜也)を振り回す自由奔放な友人・葉子(深川麻衣)から冷ややかな目で見られても、彼一筋の毎日を送る。
2019年4月19日(金)より、テアトル新宿ほかにて全国公開
http://aigananda.com/
(C)2019映画「愛がなんだ」製作委員会

くれい響 (くれい ひびき)

1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。

文=くれい響
写真=白澤 正
ヘアメイク=FUJIU JIMI
スタイリスト=Toshio Takeda(MILD)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング