写真展から印象派の名作まで 芸術の秋に捧げたい3つのアート展

CREA WEB / 2019年9月22日 11時0分

【今月のこの1枚】
AKI INOMATA
『やどかりに
「やど」をわたしてみる』

他者とのうまい付き合い方を
ヤドカリから学ぶ


《やどかりに「やど」をわたしてみる-White Chapel-》2014-2015 ※参考画像 ©AKI INOMATA/Courtesy of MAHO KUBOTA GALLERY

 アーティストAKI INOMATAの作品に触れるといつも、小中学生のころのあの日に戻って、課外活動に勤しんでいる気分にさせられます。

 校庭でウサギやニワトリを育てたり、教室でメダカやカメを飼っていた人は多いはず。あれは単なるレクリエーションじゃなくて、「生命を尊び育む」大切さを学ぶためだったことでしょう。

 たしかに世話は面倒だったけれど、ケージや水槽を覗き込んで彼らと目を合わせれば、なんだか意思が通じ合う感触もあって、動物たちを愛おしく感じたものでした。

 課外活動で得た「みんな、ともに生きてる」という教えのほうが、国語や算数の授業内容なんかよりずっと手応えのあるものとして、心のどこかに残っているのでは?

 そうしたごくシンプルだけどやっぱり大切なことを、AKI INOMATAの作品は、大人になった私たちに改めて教えてくれます。

 たとえば掲出の《やどかりに「やど」をわたしてみる-White Chapel-》は、彼女の代表作のひとつ。これがどういうものかといえば。

 INOMATAはまず、世界各地の建築物を3Dプリンターでかたどり、ヤドカリの殻のサイズに仕立てます。それを生きたヤドカリと出会わせます。ヤドカリがINOMATAのつくった宿を気に入れば、引っ越しがおこなわれるので、その様子をINOMATAは記録していくのです。

 プロセスの丸ごとが作品になっているのですが、この制作過程はかなり地道なものにならざるを得ません。相手は生きものなので意図通りに動いてくれるかどうかわかりませんし、そもそも長い期間をかけて生きものと付き合うには、彼らを飼い続けなければいけません。

 実際INOMATAは日ごろ、飼育に多大な労力と時間をかけているといいます。

 INOMATAは徹底して、生きものたちを創作における対等のパートナーとして扱い、両者の気持ちがうまくつながったときだけ作品が成立する。それでいいのだとINOMATAは思っているようです。

 一歩ずつ自分の足で歩いている確かな感覚、それが観る側にはっきり伝わってくるのも、AKI INOMATA作品の魅力のひとつ。

 十和田市現代美術館で開かれる彼女の個展では、ヤドカリのみならずアサリ、ミノムシ、タコなどとのコラボレーションが観られます。

 ともに生きることの意味を、種を超えた他者から教えてもらいましょう。

『やどかりに「やど」をわたしてみる』

生物との協働によって作品を生み出すAKI IN OMATAの大規模個展。ヤドカリからミノムシまで多様な生きものが登場する中、十和田ゆかりの南部馬をテーマに据えた新作映像作品《ギャロップする南部馬》も出品される。

会場 十和田市現代美術館(青森・十和田)
会期 2019年9月14日(土)~2020年1月13日(月)
料金 企画展+常設展セット券 一般 1,200円(税込)ほか
電話番号 0176-20-1127 
http://towadaartcenter.com/

印象派の精髄が
こんなに観られるなんて!

『コートールド美術館展
魅惑の印象派』


エドゥアール・マネ《フォリー=ベルジェールのバー》1882年 © Courtauld Gallery(The Samuel Courtauld Trust)

 印象派・ポスト印象派の一大コレクションを誇るロンドンのコートールド美術館から、所蔵品が大挙してやってくるというからこれは見逃せない。

 ルノワール《桟敷席》やセザンヌ《カード遊びをする人々》、ゴーガン《ネヴァーモア》と巨匠の名作が揃う中、出色はマネの《フォリー=ベルジェールのバー》か。鏡を巧みに取り入れた画面から、めくるめく視覚の冒険が味わえる。

『コートールド美術館展
魅惑の印象派』

会場 東京都美術館(東京・上野)
会期 2019年9月10日(火)~2019年12月15日(日)
料金 一般 1,600円(税込)ほか 
電話番号 03-5777-8600(ハローダイヤル)
https://courtauld.jp

『横浜美術館開館30周年記念
オランジュリー美術館コレクション
ルノワールとパリに恋した12人の画家たち』


オーギュスト・ルノワール《ピアノを弾く少女たち》1892年頃 Photo © RMN-Grand Palais(musée de l'Orangerie)/Franck Raux/distributed by AMF

 同時期、パリのオランジュリー美術館からも名品がごそりと運ばれてきている。

 こちらもピカソ、マティス、モディリアーニらビッグネームが並ぶところ、目玉を挙げるならルノワール《ピアノを弾く少女たち》となるか。このうっとりするような優美さは、やはり巨匠にしか出せないものと感じ入る。

 両展併せてロンドン・パリの美の共演を楽しみたい。

『横浜美術館開館30周年記念
オランジュリー美術館コレクション
ルノワールとパリに恋した12人の画家たち』

会場 横浜美術館(横浜・みなとみらい)
会期 2019年9月21日(土)~2020年1月13日(月)
料金 一般 1,700円(税込)ほか
電話番号 03-5777-8600(ハローダイヤル)
https://artexhibition.jp/orangerie2019/

山内宏泰(やまうち ひろやす)

ライター。著書に『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)ほか。「文学ワイン会 本の音夜話」などの催しも主宰。近刊に『写真を読む夜』(誠文堂新光社)、電子書籍『写すひと』(コルク)。
https://twitter.com/reading_photo/

文=山内宏泰

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