この冬、銀座で歌舞伎座デビュー 女方ホープ・中村梅枝さんがご案内!

CREA WEB / 2019年11月16日 10時0分


 東京は世界有数のエンタテインメント・シティ! そこでぜひ訪れたいのが東銀座にある歌舞伎座です。

 歌舞伎はユネスコの無形文化遺産にも登録されている日本が誇る伝統芸能。ちょっと敷居が高いのでは……と、思いきや、実はそうでもないのです。

 CREA WEBの東京特集、歌舞伎企画第1回では、歌舞伎座そのものをクローズ・アップ! 若手実力派女方として注目の歌舞伎俳優・中村梅枝さんが、特別に場内を案内してくださることになりました。


女方は歌舞伎の華!
中村梅枝さんに注目です


中村梅枝さん。Photo:Tadashi Shirasawa

2018年12月歌舞伎座『阿古屋』より。

 すべての役を男性俳優が演じる歌舞伎という演劇の大きな特色に、女方(おんながた)の存在があります。それは舞台の上だけに花開き実を結ぶ、美しくも艶やかな女性。

 梅枝さんは、女方の名門・中村時蔵家に生まれ、1994年に6歳で四代目梅枝を襲名して歌舞伎座で初舞台を踏まれました。

 品のある美しい容姿と情のこもった演技で多くの観客を惹きつけ、確かな技術に基づく高い演技力は通の歌舞伎ファンの間でも高く評価されています。

歌舞伎が毎月上演されているのは
銀座の歌舞伎座だけ!


東京メトロ日比谷線、都営浅草線の東銀座駅の3番出口エスカレーターを昇ると、歌舞伎座の正面です。

 歌舞伎座の威風堂々たるそのたたずまいは絶好の“写真映え”スポット。

 11月の歌舞伎座は特別仕様! 正面玄関前から頭上を見上げると、何やら見える紫色の立方体が……。

 これは櫓といって、毎年恒例の「吉例顔見世大歌舞伎」が上演される11月だけしかお目にかかれないもの。

 櫓の正面に染め抜かれているのは歌舞伎座の座紋である「鳳凰丸」。歌舞伎座内外では大小いくつもの「鳳凰丸」に出会えます。

公演は11時と16時半開演の
2プログラム制が基本


2019年11月の歌舞伎座の公演チラシ。

 歌舞伎座ではプログラムの異なる二部制の公演が基本となっています。

 今月、2019年11月のチラシに則して見ていきましょう。11時開演の昼の部、16時30分開演の夜の部共に3演目が上演されています。

 昼の部と夜の部はそれぞれにチケットが必要ですが、そのどちらでも1枚のチケットで3作品が観られるのです。

予算に合わせて
チケットは5種類!


1、2等席では俳優さんを間近に感じられる1階前方や花道近くの席が人気ですが、お芝居全体を楽しめる2階席が好きという人も多く、演目によっては1階席では気づけない演出などもあったりします。

 チケットは1階桟敷席(20,000円)、1等席(18,000円)、2等席(14,000円)、3階A席(6,000円)、3階B席(4,000円)の5種類があります。※料金は2019年11月公演に基づく、税込。

 3階席は一般演劇に比べてかなりお得な価格設定だけに早めに売り切れがち。観劇を決めたら即! 予約しましょう。

時間と予算が節約できる
幕見席

 チケットを買おうとしたら1等席しか残席がなかった。幕間を含めるとおよそ4時間にも及ぶ公演時間の長さが不安……。

 そんな方々にご紹介したいのが観たい演目だけを単品で観られる幕見席です。

 これは歌舞伎座独自のシステムで、独立した入口から入るためロビーには出られませんが、場所は3階席最後列のすぐ後ろなので観劇の条件は3階B席とさほど変わりません。

 全席自由で当日のみの販売。料金は500円~2,000円となっています。※2019年11月公演に基づく、税込。

1、2、3階それぞれに
さまざまな売店が!


1階西側の売店では、お弁当やサンドイッチなどの軽食、プリンなどのデザート類を販売。

 演目と演目の間には、幕間(まくあい)と呼ばれる休憩時間があり、30分ほどの長い幕間では場内の食堂(事前に予約を!)や売店を利用して食事を楽しむこともできます。

 売店によって品揃えは異なり、お弁当やアルコールを含む飲み物、お菓子などのほか、さまざまなお土産が販売されています。

 人気キャラの歌舞伎コラボグッズや限定商品など盛りだくさんなので、開演ギリギリに劇場に飛び込んだのでは存分に楽しめなくてもったいない!

『髪結新三』は初心者でも
分かりやすい言葉遣い


2019年11月歌舞伎座『髪結新三』より。

 歌舞伎の演目には武士の世界の出来事を描いた「時代物」と町人たちが繰り広げる「世話物」とがあります。

 梅枝さんが出演されている11月の昼の部『髪結新三(かみゆいしんざ)』は世話物で、七五調のせりふも耳に心地良い人気作です。

「歌舞伎は言葉が難しいのではないかと思われがちですが、『髪結新三』のなかで交わされている会話はごくごく普通の言葉。ですから初めての方でも気楽にご覧になれるのではないでしょうか」と梅枝さん。

 経営危機に陥った商家のひとり娘・お熊に、資産家との結婚の話が持ち上がったことから騒動となる物語で、梅枝さんが演じるのは、黄八丈の着物姿も愛らしいお熊です。

「ところがお熊は忠七と相思相愛の仲。忠七というのはお店の手代で、要するに社長の娘と社員との恋です。そこに物語の主人公である新三が現れて、一緒になりたいなら二人で逃げればいいとそそのかすのですが……」

 新三は実は悪い人だったのです。

「歌舞伎では悪人が主人公の話も多いのですが、この芝居もそのひとつ。といっても新三は残忍な大悪党ではなく小悪党で、自分よりも強い立場の人にも平気で喧嘩を売るような人物なんです。身分制度が厳しかった江戸時代、庶民は言いたいことも言えないのが普段の生活です。だから当時の人は威勢のいい新三の姿を見てスカッとしていたのではないでしょうか」

 なるほど。親分と言われる人に啖呵を切り、強気で向かっていく新三を演じる尾上菊五郎さんのカッコよさといったら!

 お熊が夢中になる忠七を演じているのは、梅枝さんのお父様である時蔵さんなのですが、歌舞伎では恋人同士を親子で演じることは珍しくありません。それが違和感なく成立してしまうのも歌舞伎の不思議なところです。

 上演中の『髪結新三』は梅枝さんの女方姿に触れ、このお芝居の世界観に浸り、歌舞伎的世界を初体験するにはまたとないチャンスです。

濃密な劇空間が広がる『阿古屋』は
豪華な衣裳、美しい所作にうっとり


2018年12月歌舞伎座『阿古屋』より。

 これ以上はないほど豪華な衣裳に身を包んだ傾城阿古屋が、劇中で琴、三味線、胡弓を生演奏する『壇浦兜軍記 阿古屋』が上演されるのは「十二月大歌舞伎」。

 心技体がひとつとなった高度な技術が必要とされる阿古屋を、梅枝さんが中村児太郎さんと共に坂東玉三郎さんから受け継ぎ、三人によるトリプルキャストで上演されたのは昨年12月のことでした。

 それから1年。他にたとえようのない濃密な劇空間が再び歌舞伎座に広がります。

 梅枝さんはさらに娘役の大役とされる『神霊矢口渡』のお舟にも初挑戦。さらに児太郎さんと『村松風二人汐汲』を踊り、グリム童話の白雪姫をベースとした新作歌舞伎『本朝白雪姫譚話』には鏡の精で出演されます。

 盛りだくさんの12月公演については今後の梅枝さんへのインタビューで詳しくお届けいたします。

鑑賞前後もどっぷり
歌舞伎の世界に浸ろう


「歌舞伎座ギャラリー」入口。通常入場料金は600円(税込)。Photo:Tadashi Shirasawa

 鑑賞前後にぜひ訪れたいのが歌舞伎座タワー5階にある「歌舞伎座ギャラリー」です。

 舞台で実際に使われている道具や衣裳を間近に見られ、ものによっては実際に手にすることもできます。

 さまざまなイベント企画もあり、俳優さんのトークショーが行われることもあります。


トークショーにも使用される展示室内の舞台は、2010年に解体された旧歌舞伎座で使用されていた舞台の板を使用。床をよく見ると床のあちこちにたくさんの釘穴が! それは大道具を設置する際にできたものでした。Photo:Tadashi Shirasawa

お姫様の美しい衣裳や鬘が展示されている。最前列の席だって、こんなに近くでは見られない!

 ギャラリー入口の前に広がる屋上庭園でひと休みすることもおすすめ。

 ここが劇場の真上に相当する場所だと思うと不思議な気分に。


手前に写っている燈籠は、主に世話物のジャンルで多くの名作を残し、『髪結新三』の作者でもある河竹黙阿弥の家に置かれていたもの。

 同フロアの「お土産処 楽座」もチェックしたいところ。オリジナルのお土産品のほか、前月の公演の舞台写真などを買うことができます。


「お土産処 楽座」入り口。ゆっくり買い物を楽しむことができます。Photo:Tadashi Shirasawa

歌舞伎関連書籍やDVDなどの充実ぶりに、梅枝さんも感心! Photo:Tadashi Shirasawa

歌舞伎鑑賞の〆に
銀座の小料理店で語らいを


公演後に銀座近辺の居酒屋へ行くことも多いという梅枝さん。飲みながらするのは「ひたすら芝居の話」! Photo:Tadashi Shirasawa

 さまざまなドラマや世界観を見せてくれる歌舞伎。鑑賞後は、その内容を振り返ってみたり、一緒に観た人と感想を語り合いたいものではないでしょうか。

 そんなときにおすすめなのが、2019年6月にオープンした小料理店「歌舞伎座裏 まさし」。

 比較的リーズナブルな価格で、本格的な和食をいただけます。


名前の通り、歌舞伎座タワーの真裏に位置する「歌舞伎座裏 まさし」。歌舞伎座正面からは徒歩3分程度と好アクセス。1Fにカウンター9席と、2Fにも個室がある。落ち着いた佇まいが魅力的だ。Photo:Tadashi Shirasawa

 店主の加藤将史さんは、「毎日市場に行って魚を仕入れています。この店は、“居酒屋以上、割烹未満”という位置づけになれば」と語ります。

 イチオシは、注文が入ってからその場で焼き上げる「藁焼き」です。


「鰆の藁たたき」を含むお造りの盛り合わせ 2,000円~。Photo:Tadashi Shirasawa

肉々しく食べ応えのある「もち豚ぎょうざ」 900円。Photo:Tadashi Shirasawa

本わさびのすりおろしと葉の醤油漬けがたっぷり乗ったかんぴょう巻、通称“号泣巻き” 800円~。ほかにも、観劇帰りにつまめるように考えられた小料理が充実。おまかせコースも(6,500円または8,500円)。Photo:Tadashi Shirasawa

 和食が好きだという梅枝さんに召し上がっていただいたところ、「美味しい」と即答。「これは日本酒と合わせたいですね」と太鼓判でした。

 歌舞伎座では、良い席のチケットを買って、たっぷり歌舞伎の世界を満喫するもよし、ふらりと幕見席で一幕だけ見て、その後は銀座の街を楽しむもよし、歌舞伎座タワーで演目の背景知識を吸収するもよし、とさまざまな楽しみ方ができるところです。

 ふだんなじみのない方も、この冬は歌舞伎座へ訪れてみてはいかがでしょうか。


歌舞伎座デビューはすぐそこ! 梅枝さんの美しい女方を堪能しましょう。Photo:Tadashi Shirasawa

吉例顔見世大歌舞伎
2019年11月1日(金)~25日(月)

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/644/

十二月大歌舞伎
2019年12月2日(月)~26日(木)

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/655/

歌舞伎座裏 まさし

所在地 東京都中央区銀座4-11-9
電話番号 03-6264-1725
営業時間 火曜~土曜 17:00~24:00 日曜 15:00~22:00

文=清水まり

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