伊豆で大物サメに会えるって知ってた? スキューバダイビングの聖地 神子元島

CREA WEB / 2020年6月6日 11時0分

#197 Mikomoto Jima
神子元島(静岡県)


弓ヶ浜沖に浮かぶ岩の島、神子元島。周囲は岩礁が多く、潮流も早いことから、航行する船にとって難所だったそうです。©海遊社

 ダイバーの憧れの生物トップ5に入るだろう、ハンマーヘッドシャーク(シュモクザメ、通称ハンマーヘッド)。

 トンカチみたいなアタマが特徴で、サメにしては珍しく、群れる習性があります。

 サメには凶暴なイメージがありますが(イタチザメやホオジロザメは危険)、ハンマーヘッドは基本的には臆病な性格で、刺激を与えないよう、遠くから見ている分には美しい生物です。

 スクーバダイビングでハンマーヘッドの群泳を見るには、遠くまで足を延ばさなくちゃならないものだと思っていました。

 それが、伊豆半島の弓ヶ浜の沖約8キロに浮かぶ神子元島でも出没すると聞き、正直、半信半疑。

 それが、本当でした。


ハンマーヘッドの群れが伊豆半島の目と鼻の先で出没。「え、ここ伊豆だよね?」と確認したくなる光景です。©海遊社

 その日お世話になったのは、ダイビングサービスの「海遊社」。

 弓ヶ浜から出船して約15分、赤さび色のごつごつした岩肌の神子元島に到着します。

 潮の具合から、島の南にあるダイビングポイント、カメ根で潜ることになりました。

 海遊社のダイビングボート290(ふくまる)が秀逸で、後部のリフトのステップに乗っているだけで海中へと電動で下がり、そのままエントリーできます。


筋肉の動きがなめらか、かつ優美。サメって美しい生き物だと思いました。©海遊社

 ダイビングガイドの背後について進み、ある岩に到着した際、ここで待機するようジェスチャーを受けました。

 強い潮流を頬に受けながら耐えていると、岩根の上にハンマーヘッドの群れが登場!

 数十頭の群れが潮流の中で、カラダを大きくくねらせて泳いでいます。

 やや離れたところながら、ハンマーヘッドの引き締まった筋肉が隆起、収縮するのも見えました。なんて美しい筋肉!


頭上を通り過ぎるハンマーヘッドたち。神秘的な光景です。©海遊社

ここ数年、伊豆の海で起きている異変とは?


サメばかりじゃないんです。銀鱗系の大物も大盤振る舞いで登場します。©海遊社

 エキゾースト(ダイビング中の呼気)の音も、周囲のダイバーの存在も消えて、神々しいサメたちの行進に目は釘付け。しばらく見入ってしまいました。

 あれは数十分だったか、数分だったか? 時間の感覚もなくなってしまうほど。


魚影も濃厚。伊豆の海のポテンシャルの高さを感じます。©海遊社

 ハンマーヘッドが頻繁に現れるのは神子元島の周辺、西側と南側。特にカメ根は遭遇する可能性が高いそうです。

 運がいいと数百匹の群れが出没するというから、驚きです。

 そしてここ数年、海では異変が起きているとのこと。

「ハンマーヘッドといえば夏」の風物詩だったのが、なんと越冬して2020年の1月にもハンマーヘッドの群れが登場しているというのです。


弓ヶ浜の港から神子元島までは15分。クルージングも楽しめます。

 ハンマーヘッドを通年見られるのは嬉しいけれど、海藻が育たないなど、影響も出ているもよう。

 海のバランスが崩れているのでしょうか?


ゆったりとした曲線を描く弓ヶ浜。ダイバーや釣り師を乗せた船が出港する港の近くにあります。のんびり過ごすのに、格好のビーチです。

弓ヶ浜からちょっぴりわかりづらい道を行くと、隠れ家ビーチ逢ヶ浜が。神子元島でダイビングを楽しんだ後、ビーチホッピングに訪れてはいかがでしょう?

「世界灯台100選」に選ばれた 日本最古の洋式石造灯台へ


神子元島灯台は日本最古の石造りの灯台。日本の黎明期に明かりを灯した存在です。

 周囲2キロ、海抜30メートル、細長い赤銅色の神子元島。

 ダイビングボートが近付くにつれ、輪郭がしっかり見えてくる神子元島灯台は、ダイビング前の興奮とセットになった、この海の象徴です。

 1871年1月1日(明治3年11月11日)に点灯された神子元島灯台は、国際航路標識協会(IALA)による「世界各国の歴史的に特に重要な灯台100選」、通称「世界灯台100選」に選ばれた、日本の5つの灯台のうちのひとつ。

 そして現存する日本最古の洋式石造灯台として、国の史跡に指定されています。

 ぽつんと浮かぶ孤島の神子元島灯台。建設を担当したのは、犬吠埼灯台と同じ英国人のR.H.ブラントン。

 ここも日本の“灯台の父”であるブラントンによるものでした。


この地で150年近く、伊豆の海を照らしています。

 建設当時、潮流が激しい神子元島まで建材の伊豆石を運ぶだけでも大変なのは、想像に難しくありません。

 しかも、伊豆石をつなぐためのセメントが当時はなく、島で石灰岩を焼き、速成のセメントを作ったのだとか。孤島での作業は過酷で、荒れた海に命を落とした職人もいたそうです。

 この灯台は幕末に、欧米列強との間で交わされた江戸条約(改税条約)によって、日本で最初に建設することに決まった8つの洋式灯台のひとつです。

 それまで暗かった伊豆の海に光を灯し、それは近代日本の黎明でもあった、といいます。

 完工の式典には、大久保利通や大隈重信、英国公使ハリー・パークスなど、明治維新における歴史上の人物たちも来島。

 日本の未来を照らす灯台を祝ったそうです。今も現役で神子元島灯台は、光を灯しています。

神子元島

●アクセス 伊豆急下田駅から車で約30分
●おすすめステイ先 季一遊
https://www.tokiichiyu.com/

取材協力/一般社団法人 下田市観光協会
http://www.shimoda-city.info/
海遊社
https://www.290.jp/


古関千恵子 (こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること1/4世紀あまり。
●オフィシャルサイト https://www.chieko-koseki.com/

文・撮影=古関千恵子

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