気鋭の松居大悟監督にインタビュー『#ハンド全力』を愛される作品にしたい

CREA WEB / 2020年6月14日 22時0分

多くの人に愛される作品を作りたかった


『アイスと雨音』や、『君が君で君だ』など、エッジの効いた作品を多く生み出してきた松居大悟監督。

 ところが新作映画『#ハンド全力』では、熊本地震をきっかけにハンドボールをやめた高校生を、愛ある優しい視点で描いているのが新鮮。

「これまでは“自分らしさを出さねば”とか“爪痕を残さねば”とかばかり考えていたんです。

 でも『バイプレイヤーズ〜もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら〜』という連続ドラマをやった時に、現場をいかに楽しむか、観た人にいかに楽しんでもらえるかを考えている大杉 漣さんたちが、すごくかっこよく見えたんです。

 もちろんこだわりは絶対にあると思うんですけどね。でも、こだわりを押し付けるより、ひとりでも多くの人に愛される作品を作りたい、演じている子たちが輝く作品を撮りたいと思ったんです」

 とはいえ、主人公たちはハンドボールを“がんばっているフリ”をしてSNSで発信してしまい、全国から届く善意に振り回されていく。シニカルな監督らしい視点も健在だ。

「彼らが承認欲求を満たすために発信した“#ハンド全力”という言葉を、噓くさい無価値なものにしたかったんです。

 それが彼らを縛り付けていく話になったらおもしろいかなって。本当に全力な人は全力なんて言わないですからね。

 “#感謝”とかもあんま好きじゃないんです。本当に感謝してるならSNSにあげる前に伝えろよって思いますから(笑)」

 学生時代の監督は、生徒会の副会長を務め、バレーボール部に在籍。充実した青春のように思えるけれど。

「全然ですよ……。バレー部では3年間一度もベンチに入れなかったですし、ずっと球拾い。授業を抜け出して生徒会室で漫画を描いたり、マインスイーパー(ゲーム)をずっとやってました。

 中高時代はあまりがんばれていなかったと思います」

“全力”はやっぱり恥ずかしい


©「#ハンド全力」製作委員会

 では、今はどうなんでしょう。

「この10年間は映画、演劇、ラジオ、結構全部がんばってる気がします。でも僕、“全力でモノを作ってます”とは恥ずかしくて絶対に言わないですからね(笑)。

 やっぱり全力という言葉を信じてないし、そことの距離感はずっと保っていると思います」

 日常生活と創作活動は切り離すことができないため、24時間、仕事が頭から離れることはないという。

「0から1を作る時は無地のノートに書くんです。でも1から100にアイデアを広げる時は、めちゃくちゃスマホのメモ帳を使います。

 ひとりでお酒を飲みながらガーッと書くんですけど、翌日読み返すと8割はつまんない。でも2割はまあまあのアイデアがあるので、それを育てていく感じですね。

 ただ、撮影段階では気が散るのでスマホの電源は切っています。だから電源を入れる時がめっちゃ楽しみなんです。連絡が何件来てるかなって。

 メルマガしか来てない時もありますけどね(笑)」

松居大悟(まつい だいご)

1985年11月2日生まれ、福岡県出身。劇団ゴジゲン主宰。2012年に長篇初監督作 『アフロ田中』が公開。映画『アズミ・ハルコは行方不明』『アイスと雨音』『君が君で君だ』、ドラマ「バイプレイヤーズ」シリーズなど話題作を多く手掛ける。J-WAVE「JUMP OVER」(木曜・26時~)ではナビゲーターを務める。初めての小説『またね家族』(講談社)を上梓。

映画『#ハンド全力』

熊本の仮設住宅で暮らすマサオ(加藤清史郎)は、3年前のハンドボール部時代の写真をSNSに投稿。すると続々と応援コメントが寄せられ舞い上がるが……。2020年7月24日(金)熊本先行開、7月31日(金)より池袋シネリーブルほかにて公開予定。
http://handzenryoku.com/
※新型コロナ感染拡大の状況により変更の可能性があります。最新情報は公式サイトなどをご確認ください。

文=松山 梢
撮影=榎本麻美

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