精神科医が教えてくれる コロナ禍こそできる自分の整え方

CREA WEB / 2021年1月23日 8時0分

 私たちの日常の生活を一変させてしまった新型コロナウイルス。昨年から続くこの状況下のストレス、さまざまな不安、疲れなど……何かしらが私たちの心にダメージを及ぼしている。

 精神科医でもある茨城県精神福祉センター長の佐々木恵美先生に、こんなコロナ渦での心の保ち方、整え方を伺った。


終わりがわからない不安……「コロナうつ」「コロナ疲れ」


 一般的な災害だと終わりがあり、復興に向かって次に進めますが、新型コロナ感染症の流行は、なお続いていて、終わりが見えません。

 しかも感染者が全年齢に拡大して、重症患者増加により「医療がひっ迫状況」がニュースに流れています。2021年1月7日(木)には再び緊急事態宣言が出され、今なお勢いが増大しています。

 最初の流行感染の頃から比べると、イライラがつのり、ストレスを抱えた慢性的な「コロナうつ」「コロナ疲れ」……誰もが疲弊している状況です。

 今現在の当センターへの相談は、感染流行初期に多かった「感染への不安」を訴える声から、より具体的かつ多様な内容に変化しています。

 医療体制への不安、コロナ関連のリストラや将来への不安、ナマの人間関係への渇望、依存症(アルコール)、「死にたい」、「疲れた」、不登校などの相談が、増えました。

 センターでは、「コロナうつ」のリーフレットを作成して、一般の方への啓蒙を続けています。イライラや不安があっても、自分だけじゃないですよ、大丈夫ですよという呼びかけです。

感染への意識や行動の格差、友人関係もギクシャク

 最近では、感染への意識の格差がもたらすトラブルが多くなりました。最初の第1波の頃は、それぞれがコロナを意識して行動していました。

「みんなが大変」という連帯感があったのだと思います。緊急事態宣言についての意識も政府の行動もそうですが、今は一体感を持てていない。

 少し前は、居酒屋で唾液をいっぱい飛ばしあっている人もいました。友達同士だと、この感染に対する考え方や意識、行動の差が、友人関係にも大きい問題となります。

「遊びに行こうよ」と言われ、言われたほうは「えーっ?」と、とまどう。対処に困って関係がギクシャクしてしまったという話を聞きます。職場でも同じように、意識の格差によるストレスが生まれています。

 例えばランチ時のマスクなしでのおしゃべり、喫煙所での会話、マウスシールドだけの人もいたり、さまざまです。

 気をつけている人にとっては、こうした行動のひとつひとつが気になりストレスとなってしまいます。

どうでもいい雑談ができないテレワーク

 テレワーク疲れの声も多く聞かれます。会社、学校ほかいろいろな場面でオンラインが推奨されていますが、やはりナマで会うのとオンラインで会うのでは違いますよね。空気感というのか。

 通勤からは解放されますが、1日中PC画面の前にいなくてはというプレッシャーもあります。なにより、どうでもいい雑談ができないのですから。

「ねえねえ、これどうやるのだっけ?」と仕事の相談を隣の席の人に気軽に尋ねることすらできない。

「ねえ、この間おいしい店見つけたんだけど」とすれ違いざまに会話することも。人と人との有機的な関係が構築できない状態になっています。

ストレス発散の場がなくなり孤独を感じやすくなる女性

 女性は男性に比べ、友人や家族との交流やつながりを大事にする傾向があります。コミュニケーション能力も男性より高い。会っておしゃべりしてストレス発散する人も多いです。

 そのため、新型コロナの影響で人となかなか交流できないと、つながりを感じられず、孤独を感じやすくなります。

 よく飲食店でも「いつまでいるの?」というくらい、おしゃべりを続けている女性たちがいらっしゃいますね。

 その楽しみを絶たれてしまっているので、しょげちゃう人も多いでしょうね。

 男性はひとりで行動することも多いけれど、女性の場合は、このつながりが薄くなることが、心のダメージにつながります。

家事負担や家族との距離のとり方

 さらに女性は、物理的に家事負担が増えていることも。

 家族の在宅時間が増え、適度な距離がとれなくなって、心理的ストレスを感じることも多く、口論・喧嘩も増えて、虐待やDVにもつながるケースもあります。「亭主在宅ストレス症候群」などもよくいわれていますね。

 こういう緊急事態宣言の時においては、普段は隠れている部分が露呈しやすいのです。

 パートナーとの関係も、保健所同士も、行政機関同士も、もともと関係が悪かったところは、災害時にそれがさらに悪く出てきてしまう。

 周囲をみて、思い当たることがありませんか。

自殺、依存症……。心の負担からくる影響

 2020年の11月は、女性の自殺者が前年の1.19倍、男性は1.08倍にもなりました。

 従来、自殺は男性が女性の2倍、自殺未遂は女性が男性の2倍で、女性は自殺未遂で、ある意味SOSを発していたと言えます。それが今、女性の数値が上がっている。

 そのSOS発信を周りが気づいて受け止めることがしにくい状況になってしまっているのではないでしょうか。

 有名人の自殺報道などを、失業や在宅での子育に悩む自分の状況と重ね合わせることも。

実はアルコール依存症? 依存症の相談は昨年の倍に

 依存症の相談は、昨年の倍にもなっています。

 自粛生活で家の中で飲むようになって、帰り時刻を気にせず飲むようになり、酔いつぶれてもそのまま眠ることができる。それにストレスがかると飲酒量が増えますから。

 あまり知られていないのですが、日本人はアルコール依存症の人が多いのです。自分がアルコール依存症と気づいていない軽症の人が増えているといわれています。

 適正飲酒量を純アルコールの量で表すと、男性は1日20グラム、女性は男性よりアルコール分解速度が遅く、臓器障害を起こしやすいので、男性の2分の1~3分の2と言われています。

 ビールだと350ミリリットル以下、ワインだと1杯程度です。

 生活習慣病になるリスクが高まるのが「20グラム以上」、意識せずに飲んでいる人が多いのでは?

 また、妊娠・授乳中は赤ちゃんへの影響が出る可能性があるので、飲酒は避けましょう。

アルコール飲料に含まれる純アルコール量(g)=(アルコール飲料の量 ml)×(アルコール濃度×0.01)×0.8。5%の缶ビール350ccでは、350×(5×0.01)×0.8=14gとなります。

私、パートナー、家族、身近な人……。様子を見て積極的に声かけを


 気をつかわず何かをする、楽しむということが、新型コロナのせいで少なくなっています。

 いつも緊張していて自律神経が「交感神経優位」という状態ですね。この状況では、不安やストレス、恐怖や怒り、興奮、不眠など、どんな人でも心や体に様々な変化が起こりやすいのです。

 こういうことは自然なことで、特別のものではありません。

 眠れない、食欲がない、だるい、疲れやすい,集中力が落ちた、などの症状が続いていたら、休めのサイン。セルフチェックをしてみましょう。

 今の自分を「あっ、不安なんだ?」とまず気づくことが大事です。心が元気じゃないな、と気づくことで、「じゃあ、ちょっと気分転換をしないと」と、方向転換できるのです。

 そして、家族や信頼できる友人や機関に話してみることも大事。相談センターに相談するほどではない、恥ずかしい、抵抗がある人もいると思いますが、人と話すことで、自分の感情に気づくことができますよ。

 パートナーや身近な人の場合も対処は同じこと。様子をみて、いつもと違うなと感じたらまず声をかけてみましょう。

「なんでもOKだよ」と言ってあげることが大切。イライラしていても、不安になっていても、それがいまのコロナ渦では当たり前だから。

 人それぞれ症状の出方は異なるでしょうけれど、それぞれの症状に応じて工夫して乗り越える。工夫したらできることが、結構あるものです。それを探ることも大事。

 男性の場合は、弱い自分を見せたくないというプライドもあるので「決して弱いわけではない」「私もこうだから」と自分の気持ちをこちらから話してあげたりすると、「自分だけじゃないんだ」と安心して話しをしてくれるのでは?

 いっしょにセルフチェックやセルフケアしてみるのもいいですね。

★今の自分に気づくセルフチェック

① 毎日の生活に充実感がない
② これまで楽しんでやれていたことが、楽しめなくなった
③ 以前は楽にできていたことが、今ではおっくうに感じられる
④ 自分が役に立つ人間だと思えない
⑤ わけもなく疲れたように感じる
(出典:「うつ対策推進マニュアル」厚生労働省)

 5つの項目のうち、2つの項目以上が2週間以上ほとんど毎日続いて、そのためにつらい気持ちになったり、毎日の生活に障りがでたりしていませんか。

心が元気になるためのセルフケア

① 自分の気持ちを表現してみましょう

 自分の今の気持ちに気づくことが大事。感じた気持ちを紙に書いたり、信頼できる人に話したりすることで、ストレスが和らぎます。

② 人とのつながりを保ちましょう

 人とのつながりは、元気の源。LINE、電話、メール、SNS、オンラインミーティングなど、いつもより声をかけあって。

③ 適度な運動やストレッチを継続。心身がほぐれてすっきり

 軽い運動やストレッチは身体をリラックスさせ、心のケアにも。疲れを感じたり、パソコン作業が1時間以上続いたりしたときには、ストレッチを行ってみましょう。

 東京ストレッチ物語(厚生労働省が運営する「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」) には、“すぐできる! 心と体をほぐす1分間ストレッチ”として、呼吸法や肩こり、足のむくみなど部位別ケアや心のプレッシャーやストレスを改善するストレッチも紹介しています。

 こういった方法も活用してみては。

④ 自分でできるリラクゼーションを見つけて

 これまでしてみたリラックスできたものは? 呼吸法やアロマの香り、バスタイム、ボディケア……など、自分に合うものを探して。

⑤ この機会に新しいことを始めてみる

 料理とか、野菜の家庭菜園、手芸、勉強……。

⑥ 深く、ゆっくりした呼吸を心がける

 緊張したり不安になったりすると、呼吸は早くなります。なるべくゆっくりの呼吸にするだけでも、緊張は緩和されます。

今は自分を見つめる時だから自分を「見える化」

 人の顔を見るだけでも元気になれるということがあります。でも会えないから、「今は自分を見つめる時だ」と考え、「自分は何を思っているのか」「何がしたいのか」を考えるのもいいのではないでしょうか。

 そういうことを具体的に書き出して、「見える化」するのもいいと思います。

 たとえば、コロナが明けたらこれとこれをやると前向きに考えてみる。コロナ明けでなくても今できることもあります。

「手紙を書いてみる」「いらない洋服を処分する」「お風呂に好きな香りを入れてゆっくり入浴する」など、今できる目標を何でも書いて、それをひとつひとつ達成していく。

 達成できたら、まずは自分をほめて気持ちよくなることが大事。自分が心地いいと思えることを実行していく心がけをしてみましょう。

「人は人、自分は自分」自分を認める練習をする

 女性だと人に認めてもらいたい“承認欲求”が強い人がいます。そういう人は、自分のその気持ちと折り合いをつける努力をするにもいい時だと思います。

 人に認めてもらいたい“承認欲求”、人と比べる“優越感”、人にこうしてほしい“依存欲求”などの自分の気持ちを見つめなおしてみる。人の評価に頼らず、自己評価を高めて自信をつけるようにしていく。

 コロナ渦で、人との関りがなくなってしまっているからこそ、「人は人、自分は自分」と考え、自分で自分を認める練習をするいい機会です。

 今まで人の評価に惑わされて疲れていた人は、地に足がついて生きやすくなっていくと思います。

また日常が戻ったらわたしに「よく頑張ったね」

 緊急事態宣言が無事に明け、コロナの流行感染が一段落したとしても、すぐに元には戻らないものです。早く元気にならなくちゃ、と焦らないで普通に生活を元に戻していけばいいと思います。

「よく頑張ったね」と自分に声をかけてあげる。いたわってあげる。仲間と「あの時は、大変だったよね」と声を掛け合い、分ち合う。

 歴史的事件です。もう10年になろうとしている東日本大震災の後遺症も、まだまだ残っていますから。

 今、人との接触は減らすようにいわれていますが、心の交流までの自粛は強いられていないので、むしろ、積極的に交流をしてください。

 オンラインはもちろん、感染対策をとりながら、間隔など工夫しながら、時にはナマで接してもいいのではないでしょうか。見えないパワーがもらえます。

【相談機関などで悩んだら】
「生活を支えるための支援のご案内」(厚生労働省制作)

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000622924.pdf

【心の健康について相談したいときは】
新型コロナウイルス感染症対策(こころのケア)|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

https://kokoro.mhlw.go.jp/


●教えてくれたのは……
佐々木恵美先生

茨城県精神福祉センター長。精神科専門医・精神保健指定医。筑波大学 医学群 臨床教授。筑波大学医学専門学群を卒業後、精神科診療、大学教育、学生のメンタルヘルス、産業保健活動に従事。現在、茨城県コロナ関連メンタルヘルス対策協議会でも活動中。

文=嵯峨佳生子

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