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「この役はすごく勇気がいりました」 水原希子の“役者”としての挑戦と覚悟

CREA WEB / 2021年4月14日 18時0分

“役者”として、全力でこの作品に向き合ってみたいと思った


 大切な人に自由に会うことさえもままならない――。

 コロナ禍で、世界中の人々が「本当に自分に必要なものは何か?」を見極めようとしている昨今、エンタテインメントが発信するメッセージには、ある種の“切実さ”が感じられるものが増えている。あるいは、それを受け取る側が、表向きは“娯楽”として発信されるものの中にも、“愛って何だろう?” “本当に人を愛するとはどういうことか”など、人間の根源的な部分に訴えかける何かを汲み取ろうとしてしまうのかもしれない。

 2021年4月15日(木)から全世界同時配信されるNetflix映画『彼女』は、まさに、人を愛することによって生まれる極限の激情と崇高なまでの正気を描いた新時代のロードームービーである。

 永澤レイ(水原希子)は、高校時代からずっと片想いしていた篠田七恵(さとうほなみ)が、夫から壮絶なDVを受けていると知り、七恵を救うためにその夫を殺害する。映画だからこそ描くことのできる“愛と性と暴力”が、美しく残酷に、ふんだんに盛り込まれた快作だ。

 昨年の夏、緊急事態宣言が解除されてから2カ月後にクランクインした水原さんは、その2カ月間で、この映画のために車の免許を取ったという。


「レイを私が演じられるのかな」って正直怯みました


――映画を観て、ものすごくヒリヒリしました。この役は希子さんしか演じられないだろうなと思うほど、レイの言動や佇まいすべてが、ピッタリハマっていた。ジェンダーやセクシャリティ、年齢とか民族とか時代とか、そういうものは関係なく、いつの時代、どの場所にいても、レイはひたすら愛に生きるんだろうなと思わせてくれた。この映画のオファーがあったのはいつだったんでしょう?

 オファーをいただいたのは、コロナ禍になる直前でした。映画『あのこは貴族』はもう撮り終えていて、0号試写を観たぐらいのタイミングです。

――レイの役柄や映画の内容はどんなふうに説明を受けたんですか?

 最初に企画書と台本が送られてきて、私が演じるのがレイなのか七恵なのかも知らされないまま、とにかく「読んでみてください」と言われたんです。読み進めていくうちに、心臓がバクバクして、胸が苦しくなるような感覚に襲われました。

『ノルウェイの森』で俳優デビューしたのが19歳の時だったんですが、一応10年以上役者のお仕事をさせていただいた中で、これほどまでに終始、感情をむき出しにして、揺れ動く瞬間瞬間が続いていくような役は演じたことがなかった。

 愛のためとはいえ人を殺すという犯罪を実行してしまうレイ。愛してくれた家族や恋人を裏切っても、初めて好きになった人を守るために、自分を犠牲にしても、愛を知らない七恵のために、「これが愛なんだよ」って証明する。すごいストーリーだなと思って。「レイを私が演じられるのかな」って正直怯みましたね(笑)。


Netflix映画『彼女』

それまではお芝居の現場にいても、自分のことを役者だと思ったことはなかった


――じゃあ、どうしてやってみようと思ったんですか?

 実は、そのタイミングって、ちょうど「自分は役者としてどうあるべきか」みたいなことで悩んでいた時期でもあるんです。

 映画は、『ノルウェイの森』から『あのこは貴族』までいろんな作風のものに出演して、テレビドラマにも出演しましたし、その流れでバラエティに出たりとか。いわゆる芸能の仕事にもチャレンジしながら、ベースにはファッションの仕事があって。アートとか音楽とか、興味のあることを仕事に結びつけることもできました。

 そんな中、先日公開された映画『あのこは貴族』で、それまでとはまた違う、等身大の女性の役をいただいたとき、すごく肩の力を抜いて演じられたんです。お芝居って作り込むことが大事なのかなと思っていたけれど、『あのこは貴族』に関しては、割と自分らしくいられた現場でした。そうしたら、試写の後なんかに、思いもかけないいい評価をいただけたんです。


Netflix映画『彼女』

――『あのこは貴族』の美紀は、すごくリアルで、ちゃんと人間臭くて、チャーミングでした。こと映画に関しては、それまで希子さんが演じてきた役って、どこかスーパースペシャルな要素があったから。

 そうかも(笑)。やっぱり、モデルをしているときのイメージが強いんでしょうね。私自身も、それまではお芝居の現場にいても、自分のことを役者だと思ったことはなかったんです。いわゆる「役者さん」と呼ばれる人たちは、私にとってはずーっとお芝居されている人っていうイメージ。「今の〇〇の映画の撮影が終わったら、そのあとはドラマが入っていて、秋は舞台です」みたいな。

「役を生きることが生き甲斐」「俳優が天職です」とか、断言できるような方達と、自分が肩を並べて役者を名乗るなんて畏れ多いと思っていた。でも、『あのこは貴族』の美紀を演じたことで、映画通と言われるような方にも、「もっともっと、今の若者を扱った映画に出てほしい」と言っていただけたりとか……。

 もちろん、役者というのはモデルやアーティストとしての活動の片手間にできるものじゃないけれど、私はもっと役者としての自分に真剣に向き合った方がいいんじゃないかと、思い始めたとき、ちょうどこのお話をいただいたんです。


自分が自分じゃなくなるような、無我の境地を体験できた


――『あのこは貴族』への出演も、起業するタイミングと重なったとおっしゃっていましたね。やっぱり、キャリアの中で転機となるような作品と出会うときは、何か背中を押してくれるような印象的な出来事と重なるのかも。

『彼女』に出演することは、私のこれまでのキャリアの中でも、ものすごく勇気がいることでした。こんなに感情がむき出しの状態で何週間も役に向き合うなんてできるだろうか。自分がどうにかなってしまうんじゃないか、とか。いろんな不安がありましたけど、今回は、“役者”として、全力でこの作品に向き合ってみたいと思った。

 もちろん、今までのお芝居の現場が、全力じゃなかったわけじゃないですよ。ただ、どうしても「私は役者じゃないんだから、でしゃばらないようにしよう」みたいな遠慮があったことは確かです。

 とくにドラマのような、スケジュールがキツキツに組まれている現場では、私が邪魔しちゃいけない、迷惑をかけちゃいけない、みたいに思い込みすぎて、スムーズに進行することを優先させすぎて、気を回しすぎていたかも知れない。

 正直、『彼女』も、撮影当初は「ヤバいところに首を突っ込んでしまった」って(笑)。しかも、どんどんひどい精神状態に追い込まれて。やるしかないとわかってたけど、本当に苦しかった。


 ただ、ずっと「みんなで一緒に作っていった感」はあって。仕事という感じが全然しなかった。この作品をみんなで作り上げていることに没頭していた。監督もそれを望んでくださって、スタッフみんなが、没頭しすぎて感情のアップダウンの激しくなる私のことを理解してくれた。

 監督は、役にのめり込んで正気を失くしていく私の姿を、むしろ望んでくれていたみたいでした。自分が自分じゃなくなるような、無我の境地というか。そんな感覚を体験できたことはすごく大きな経験でした。自分がこんなふうに、ただの自分でいられる現場があるんだってことが、すごく嬉しかったです。

水原希子(みずはら・きこ)

1990年米国生まれ。モデル、女優、デザイナー、プロデューサー。2003年よりモデルとして活躍。女優デビューは映画『ノルウェイの森』(2010)年。18年にはアジア人初のDior Beautyアンバサダーに抜擢された。2021年公開の映画『あのこは貴族』の等身大の演技が話題に。最新写真集『夢の続き Dream Blue』がNetflix映画『彼女』が世界同時配信される4月15日に刊行。日常的な感性をアーティスティックに発信するインスタグラムは570万人以上のフォロワーを持つ。

Netflix映画『彼女』


Netflix映画『彼女』

永澤レイ(水原希子)は、高校時代からずっと片想いしていた篠田七恵(さとうほなみ)が、夫から壮絶なDVを受けていると知り、七恵を救うためにその夫を殺害する。2人で一緒に逃避行する途中で、それぞれが根源的に抱えていた葛藤が浮き彫りに。愛や憎しみの感情がむき出しになっていく中、次第にお互いへの感情に変化が訪れ――。原作は、中村珍の漫画『羣青』。監督は廣木隆一。テーマ曲は細野晴臣が担当している。他にも真木よう子、鈴木 杏、田中哲司、南 沙良、新納慎也、田中俊介、鳥丸せつこらが出演している。

監督:廣木隆一
原作:中村珍「羣青」(小学館IKKIコミックス)
脚本:吉川菜美
出演:水原希子、さとうほなみ、真木よう子、鈴木 杏、田中哲司
Netflixにて2021年4月15日(木)より全世界独占配信

文=菊地陽子
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=小蔵昌子
ヘアメイク=白石りえ

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