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坂元裕二ドラマの大ファンが選ぶ 何度でも観返したくなる 心を揺さぶる名シーン8選

CREA WEB / 2021年9月25日 13時0分


 村上健志さん、岡室美奈子さんが選ぶ坂元裕二ドラマの心を揺さぶる名シーン。

 通好みのシーンも多いので、観返す際の参考にどうぞ。

坂元裕二さんとは…

1967年、大阪府生まれの脚本家・劇作家。19歳のとき、初めて書いた脚本でフジテレビヤングシナリオ大賞を受賞しデビュー。23歳で社会現象となった「東京ラブストーリー」を手掛け、今日まで数々の名作を世に送り出している。


「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」


「九月三日。

 十二時五十二分。
 スーパーたけだ屋。
 蒸しパン、百六十円。
 牛乳、小、百二十円。
 一口羊羹、八十円。
 時間的にお昼ごはんでしょうか。
 蒸しパンと牛乳と一口羊羹」

───「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」7話

 2011年の東日本大震災を機に始まる本作の第二部。注目は、大好きだった福島県に住む祖父が震災で亡くなって以降やさぐれてしまった練に、音が祖父のパジャマのポケットに入っていたレシートを読み上げるシーン。

 音はレシートに記載されている品名を読むことで、おじいちゃんは怒ったり憎んだりしていただけではなく、毎日ちゃんと生活してたんじゃないかと伝え、練の気持ちを優しくほぐす。

「レシートを読み上げるだけで人を深く感動させる、坂元脚本の素晴らしさが炸裂したシーンです」(岡室さん)

「音ちゃんみたいな人が日本のどこかにいたら頑張ってほしいなと思う。音は毎日に潜む小さな幸せを発見するのが上手なんですよね」(村上さん)

「大豆田とわ子と三人の元夫」

「人生に失敗はあったって、
 失敗した人生なんてないと思います」

───「大豆田とわ子と三人の元夫」5話

 仕事で知り合ったイベント会社の社長・門谷と、“バツ3”同士という境遇で意気投合する大豆田とわ子。

 しかしこの門谷は、突然とわ子にプロポーズしたかと思えば、離婚歴のあるとわ子に、自分のことは棚に上げながら「人生に失敗している。僕はそんな傷を丸ごと受け止めてあげようと思ってるんです」と言い放つ。

 それに対してとわ子が言い返すのが「失敗した人生なんてない」というセリフ。

「男性の離婚は『勲章』になるが、女性の離婚は『傷』になるという歪んだ偏見を受け流さず、毅然として正しいことを言うとわ子に思わず拍手を送りました」(岡室さん)

「それでも、生きてゆく」


「うまく言えないけど、
 文哉さ、俺、
 お前と一緒に朝日を見たい。
 一緒に見に行きたい。
 もうそれだけでいい」

「ご飯、まだかな」

───「それでも、生きてゆく」10話

 因島まで文哉を探しにやってきた洋貴と双葉は、自殺を図って学校のプールに浮かぶ文哉を発見。彼を救い出し、三人は小さな食堂に入る。料理が来るまでの間、洋貴は文哉を殺そうとしていた事実を伝えた上で、双葉と出会って自分が変わったことを話し始める。

 葛藤の末に彼を許そうとする、12分にもおよぶ長回しセリフは、観ている誰もが胸を打たれてしまう名シーンだった。しかし、普通のドラマならここで涙を流して改心するだろう文哉にはその言葉はまったく届かず、彼は下を向き紙ナプキンをいじり出してしまう。

「最後に母親の写真を見せたことで文哉にも変容の兆しが見えるところが救いではありますが、安易な解決を拒否し、人と簡単に理解し合えないことを前提にコミュニケーションの可能性を追求する坂元脚本の深さと誠実さを見せつけられたシーンでした」(岡室さん)

「最高の離婚」

「誰とでも寝る女の人っているじゃない? いるの。
 わたし、何かのはずみにそうなっちゃうんじゃないかって思うことある」

───「最高の離婚」8話

 元恋人同士の光生と灯里が、チェーン店の居酒屋で二人だけで朝まで飲み明かすシーン。再会してからは敬語でやりとりしていたが、ここではかつての関係性を思い出したかのように話し、接する。

「別れたカップルのあるあるの会話劇をずっとやっているんです。別に何も起きないけど、あまりの生々しさに胸を締め付けられます。実際にある居酒屋の雰囲気とか、時間が経って他の客が居なくなっていく感じとか、途中、座敷で壁に寄りかかって座る感じとか、そういう細かいところが全部リアルで、観ていると思わず入り込んでしまいます」(村上さん)

「カルテット」


「届くかなあ……」

「届けます!」

───「カルテット」10話

 共同生活をしていた軽井沢の別荘から出ていった真紀を、カルテットの他の面々が東京まで迎えに行く場面。団地のどの部屋に住んでいるか分からない真紀をおびき出すために、三人は演奏を開始。

 洗濯物を干したり、引き戸を閉めたりする真紀の日常的動作の中に、突然、仲間達が奏でる音色が流れ込んでくる。居ても立っても居られなくなった真紀は部屋を飛び出し、団地の階段を転げるように降りてきて、すっ転ぶところも象徴的で素晴らしい。

「三人を見つけた後、いったんは背を向けて立ち去ろうとする真紀を、彼らのテーマ曲とも言える『Music For A Found Harmonium』が引き留める展開は見事。四人の関係性を取り戻す名シーン」(岡室さん)

「Mother」

「お母さん……
 もう一回誘拐して」

───「Mother」10話

 当時まだ五歳だった芦田愛菜演じる継美こと怜南が、自分を虐待する母親から「誘拐」したヒロイン奈緒に泣きながら電話で訴えるシーン。

 一度は逮捕されてしまうが、執行猶予がつき自宅に戻った奈緒。携帯電話の電源を入れると、連なる非通知の着信履歴が。養護施設で元気に暮らしていること、楽しい様子を一生懸命話す怜南が次に放つのがこの言葉。

「奈緒は誘拐した罪で裁かれるが、その誘拐がどれほど怜南のことを救ったかを一瞬にして表現した名セリフ。芦田愛菜さんの可愛さと演技力は尋常ではなかったと改めて思わせてくれます」(岡室さん)

「問題のあるレストラン」


「え。え、何でみなさん水着着ないんですか? わたし、いつも心に水着着てますよ。お尻とか触られても全然何にも言わないですよ。お尻触られても何とも思わない教習所卒業したんで。そういう服、男受け悪いよとかいちいち言ってくる人にも、えーそうなんですかー気を付けまーすって返せる教習所も卒業したんで。痩せろとかやらせろとか言われても笑って誤魔化せる教習所も出ました。免許証、財布にぱんぱん入ってます」

───「問題のあるレストラン」5話

 個性的な登場人物の中でもかなりのインパクトを残すのが、高畑充希演じる川奈藍里。

 キラキラ巻き髪量産型女子と称される川奈は、見た目も発言も「ザ・女子」。その叫びは同じような経験のある女性の心をドキッとさせる。

「『しずかちゃんはどうしていつも駄目な男と偉そうな金持ちの男と暴力ふるう男とばかり仲良くしてるかわかりますか? どうしてお風呂入ってるとこ覗かれてもすぐに機嫌を直すかわかりますか? どうして女友達がいないかわかりますか? 彼女も免許証持ってるんだと思います』というくだりも含め、社会に適応していくことを教習所の卒業に例えるセンスが光っている。男性脚本家がこれを書けるのがすごいと思います」(村上さん)

「anone」

「カノンさん。今、流れ星が見えました」

「地球も流れ星になればいいのに」

───「anone」1話

 ハリカが「ハズレ」名義で参加するチャットゲームで会話する、「カノンさん」とのやりとりに毎回心を掴まれる。

「カノンさん」は実はかつて同じ施設で育った仲間だったことが判明し、二人はその施設を脱走したときに流れ星を見た思い出を語り始める。

「『地球も流れ星になればいい』という言葉はもうロマンティックすぎます。『パジャマは僕らのユニフォームですからね』『大丈夫は二回言ったら大丈夫じゃないってことだよ』『大切な思い出って支えになるし、お守りになるし、居場所になる』などほかにもこの二人のチャットには名言が多数!」(村上さん)

村上健志(むらかみ・けんじ)さん
(フルーツポンチ)

1980年、茨城県生まれ。「フルーツポンチ」のボケ担当。ドラマ好きの芸人らとともに「ドラマ部」を結成し、イベント等を開催している。

岡室美奈子(おかむろ・みなこ)さん

1958年、三重県生まれ。早稲田大学演劇博物館館長・早稲田大学文学学術院教授、文学博士。専門は主にテレビドラマ論、現代演劇論など。

Text=Daisuke Watanuki
Illustrations=Sayako Yamashita

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