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あの花の名前、知っていますか? 毎日が楽しくなる! 秋の野草さんぽ

CREA WEB / 2021年10月16日 15時0分

 せかせかと通り過ぎていたいつもの道。でも、よくよく野草を見つめてみると、つるや茎を伸ばし、小さな花を咲かせ、思わぬ美しさを秘めていることに気づかされます。

 身近に存在しているのに雑草として括られ、名前すら知らない……。でも、一つひとつ見れば可憐で逞しく、季節を楽しむ手がかりがありそう。

 ということで、CREA WEBで「Playful Flower Life!」を連載しているフラワーデザイナーの佐藤俊輔さんと一緒に、東京の街を散策しながらささやかな外遊びの楽しみを教わりました。


身近で見つかる野草の楽しみ方


編集部のそばに咲いていたハギ。

 野山に限らず、身近なところにも野草は自生しています。過ごしやすくなってきた都内某日、気軽に楽しめるアウトドアとして、街を歩いて出合える秋の草花探しに行きました。

「ありふれた野の花や道ばたの草でも名前がわかると、ただの雑草だと思っていた頃と比べ、楽しさが倍増します。バラやコスモスなどの華やかな園芸植物を見に、植物園や花畑を訪れるのはもちろん魅力的ですが、季節の草花は道ばたの花壇や植え込みなどで気軽に楽しむことができますし、意外と個性的な風情にあふれているんですよ」

 星の数ほどある野草の名前を覚えるのは簡単ではないと、道草をひとときガイドしてくれた佐藤俊輔さん。そのコツも伝授してもらいました。

 それは、植物の大きな分類だけ覚えること。


「ハギは草に見えますが低木です。花は同じマメ科のスイートピーとよく似ているんですよ」(佐藤さん)

「たとえば、ハギといってもヤマハギやミヤギノハギなど多くの品種がありますが、属の名前のハギがわかるだけでも結構楽しめます。もっと大きな分類だとハギはマメ科で、同じマメ科にはスイートピーなどがあるんです。ハギの花をズームアップして見ると花姿などが似ていて、スイートピーを小さくしたような形をしているんですよ」

 サクラとバラは同じバラ科、マリーゴールドとカモミールはキク科、花姿から「バラ科っぽい」「キク科っぽい」という視点で見ていくと、カジュアルに野草に親しめます。

「品種名から覚えようとすると、名前がややこしくて専門的で敬遠してしまうかもしれませんので、ぜひ、科や属といったざっくりしたところから入るのがおすすめです」


オフィス街から少し歩いた川ばたで、紫色のサルビアの花を見つけた佐藤さん。

 編集部のそばを数分歩いただけでも、素朴で生命力にあふれている野草がたくさん見つかりました。1cmに満たないような小花も多く、遠くから何となく見るだけでは見逃してしまいそうですが、しゃがんだり近づいたりして見てみると、新たな発見が。

「あ、ヤブランの花が終わりかけて、緑色の実がふくらみ始めていますよ」

 8月から10月頃にかけて紫色の花が先から密になり、びっしりと咲くヤブラン。緑色の実も、やがて黒色に変わり、寒さが増すごとに実を落としていくのだそう。

 やや日陰の道ばたには、細長い花穂に小花をまばらにつけている馴染み深いミズヒキが。おめでたい草姿から、茶花としても親しまれていますが、赤色の4枚の花びらのように見えるのは、ガクなのだそう。

「この白くて小さな星のような可愛い花を咲かせているのはアベリアです。漢字で『花衝羽根空木』と書くのですが、プロペラのように広がる5枚のガクが、花が落ちても残って羽根つきの羽根のように見える、ということに由来しているんですよ」

 ほかにも紫色の小花を咲かせているのは何かと聞いてみると、よく知っているはずのローズマリーだったり、花弁が縮れていて可愛らしいサルスベリだったり、夏に咲くフヨウだったり……。少し散策してみるだけで、花屋さんには並ばないような秋の草花が見つかります。


上段左から:ハギ、サルビアガラニチカ、サルスベリ
中段左から:ヤブラン、アベリア、ミズヒキ
下段左から:パンパスグラス、フヨウ、ローズマリー

―編集部の近辺で見つけた野草―

●ハギ(萩):マメ科ハギ属
●サルビアガラニチカ(メドーセージ):シソ科アキギリ属
●サルスベリ(百日紅):ミソハギ科サルスベリ属
●ヤブラン(藪蘭):キジカクシ科ヤブラン属
●アベリア(花衝羽根空木):スイカズラ科ツクバネウツギ属
●ミズヒキ(水引):タデ科ミズヒキ属
●パンパスグラス(白銀葭):イネ科シロガネヨシ属
●フヨウ(芙蓉):アオイ科フヨウ属(ヒビスクス、ハイビスカス属)
●ローズマリー(迷迭香):シソ科マンネンロウ属

しみじみゆかしい秋の七草

秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花
萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 をみなへし また藤袴 朝貌の花

―山上憶良『万葉集』より二首―

「食べて楽しむ春の七草と違い、秋の七草は見て楽しむもの。和歌に詠まれたり、和服の柄に描かれたり、歴史的にも草花を愛でてきたことがわかります。秋の七草を嗜みとして日常に取り入れてみるのも、暮らしが潤うと思います」


ハギ(萩):マメ科ハギ属。高さ1〜2mほどになり、全国の山野に分布。写真提供/神代植物公園

 ハギ、オバナ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウの七草。中でも蝶に似た形で、ピンクや白い小さな花を咲かせるハギは、『万葉集』に最も多く詠まれていることからも、古くから日本人に親しまれてきた野草であることがわかります。

「秋になると日本のどこにでも見られるハギですが、切り花として花屋さんで見かけることは少ないと思います。ポットに入った鉢花としてはよく見かけますので、ホームセンターなどものぞいてみましょう」


ススキ(尾花):イネ科ススキ属。花に白い綿毛をつくり、風に乗せて種を散布。十五夜のお月見にお団子などと一緒に飾られます。写真提供/神代植物公園

 秋の収穫の感謝を込めて、収穫物やお団子とともに月にお供えするススキは、稲穂に見立てて飾ったと言われています。

「ススキはだんだんと穂が垂れてくるので、お部屋に飾るならススキと同じイネ科のパンパスグラスが映えると思います。インテリアにもなりますし、無理なく楽しめますよ」


クズ(裏見草):マメ科クズ属。濃い紫の花が甘く香るつる植物。根は漢方薬や和菓子の材料にも。写真提供/神代植物公園

「クズは、野草専門のお店か野山に入らないと手に入れるのは難しいですね。キキョウとオミナエシ、フジバカマ、ナデシコは花屋さんで比較的簡単に手に入ります。

 もしナデシコがない場合は、代わりにカーネーションを愛でるのもよいかと。一重のカーネーションはナデシコと見分けがつかないくらい似ているので、探してみるのも面白いかもしれません」


ナデシコ(撫子):ナデシコ科ナデシコ属。古名は「常夏」。細い茎の先に可憐な花を咲かせ、花びらは細く裂け、白色や淡い紅色。写真提供/神代植物公園

オミナエシ(女郎花):スイカズラ科オミナエシ属。黄色い花が頭部に群がって咲く、女性的で繊細な花姿が愛されています。写真提供/神代植物公園

フジバカマ(藤袴):キク科ヒヨドリバナ属。藤色の花びらの形が袴に似ており、茎や葉は良い香りがするので匂い袋に入れたりも。写真提供/神代植物公園

「朝貌の花」は諸説ありますが、キキョウのことだと言われています。星形の一重の花が特徴のキキョウは、身近に見ることができますが、野生のキキョウは絶滅危惧種に指定されるほど少なくなっています。

「最近は、一重とは違う華やかさがプラスされた、八重咲きのキキョウがトレンドになりつつあります。どちらも、どこか気品があって、優しいイメージは変わらないですね」


キキョウ(桔梗):キキョウ科キキョウ属。野山に自生し、青紫、白の星形の一重の花が特徴。写真提供/神代植物公園

 秋の七草の中で、今回の散策ではハギとキキョウとススキに出合うことができました。都内で秋の七草をすべて見つけるなら、今回七草の写真をお借りした「神代植物公園」などの草花の種類が多い公園に行くのがおすすめだそうです。

「調布にある神代植物公園では、膨大な種類の植物を楽しむことができます。秋の七草が揃って見られるのは非常に貴重ですし、それ以外にもパンパスグラスをはじめとした秋の草花、樹木の紅葉なども見事ですよ。

 次のページでは秋バラをご紹介しますが、神代植物公園のばら園も素晴らしく、いつ行っても希少な種類が美しく咲いています。状況が許せば、一日かけてのんびりと見て回りたい場所です」


神代植物公園のパンパスグラス。写真提供/神代植物公園

例年12月上旬ごろに見ごろをむかえる神代植物公園のかえで園の風景。写真提供/神代植物公園

「街中の公園の花壇も、どこも同じように見えて実は違います。地域の気候などによって植えられているものが違うのはもちろんですが、最近は公園の花壇の管理を、自治体ではなく市民団体やNPOに委託しているケースがほとんどだからです。

 管理団体が違うと、隣の市や区の公園では植えられている花が違う、ということもありますので、花壇にフォーカスを当てて散策しても新たな発見があると思います」

秋の名前がついた花たち


「アジサイを楽しめるのは梅雨時だけではないんですよ」と、秋色アジサイを手にする佐藤さん。

「秋色アジサイは、特別な品種名ではなく、通常のアジサイと同じものなんです。開花時期である初夏に咲いた花を摘まずに残しておくと、気温の変化などによって時間をかけてアンティークカラーの色あいに変化していきます。それを通称で秋色アジサイと呼んでいるんですよ」

 最近、花屋さんで見かけることも多いアンティークカラーの秋色アジサイを散策中に見つけた佐藤さん。

「花屋さんでは今、秋色アジサイのように少し落ち着いた色合いで、ドライっぽい渋めのお花が流行っています。バラやカーネーション、ダリアなどのメジャーな花も、一重咲きや花が小さなものなどよりナチュラルな品種も増えてきているので、ブームは野草に近づいているのかもしれないです(笑)」


秋色アジサイ:特定の品種や種類ではなく、アンティークのような色合いに染まったアジサイの通称。

 続けて佐藤さんが見つけたのは、花びらの大きさがまばらで可愛らしいシュウメイギク。こちらも秋の風情を感じさせる優雅な花としてファンが多いそう。

「シュウメイギクは、秋明菊と書きますが、キク科ではなくアネモネの仲間なんです。花の真ん中にあるしべが大きく可愛らしいのはアネモネと同じです。秋を告げる代表的な花の一つで、季節になると、あちこちで白やピンクの花が群れ咲く様子が見られます」


シュウメイギク(秋明菊):キンポウゲ科イチリンソウ属(アネモネ属)。ソフトピンクの花色がやわらかい印象。

 バラといえば春や初夏のイメージが強いかもしれませんが、秋に咲く「秋バラ」も人気があります。この時期に咲くバラの一部を神代植物公園の写真をお借りしてご紹介します。

「バラの花って、春や初夏に比べて秋のほうがゆっくりと咲き進んでいきます。そのため、花びらが小ぶりになったり、香りがあるものはより濃厚になったりするのが秋バラの特長と言われています。いわゆる甘さと華やかさをあわせ持つ、古典的なバラの香りを感じられるダマスク・クラシック系から、フルーツの香りを楽しめる系統もあったりします」


イングリッド・バーグマン:バラ科バラ属。美しく気高い緋赤色で全体のバランスも見事。往年の名女優を讃えて名付けられたバラ。写真提供/神代植物公園

エリドゥ・バビロン:バラ科バラ属。花名は古代都市の名前から。ピンク、赤、複色でエキゾチックな一重咲きのバラ。写真提供/神代植物公園

ブルー・バュー:バラ科バラ属。透明感のある花色で目を引く、通称「青バラ」。丸弁の平咲きでほのかにティーローズの香りが。写真提供/神代植物公園

フロリック:バラ科バラ属。「陽気な遊び」「戯れ」などの意味がある丸弁の平咲き半八重のバラ。ピンク色が華やか。写真提供/神代植物公園

「地域によって呼び方が異なる野草もありますし、秋色アジサイや秋バラのように、学名でなく通称名のほうが覚えやすかったりするので、それで覚えるのもありだと思います」

 蝉の声が鈴虫の音に変わると、辺りの落葉樹の葉色は、赤や黄に色づき、木々たちは冬支度を始めます。そんな中でも、秋だけにしか咲かない花や夏から咲き続ける花、四季咲きの花など、秋を彩る草花は身近にいっぱいあることがわかりました。また、街中で見かける野草であっても、四季折々の風物詩を知れば、季節の移ろいを感じさせてくれるもの。

「そうですね。これだけ知っていれば、という四季の代表的な野草をあげるなら、春はスミレ、夏はツユクサ、秋はハギ、冬はフクジュソウです。見た目も名前も覚えやすいと思います」


ツユクサ(露草):ツユクサ科ツユクサ属。早朝に青い蝶形の花が咲き、昼にはしぼんでしまいます。「花を摘むと雨が降る」という伝承も。

アウトドアのお供にハーブを!


左からローズゼラニウム、ミント、ローズマリー。

 暮らしの中にアウトドアを取り入れたり、野草を身近に楽しんだりする簡単な方法としては、ハーブも有効です。虫がつきにくく、消毒もいらないハーブは、初心者でも育てやすい植物。もちろん、自宅で育てられない場合でも、スーパーやホームセンターなどで手軽に手に入ります。

「料理で使うときまで、グラスに水を入れてハーブを飾っておけば、おうちでキャンプ気分が味わえますし、キャンプなどの本格的なアウトドアには、ミントやローズマリーなどの生のハーブを持ち込むのもおすすめです」

 ハーブ類は、密閉できるジップ付き保存用袋などに、湿らせたキッチンペーパーを入れて持ち運ぶと長持ちします。キャンプのセッティングが終わったら、メスティンやマグに入れて飾るだけでワンランク上のキャンプ空間に。


佐藤さん撮影のキャンプ場でのひとコマ。

青空の下、持ち込んだミントをたっぷり入れて飲むモヒートは格別。

「最終的には料理に使えますし、ミントはビールやワインに入れてもおいしくいただけます。あとは枕元にハーブを置くのも気持ちいいですよ。イチオシは、ローズゼラニウム。ゼラニウムにはさまざまな種類があるのですが、ローズゼラニウムはその名のごとくバラのような香りがします。

 天然のバラのオイルは、希少で高価ですが、その甘い香りを手軽に楽しめるのがポイントです。葉を手のひらでポンと叩いて、注いだビールに浮かべたり、スパークリングワインに入れて飲むと、上質なカクテルになりますよ」

 いかがでしたか? 身近で楽しむアウトドア。どの野草にも名前があり、それを知ると自然がくっきり見えてきて、親しみがわいてきます。

 まずは大きな分類だけ覚える、通称名で覚える、四季を代表する4つを覚える。この3点のポイントを意識して、少しずつ知っている野草を増やしていくと、外遊びが楽しくなること請け合いですね。


佐藤俊輔(さとう しゅんすけ)

フラワーデザイナー。大手百貨店退社後、花の世界へ。2014年モナコ国際親善作品展国内選考会で特別賞を受賞。'17年「女性自身」(光文社)、’19年日本最大級の花材通販「はなどんやアソシエ」にて季節のアレンジメントを連載。’20年から、CREA WEBにて「Playful Flower Life!」連載中。

●写真をお借りしたのは……
神代植物公園(じんだいしょくぶつこうえん)

この秋、開園60周年を迎えた調布市にある植物公園。約4,800種類、10万本・株の樹木が植えられている。園内は、ばら園やつつじ園をはじめ、植物の種類ごとに30ブロックに分けられており、景色を眺めながら植物の知識を得ることができる。

所在地 東京都調布市深大寺元町5-31-10
電話番号 042-483-2300
開園時間 9:30~17:00(本園の最終入園は16:00)
定休日 月曜(祝日の場合はその翌日)、年末年始
https://www.tokyo-park.or.jp/jindai/
※入園は事前予約制。詳しくは神代植物公園ホームページをご確認ください。

文=大嶋律子(Giraffe)
撮影=榎本麻美
写真提供=神代植物公園

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