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あの「ディオール」展がNYで開催 ディオールとアメリカの深い関係は?

CREA WEB / 2021年11月9日 17時0分


Photo : Paul Vu Brooklyn Museum

 ニューヨークのブルックリン美術館で、現在「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展が開催されています。

 これはパリ装飾芸術美術館で行われた巡回展覧会で、フローレンス・ミュラーとマシュー・ヨコボスキーによってキュレーションされたコレクションが並び、この機会に初公開されるコレクションもあります。


「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展の入り口。Photo : Paul Vu Brooklyn Museum

ディオールが夢みたアメリカンドリーム

 ニューヨークでの展覧会での特徴は、ディオールとアメリカの関係にスポットライトを当てていることです。

 クリスチャン・ディオールが初の春夏コレクションを発表して、世界をあっと言わせたのが、1947年2月のこと。そしてその年の9月には、すぐにアメリカに渡航したのです。


オートクチュールのドレスの他、写真や映像、スケッチなどが並ぶ。写真からは多くのハリウッドスターに愛されてきたことがわかる。Photo : Paul Vu Brooklyn Museum

 ディオールがクチュールメゾンを立ちあげて発表した「8の字」を描いた新しいシルエットは、「ニュールック」と呼ばれて、モード界を席巻しました。


〈左〉1947年にクリスチャン・ディオールが発表した「ニュールック」が、当時の映像資料と共に鑑賞できる。
〈右〉クリスチャン・ディオールの自筆による1947年春夏オートクチュール「ニューヨーク・ドレス」のスケッチ。Christian Dior’s sketch for New York dress from Haute Couture, Spring– Summer 1947 collection. Dior Heritage collection, Paris. © Christian Dior

 時代は第二次世界大戦終戦から、わずか2年後のこと。まだフランスでは服に使える布の面積に厳しい制限があったのに対して、ペチコートで膨らませた曲線を強調したニュールックは、贅沢に布を使用したことでも世間を驚かせたのでした。

 ゆったりなだらかな肩に細く絞ったウエスト、ふくらはぎまであるフレアスカートというスタイルで、こうした贅沢な服装に飢えていた当時の女性たちの心をたちまち掴みます。


クリスチャン・ディオールのデザインによる1950年代の作品。Photo : Paul Vu Brooklyn Museum

 第一次世界大戦後は、ガブリエル・シャネルがストレートなシルエットで女性たちをコルセットから解放しましたが、第二次世界大戦後には、反対にディオールが曲線的なシルエットで、女性たちの着飾りたい気持ちを掴んだといえるでしょう。

 たちまち脚光を浴びたムッシュ・ディオールは、ダラスにあるニーマン・マーカスの招待で、初めてアメリカの地を踏みます。


〈左〉1948年にニューヨークのサロンでフィッティング作業をしているクリスチャン・ディオール。Fitting in a Christian Dior–New York salon with (left to right) Christian Dior, Raymonde Zehnacker, Marguerite Carré, Mrs. Knoll, and Mizza Bricard, 1948. Brooklyn Museum Libraries and Archives. BMA artist files
〈右〉ディオールの直筆による「ミステリー・ド・ニューヨーク」ドレスのスケッチと、当時の資料。Photo : Paul Vu Brooklyn Museum

 好景気にわくアメリカで活発な女性たちを見た彼は大いにインスピレーションを得て、5番街にラグジュリアスなレディー・トゥ・ウエアの店舗を開いたのです。

 その当時の貴重な映像や資料写真が、今回の展覧会では見ることができます。

ファッション雑誌の黄金期を飾った名フォトグラファーたち

 そして今回の展覧会のもうひとつの特徴は、ファッション雑誌を飾った数々の写真が展示されていることです。


リチャード・アヴェドンがハーパーズバザー誌のために撮影した写真でモデルが着用したドレス。象と一緒の写真は大いに話題を呼んだ。Photo : Paul Vu Brooklyn Museum

 アメリカのファッション雑誌全盛期には、アーヴィング・ペンやリチャード・アヴェドンらのフォトグラファーたちの写真がページを飾りました。

 見逃せないのが、有名なリチャード・アヴェドンによる写真のドレス。これはハーパーズバザー誌に掲載された作品で、モデルのドヴィーマを象と組みあわせた、後世に残るファッション写真です。


ファッション誌を飾った数々の名フォトグラファーの写真を展示。マリリン・モンローが被写体の写真も。Photo : Paul Vu Brooklyn Museum

ディオールの伝統を受け継いだガリアーノ、シモンズ、キウリ

 次のコーナーでは、「ディオール・レガシー」として、ムッシュ・ディオールの後を継いだデザイナーたちの作品を時代ごとに展示しています。

 クリスチャン・ディオールが急死したあと、主任デザイナーとして、ブランドを継いだのが、当時ディオールのもとで才能を発揮していた若干21歳のイヴ・サンローランでした。


ディオールのレガシーを受け継ぐデザイナーたちの作品。左は、ディオールに抜擢されたイヴ・サンローラン。右は、ジャンフランコ・フェレ。Photo : Paul Vu Brooklyn Museum

 さらにマルク・ボアン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ、ラフ・シモンズ、マリア・グラツィア・キウリら、歴代のデザイナーたちの作品が並べられていて、ディオールの伝統を受け継ぎながら、デザイナーごとの個性の違いが目を引きます。

 ゴージャスでドラマチックなジョン・ガリアーノ、アーティスティックなラフ・シモンズ、そしてエッジ−と繊細さが共存するマリア・グラツィア・キウリの作品を見比べてみると、興味深いです。


現在のクリエイティブディレクターであるマリア・グラツィア・キウリの作品。Photo : Paul Vu Brooklyn Museum

ディオールが愛した18世紀のフランス文化

 また、ディオールの根底にあるフランスの伝統文化に対する敬愛を見ることができるセクションもあります。

 なかにはクリスチャン・ディオールが手がけた人形の服という、めずらしい展示物もあり、彼の18世紀のドレスに対する深い関心を感じさせます。


〈左〉クリスチャン・ディオールが服をデザインした、めずらしい人形のコレクション。© Christian Dior Brooklyn Museum
〈右〉インスピレーションを受けたというロココ時代の画家、エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランの作品。《マリア・テレジア・チェルニン伯爵夫人の肖像》1793年(ブルックリン美術館所蔵)。Photo : Paul Vu Brooklyn Museum

 ディオールは、ロココ時代に活躍した女性画家エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランに多くのインスピレーションを受けたとされ、ブルックリン美術館所蔵のヴィジェ=ルブランによる肖像画も特別展示されています。


18世紀のフランス文化を敬愛したディオールの伝統が、ハウス・オブ・ディオールに受け継がれている。Photo : Paul Vu Brooklyn Museum

 フランスの伝統が息づく時代にインスパイアされたディオールのスピリットは、メゾンとして受け継がれ、華やかでエレガントな世界を見せてくれます。

 また1947年の初コレクションと共に発表された香水「ミス ディオール」も、フランスが育んできたエレガントで華やかな文化を香りとして表すものとして、大成功を収めました。


香水「ミス ディオール」の誕生と、エレガントでフローラルなドレス。Photo : Paul Vu Brooklyn Museum

高い天井を生かした圧巻のディスプレー

 さらにカラーでまとめたコーナーや、白だけにこだわったコーナーも、息を飲む美しさです。

 ブルックリン美術館の高い天井のスペースを生かして、「パラダイスの鳥たち」といったイメージごとにわけられた展示もドラマチック。

 デザイナーたちは時代によって変われども、メゾンが持つエレガンスと豪華さは、まさにディオールらしい美しさでしょう。


〈左〉ホワイトのアイテムを集めたセクションは、天井まで続く展示が圧巻。Photo : Paul Vu Brooklyn Museum
〈右〉「Enchanted Garden(魅惑の庭園)」といったように、テーマごとに展示。Photo : Paul Vu Brooklyn Museum

カラーパレットごとに展示したセクションも。Photo : Paul Vu Brooklyn Museum

 最後のコーナーには、実際にセレブたちが着こなしたディオールのドレスが展示されていて、最高峰の美しいドレスが、その時代のもっとも輝かしい女優たちを彩ってきたことがわかります。


その時代のトップ女優たちがレッドカーペットで着用したディオールのドレス。Photo : Paul Vu Brooklyn Museum

 20世紀後半から21世紀にかけて、ファッショントレンドを動かしたディオールと、その経済力やスターパワーやファッション雑誌の牽引力を誇るアメリカンドリームが融合してきた足跡をたどれます。


広大なスペースを使った展示が、すばらしい。Photo : Paul Vu Brooklyn Museum

 なにより美しいファッションに、心を癒やされるこの展覧会。パンデミックで失われていた、豪華でエレガントで、夢がつまったものを見ることができる喜びはたとえようもなく、多くのニューヨーカーたちを引きつけています。

 22年2月までの開催ですので、ニューヨークにいらっしゃる際には、ぜひ!


Brooklyn Museum
Christian Dior : Designer of Dreams

住所 200 Eastern Pkwy, Brooklyn, NY 11238-6052
開館時間 11:00~18:00、金・土曜 ~20:00(第一土曜は14:00~18:00)
休館日 月・火曜
入場料 大人25ドル

黒部エリ

ライター、作家。東京都出身。大学卒業後、「アッシー」他の流行語を生み出すなど、ライターとして情報誌から広告まで幅広く活動した後、1994年よりNY在住。ファッション、ビューティー、アートやレストラン、人物インタビューなどなど、旬な情報を発信し続けている。著書に『生にゅー! 生でリアルなニューヨーク通信』(文藝春秋)などがある。

文=黒部エリ

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