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元月組トップスター・珠城りょう インタビュー【前編】「宝塚最後の日、 やっと自分を認めることができました」

CREA WEB / 2021年11月3日 17時0分


 溌剌とした明るさと包容力、まっすぐな熱さを持ち、嘘のない芝居で、観客の心に訴えかける演技者。ショーでは、その恵まれたフィジカルを駆使したダイナミックなダンスと、豊かな声量で聴かせる歌で、観客を圧倒してきた珠城りょうさん。

 宝塚歌劇団トップスターとして活躍し、今年8月15日に歌劇団を退団したばかり。その珠城さんの退団後1作目は、宝塚歌劇団の花組と月組の100周年を記念しおこなわれる、祝祭感あふれるOG公演『Greatest Moment』だ。

 大きな話題となった退団公演について、退団後の今、退団後初めて舞台に向かう想い、そしてこの先のこと……。ストレートな思いを語っていただきました。


「できるだけ笑顔で、みなさんへの感謝と幸せな気持ちを伝えて去りたかった」

――退団から2カ月以上が経ちました。今はどんな心境でいらっしゃるのでしょうか。

 退団したという実感より、宝塚でのことが夢の世界にいたような感じで、在団していたことが信じられないような……夢から醒めたような、そんな感覚です。


――トップスターというのは、やるべきことも多く、責任も大きい。それだけ大変な立場なのでしょうね。

 もちろんやるべきことは多いし、やっていることはハードで体力的には大変だったと思います。

 でも、組もとてもいい雰囲気でしたし、舞台に関しては本当に組の皆さんが、私を支えてくれていましたから、大変って思ったことはあまりなくて。

 それよりも在団中は、世間からの評価というか……どんなに頑張ってもなかなか認めてもらえなかったり、嘘がまるで真実かのように語られてしまったりすることのほうがしんどかったですね。

――退団日はそんな様子も一切感じさせず、ほっこりとあたたかなムードに包まれた千秋楽でしたよね。珠城さんも涙を見せることなく笑顔で。あの日、組の皆さんからどんなふうに送り出されたのでしょうか。

 千秋楽の日、楽屋入りのときも出のときも、みんながセレモニーをやってくれましたが、決して湿っぽい感じじゃなく、明るい感じで送り出そうとしてくれているのを感じました。

 私自身、ファンの皆さんやお客さま、月組のみんなにはできるだけ笑顔で「ありがとうございました」という感謝と、いかに自分が幸せだったかという気持ちを伝えて去れたらと思っていましたから、それをきっと汲んでくれたのでしょうね。

 それでも、千秋楽の挨拶の最中、涙を流している下級生たちの姿が視界に入ったときには、感極まるものがありましたし、素直にその気持ちが嬉しかったです。

「宝塚最後の日、やっと自分で自分を認めてあげることができた気がします」


――ちなみに次号12月7日発売のCREAは贈りものの特集なのですが、退団時に印象的だった贈られたものや言葉などはありますか。

 たくさんありますが……宝塚を退団したときに、退団公演を観に来てくださった大勢の方、そして卒業された先輩方から掛けていただいた「本当によく頑張ったね」という言葉でしょうか。

 それまで、「すごい」とか「素敵」と言っていただくことはあっても、「頑張ってるね」とか「頑張ったね」と人から言ってもらうことって、あんまりなかったことに気づいたんです。

 ある意味、トップっていろんなことができて当たり前で、頑張って当然だし、努力して当然ではあるんです。それだけの立場で、それだけのことをさせていただいているわけですから。しかも周りには、自分より下級生のほうが多くなっていたのもありましたし。

 でもあそこで、私のことを下級生時代から見てくださっていた先輩方から「本当によく頑張ったね」って言っていただいたときに、ここまで頑張ってよかったなって、やっと自分で自分を認めてあげることができた気がして、自然と涙が溢れてきたんです。

 月組のトップとして自分が積み重ねてきたこと、努力してきたことが、すべて浄化されるような気持ちになったんですよね。初めて認めてもらえた気がした、というか。

 そのとき、自分はずっとその言葉を人から言ってもらいたかったのかなって思いました。

「楠木正行という役をやらせていただけたのも、巡り合わせの縁なのかなと思っています」


――退団公演の『桜嵐記』について伺わせてください。作・演出の上田久美子先生は、いまや宝塚歌劇団でも評価の高い演出家ですが、珠城さんのバウホール初主演作であり、上田先生のバウホールデビュー作でもあった2013年の『月雲の皇子』からのご縁です。その上田先生の描いた、身を投げうちひたむきに戦いに臨む楠木正行という役が、珠城さんの舞台に向かうまっすぐな姿勢と重なり、作品としての評価も高かったです。

 なんか不思議ですよね。上田先生とは『月雲の皇子』を一緒にやらせていただいただけでなく、『BADDY—悪党は月からやってくる—』という先生にとって初めてのオリジナルショーでもご一緒させていただいています。『BADDY』は、自分にとっても新たな扉を開いてくれた作品で、どこか先生とは、二人三脚でともに新しいものに挑戦してきた感覚がすごくありました。

『桜嵐記』の楠木正行に関しては、私のための役というわけではなく、もともと上田先生が作品を書きたいと思って温めていらっしゃった題材のうちのひとつなんですよね。

 それを、退団公演を担当することになった先生が、私に合うんじゃないかって言ってくださった。

 すごく良いタイミングで、素敵な作品をやらせていただけて、これも巡り合わせの縁なのかなと思っています。

――そして退団公演のショー作品というと、タイトルにそれらしきものが入ったりすることが多いですが、珠城さんの第二幕のショーは『Dream Chaser』でしたよね。

 退団公演だからといってサヨナラムード全開になるのが嫌だったんです。それに引っ張られてしまいそうで……。

 最後まで男役を楽しみたいという気持ちもありましたし、組のみんなにとっても、新たなことに挑戦できる公演であって欲しいという思いもあり、演出家の中村暁先生にご相談させていただきました。

 ただ、フィナーレナンバーに関しては、ぐっと退団モードにしたいという中村先生のご意向が反映されています(笑)。

「昨年、公演がすべて止まったとき、また舞台に立てる日が来るのか不安だった」

――珠城さんが退団を発表したのは、昨年の3月。当初の予定では退団は今年2月のはずでしたが、コロナ禍で公演スケジュールが大幅に変更になり、結果的に退団時期が半年ずれました。退団公演が無事おこなえるかという不安もあったと思いますし、退団までの1年あまりはどのようなお気持ちで過ごされていましたか。

 昨年、公演がすべて止まったとき、ちょうど月組は『WELCOME TO TAKARAZUKA—雪と月と花と—』『ピガール狂騒曲』のお稽古中でした。ほぼ出来上がっている段階ですべてがストップして、そこから幕が開くまでに約4カ月。公演期間を組み直したこともありましたし、再開してからまた稽古期間が1か月以上。月組が一番長く止まっていたんです。

 その期間は私にとってはとても長く、無気力みたいになっていたこともありました。退団が延びたこともですけれど、それ以前に、また舞台に立てる日が本当に来るのか、ということのほうが不安でした。

 劇場の再開はいつになるのか。何か月先か1年先か。どれくらい舞台に立てないのだろうとか、そういうことまで考えました。


――どんなことをされていたんですか?

 いろんな映画を観たり、韓流ドラマを観たりして過ごしていました。じつは、そこでBTSにもハマったんです(笑)。

 彼らのその音楽ももちろん素晴らしいですが、等身大の彼らの姿に胸を打たれるものがあったんですよね。今やもうワールドスターですが、等身大の青年として悩んだりしている普段の姿も、結構いろんなメディアでさらけ出しているし、インタビューなどでも話していて、それにすごく共感しました。

 それこそコロナ禍の影響で、日本だけじゃなく世界中でエンターテインメントだったり……いろんなものが止まったわけで、それは彼らも同じ。自分と同じ思いをしている人はたくさんいて、それどころか、より過酷でしんどい思いをしている人たちがいるってことに思いが至って。

 そこから、もうなるようにしかならないなって、いい意味で諦めがつきました。自分は命があって、日々生きていくことができる。そのことのありがたみを実感して、とにかく今やるべきことにコツコツ向き合っていこうと気持ちを切り替えられてから、自分を取り戻していった感じです。

 同じような状況に置かれた俳優やアイドルの方々がファンに向けて発信しているメッセージなども見ました。宝塚ファンの方々にとっては、私達の存在が励みになるのかもしれない。その方たちのために自分も頑張ろうって思えたことも、前を向く力になった気がします。

シャツ 60,500円、パンツ 60,500円/エリコカトリ(ムール 03-5787-8911) コート 72,600円/リト(03-3470-4157) リング、ブーツ/スタイリスト私物

珠城りょう(たまき・りょう)

2008年に宝塚歌劇団に入団し、『ME AND MY GIRL』で初舞台。月組に配属され、入団3年目には、若手の試演公演である新人公演で主役に抜擢される。13年には『月雲の皇子』で、バウホール公演初主演、16年に月組トップスターに就任。入団9年目でのトップスター就任は、宝塚では歴代二番目に早い抜擢となった。翌年の『グランドホテル』『カルーセル輪舞曲』で大劇場公演お披露目公演。その後、『All for One』や『BADDY—悪党は月からやって来る—』などの話題作をはじめ、『雨に唄えば』『エリザベート—愛と死の輪舞』『ON THE TOWN』『I AM FROM AUSTRIA—故郷は甘き調べ—』といった海外ミュージカル作品に数多く主演。今年8月15日に、『桜嵐記』『Dream Chaser』千秋楽をもって退団。来春、東京・大阪にて待望のソロコンサートが決定!

文=望月リサ
撮影=鈴木七絵
動画=松本輝一
ヘアメイク=赤松絵利(ESPER)
スタイリスト=重光愛子(A.K.A.)

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