【鍋4選】「骨周りの肉は奪い合って食べるべし!」ホテルニューグランド副総支配たちが教えたくない“裏メニュー”
CREA WEB / 2024年3月27日 11時0分
冬のイメージが強い鍋料理ですが、食のワンダーランド「横浜中華街」では一年中いつでも味わえるうえ、ローカルな中国料理も気軽に味わえることもあって、食通が遠くから通うほどレベルが高いのも特徴です。
今回は「横浜中華街」に精通する3人の賢者に、中国各地の郷土の魅力をひとつの鍋にぎゅっと集めた、ディープでガチ旨な“マニアック鍋”を教えてもらいました。歓迎会など宴会の多いこの季節、食に詳しい人をもてなしたいときや、グルメな集まりにもぴったりでぴったり。さらには、1人で楽しめる鍋料理にも注目を!
さあ、未知なる鍋体験へ!
#01 東北人家 新館の鍋ランチ「ラム肉と漬け白菜の鍋」
まず、ご紹介したいのは、“横浜(ハマ)の中華街刑事(デカ)”の異名を持つ、横浜市某所勤務のグルメ公務員Xさんが推す東北人家 新館のランチ鍋です。
Xさんが偏愛するのは酸っぱい白菜“漬け白菜”の鍋で、オリエンタルな雰囲気の銅鍋に漬け白菜とラム肉があふれんばかりに入って登場します。
「発酵やら酸っぱいやらの文字を見るだけで心躍るのだけど、そこにラムの組み合わせとなれば最優先で頼まにゃならぬ。ほどよい酸味と旨みたっぷりのスープに漬かった柔らかなラム、そしてひとクセある白菜。終盤戦まで熱々の小鍋で食べられるも嬉しい。ご飯の力も使ってスープは最後の一滴まで飲み干しましょう」(X氏)
漬け白菜とは中国の発酵食品“酸菜(スヮァンツァイ)”のこと。白菜を甕に漬けて自然発酵させた、中国東北地方の料理に欠かせない食材です。酸っぱさの源は発酵で生じた乳酸菌なので、食べた翌朝はおなかの調子もすっきり快調!
鍋ランチ「ラム肉と漬け白菜の鍋」は平日の曜日限定メニューで、2024年4月までは月・火・水に登場(予定)。アツアツの小鍋にご飯、漬物、デザートが付く定食スタイルで、1人でも気軽に中国東北地方の本格的な鍋が味わえます。
ちなみに漬け白菜の鍋は夜メニューにもあり、中央に煙突のある中国式の銅鍋を炭火で熱するしゃぶしゃぶスタイル。肉や牡蠣、凍豆腐などを投入し、餃子などの追加アイテムもいろいろ選べます。ランチよりもさらにマニアックな鍋の雰囲気と神髄が楽しめるので、手軽なランチと迷いますね。
#02 東北人家 新館の「羊の背骨の煮込み鍋」
とにかくバリエーションが多い東北人家 新館の鍋料理。せっかくなので、もう1品という場合は「羊の背骨の煮込み鍋」を。
「ラムの背骨はとにかくデカイ! そして骨の周りの肉は奪い合ってでも食べるべしとの食いしん坊に伝わる伝承の通り、うまいです。店提供の使い捨て手袋を付けて存分に貪りました」(X氏)
酸っぱい白菜の鍋とはまったく別ベクトルの中国醬油仕立てで、羊の背骨ガラを11種類の漢方薬で煮込んだもの。漢方薬といってもクセはあまりなく、甘やかさも感じるマイルドな香辛料の風味で、濃い旨みのラム肉と相性抜群です。
東北人家 新館(トウホクジンカ シンカン)
所在地 神奈川県横浜市中区山下町151-3アートビル1F
電話番号 045-664-0888
営業時間 11:00~15:00(L.O.14:50) 17:00~23:00(L.O.22:30) 土・日曜・祝日11:00~23:00(L.O.22:30)
定休日 なし
交通 元町・中華街駅より徒歩3分
#03 湘厨の「魚の頭と漬け唐辛子の湖南風味蒸し」
次にご紹介するのは、横浜中華街で10年以上取材を続ける食ライター・嶺月香里さんが「中華街に新たなスター誕生!」と興奮した、中華街初の湖南(こなん)料理店・湘厨の名物鍋をご案内。
「半分に割られた大きな鯛の頭に、真っ赤な唐辛子がどっさり。これは明日の胃とお尻が心配な激辛鍋…とひるんでしまったが、意外や意外、辛さは穏やかで旨みの方が勝っている」(嶺月氏)
生唐辛子や豆鼓、にんにくなどを2カ月以上漬けて発酵させた“漬け唐辛子”を使っているので、見た目ほど辛くありません。唐辛子といったら四川料理を思い出しますが、四川の麻辣の刺激的な辛さ&痺れとは違って、湖南料理は“旨みのある辛さ”。発酵によるほのかな酸みや甘みもあいまって、もっと食べたい、また食べたいと思わせる味わいに。
これは「剁椒魚頭(ドゥオジャオユートウ)」という湖南省の名物料理で、水を一切使わずに発酵させた“漬け唐辛子”の漬け汁だけで鯛を蒸しています。鯛の頭には身がたっぷりついていて、アラ好きにとっては悶絶のおいしさ。
日本人向けには鯛の頭を使っていますが、希望すれば中国の川魚で作ってくれるそうです。そちらの味も気になりますね。
生唐辛子や豆鼓、にんにくなどを2カ月以上漬けて発酵させた“漬け唐辛子”は、店主の親戚が故郷の湖南省でイチから手作りしたもの。日本人にも親しみやすい、どこかほっとする味に仕上がっています。
魚の骨から身を存分にほじったら、鯛の出汁がたっぷりしみ出している旨辛の鍋汁に麺を投入しましょう。この最後の麺が、また記憶に残るおいしさ。春先のモヤモヤを吹き飛ばすような、爽やかな辛さでしめくくってくれます。
湘厨(シャンチュウ)
所在地 神奈川県横浜市中区山下町138
電話番号 045-274-8582
営業時間 11:00~22:00(L.O.)
定休日 不定休
交通 みなとみらい線元町・中華街駅より徒歩5分
#04 謝朋酒樓の「上湯スープと麻辣スープの鍋」
最後は、横浜中華街にほど近い名ホテル「ホテルニューグランド」の副総支配人であり、中華料理をこよなく愛する谷口謙一郎さんがプライベートで食べている裏メニュー、四川料理のマニアック鍋をこっそり教えてくれました。
「知る人ぞ知る裏メニューの『上湯スープと麻辣スープの鍋』。具材はお店と事前に相談していただき、海鮮やら豚肉、野菜などお好みの食材を揃えることができます。
四川系のお店ですので麻辣スープは絶品。ピリッとした中に旨みもしっかり感じるスープです」(谷口氏)
具材を店のおまかせで頼んだ場合、牛肉や羊肉に有頭海老、牛センマイや魚団子、血豆腐などの中国らしい具材も。肉厚のしいたけやロメインレタスなど野菜もたっぷり。あっさりした上湯スープにレタスをくぐらせて、シャキシャキした食感とスープの旨みを楽しんでもいいし、花椒の効いたピリ辛濃厚麻辣スープで白菜をくったりするまで煮てもよし。
とにかくスープの味がいいので、何も付けずにそのまま食べてもおいしいのですが、もし味変するならばと用意されているのがタレのセットです。
胡麻ダレ、胡麻油、しょうが、にんにくを自分で組み合わせてタレを自作。羊は胡麻ダレが合うね、この組み合わせもいける!など更に会話も弾みます。豆板醤と小葱はそのつどお好みでプラスして、さらなる味変を加えれば、肉も野菜もいくらでも食べられてしまいそう。
この鍋は、常連客から「鍋が食べたい」という声が多く、それに応えて生まれた裏メニュー。舌の肥えたリピーターたちの期待を裏切らない、手間暇がかかった味が楽しめます。
謝朋酒樓(シャホウシュロウ)
所在地 神奈川県横浜市中区山下町188
電話番号 045-662-9113
営業時間 11:00~23:00(L.O.22:15)、土・日曜・祝日・祝前日10:30~23:00(L.O.22:15)
定休日 無休
交通 みなとみらい線元町・中華街駅より徒歩3分
https://www.shahoshuro.com/
●教えてくれたのは……
食いしん坊・公務員X
愛媛県生まれ。暮らしも仕事もすべてが横浜駅~横浜中華街付近の50代前半公務員。持ち前の食いしん坊&調べ尽くさずにはいられない気質から、中華街全域の調査にも余念がなく、その粘り強い姿勢を「横浜(ハマ)の中華街刑事(デカ)」と呼ぶ者も。精緻で豊富な知識は、都内の食通から情報を求められるほど。ときには「とんかつ」「デパ地下」「アニサキス」などを追っている。
ライター・嶺月香里
東京都生まれ。横浜中華街の1年を通した連載を手がけるなど、中華街を取材し続けて10年以上。老舗の名物はもちろん新店にも積極的に足を運び、中華街の深淵を日々探索中。酒と肴と動物性たんぱく質が主食で、ウナギが大好き。CREA WEBで「教えて! ウナギ大好き、ウ大臣」のコラムをあげている。食以外では「温泉」と「恐竜・鉱物」がライフワーク。
「ホテルニューグランド」副総支配人・谷口謙一郎
東京都生まれ。「帝国ホテル」「ウェスティンホテル東京」などで、マーケティング・広報などを歴任。現在は横浜のクラシックホテル「ホテルニューグランド」で副総支配人を務める。無類の中華料理好きで、特に「ウェスティンホテル東京」時代はホテル内のレストラン「龍天門」から続々とヒットメニューを提案。現在は都内から横浜に通勤しながら、横浜中華街のみならず、市内の中華料理店のパトロールに余念がない。
文=嶺月香里
写真=志水 隆
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