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「もっと私を身近に感じてほしい」松井玲奈がエッセイ『私だけの水槽』に書いた“2年間”

CREA WEB / 2024年4月28日 11時0分

 3年ぶりとなるエッセイ『私だけの水槽』を4月19日に刊行した俳優の松井玲奈さん。近年は作家としても活躍している松井さんの「ありのまま」に迫りました。(全2回の前篇。)



エッセイのテーマについて語る松井玲奈さん。

――エッセイの連載が始まったのが30歳になる直前だったそうですね。連載のテーマはどのように決まったのですか?

 30歳になる頃、インタビューなどで毎回「30歳になることについてどう思うか」と聞かれた時期があったんです。私としては、30歳の誕生日を迎えたからといって何も変わらないですし、昨日の続きの自分しかいないと思っていたので、「節目ですね」と言われてもモヤモヤた気持ちがありました。

 そんな時にちょうどエッセイの連載のお話をいただいたので、「ああ、年齢のことを書きたいな」と思ったところから、今回のテーマを決めていきました。

 エッセイの1本目は思いっきり年齢について書いていますが、「もし自分がこうだったら」「こういう人生だったらどんな自分になっていたか」というのを考えながら書いてみたいと思っていたので、『私のもしも図鑑』というタイトルで連載を始めました。

 でも連載を進めていく途中で、書きたいことがだんだん「もしも(if)」から離れていったので、少し「もしも」という枠から離れても、その時自分が書きたいことや向き合っていることにまっすぐに向き合えるような連載になればいいな、と思って書き進めていきました。


松井玲奈さん。

――書籍化にあたり、5本目の『私だけの水槽』をタイトルに選んだのは、この作品に特別な思い入れがあるからですか?

 この企画がはじまった2021年は、少しずつ「日常」が戻ってはいましたが、まだコロナ禍の影響で、世の中に閉塞感が漂っていました。なので、これまでのように「どこに出かけた」とか「何を食べた」みたいなことは書きにくいというのがありました。

 そんな時に、たまたま地下鉄の駅で見た一枚の絵画がとても印象的で。漆器などに施される、貝殻の内側の真珠層をはめ込む螺鈿という技法を使って魚たちの姿が描かれた絵だったのですが、まるで本当に魚が水槽の中で泳いでいるように見え、感動してしばらくその場に立ち尽くしてしまいました。その感動を書いたのが、表題になった「私だけの水槽」です。

 今回の書籍化に伴い、あらためて連載を読み直してみたところ、大変なことや苦しいこともありましたが、美しいものとの出会いや楽しいこともあった2年間だったことを思い出しました。そして、自分もこの絵の中の魚たちのように自分自身の水槽のなかでいきいきと泳いでいけたらいいなという思いが強く湧き上がってきたので、これをタイトルに選びました。

私が書きたいことを書く

――3年前に刊行された『ひみつのたべもの』は、アイドルから俳優になった松井玲奈の初エッセイ集、という意味合いが強かったと思います。今作は、「作家・松井玲奈のエッセイ集」を意識されましたか?

 初エッセイの時も今回も、肩書きはまったく気にしてないです。大切にしているのは、「私が書きたいことを書く」、ただそれだけです。

 ただ、「作家、エッセイストの松井玲奈」としてお仕事をいただく機会が増えたことで、これまで以上にアンテナを張ってどんなものが自分の心に響くか、どう書いたら嘘がないエッセイが書けるだろうかということは、より考えるようになりました。

 とくに今回のような連載ものは、単発のエッセイ以上に責任も大きいですし、それなりのプレッシャーもあります。それでも、限られた文字数のなかで、毎回「いま何を書きたいのだろう」と自分に向き合いながら考える作業はとても楽しかったですし、充実した時間となりました。


松井玲奈さん。

――お忙しい中、どのように執筆の時間を確保されているのですか?

 私はエッセイでも小説でも締切がないと書けないタイプなんです。なので、「時間ができた時に書いてください」と言われたら逆に書けないかもしれません(笑)。

 今回は、そんな忙しくて気持ちの余裕が持てないことや、自分のダメなところも書いてみようと、ぐーたら人間ぶりや、現実逃避で掃除に走ってしまうことなども入れました。今にして思えば、こうした自分のダメな部分を書くことで心のバランスを取っていた部分もあったのではないかと思います。

――松井さんにとって「書く」ことにはどんな意味があるのでしょうか。

 自己表現のひとつです。もちろん文章を書くのは好きですが、「すごく楽しい」と思って書いているというよりは、心の整理をするために書いているところが大きいと思います。

 以前はブログを書いていましたが、エッセイを書くようになってからはブログもやめてしまったので、自分が感じたことや自分に起きたことを書き留める場所として日記を書いています。

 自分の中に言いたいことがモヤモヤと溜まり、身体の巡りが悪くなると具合が悪くなるので、日々の思いを形にして可視化できる場として、どんなに短くても毎日、日記を書くようにしています。いろいろなことをちゃんと覚えておくための記録としても役立っています。

 あとは、自分を知ってもらいたい、自分の気持ちを正しく伝えたいという思いで文章を書くことも多いですね。

 私は、昔から「自分を人に知ってもらいたい」という気持ちが強いのですが、その根底にあるのは承認欲求ではなく、人が自分に持っている印象と、自分が持っている自分のずれを少しでも少なくしたいという思いがあるからです。

 自分を正しく届けることで、私のことを正しく理解してもらいたい。その一心で、昔から「今こんなことを考えています」「こうしたいと思っています」「これが目標です」と、逐一発信してきました。

 エッセイを書くようになってからは、もっと私を身近に感じてほしいという思いがさらに強まり、自分が悩んでいることや、つまずいたこと、嬉しかったことも正直に書いています。

結局、私は重度の心配性

――SNSへの投稿も頻繁にされています。これもその日の気持ちのアウトプットのひとつなのでしょうか。

 SNS、特にXは、着飾ることなく、自分が好きなものを好きなように好きなタイミングで、「気持ちを発散できる場」という感じで使っています。脳みそからそのまま出た言葉を投稿しているので、私のXを見ている人は、まさか私がエッセイを書いているとは思っていないかもしれません(笑)。

 ただ、こんなに気持ちを吐露することが好きなのに、手紙を書くのだけは苦手なんですよ。ありがとうの気持ちや、お誕生日おめでとうのメッセージなどを書こうとしても、「こう言ってもらえたのがすごく嬉しかった」などと書いているうちに、自分の書いている文章がすごく重い気がしてきてしまい……。シンプルに一言「ありがとう」「いつもお世話になっております」とだけ添えるほうがいいのかと迷っているうちに、結局書けなくなってしまいます。


「結局私は重度の心配性なのでしょうね」と話す松井玲奈さん。

 お手紙をいただくのはすごく好きで、読むのも嬉しいのですが、結局私は重度の心配性なのでしょうね。

 それでも今回、無事にエッセイの連載を終えて、それが書籍にもなって、自分がエッセイを書くのがすごく好きなんだとあらためて感じました。もちろん小説も書き続けていきたいですし、お芝居も続けていきたいですが、エッセイはライフワークとして書き続けていけたらいいなと思っています。

 またエッセイの本を出せることを目標に、これからも頑張ります。

衣装クレジット

ジレ 104,500円、スカート 41,800円/ともにエズミ(リ デザイン)、カットソー 31,900円/プント ドーロ(ブランドニュース)、アクセ、靴/スタイリスト私物

★問い合わせ先
ブランドニュース(プント ドーロ)
03-3797-3673
リ デザイン(エズミ)
03-6447-1264

文=相澤洋美
写真=佐藤 亘

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