「寮に入れて教育のプロに任せたい」と迷った過去も…。青木裕子が夫と語り合って気づいた育児の“秘訣”
CREA WEB / 2024年5月2日 7時0分
アナウンサーで2人の男の子を育てる青木裕子さんのFraU webの人気連載『子育て歳時記』が書籍化された。
子どもにとって「本当に良い教育」とはどのようなものか? ひとりの女性である自分が「母親」としてすべきこと/したいことは何なのか?
さまざまな情報があふれる中で、試行錯誤しながらも本気で子どもと向き合い、共に過ごす日々を謳歌する青木さんの姿は、こうすれば幸せになれるという「正解」が見えない時代に、子どもの有無に関わらず、すべての人に一歩を踏み出す勇気と希望を与えてくれるはずだ。
ひとには「なるようになるよ~」と言えたけど…
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――青木さんはもともと子育てに関して、どのような思いを抱いていたのでしょう?
私自身、11歳歳の離れた妹がいて、大学生の時に保育園でアルバイトもしていたので子どもと接する機会はあった方で、子どもを育てることに過剰な理想は持っていないつもりだったんです。でも、いざ自分が子どもを育てる立場になってみると、子どもに対して感じる責任やプレッシャーが想像よりも大きくて。人の子供には自由にさせとけばいいじゃん、なるようになるよーって気軽に言えたことが、自分の子供だとそうは言えなくなる。え、自由ってなんだろう? のびのび過ごさせるにも実はすごく準備が必要だよなって、悩んでしまう場面が多かったんです。
――過干渉にはなりたくないけれど、ただ放っておくのも違う。子どもにとって「本当に良い教育」って何なんだろうと悩んでしまう心中は、すごく共感しました。子どもが可愛いのは当然ですが、自分の選択が子どもの人生を左右してしまうかもと考えると、実際かなり恐怖ですよね。
本当に恐怖ですね。子育てって、親が責任を持たないといけないし、基本的には代わってもらえない。仕事だと他に代わりはいるし、途中でやめることもできるけど、子育てはやめることもできない。その重みを考えると今でも呆然とします。
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――そんな不安の中で、青木さんはどのように自分なりの向き合い方を見つけていったのでしょう?
最初は自分が受験や仕事を乗り越えてきたのと同じように、子育てにも何らかの「正解」があると思っていたんです。自分が若かった頃は、受験もとにかく偏差値を上げて、いい学校に入ることが「正解」だったし、仕事も今みたいにコンプライアンスもない時代ですから、何かあれば24時間対応するのが当たり前と思って、がむしゃらに働いてきた。でも、今の時代は昔みたいに「この道が正解」みたいな絶対的なものがなくなって、多様な道が認められるようになった。それだけに、親としては子どもにどういう道を示して、どういう力を付けてあげればいいのかわからなくて、最初はすごく悩みました。
働く女性が母になると「世界が狭くなる」?
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――どんな物事であれ、選択肢が増えて自由になればなるほど、これだというものを選ぶことは難しいですよね。
赤ん坊の頃は、最初の何時間かおきにミルク飲ませて、こうしたらよく寝る――みたいな、マニュアル通りの対応で解決できることも多かったんですけど、相手がだんだん成長していくと個性も顕著になり、誰にでも当てはまる「正解」はなさそうだぞと気付いて。誰もが親になったからといって突然正しい完璧な人間になれるわけじゃないのに、どうすればいいのって。悩んで、一時期は、私が育てるよりも、それこそ寮があるような学校に入って、教育のプロに育てていただくほうが、子どもにとっていい道がひらけるんじゃないかなと思ったこともあります。でも、最終的には開き直りに近い感じで、いま自分ができる、これがいちばんいいかなと思うことを全力でやるしかないと考えました。
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当然ですが、子どもってなんの情報も持っていない。やりたいことを見つける以前にこんなことが楽しそうだとか、こんなことにも挑戦できるんだってこと自体、知らないわけで。もう少し大きくなったら自分でいろんなところで出会ったりすることもあるんでしょうけど、幼少期は周囲がどういう環境を与えるかで大きく変わると考え、レールを敷くとかフィルターをかけるとかじゃなく、可能性を広げるためにできる限りの情報は提供したい! と思いました。
――『3歳からの子育て歳時記』には、そんなふうに青木さんが試行錯誤しながら、お子さんとさまざまな体験をする様子が綴られています。
幸運にも、いろんな情報を教えてくれる先輩ママやお友達が周りにいっぱいいたんです。例えば、私はこれまでの人生でスポーツとは無縁の人間だったんですが、スキースクールって3歳ぐらいからあるんだよと聞いて、えー、だったらやってみる? って。私の興味があることだけに限ると、子どもの視野が狭くなっちゃうと思ったので、自分の興味外の情報も積極的に教えてもらうようにしていました。だから、今回の本に書いてあることは私自身、初めて子供と体験したことが多いんです。
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――お子さんが生まれることで、ご自分の世界も広がった?
広がりましたね。働いていた女性が子どもを産むと世界が狭くなって、社会と関わっていないようで辛くなると聞いたこともあったのですが、私の場合はどちらかというと子どもを産んで世界が広がりました。例えば、ママ友って子供が一緒の歳というだけで年齢もバックボーンも全く違うから、これまでの人生でこんな方と接したことがないわという方とお会いすることができる。大人になると良くも悪くも自分と趣味や価値観が近い人間としか付き合わなくなるし、私がこれまで見ていた世界は実は狭かったんだなと気付かされることが多いです。
青木モードと矢部モード
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――人は誰もがいろんな顔を持って生きていますが、青木さんは新たに加わった「母親としての顔」をめいっぱい、楽しまれていそうです。
そうですね。局アナだった頃は完全なオフがなくて、「仕事人としての顔」が自分の大半を占めていましたが、今は仕事も個人でやっていますし、母親だからこその仕事もできましたし、子どもを育てているからこその仕事もありますし、いろんな顔を持ちながら、それらが相互に作用して、ひとりの人間として豊かになれたなという気がします。
――青木さんの中で「母親である自分」と「仕事をする自分」に、区別はありますか?
私の場合、仕事をするときは苗字が「青木」で、母親のときは「矢部」なので、同じ自分でもまた別のモードになってるかしれません。
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――子供を持つという選択をポジティブに考えにくい時代でもありますが、そういったことで悩む女性に伝えたいことはありますか?
どんな選択をしても間違ってることは絶対ないし、どんな選択をした方がいいというようなことは思いませんが、子育てしている身としては、子育ては楽しいよってことはお伝えしたいです。
どうしても今って子育ては大変だというメッセージの方が大きく聞こえてきてしまう。もちろん、実際に大変なことはたくさんあるし、それを分かち合いたい気持ちは私にもあるんですが、辛いという情報ばかりが入るのは当事者としては違うぞとも思うし。子育てを前向きな選択肢のひとつとして入れて欲しいので、大変だけど、でも楽しいよ、と私は伝えたいと思っていますし、伝える必要もあるなとも思っています。
――「正解」がない子育ての中で、青木さんがこれだけは大切にしているということがあれば、教えてください。
本気で向き合うこと、でしょうか。先日、夫(ナインティナインの矢部浩之)と“一生懸命って届くよね”って話をしたんです。なぜか人の心を打つ人っていて。それってやっぱり、相手に対する熱意とか本気度みたいなことなのかなって。だから、私が子どもと取り組んでいることは、全て正しいとは絶対に思わない。間違ってることもいっぱいあると思うんですけど、でもあなたと一生懸命に向き合っていますよということだけは伝えたいし、それが伝わるように日々本気で向き合いたい。それは親子の関係はもちろん、全ての人間関係で大切にしたいですね。
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青木裕子(あおき・ゆうこ)
1983年1月7日生まれ、埼玉県出身。TBSテレビアナウンサーとして『サンデージャポン』や『News23X』などを担当。2012年12月末にTBSテレビを退職。2014年に第1子、2016年に第2子を出産し、現在はフリーアナウンサー、モデル、ナレーション等幅広く活動中。
文=井口啓子
撮影=山元茂樹
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