「かわいいおばあちゃんになりたいのに」「良い・悪い」をジャッジしてしまうとき怖いけれど“手放した”もの
CREA WEB / 2024年6月4日 7時0分
仕事、健康、家族、介護、更年期……なんだか心配ごとだらけの人生後半戦。『暮らしのおへそ』編集ディレクターである一田憲子さんが、そんな「怖い」を少しずつ手放すトライ&エラーをつづったのが 『歳をとるのはこわいこと? 60歳、今までとは違うメモリのものさしを持つ』です。同書より、『「いい」と「悪い」の境目』を抜粋して紹介します。(前後篇の後篇)。
「私」と違うことを言う人が出てくるのが怖い……
札幌で開催された『大人になったら、着たい服』のイベントが終わり、4泊5日の滞在を終えて帰宅しました。やっと日常に戻りほっとしていた朝、出店者のひとり、島根県松江市でセレクトショップ「ダジャ」を営む板倉直子さんがインスタグラムで、「札幌振り返り」という投稿をしているのを見つけました。帰りの飛行機に乗る前に訪れたというのは、北大の札幌農学校第2農場。新緑の木々の中に、赤い屋根の木造のいい感じの建物が並び、かわいらしいこと!
「え~! こんな場所あったの!」「私も行きたかったなあ~」と思わず声が出ました。イベントに来てくれた知人に教えてもらったのだそうです。あれ? あの人なら私もお会いしたんだけどなあ~。
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そういえば、今までもこんなことあったなあと思い出しました。板倉さんのお店では、時折イベントを開催しています。ミュージシャンと、花の仕事をしている人を招いて小さなコンサートを企画したり、店内に、チーズケーキと紅茶のペアリングを楽しむケーキ屋さんをオープンさせたり。どの人も、私も知っている人たちなのに、板倉さんの目ですくいあげられると、とたんにその魅力がキラキラと輝き出すよう。きっと彼女は、その人の「いいところ」にまっすぐに光を当てるのが上手なのだと思います。
私は、どうして、あの人の素晴らしさに気づけなかったのだろう? そう考えた時、「いつも私は、私でありすぎるんだよなあ」と思い至りました。あの人が「いい」と思うものは、本当に「いい」のだろうか? とまず「疑う」ことから始めてしまうのです。それは、きっと間違えるのが怖いから。「いい人だなあ」と思っていたのに、後から嫌なところが見えてきたり、自分との違いが明確になったりして落胆するのが怖い……。
今までコツコツといいものを見たり、聞いたりして、自分だけの価値観を苦労して築き上げてきました。何をやっても自信がなかった若い頃から、少しずつ経験を積み重ね、やっと「これがいいんじゃない?」と、自分なりの考えやアプローチをグイッと人前に推すことができるようになってきました。だからこそ、やっと手にいれた「私」と違うことを言う人が出てくるのが怖い……。
「自分軸があること」と「独りよがり」は紙一重
でも一方で「自分軸があること」と「独りよがり」は紙一重だということも知っています。もっと自分を手放して、素直になって、どんな人にも、どんなことにも「あらあ、いいわね~」と言える、かわいいおばあちゃんになりたい。だったらどうしたらいい?
そんな時、店頭に立つ板倉さんの笑顔が浮かんできました。お店でお客様を迎えるとき、ドアの前で「この人はいい人だからどうぞ」「この人は、ちょっと難しそうだからご遠慮ください」と区別することはできません。訪ねてきてくれたなら、どんな人も受け入れなくてはいけない。そうか! あんなふうにまずは、「入り口」を広く開けておけばいいのかも。
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扉を開けておくことは、相手に対して「私はあなたのことを受け入れますよ」というサインになります。誰でも「これいいでしょ?」と手の中のものを差し出した時、「ふ~ん」と気のない返事をされたら、それ以上、その人の中へは踏み込まないもの。
でも「うわ~、ほんとだね~」と笑顔を返されたら、「ね、そうでしょ、そうでしょ!」と言いたくなる。そうやって、人と人は心を開き合い、より奥にある大切なものを交換しあうことができるんじゃないかな。
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私にとって「いい」かどうかの判断は、もっと後でもいいのかも。というよりも、世の中のものはすべて「いい」「悪い」に分類されるわけではないのかも。そう考えると、ぐんと気が楽になりました。「私が私であること」を手放したら、まったく踏み込んだことのない世界の住人とも、何かを交換しあえるようになるかも。
そういえば、推し活に夢中になっている後輩の話は、なんだか面白かったなあ~。興味がなかった漫画だけれど、勧められて『宇宙兄弟』(講談社)を読んでみたら、すっかり夢中になったんだったなあ。これからの暮らしで、大切にしたいのは、「いい」「悪い」をジャッジすることではなく、隣にいる人と心を通わすひとときなのだと、やっと答えが見えてきた気がします。
初めての人と出会った時、まずは相手の話に耳を傾けてみる。大事なのは、「いい」「悪い」をジャッジすることではなく、心を通わすひととき
文=一田憲子
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