「不倫現場を見られた気持ちに」 岡田将生が“婚外恋愛許可制“を演じ これまでになく感傷的になった理由
CREA WEB / 2024年6月14日 7時0分
渡辺ペコ原作のコミック『1122』がドラマ化され、6月14日からPrime Videoにて世界独占配信開始されます。結婚して7年目のおしどり夫婦だった相原一子(いちこ)と二也(おとや)。しかし、ある日、二也は生け花の習い事で知り合った美月に恋をして、一子が許可した上で婚外恋愛をすることに……という、これまでにない作品です。
このドラマで高畑充希さんとダブル主演を務める岡田将生さんに、『1122いいふうふ』で演じた二也を演じる上で感じた「弱さ」と「強さ」、「みじめさ」と「おかしさ」といった相反する要素について聞きました。
「えっ、すごくいい役だと思ったんですけど」
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――『1122 いいふうふ』の脚本を読んでみて、新鮮だった部分はどんなところだったでしょうか?
驚いたのは、すごく丁寧で雑なところが一切ないことでした。夫婦にはいろいろな形があるということが、会話劇で展開されていました。高畑充希さんが演じる一子と僕が演じる二也の関係性も一話ごとにどんどん変化していくのが面白くて、自分の中で想像が広がっていく感覚がありました。というのも、やってみないとわからないシーンってワクワクするもので、脚本の段階でそんなシーンがたくさんあると思ったので、自然と演じたいという欲が湧き出てきました。
――二也という役に関してはどう思われましたか?
原作の渡辺ペコ先生が現場に来られていたんですけど、最初にお会いしたときに「岡田さん、なんでこの役を引き受けたんですか?」って聞かれて、僕自身は「えっ、すごくいい役だと思ったんですけど」って返事をしたというやりとりがありました(笑)。もちろん、二也のしていることの中には酷いこともありますし、ダメな部分もたくさんありますけど、弱さも含めて人間っぽいなって思ったし、それを一子にちゃんと言葉として伝えて、反応を受け止めるところが素敵だなと思って、そんなところがこの役を演じようと思った決め手となったんです。
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――夫婦のあり方についてはどう思われましたか?
一つ屋根の下で向き合わないといけないし、お互い尊重しあわないといけないし。夫婦として暮らすということは、こういうことなんだなって実感しました。一子と二也の間で繰り広げる会話も、実際に交わしたらストレスを感じることもあるだろうけれど、そういう会話もあるかもしれないし、このドラマを通じて、いろいろな夫婦の形があるんだということが知れましたし、自分を少し、成長させることができたと思いました。
結婚記念日に不倫相手の元へ行ってしまう二也
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――客観的にドラマを見ていかがでしたか?
このドラマは会話劇としても面白いので、どんな人が見ても楽んでいただけると思いますし、一子ちゃんの側からだけでなく夫側から見た目線も描かれているので、見た人同士で気軽に議論できる作品になっているのかなと思いました。僕はどうしても二也目線で見てしまいましたね。でも、一子目線から見れば、二也ってダメなところばかりだと思うんです。その上で今回、気を付けたのは、二也をどうやってキュートに演じるかということでした。
――岡田さんと今泉力也監督との間では、どんなやりとりがありましたか?
ワンシーンごとに、お話しながら撮影をしていました。客観的に二也が酷いことをしてるシーンのときにはリハーサルの段階から、「二也ってここはダメですよねえ…」とか「ここは良くなかったですよねえ…」と、そんな話をしていました。
――岡田さんが、二也の一番ダメだなと思うところはどんなところでしょうか。
二也が結婚記念日に不倫相手である美月(西野七瀬)の元に行ってしまうということですね。このシーンに関しては、なぜ二也はそうしてしまったのか僕にとっては疑問でした。全話を通して、二也は一子のことがものすごく好きだし、人としても尊敬していて、一緒にいたいと思っているのに……。普段の二也ならそんな判断はしないはずだけど、でもそのシーンから物語がどんどん展開していくので、必要なシーンだったとも思います。そんな矛盾を楽しみながら演じていました。
これまでにないぐらい感傷的になった
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――演じる上で、心情が難しかったシーンはどこでしょうか?
二人が感情的になるシーンでは、一子の言葉がすごく刺さりました。一子の言葉って、「こんな辛辣なことをよくスラスラ言うなあ」と思える部分もあって、それを受けて、僕もこれまでにないくらい感傷的になりました。そして、そういうところに、男性の弱さが如実に出ているんじゃないかなと、演じていて思いました。テーブルをはさんで、別れる・別れないと言い合う会話やその空間に、毎日毎日、緊張していました。ただ、そんな緊張感のあるシーンが多いからこそ、二人のなにげないシーンがすごく楽しかったですね。特に二人一緒の空間でコーヒーを入れて飲むシーンでは、幸せを感じながら演じていました。
―― 一子と過ごすときと、美月と過ごすときで、演じていて心境の違いはありましたか?
実は二人に対峙するときの気持ちにそこまで変わりはなかったんですよね。二也はどっちも好きで、どっちも大事でっていう……それがダメな部分なんですけど、それは多分「公平であるべき」っていう風に捉えていたんじゃないかと思うんです。どちらかに偏りすぎた感じを出してしまうと、気持ちが悪いという感覚があったんじゃないかな……と。それでも撮影するたびにそれぞれとの距離感は変化します。特に美月を演じた西野さんとのシーンは、今思い返すとすごく難しかった気がしますね。重たいシーンも多かったし、美月の言葉が二也にのしかかってきて、通り過ぎていかないというか、抜け出せなくなるんですよね。美月の言葉を「呪い」の言葉として捉える二也の気持ちが理解できて、体も重たかったです。
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――二也の無意識さは、一子にとってだけでなく、美月にとっても残酷だなと思いました。
そうだと思います。そうじゃないと、結婚記念日に美月のところへ行くことを選んだりしないと思うんですよ。そこには一子に対しての甘えもあって。でも、そのことをすぐ認める二也の良さもあるとは思うんですよ。そんな未熟さ加減が僕はわりと好きではありましたね。僕は演じる上では、いい人間よりもダメなところのある人間のほうが好きなんですよね。そういう意味では、人によって見方が変わるし、見応えがあるドラマだと思いました。
自分の言葉選びを後悔した日
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――岡田さん自身も、自分のダメなところや弱さを振り返ることはありますか?
僕にもダメなところはありますね……。こういう取材の場でも失礼なことを言ってしまって、後悔することもあります。「なんであんな言葉選びをしてしまったんだろう」って。でも、後悔しながら生きてくことも大切なんじゃないかなと思います。
――岡田さん自身は、「弱さ」をどう捉えられていますか?
僕自身は親しい友人や家族に対して、わりと弱音を吐くことも多いほうですね。今、こういうことで悩んでいて、こういう問題が自分の中で起こっているということは、なるべく早く解決したいと思うほうなんです。なので、友人に相談に乗ってもらって、自分の中での比重を軽くしている感じです。そうじゃないと、引きずってしまいがちなんです。
――岡田さんがこのドラマを演じた上で、「いい夫婦」とはどういうものだと思われましたか?
その夫婦によって「いい夫婦」というものは違うものだと思いました。この作品は一子と二也の夫婦の話であって、ほかの夫婦だったらまた違う「いい夫婦」になるんじゃないですか。僕自身は、「いい夫婦」っていう形を、二人で探していくというのがいいんじゃないかなと思いました。
不倫現場を見られたような気持ちに
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――それにしても、二也が美月に剣山で刺されるシーンは、原作で知っていても、声が出るくらいびっくりしました。
剣山が出てくるシーンは、丸一日かけて撮影していたんです。その日、出番のない高畑さんが差し入れを持ってきてくれたんですが、高畑さんが来ると、一子に不倫現場を見られたような気持ちになってしまって……(笑)。それを高畑さんも察したのか、差し入れを渡したらすぐに帰っていかれました。去っていく高畑さんに申し訳ない気持ちになりました(笑)。
――説妙なバランスの必要なシーンでもありますよね。
剣山のシーンについては、今泉監督もすごく悩んでいました。どんな風に演じることが正解か、なかなかわからなかったんです。二也がみじめに見えるので、結果的に笑えるという風に演じたらいいのか、それとももっとシリアスな感じで行くのがいいのか、そのバランスで監督は悩まれていたんですけど、いざやってみたら「こんな面白いシーンはないですよね!」ということになりました。だって二也は刺されたのに「大丈夫、大丈夫」って意味のわからない強がりを見せたうえに刺した美月を気遣う優しさもある。このシーンには、二也の強さと弱さの両方が滲み出ていて、結局は、このバランスで大丈夫なんじゃないかなっていうところに行きつきました。今泉さんの映画は、どの映画でもそういう絶妙なバランスがあって、だからこそ面白いんだと思いました。今まで映画を見ていて感じていたことが、実際に撮影してみて体感としてわかったことも良かったですね。
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――どんなに酷いことをされても許せるところが、二也の「強さ」なのかもしれないですね。
刺されたら男性の機能を失う可能性だってあるようなことが起こりましたからね。全体を通して、二也というのは、優しくて他者を許せる人間として描かれていたので、なかなかそんな人って、いない存在なのかなって思いました。
岡田将生(おかだ・まさき)
1989年8月15日生まれ、東京都出身。2006年に俳優デビュー。近年の主な出演作として映画『ドライブ・マイ・カー』(2021)、『1秒先の彼』(2023)、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021)、『ザ・トラベルナース』(2022)『ゆとりですがなにかインターナショナル』(2023)などがある。映画『ラストマイル』が8月23日公開予定。
文=西森路代
写真=平松市聖
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