「ステキな人と仕事がしたいし、いい人って言われたい」岡田将生が仕事上の“人間関係”に思うこと
CREA WEB / 2024年6月14日 7時0分
6月14日からPrime Videoにて世界独占配信開始される『1122』に主演の岡田将生さん。近年は『ドライブ・マイ・カー』や『ゴールド・ボーイ』などに出演。今年は塚原あゆ子監督、野木亜紀子脚本の『ラストマイル』の公開も控えており、演技の評価もますます高まっています。
複雑で多面的な役を次々と演じる岡田将生さんのプライベートは意外にも「シンプル」だとか!? インタビュー後篇をお送りします。
いい人とお仕事がしたいと感じるように
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――岡田さんは、デビューされた10代から今に至るまで、複雑な役を演じられているイメージがあります。役に関しては、自分でこういう人物を演じたいということが、若い頃からあったのでしょうか。
自分では分からないんですけど、影のある役は多かったですね。そういう顔つきに見えるんですかね? それは、僕のほうがみなさんに聞きたいことなんですよ。それに10代の頃って、周りの俳優仲間はみんな不良系の役をやっていたんですよね。そういう作品も多かった時代だったので。なのに一度もそういう作品に呼ばれなかったので、不良役、ヤンキー役で、みんなで「わあーーー!」って言いながらケンカとかする役をやってみたかったです(笑)。無口で影のある役が多くて、そういう役には縁がなかったので。
――では、10代の頃は自分で意識して選んでいたわけではなかったということですか。
ぜんぜんないですね。ちゃんと意識して、「こういう仕事をしてみたい」と明確に思うようになったのは、20代前半で。その頃から自分で作品を選んだりするようになりました。選ぶ時に意識するのは、この『1122』もそうですけど、いただいた脚本が圧倒的に面白いということに尽きると思います。
あとは、僕は今年35歳になるんですけど、なるべく人間関係を円滑にしたいという気持ちがありまして。僕自身も「あの人はいい人だよ」って言われたいし、そう言われている人とお仕事をしたい。今回も「今泉さんは僕たち俳優に寄り添ってくれる監督だよ」ということを聞いていたので、そういう方とお仕事をしたいなって思ったことも理由の一つです。
――「いい人でありたい」という思いはあるけれど、演じる役は複雑な役も多いという。でも、人間を複雑に描いてる映画は、いい映画でもありますしね。
そうですね。複雑で多面的な役のほうが演じていて楽しいというのはあります。そういう役をいただけたら絶対にやると思います。あえて選んでいるという意識はなかったんですけど、やっぱりそういう複雑で多面的な役を演じてることが多いとしたら、僕が無意識に選んでるんでしょうね。
私生活は、シンプルでつまらないもの
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――以前のインタビューでは、若い頃は監督や脚本の意図するものがなかなかわからなかったということを書かれていて、それがもちろん経験を積み重ねてわかるようになったということだったんですが、そういう機微みたいなのは、普段も気づいたりしますか?
それが、もうプライベートではそういう機微を読んだりってこともなく、まあ気ままに自由に生きてますね。もちろん、映画や小説にたくさん触れるようにはなりましたけど、私生活は、シンプルでつまらないもんです(笑)。だからこそ、刺激を求めて複雑な役をやろうと思っているほうかもしれないですね。
――自由に生きてるということでしたが、自分が気持ちが楽になるために何かやっていることはありますか?
もちろん友人と飲んだりご飯を食べたりするのも好きなんですけど、一人で飲んだりご飯を食べたりすることも好きで。一人の時間がないと、つらくなっちゃうほうなんです。だから撮影中であっても、一人でご飯作って、お酒を飲んだりする時間を作っています。人によっては、常に誰かといないとダメって人もいらっしゃると思うんですけど、僕は一人の時間が大切な方かもしれないです。
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――前半でも「剣山のシーン」についてのお話を聞きましたが、あのシーンは笑ってはいけないかもしれないけれど、笑ってしまうという、ある意味、人間の複雑さが表れているシーンでした。
演じている現場でも、深刻というよりは、笑いが起こる雰囲気でやっていました。そもそも、剣山が刺さったときの痛さがどれくらいなのかわからなかったんで、この状態では動けるものなんでしょうか? とかいろいろ聞きながらやっていました。しかも二也が、罪悪感もあるし、そのせいで美月を気遣う優しさも出てきて、そんな風にしているうちに、みじめさに繋がっていく。あそこのシーンは、「二也、バカだな、ダメなやつだな」と思ってほしいし、そういうところが二也の愛すべきポイントの一つになっていると思います。
――岡田さんも仰る通りで、二也にキュートさがないと、見ていてイライラされるシーンだったのかなと思いましたが、バランスが絶妙でした。
そこについては、わりと早い段階から考えていて、二也の声のトーンなどについても試行錯誤しました。トーンや語尾を少しあげてみたりして演じてみたんです。もしそのトーンでやってみて、現場で「違う」って言われたらやめようと思ってたんです。そこを見誤ると、二也のキュートさが伝わらなくて、嫌われるキャラクターになると思ったので。でも、そんなバランスを早めに見つけられたのもよかったし、一子の声のトーンとのバランスもよかったと思います。
年々、わかってきた“本読み”の大切さ
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――声のトーンについては、どのように考えて、高いトーンにたどり着いたんですか?
僕は普段一人でいるときには、すごくトーンが低いんですよ。だから、なるべくトーンをあげたほうが、剣山のシーンのようなことがあったときに、みじめさにも繋がりやすいという思いもあったんです。それと、さっきも言ったように一子ちゃんとのバランス。それをやってみたら、監督もそのままでいきましょうというリアクションをしてくださったんです。それがわかったのが本読みの段階だったんですけど。年々、本読みの大切さがよりわかってきました。
――私たちのように、映画やドラマの一視聴者としては、岡田さんの出演されていた『ドライブ・マイ・カー』で「本読み」について、よりどういうものなのかを知ったというところはあります。
僕もやはり『ドライブ・マイ・カー』から意識が変わったところがあります。相手の声やトーンを本読みでまず知ることによって、役が立体的に変わるんだという感覚がわかりました。それと、全体を通して読むことによって、バランスもすごくわかるんです。それによって、自分がどの部分で浮いていたかとかも分かるようになって。もちろん、いろんなやり方はあると思いますが、本読みやリハーサルを重ねることによって、作品の強度が変わってくるんだなということがわかりました。
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――本読みを重ねたことで、即興性も生まれることもあるんですか?
驚きや発見があります。ここは「こういう風に読むんだ?」とか「ここはけっこう低いトーンなんだな」とか。声だけに集中してみると、気づきがあるし、セッションみたいな感じで、台本を読んだときに感じていた感情と、実際に声を出しときに受ける感情とが違っていることもあって、いろんなことに気づけます。それと、僕はまだ見たことないんですけど、リーディングだけでやる舞台もありますよね。そういうことにも興味があります。
――リーディングの舞台ではないですけど、『いきなり本読み』というのもありますよね。
岩井秀人さんがやられている公演ですね。面白い企画だなと思っていました。やっぱり本読みって、その日のテンションも出るし、どんどんセッションで変わっていったりするし、即興性もあって。声ってすごく大切だなって思いますね。
高畑さんの自由なお芝居を見られるのが楽しかった
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――実際に『1122』の撮影で、最初に台本を読んだ感じから変化していったシーンはありましたか?
本読みをやった後に、現場に入って、セットとか部屋の様子を見て、その中で撮影をすると、それでまた変わり、臨機応変にやっていると、役が少しずつ立体化されていく感覚がありました。初日の撮影で、一子ちゃんと二也は夫婦として7年目の空気がないといけないわけですけど、それまでに、本読みや食事会で実際にみんなで会う機会を重ねて、事前に関係性を作れていたからこそ、安心して現場に行けるということもありました。それと、高畑さんが自由にお芝居をされる方なので、毎日一緒に演じていて楽しかったです。今回の二也は、どちらかというと受けの印象があるので、一子ちゃんの言ったことにどう返すのが正解なのかを監督と探る時間は、すごくいい時間でした。
――岡田さんも役によっては、受けの演技ではなく、自由にやるときもあるんですか?
この前公開された『ゴールド・ボーイ』という映画は、基本的にめちゃめちゃ自由にやらせていただきました。でも、自由にやるためにはめちゃめちゃ準備もしないといけないですし、監督ともお話しないといけないですよね。色々やり方はあって。なので役によっても、現場のあり方によっても違ってくる。自由度のある現場もワクワクしますね。
岡田将生(おかだ・まさき)
1989年8月15日生まれ、東京都出身。2006年に俳優デビュー。近年の主な出演作として映画『ドライブ・マイ・カー』(2021)、『1秒先の彼』(2023)、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021)、『ザ・トラベルナース』(2022)『ゆとりですがなにかインターナショナル』(2023)などがある。映画『ラストマイル』が8月23日公開予定。
文=西森路代
写真=平松市聖
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