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【まだ見ぬ台湾に出合う旅】 「星のやグーグァン」からたどる 原住民の暮らしと日本の面影

CREA WEB / 2024年6月2日 17時0分


吊橋で渓谷を行き来する、温泉情緒あふれる「谷關(グーグァン)温泉」。

 台湾・台中駅から東へ車で1時間半。3,000メートル級の山々に抱かれた温泉郷、谷關(グーグァン)の高台に「星のやグーグァン」はあります。日本統治時代に湯治場として発展した谷關は、台湾原住民・泰雅(タイヤル)族の集落としても有名。現在発売中の「CREA Due 愛しの台湾」でご紹介しきれなかったアクティビティに沿って、古の谷關を旅します。



谷關の変遷をたどる「グーグァン歴史散策」は、毎週金・土・日曜の朝開催。

日本の面影が残るレトロ温泉街を歩く

「星のやグーグァン」では、谷關(グーグァン)温泉の歴史をたどるアクティビティ「グーグァン歴史散策」を開催。スタッフのガイドでレトロな温泉街を歩きながら、土地の歴史をさかのぼります。

 日本統治時代の1907(明治39)年、台湾原住民の泰雅(タイヤル)族によって発見された谷關温泉。大甲渓の流れに削られた谷間に、いまもこんこんと湧き出ています。当時は「明治温泉」と呼ばれ、警察の招待所もつくられた台湾有数の保養地でした。


ノスタルジックな「明治温泉老街」を歩き古の日本にタイムトリップ。

日本統治時代の警察の招待所は、戦後、台湾警察の保養所として引き継がれている。

全長1.5キロのハードめなトレッキングコース「捎来(サオライ)歩道」につながる道。

ブーゲンビリアなど色鮮やかな南国の花が一年を通してみられる。

 泰雅族の意匠が施された温泉街のランドマーク「谷關吊橋」から下をのぞくと、水着姿で和気あいあいと温泉を楽しむ老若男女が。台湾の温泉はこのスタイル(水着&混浴)が多いのですが、日本の銭湯に似た親しみを感じます。界隈には、比較的大型のスパリゾートが立ち並び、いずれも趣向を凝らしたお風呂が楽しめる“温泉天国”となっています。


1986年に完成した谷關吊橋は全長100メートル。最近、補修工事が行われたとか。

谷關でよく見かけるひし形の意匠は、泰雅族の先祖の目を表し魔除けの意味がある。

観光客も地元の方もプール気分で温泉を楽しんでいる。ここは「谷関大飯店」の一部。

渓流の両岸に見られる切り立った崖。河川が山を削り取ってできた谷關らしい景観。

水力発電所が売るアイスキャンディの謎

 谷關吊橋を渡って少し歩くと見えてくるのは、水力発電所の宿舎。中には入れませんが、こちらの購買部で販売されている名物のアイスキャンディは「星のやグーグァン」でもいただくことができます。

 なぜ水力発電所でアイスキャンディなのか? それは、ダム建設の際、コンクリートの冷却のために導入された製氷機を利用して、従業員のサービスとしてつくられていたものが、後に一般販売されるようになったものだそう。

 ミルク、梅子、フルーツなどさまざまなフレーバーがありますが、珍しいのが「五葉松」。いわば松の葉の青汁味なのですが、意外と爽やかでおいしいのです。騙されたと思って食べてみてください。


台湾電力の水力発電所の宿舎。建物自体は、日本統治時代からあるものだとか。

水力発電所名物のアイスキャンディ。湯上がりの喉を潤すのに最適。

 温泉街の中心には、2021年にリニューアルした谷關のビジターセンター兼博物館があります。谷關の歴史や地理、変化に富む生態系などがわかりやすく紹介されており、谷關ツアーの拠点として、休憩スポットとしても覚えておきたいスポット。豊かな自然の中に生息する鳥の図解や蝶の標本展示は一見の価値ありです。


博物館は地下2階まであり見た目より広い。

多種多様な蝶が生息している谷關の森。その美しい造形と色はまさに大自然の神秘。

「星のやグーグァン」では、ほかにも地域の自然や文化に親しむさまざなアクティビティがあります。お次は、泰雅族の暮らしや文化に触れる館内でのアクティビティをご紹介します。

泰雅族の口琴が奏でる神秘の音色


泰雅族の先生によるアクティビティ「タイヤル族の調べ」は毎週月・火曜の午前中に開催。

 谷關は温泉地として開発される以前から、台湾原住民・泰雅(タイヤル)族の集落があった場所。その独自の文化、言葉、風俗習慣の一旦を知ることができるアクティビティが「タイヤル族の調べ」です。

 泰雅族の起源にまつわる伝承や、ミステリアスな紋面(顔の入れ墨)、女性の必須技術であった織物、楽器でありコミュニケーションツールでもある口琴について紹介する座学は、興味深い話の連続。

 紋面は、男性なら狩猟、女性なら織物の技術を習得して初めて入れることが叶う、一人前(成人)の証。また女性は、結婚できる年頃になると花嫁衣装のための機織りを始め、技術の優劣で女性的地位が決まっていたとか。


泰雅族の口琴と、女性たちが技を競う美しい織物。

口琴の主な材質は台湾真竹。もっともよい音色が出るのは“3年もの”だとか。

 口琴は本来、男性がつくるもので、女性への求愛にも使われたそう。また情報伝達にも使うことができたため、日本統治時代に禁止され、その技術は徐々に失われてしまったという悲しい歴史があります。

 座学の後は、本物の竹を彫刻刀で削って口琴をつくるワークショップ。つくるのはリードが1本のもっともシンプルなタイプですが、けっこう本格的です。


リード部分を慎重かつ力強く削っていく。先生も手伝ってくれるのでご安心を。

演奏もレクチャーしてくれる。つくった口琴はおみやげに。

 出来上がった口琴は、もちろん使用可能。口元で固定し、紐を引っ張ると、リードが振動してビョーンという音が出ます。口の開き方によって音の高低や調子が変わり、言葉代わりになったというのも納得。

 口琴は、東南アジアおよびユーラシア大陸にも広く分布している楽器で、日本ではアイヌの「ムックリ」が有名。泰雅族の口琴も、どこからどのようにして伝わってきたのか、興味はつきません。


泰雅族の暮らしに欠かせない竹は「星のやグーグァン」のアプローチにも活かされている。

ご当地フードを洗練されたスタイルで


ランチメニューの「爌肉飯(コンローハン)」。

「星のやグーグァン」は連泊するゲストが多いこともあり、食事のバリエーションが豊かです。夕食は台湾の食材を取り入れた日式の会席料理と、ルームダイニング用のアラカルト。朝食は、台湾式のお粥セットのほか、和食、洋食を用意。昼食は台湾ならではのコンローハン(豚角煮丼)や牛肉麺のほか、稲庭うどん、カレーなどの日本的なメニューが揃います。


澄んだスープとやわらかな牛肉でスルスル食べられる「星のや牛肉麺」。

 木々の間に水路を巡らせたウォーターガーデンを望む湯上がり処では、10時半から11時半の時間帯に「谷茶のひととき」というサービスを実施。ドリンク&オリジナルスイーツが振る舞われます。時期によっては客家(ハッカ:中国大陸南部~台湾に住み独自の文化を持つ民族)の「擂茶(レイチャ)」が振る舞われることも。

 14時半から16時半までは、オリジナルカクテル&モクテルのサービスを実施しています。木々や睡蓮、トンボや蝶を眺め、せせらぎに耳を傾けながら、心安まるひとときを過ごせます。※「谷茶のひととき」およびカクテル&モクテルのサービスは、季節により内容、時間、場所が変更されることがあります。


ナッツや穀物を茶葉とすり合わせた客家の「擂茶」。

擂茶はトロリとしてほのかに甘い口当たりの“食べるお茶”。

台湾らしい素材を使ったカクテル&モクテルが楽しめる。

文旦のジュースと乳酸飲料を合わせグレナデンシロップで甘みをプラスしたモクテル。

チェックイン時に客室に用意されていたのは和菓子。どこか台湾フレーバーなのが面白い。

 ソファを配したライブラリーラウンジでは、フリーのコーヒーやお茶を片手に、地域の文化や旅などに関する本を自由に読んだり、チェックアウト前のひとときをゆったりと過ごすことができます。同フロアのショップでは、お土産にぴったりなオリジナルパッケージのお茶、お菓子、泰雅族にゆかりのある竹細工の雑貨などが揃います。


庭の竹林を眺めながら、ゆっくりと流れる時間に身を任せて。

パイナップルケーキやドライフルーツ、素敵な茶缶に入ったお茶も販売。

使うほどに味わいが増す竹細工のウォレットやマグカップ。

清らかな水の気配に満ちたサンクチュアリ


ホテルの中心は湧水を巡らせたウォーターガーデン。白鷺もこの庭が気に入ったよう。

「星のやグーグァン」のパブリックエリアは、豊かな温泉と台湾中央山系の湧き水、周囲の自然に溶け込む緑を軸にデザインされています。どこにいても水の気配に包まれ、ただそこにいるだけで心身が浄化されていく感覚。

 泰雅(タイヤル)族とも縁の深い竹林のアプローチを抜けて館内に入ると、まず目に飛び込んでくるのが、レセプション正面に掛けられた、谷關の水と山をイメージした水彩画。ほかにも、水・光・生命をテーマに台湾人を含む28人のアーティストが制作した111作品を見ることができます。


色彩のハーモニーが美しい内海聖史さんの作品「頭上の色彩」。

正面左側には、谷關を蛇行する川を表現した酒井祐二さんの「蛇行する川」。

白磁作品で有名な台湾の陶芸彫刻家・黄莚㭹さんの「淡青流釉、甜白流釉」。

右手の壁に掛かるのは、台湾の陶芸作家・呉偉丞さんの「横看成嶺側成峰」。左奥は、日本の室礼に現代美術を取り込んだ作品で知られる橋場信雄さんの「サンクチュアリ」。

 湧き水の水路が張り巡らされたウォーターガーデンには、いつも心地よい水音が響き、木々の合間を爽やかな風が抜け、かぐわしい花の合間に蝶が舞う別天地。プールや温泉の露天風呂も水の流れに沿ってつくられているため、敷地全体がひとつの生命体のような美しさをたたえています。

 森に湧く泉のようなプールに遊び、ウォーターガーデンに点在するガゼボでくつろぎ、肌当たりのやさしい温泉につかり、サウナで思い切り汗をかいて、露天風呂で自然に溶け込む。本物のラグジュアリーとは、こうした無為な時間をいうのかもしれません。


樹齢100年以上の松や杉の木立ちを縫うように水路を巡らせたウォーターガーデン。

ウォーターガーデンには、ゆったりとしたソファのあるガゼボが点在。

庭に向かって開かれた回廊。どこにいても水のせせらぎと木漏れ日に癒される。

外の景色を絞り込むように窓を設けた内湯。その向こうは緑に包まれた露天風呂。

泉質は無色無味の弱アルカリ性炭酸水素塩泉。肌にやさしく湯当たりしにくい。

露天風呂エリアにあるサウナ。極上の外気浴が約束されている。

大浴場へつながる回廊もくつろぎのスポット。日が落ちると花の匂いが際立つ。

 客室は、ほとんどがメゾネットタイプで、温泉の半露天風を完備。メゾネットの理由は、温泉専用のフロアをつくり、その両面に窓を配して、心地よい風を取り入れるためだそう。湯上がりにくつろぐためのスペースもあり、かけ流しの音をBGMに、プライベートな時間を満喫できます。

 また、リビング&寝室フロアは天井の高さまで一面に張られたガラス窓が、屏風絵のような景色を描き出します。とりわけ、山に靄がかかった朝は幻想的な水墨画のよう。いつまでも心に残ります。


温泉フロアは、ルーバーを調整することで開放感UP。

日没直後の空と山のシルエットも美しく、思わず見入ってしまう。

 谷關の自然と共鳴するような建築、ランドスケープデザインで、台湾に数ある温泉リゾートのなかでも抜群の人気を誇る「星のやグーグァン」。賑やかな街なかとはひと味違う、“まだ見ぬ台湾”に出合えます。


3,000メートル級の山々に囲まれた「温泉渓谷の楼閣」。

星のやグーグァン

所在地 台中市和平区博愛里東關路一段温泉巷16號
電話番号 050-3134-8091(星のや総合予約)
宿泊料金 1泊1室あたり18,000元~(税サ別・食事別)
客室数 49室
チェックイン15:00/チェックアウト12:00
アクセス 高鉄台中駅から車で1時間半
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/hoshinoyaguguan/
●Wi-Fiあり

文=伊藤由起
写真=榎本麻美

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