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火事からの復活を遂げた老舗宿が50年後も価値のある宿をめざす〈後篇〉雲上の絶景テラスで味わう至福の時間

CREA WEB / 2024年6月8日 7時0分


雲のじゅうたんのような雲海を間近に望む。

 週末に、心が洗われる別世界へ出かけてみるのはいかが。少し車を走らせれば、そこにはおもてなしの心に満ちた極上の宿が待っている。

 旅行作家の野添ちかこさんが、1泊2日の週末ラグジュアリー旅を体験。今回は長野県・湯田中温泉の「松籟(しょうらい)荘」へ。そこから車で約20分の場所にある、雲海を望む絶景スポット「SORA terrace」に立ち寄った。


ロープウェイに乗って、夏でも涼しい雲上の楽園へ


山頂駅をめざして、いざロープウェイに乗り込む。山麓駅には駐車場も完備。

 標高1,770メートル。緑の山々が目の前に広がる。ここは、「SORA terrace」。

 冬季には、パウダースノーでスキーやスノーボードが楽しめる「竜王スキーパーク」として営業する「竜王マウンテンリゾート」の一角だ。グリーンシーズンは幻想的な雲海や夕日を眺められる絶景スポットとして人気である。

 ロープウェイは166人乗り、20畳ほどの大きさで、10分も乗っていれば、ロープウェイ山頂駅に到着する。途中、左手にはグランピング施設のドーム型テントが見えて、このエリアに宿泊している人がいることを知る。

 山頂駅に到着すると、目の前に高社(こうしゃ)山、その奥に斑尾山と妙高山、左手には黒姫山、戸隠山、飯綱山と北信五岳の山々が見渡せる。

 斑尾山と妙高山、高社山の3つの山が重なって見えるのが、竜王ならではの景観だという。


訪れた日はロープウェイ山頂駅からこんな景色が見えた。

 夏場でも、20度を超えることがない高原の気候。山麓駅と山頂駅では標高差は800メートルあって、温度も5度くらい違うから、下界がどんなに暑くとも山の上は涼しくて、避暑には最高の環境である。

 SORA terraceの開業は平成27(2015)年8月。2023年は4月末~11月上旬までのシーズン中に、7万人もの人が訪れた人気の映えスポットである。

 緑の山を眺めたり、山上のハーブガーデンを散策したり、カフェでまったりしたり。過ごし方は人それぞれだが、「雲海」が出やすい時間や日を狙って訪れる人が多いという。

 雲海は空気の澄んでいる冬季に発生しそうなイメージだが、意外なことに、夕立が降り、昼と夜の寒暖差が大きい夏が、雲海が最も発生しやすいシーズンだという。


もくもくしていたり、滝壺のように見えたり、雲海の形は千変万化。

 グリーンシーズンに絶景スポットとなるスキー場は全国にたくさんあるが、どこでも雲海が出るわけではない。

 竜王マウンテンパークは周囲を山々に囲まれた盆地にあり、日本海からの湿った風が山にぶつかり、逃げ場がなくなった水蒸気が雲となって留まる地形。そのため、天候状況によっては一日中、雲海が出るときもあるのだとか。

 晴れていれば出るというわけでもなく、訪れた5月某日はあいにく雲海は出ていなかった。雲海が発生しやすい条件は下記の通りである。

1.山麓の気温が下がる朝や夕方の時間帯
2.山頂に雲や霧がかかっているとき
3.夕立など急な雨が降ったとき
4.日中と夜間の気温差が大きいとき
5.霧の中でも空に日差しが見えたとき

 そんな時間や日を狙って訪れ、非日常を味わってみてほしい。

雲海をイメージしたスイーツを楽しみ、雲海サンセットを眺める


一度は見てみたい、幻想的な雲海サンセット。

 昨シーズンの雲海発生率は62.5%。5日のうち3日以上雲海に遭遇できるという計算だが、特に狙い目なのが6~9月だ。なかでも6、7月は雲海発生率が劇的に上がる。

 夕日と雲海が一緒に見られる「雲海サンセット」の時間帯がいい。雲海の先に沈む夕日が黄金色に輝き、刻一刻と移り変わる幻想的な景色が眺められる。

 また、2024年は7月13・14日、8月10~12日、9月14・15日に、山頂のライトをできる限り消灯し、星空観賞をする「星空ナイトクルーズ」も開催、夕方から日没にかけてロープウェイを増便する。期間中は星空のもと、「星空ナイトシネマ」の映画を無料で見ることができる(8月10・12日は除く)。

 360度遮るものがない、美しい星空は唯一無二。ロマンチックな夜を過ごせるとあって、例年カップルに特に人気だ。


青い花が可憐なブルーポピー。

 SORA terraceの日中の見どころは、9つのテーマごとにかわいらしい山野草やハーブ、季節の花々が咲き誇る「雲海ハーブガーデン」だろう。

 春先から植えられたさまざまな植物たちは、初夏に美しい花を咲かせる。6月下旬から7月中旬に見頃を迎えるのが、「ヒマラヤンガーデン」に咲くブルーポピー。本来はヒマラヤに生息している花だが、竜王マウンテンパークにも根づき、毎年来訪者の目を楽しませてくれる。

 そのほか「ヒマラヤトラノオ」「ヒマラヤユキノシタ」なども植えられている。また、「山野草の庭」では長野県内の山々で咲く高山植物も観賞できる。

 雲海ハーブガーデンで採れたフレッシュハーブを使ったドリンクは、「SORA terrace cafe」で提供されているので、散策に疲れたら立ち寄ってみよう。


雲海をイメージした「SORA KUMO」とコーヒー。

 天空のカフェ・SORA terrace cafeは暖炉とゆったりとしたソファ、カウンター席のあるカフェ。大きな窓から外を眺めれば、まるで雲の上に座っているような、不思議なロケーションである。

 用意されているメニューは「雲海パイ包みスープ」や「クラウドボロネーゼ」など、雲をイメージした食事や、雲海マシュマロを浮かべた「SORA珈琲」など。メレンゲとホワイトチョコレートを固めた雲の形のスイーツ「SORA KUMO」はベリーソースがアクセント。コーヒーとともに味わおう。

 ソファに置かれたクッションが雲の形だったりするのも楽しい。「雲海ライブラリー」には雲や空、絶景に関する本が置かれているのでゆっくり読書をするもよし。

 ロープウェイの運行は20分間隔なので、時間をうまく調整して、遅れずに乗り込みたい。

SORA terrace

所在地 長野県下高井郡山ノ内町夜間瀬11700
営業時間 9:00~19:00(4月27日~9月29日)、9:00~18:00(9月30日~11月4日)
料金 2,400円~(ロープウェイ往復乗車券)
https://ryuoo.com/green/sora_terrace/


野添ちかこ(のぞえ・ちかこ)
温泉と宿のライター/旅行作家

「心まであったかくする旅」をテーマに日々奔走中。NIKKEIプラス1(日本経済新聞土曜日版)に「湯の心旅」、旅の手帖(交通新聞社)に「会いに行きたい温泉宿」を連載中。著書に『旅行ライターになろう!』(青弓社)『千葉の湯めぐり』(幹書房)。岐阜県中部山岳国立公園活性化プロジェクト顧問、熊野古道女子部理事。
https://zero-tabi.com/

文・撮影=野添ちかこ

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