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映画『BELIEVE』監督が明かす広瀬すずがナレーションを思わず“忘れた”瞬間「そのとき手応えを」

CREA WEB / 2024年6月6日 11時0分

 開催国枠で出場した東京オリンピックでは、予選3戦全敗。長く勝てない状況を打破すべく、ヘッドコーチに就任したのが、同大会で女子日本代表を銀メダルに導いたトム・ホーバス氏でした。

 迎えた昨年の「FIBA バスケットボールワールドカップ2023」。日本はアジア勢最高位となり、48年ぶりに自力でのパリオリンピック出場を果たします。

 その彼らの激闘を描いた映画『BELIEVE 日本バスケを諦めなかった男たち』には、独占インタビューなどによって明らかになった、大会の舞台裏や選手たちの想いが詰まっています。そこで映画には映らなかった秘話などを、大西雄一監督に教えてもらいました。(全2回の後篇。)


ベネズエラ戦のワンプレー


大西雄一さん。

――前回のインタビューで、試合映像を50回以上見たとおっしゃっていましたが、思い出に残っているシーンはありますか?

 あります。まずワールドカップで17年ぶりに勝利したフィンランド戦は、多くの人があの試合の意味も分かっているし、強く印象に残っていると思うんです。

 それに比べると、次に勝利したベネズエラ戦は印象が弱いと思うんですね。逆転劇としてもフィンランド戦が18点差、ベネズエラ戦が15点差ですから、フィンランド戦の方が目立つ。

 ただ、15点差を逆転したあの瞬間。馬場(雄大)さんが、こぼれたボールを自陣からゴール下まで運び、最後は自分で行かずに比江島(慎)さんにパスを出しましたよね。僕はあのプレーこそ、AKATSUKI JAPANの「信じる思い」が全てこもった、ワールドカップを象徴するワンプレーだと思っています。

――信じる力、タイトルのBELIEVEにも通じますね。

 実は最初に僕がもらった企画書では「諦めなかった男たち」というタイトルだったんですよ。でも、もっとあのワールドカップを思い出せるタイトルにしたいと思ったときに「BELIEVE」という言葉が思い浮かんだんです。


大西雄一さん。

――以前、トム・ホーバスHCに取材をしたことがあるのですが、ワールドカップでは粘り強く、何度も選手たちに「信じることが大切だ」と伝えたとおっしゃっていました。

 わかります。だからインタビューでも全員に「信じる力を感じた瞬間はいつでしたか?」と聞きました。多くの方がおっしゃっていたのは、フィンランド戦で18点差がついたときのこと。とても厳しい局面でしたが、あのときチームの誰1人として諦めていなかったし、負けると思っていなかったというんです。

 では彼らはなぜ、そこまで信じてこれたのか。映画では、世界のどのチームよりも長い時間、コツコツと練習をしてきた話にフォーカスをしているのですが、それ以前に選手の皆さんがおっしゃっていたのが「トムさんが自分たちを信じてくれたから、自分たちも信じられた」と。彼らの信じ合う関係性はすごいなと思いましたし、手前味噌ですが、本当にいいタイトルにしたなと思っています(笑)。

日本代表にはわがままな選手は1人もいない

――インタビューの中で印象に残っていることはありますか?

 今回、日本代表のレジェンドとして田臥勇太さんと佐古賢一さんにお話を伺ったのですが、佐古さんが「自分たちは時間を止めないようにもがいていた世代だ」とおっしゃっていたんですね。勝てないかもしれないけれど、でも次の世代に繋げていかないといけないと。

 そして、その佐古さん世代の思いは、田臥さんたちの世代に引き継がれていきます。

 前回のリオ五輪の日本代表は田臥さんが最年長で、そこに今回最年長の比江島さんもいました。このエピソードは映画では使えなかったのですが、比江島さんが当時のことを「日本初のNBAプレーヤーとしても有名で、最年長なのに、リバウンドにもルーズボールにも突っ込んでいって。愚直にプレーをする姿を見せて、あとは下の世代がやりやすいようにチームの雰囲気を作ってくれた」と話してくれて。そして、その田臥さんの背中を見て、今回のワールドカップでは、僕も同じようにしようと思っていたと言うんです。

 過去の勝てない代表を経験している選手たちがチームの雰囲気を作っていく。世代の融合が受け継がれてきた結果が、今の日本代表なんです。

 これはトムさんがおっしゃっていたのですが「日本代表にはわがままな選手は1人もいない。チームファーストの選手が集まっている。ベネズエラ戦で速攻した馬場さんをフォローしようと、みんなが走ったあのプレーは、本当にうちのチームを象徴するプレーでした」と。


大西雄一さん。

――今回、練習風景やロッカールームの映像もありましたが、コートの外でもチームの一体感を感じられますよね。

 そうなんです。例えば、西田(優大)さんは、今大会であまりゲームに出る機会がありませんでした。でも練習では、ずっと相手側のフォーメーションなどを担当していたそうです。これは自分たちのフォーメーションに加え、相手チームのフォーメーションも覚えていないとできないこと。ベンチの選手たちも、チームのために、そういう目に見えない努力をしていたんです。ジョシュ(・ホーキンソン)選手も、リバウンドやゴールシーンがフォーカスされがちですが、目立たないところでずっとスクリーンをして、壁になっていたり。

 点は取らないけれど、スタッツ(個人のプレー成績)には表れないけれど、全員がチームのために何ができるかという共通認識を持って、考えて、あの場に立っていた。

 もしかしたら映像では表現しきれないかもしれないけれど、ああいう彼らの思いを届けたいと思って、作っていました。

「見入ってしまって、読むのを忘れちゃいました」

――バスケファンも満足する映画を目指したとおっしゃっていましたが、完成して、手応えはいかがでしょう?

 選手や監督はまだご覧になっていないと思うので、ちょっと心配ですね(笑)。ただ、制作中に手応えを感じたことがあって。今回、ナレーションは、現地でスペシャルブースターを務めた広瀬すずさんにお願いをしたのですが、収録のときに、僕がこだわった、ベネズエラ戦の逆転につながるプレーのシーンで、彼女が台本を読むのを忘れちゃったことがあったんです。


大西雄一さん。

 そのとき広瀬さんが、「あ、監督すみません。見入ってしまって、読むのを忘れちゃいました」っておっしゃって。現場を知っている広瀬さんですら、ナレーションも入っていない素の映像に見入ってしまうのかと思ったんです。あれで、この映画は熱烈なバスケファンの方に見ていただいても、満足していただける出来になっているのではと手応えを感じました。

――最後に、まもなくパリ五輪ですが、AKATSUKI JAPANにどんなことを期待していますか?

 僕はバスケ素人なので、ディテールを言う立場ではないですが、とにかく僕は彼らを信じ続けています。日本はベスト8を目標に掲げていますが、選手も、コーチも、スタッフの皆さんも勝てると思って臨んでいるので、僕はそれを信じ続けるだけです。だからこそ、皆さんも選手を信じて、声援を送ってほしいと思います。

大西雄一(47)/監督

主な制作・演出歴
NHK BS 「WRC世界ラリー選手権」(2021年~継続中)
NHK BS1 「ワースポMLBスペシャルぜんぶ見せます! 激闘2020MLB」(2020年)
NHK総合 「テレビはどう伝えた?! 激動の世界」(※テレビ放送70年企画)
NHKBS4K・ブレミアム「よみがえれノートルダム大聖堂」(日仏共同制作)
NHKBS4K・プレミアム「天才ピアニスト・ブーニン 9年の空白を越えて~ハケ岳復帰公演 完全版~」
NHKスペシャル「ビジョンハッカー 世界をアッブデートする若者たち」ほか多数
NHK BS 「デジタル・アイ 北朝鮮 独裁国家の隠された“リアル”」
<映画> 2015年ドキュメンタリー映画「アンデスの英傑日本人・天野芳太郎の生涯」

文=林田順子
写真=石川啓次

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