井上芳雄が「録画して何度も観た」自身とミュージカル界を繋いだ“大きなきっかけ”とは?〈前篇〉
CREA WEB / 2024年6月13日 7時0分
チケットが手に入らない――。ミュージカルラバーの人たちの嘆く声が聞こえてくるほど、“ミュージカル界のプリンス”と呼ばれる井上芳雄さんが出演する作品は常にチケット難。
そんな井上さんが、今年もWOWOWで生中継される、アメリカの演劇及びミュージカルに贈られる最も権威ある賞として知られる『トニー賞』授賞式のナビゲーターを務めるそう。
「小さい頃からトニー賞を注目してきた」という井上芳雄さんに番組の見どころや今年の傾向、また、井上さんご自身のミュージカルへの想いなどをたっぷりと伺いました。
僕と世界のミュージカルを繋いでくれたのが、まさにこのトニー賞でした!
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――トニー賞授賞式の生中継番組ナビゲーターは6回目だそうですが、井上さんにとってトニー賞の存在についてお話しください。
ナビゲーターを務めるのは6回目ですが、番組に出演するのは10回目なんです。僕は番組に関わる前からトニー賞が大好きで、毎年注目して観てきましたし、「トニー賞でミュージカルの勉強をしてきた!」と言っても過言ではないので、それに自分が関われるのは嬉しい。趣味と仕事を兼ねているところがありますね(笑)。
小学校4年生くらいのときに初めてミュージカルを観て、そのあと、当時はNHKのBSで放映されていたトニー賞の授賞式を見た記憶があります。黒柳徹子さんが司会をされていて、ダイジェストのような番組でしたね。10年分くらいの受賞作品をまとめた企画などもあって、それをビデオに録画して何度も繰り返して観ました。
トニー賞授賞式のパフォーマンスで観たことのあるミュージカルがたくさんあり、それで勉強したり、トニー賞についてまとめた書籍も繰り返し読んで……。
――井上さんは昔からトニー賞博士だったんですね(笑)。
そんなに知識はありませんが、でも当時のブロードウェイの映像というのは、トニー賞授賞式くらいでしか観ることができなかったんですよ。今はYouTubeなどでも一部観られますけど、昔は情報源が限られていましたからね。
インターネットも僕が小学生のときは、まだなかったかも。出始めたくらいですからね。もちろん実家にはありませんでしたし。だから、どんな新しいミュージカルが生まれているかも、すべてトニー賞授賞式から知ることしかできませんでした。それらをその後、東宝や劇団四季が上演したり。「あの作品をやるんだ!」とワクワクした思い出もあります。
僕と世界のミュージカルを繋いでくれた大きなきっかけがトニー賞と言っても過言ではないと思います。
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――さて、第77回、今年のノミネート作品が発表になりました。一覧をご覧になって、今年の傾向みたいなものを教えて頂けますか?
例年、様々なタイプのミュージカルがノミネートされますが、今年はミュージカル作品賞においては、分かりやすく有名なものや映画原作のものといった、皆さんが聞いたことのあるような作品が実は最終的な候補にはあまり入っていないんですよ。
例えば、皆さんがきっと映画で観たことあるだろうという『バック・トゥー・ザ・フューチャー』は来年劇団四季が上演する予定ですが、これもノミネートには入ってないですし、映画『君に読む物語』のミュージカル版や、僕も出演したことがある『グレート・ギャツビー』が新しくミュージカルバージョンになったもの……。
いずれも話題でしたが、そういったものがノミネートには残らず、どちらかというと手堅い作品が残っているという印象です。しっかりと評価はあるけれど、大きく派手だったり、大スターが出ているというほどではない、“実”のある作品が残っている気がしますね。
――リバイバル・ミュージカル作品についてはどうでしょうか?
これは、いわゆる“再演”と言われるもので、元々ある作品を新しい視点や演出を加えて上演する作品の部門です。元々“名作”がリバイバルされているものが多いのですが、結構有名な人がノミネートされているんです。
映画『ハリー・ポッター』シリーズのハリー・ポッター役だったダニエル・ラドクリフがミュージカル・リバイバル作品賞にノミネートされている『メリリー・ウィー・ロール・アロング』に出演していて、ミュージカル助演男優賞にノミネートされています。
もうひとり、『ファンタスティック・ビースト』シリーズや映画版『レ・ミゼラブル』のマリウス役で有名なエディ・レッドメインが、同じくミュージカル・リバイバル作品賞の『キャバレー』のMC役でミュージカル主演男優賞にノミネートされていますね。
日本で上演されるチャンスがあればやりたい、胸を躍らせるような作品に出合える
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――映画でおなじみの方も出演していると、トニー賞やブロードウェイのミュージカルを知らなくても楽しめますね!
そうです! 「あ、映画でもこの人、見たことある!」となりますからね。あとは、今年も“ジュークボックス・ミュージカル”とか“マッシュアップ・ミュージカル”と呼ばれるものがノミネートされています。
それが、アリシア・キーズが企画から楽曲まで手掛けた『ヘルズ・キッチン』。僕が昨年、そして今年も出演させていただく『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』もそうなのですが、もともとあるポップスでヒットしているものを集めてミュージカルにして、そこに物語を見つけて、ミュージカル作品として上演するというものです。古いところでいうなら『マンマ・ミーア!』なんかがそうですね。
――『ヘルズ・キッチン』はノミネート数も多い印象です。
はい。全部で13ノミネートを受けていて、とても評価が高いようです。そういった、好きなアーティストの曲が使われている、というのもミュージカルに触れる一端になるはず。
だから、意外とノミネート作品を知らなくても、授賞式そのものを楽しむことは十分にできると思うんですよね。
――井上さんは、どんなことに気を配りながら、現地の様子を視聴者の方に伝えようと思っていらっしゃいますか?
門戸は広く、まったく海外のミュージカルや演劇が分からない方にも分かりやすく伝えていきたいと思っています。ですが、僕たちもブロードウェイの新作に対して知識が十分ではないので、毎回専門家の方が参加してくださいます。
同時に、アワードや賞というのは“歴史”でもあるんですよね。この人は何回も受賞しているとか、ずっとノミネートされていたけれど一度も受賞したことがなくて、今年初めて受賞しましたとか、そういう裏側のドラマも一緒にお伝えできたらいいですね。
例えば、トランスジェンダーで初めての受賞者というのが最近もありました。そういった現在の流れなどもお話しできたら、賞がさらに意味のあるものになると思います。
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――井上さんご自身も、トニー賞を受賞して、そこから日本での上演が叶った作品に多く出演されていると思います。トニー賞受賞作品を演じるうえでのプレッシャーなど、感じていらっしゃることを教えてください。
日本のミュージカル俳優はみんなトニー賞を見ながら、「自分はどの役ができるかな」「この作品やりたいな」というふうにチェックしていると思います。それは、きっと市村正親さんのような大先輩から、僕たちに至るまで皆が固唾を飲んで賞レースを見守っているわけです。
でも、同時に「やりたい」と思ったからと言って、できるかどうかはまた別の問題。そればかりは、やはりご縁なので、思ったようにはいかないんですけれどね。僕も10年ほどトニー賞授賞式に関わらせてもらっていますが、去年から出演している『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』は、番組でニューヨークの稽古場を取材させてもらったんです。
そのときは、自分がやるやらないはもちろん、日本での上演もまだ決まってない頃。ブロードウェイで上演される前の稽古場で小道具の説明を受けたりしました。今、自分がその小道具を使っているのを見ると、巡り合わせは感じますし、夢が叶ったという感覚もあります。『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』もトニー賞授賞式で紹介して、当時は自分がやるとは思ってなかったですが、ご縁がありましたね。作品との出合いは本当に一期一会です。
井上芳雄(いのうえ・よしお)
1979年7月6日生まれ、福岡県出身。東京藝術大学在学中の2000年にミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役で鮮烈なデビューを飾る。“ミュージカル界のプリンス”と呼ばれ、デビューから現在に至るまで、数多くのミュージカル作品に出演。ストレートプレイにも積極的に出演するなど、活躍の場を広げている。2021年からは『はやウタ』(NHK総合)で自身の歌番組のレギュラー司会を務め、2022年からは『行列のできる相談所』のMCとしても活躍。代表作に『エリザベート』(ルドルフ役・トート役)、『ナイツ・テイル ―騎士物語―』(パラモン役)、『ガイズ&ドールズ』(スカイ・マスターソン役)、『ラグタイム』(コールハウス・ウォーカー・Jr.役)など。『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』(6月20日~8月7日東京・帝国劇場/9月14日~28日大阪・梅田芸術劇場メインホール)では昨年に引き続き、クリスチャンを演じる。
文=前田美保
写真=深野未季
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