挑戦を続ける井上芳雄「チケット代に“見合う”ものを誠心誠意届けたい」ミュージカルへの熱い想い〈後篇〉
CREA WEB / 2024年6月13日 7時0分
チケットが手に入らない――。ミュージカルラバーの人たちの嘆く声が聞こえてくるほど、“ミュージカル界のプリンス”と呼ばれる井上芳雄さんが出演する作品は常にチケット難。
そんな井上さんが、6月17日にWOWOWで生中継される、アメリカの演劇及びミュージカルに贈られる最も権威ある賞として知られる『トニー賞』授賞式のナビゲーターを務めるそう。番組の見どころや今年の傾向、また、井上さんご自身のミュージカルへの想いなどをたっぷりと伺いました。
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』では“若さを保つ”努力を
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――インタビュー前篇に引き続き、トニー賞のノミネート作品について伺いますが、井上さんが個人的に「これ、やってみたい!」と思われる作品はありますか。
『ノートブック』ですね。映画『君に読む物語』のミュージカル版です。映画が好きなのですごく興味もありますし、カップルの歴史を3つくらいの時代に分けて描いているので、自分がやれる年代もあるんじゃないかなと思っていて。とても興味があったのですが、残念ながら作品賞の候補には残りませんでした。
――『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』のお話も出ましたが、この作品もトニー賞を受賞していますし、井上さんは昨年に引き続き今年も出演されます。新しいクリスチャン像に挑戦したい!などありますか? 今の心境を教えてください。
いや、クリスチャンが若い役なんで、僕にとってはその役をやること自体がチャレンジみたいなところがありまして……(笑)。役の上で“若さを保つ”というのが精一杯ではあるんですが、お客様は前回の初演のときもすごく盛り上がって下さり、楽しみ方をさらに理解したうえで今回も劇場にお越しいただけるんじゃないかと。もちろん初めての方もいらっしゃると思うので、より盛り上げていきたいですね。
もちろんストーリーを伝えていくという部分も大切ですが、『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』はお客様と僕たちが一緒になって楽しむ要素がたくさんあるので、どんどんテンションを上げていきたいなと思っています。
――いわゆる【トニー賞受賞作品】と呼ばれるものは、ほかのミュージカルと違う何か、みたいなものがあると感じられますか?
例えば、食べログの点数的なところはあるかもしれないですね。安心感があるとか、保証されている感じがあるとか……。僕たちも「トニー賞を獲った作品に携われて嬉しい」というのはあります。
でも一番は、それを製作した本国の方々のプライドが違うかな、という気がします。スタッフの方々から、「これはトニー賞を獲った作品なんだ!」という気持ちがすごく表れていますね。
自分が出演する作品を選ぶのは、心が動く場所があるかどうか
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――井上さんはミュージカル以外のストレートプレイにも数多く出演されていますが、ご出演になる作品選びはどのようにされているのでしょうか。
難しいんですよね……、ジャンルも多岐に渡っていますし……。でも基本的にはやはり台本を読んで、やってみたい要素があるかどうかを考えます。向き不向きってあると思うのですが、それは自分では分からなかったりするんです。だから、自分の中で“落としどころ”というか、感動するところ、心が動く場所があるかないか、みたいなことが大きいと思います。台本もそうですし、ミュージカルだと音楽も含めてですね。
――最近ご出演になったミュージカルで、ご自身から出演を切望されたものはありますか?
昨年秋に出演した『ラグタイム』は1998年にトニー賞を受賞していますが、ずっと名作として評価されていたのに、人種の物語ということもあり、日本ではなかなか上演できなかった一本です。もちろん僕はこの作品のことを知っていましたし、日本で上演されるのであれば携わりたいというのは、ずっとありました。
昨年は『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』の本番をやりながら『ラグタイム』の稽古をしていました(笑)。そうでもして出たいと思っていた作品でしたし、結果、日本でもとても高い評価を頂きました。国も文化も違うので、タイミングや、やり方、演出の仕方など、“日本ならでは”というエッセンスが必要だったりするんですが……。僕自身は、できるだけ新しい挑戦を続けていきたいと思っています。
劇場へ足を運んでくださるのは“尊い”こと
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――井上さんは永遠のミュージカル界のプリンス! だと思いますが、新しい後輩の役者さんもどんどん出てきていらっしゃっていますね。井上さんが注目している若手の俳優さんを教えてください!
それぞれみんな魅力と才能がある人たちばかりなんですが、仲が良くて、よく知っているという感じだと東啓介くんや廣瀬友祐くんとかかな。ここからさらにメインへ行こうとしているポジションにいますし、本人たちもすごく高い意欲を持っていますよね。共演もしていますが、人柄も才能も含めて、これからがすごく楽しみです。
僕のときはあまりライバルというのがいなかったので、今はより大変だと思います。アドバイスはできないですが、話を聞いたりはしますね。世代が違うので、頑張り方も違うのは面白いなと思いながら見ています。
――国内外を問わず、井上さんが今後お仕事をご一緒してみたいというアーティストの方や演出家、俳優の方はいらっしゃいますか?
それは本当にたくさんいますよ。トニー賞関連ならば、演出家のバートレット・シャーさんとはいつかご一緒できれば嬉しいですね。渡辺謙さんが王様を演じた『王様と私』などの演出をされていた方で、古典を今の時代に合わせて作りなおすのがとても上手なんです。『マイ・フェア・レディ』なども手掛けられています。
日本でも色々とリバイバル作品が上演されているので、ぜひお仕事をしてみたいです。
――最近はチケット代が高くなってしまい、なかなか劇場に足を運べないという状況でもありますが、ライブで観ることの楽しさについて、改めて井上さんからお話しいただけますか?
全体的に物価が上がっているので仕方がないところもありますが、本当にチケット代が高くなっちゃいましたね。でも、昔から僕たちは言っているのですが、「チケット代に見合うものをお届けしよう!」というところに命をかけて、誠心誠意頑張っているんです。今度上演される『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』は見た目も豪華ですし、昨年の2カ月間の公演では元が取れないくらい、実際にすごくお金がかかっている作品なんです。
そういう意味ではチケット代自体はすごく高いのですが、世界的な感覚で見るとまだまだ安いほうなんです。同じセットの同じ質のものが日本の価格で観られるというのは、ある意味ではお得感もあったりします。
もちろん好き嫌いもあるでしょうし、高いから必ず面白いと言い切れないところも演劇やミュージカルというジャンルの面白さでもありますが、もし何かアンテナに引っかかったり、興味を持ってもらえるものがあれば、ぜひ一歩踏み出してほしいですね。
時間を作って、チケットを買って、劇場に足を運んで……って、ものすごく“尊い”ですし、すごい労力だと思うんです。オンラインや画面の中で何でもできちゃう世の中で僕たちが劇場でやっていることは真逆の方向性なのかもしれませんが、コンサートやテーマパークへ行ったりするのと同じ感覚で、選択肢のひとつに入れていただければ嬉しいです。
――ありがとうございます。では最後にトニー賞授賞式の生中継を見てくださる視聴者の皆さんへメッセージをお願いします!
間違いなく世界のエンターテインメントの最先端を観ていただける番組なので、そこは自信を持ってお届けしたいですね。時差があるのでどうしても朝の番組になっちゃうので、オンタイムで観れないよという方は、WOWOWオンデマンドのアーカイブ配信で観ていただいてもいいと思いますが、お時間のある方はぜひ日本のスタジオにいる僕と宮澤エマちゃんと京本大我くんの3人と一緒にドキドキしながらアワードの行方を占うのも楽しいんじゃないかと思います。この作品がいいんじゃないかな、僕はこっちが好きだな、とワイワイしながらお送りしたいですね。リアルタイムならではの楽しさも味わってください!
井上芳雄(いのうえ・よしお)
1979年7月6日生まれ、福岡県出身。東京藝術大学在学中の2000年にミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役で鮮烈なデビューを飾る。“ミュージカル界のプリンス”と呼ばれ、デビューから現在に至るまで、数多くのミュージカル作品に出演。ストレートプレイにも積極的に出演するなど、活躍の場を広げている。2021年からは『はやウタ』(NHK総合)で自身の歌番組のレギュラー司会を務め、2022年からは『行列のできる相談所』のMCとしても活躍。代表作に『エリザベート』(ルドルフ役・トート役)、『ナイツ・テイル ―騎士物語―』(パラモン役)、『ガイズ&ドールズ』(スカイ・マスターソン役)、『ラグタイム』(コールハウス・ウォーカー・Jr.役)など。『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』(6月20日~8月7日東京・帝国劇場/9月14日~28日大阪・梅田芸術劇場メインホール)では昨年に引き続き、クリスチャンを演じる。
文=前田美保
写真=深野未季
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