「お芝居ができず悩む時間すら楽しい」渋谷凪咲がホラー映画で見せた“笑顔の楽しい姿”ではない“裏部分”
CREA WEB / 2024年7月12日 17時0分
11年在籍したアイドルグループNMB48を卒業し、俳優という夢に向かい進み始めた渋谷凪咲さん。バラエティでの活躍も多い渋谷さんが、俳優業についての思いを語る。(全2回の後篇。)
卒業を考えるきっかけ
――昨年、夢だった俳優業に挑戦するため、11年間在籍したNMB48を卒業されました。
それまで卒業したいと思ったことは一度もなかったんですけど、演技のお仕事をさせていただいたときにすごく楽しくて、もっとお芝居がしたいと思ったのが卒業を考えるきっかけとなりました。お芝居ができなくて悩んだり、苦しんだりする時間すらも楽しいと思えたので、新しい環境でもっと演技の仕事に挑戦して新たな自分を発見したいという思いで、卒業を決意しました。
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――映画に出演するというのも夢のひとつにあったのでしょうか。
そうですね。私、映画館に映画を観に行くのが好きなんですよ。いまでも空き時間によく映画館に行くんですけど、「このスクリーンに、もし自分が映る日が来たらすごいな」と思ってはいました。
でも、遠いいつかの話だと思っていたので、まさかこんなに早く夢が叶うなんて思ってもいませんでした。
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――清水崇監督からは、「渋谷凪咲の新たな一面を引き出したい」と言われたそうですが、具体的にどんなリクエストが?
私は普段、喋り方がおっとりしていると言われることが多いんです。優しそう、と言われることも多いのですが、今回は教師という役なので、監督からは生徒に優しく寄り添うというより、しっかり強くある先生としていてほしい、という意味合いのことを言われました。
教師といっても臨時教師で、生徒役の子たちとも年齢が近いので、最初は優しいお姉さんのようなつもりでセリフを入れていたんですけど「それじゃあ生徒になめられる。そうではなく、先生は強くあるべきだ」と教えていただき、普段の自分ではないような口調で「しっかりした先生」像をつくっていきました。
あとは今回、ほぼ笑顔が出てこないところも特徴です。
これまで、アイドルでもバラエティでも、「笑顔の楽しい姿をお届けする」ことが自分の役割だと思ってやってきましたが、そこにたどり着くまでの裏側にある、悩みもがきながらもぶつかっていく姿を「表」として出しました。
これは、いままで見せてこなかった渋谷凪咲の裏部分なので、ここを監督に引き出していただけたのは自分でも勉強になりました。
信じるためには自分が素直でいよう
――映画とバラエティでは何が違いましたか?
テレビのバラエティ番組の場合、すでにセットが組まれ、スタッフのみなさんがスタンバイされている現場に最後に入って本番、という流れで撮影をすることが多いんです。
ところが映画は、撮影さん、録音さん、照明さんといったスタッフのみなさんが準備されているなかで出演者がリハーサルを行うなど、まだ何もできあがっていないゼロの状態からキャスト・スタッフが一緒につくりあげていく、という方法でした。
「この数十秒を撮るために、どれだけの方がどれだけの力と時間をかけて準備してくださっているのか」ということを深く知ることができ、それぞれの部署の皆さんをあらためて尊敬しましたし、すごくかっこいいな、と思いました。
お芝居って、私だけがセリフをちゃんと言えればそれでいいわけじゃないんですよね。撮影さんとか照明さんとか、演者みんながちゃんとできないとOKって出ない。まさに、みんなで一緒につくりあげる世界だからこそ、OKが出たらワーッと喜ぶ。そういう映画の撮影ならではというか、みんなと一緒に作り上げてる感が私にとってはすごくありがたくて新鮮で。みなさんのお力と思いにとても感動しました。
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――本格的な演技は初めてです。芝居に関してはいかがでしたか?
お芝居に関しては、本当にまったくといっていいほど初めてでしたが、まずは「演技を信じる気持ち」が大事だということを教えていただきました。
あたりまえですが、撮影現場で起こっていることは、実際に起こったことではなく、ましてや自分の人生でもありません。だけど、それをいかに自分の人生として自分自身が信じ込めるか、ということがお芝居では大事だと、最初に教えていただきました。
そして、信じるためには自分が素直でいなくてはいけないということも教わりました。ですから、自分の心にも自分の表現にも、そしてそれを信じることにも素直でいるよう心がけました。
あとは、全力でぶつかる。それしかできないなと思ったので、そこは頑張りました。
――俳優歴の長い共演者の方たちの演技をどうご覧になりましたか?
私はお芝居経験が浅くて不安だったんですけど、出演者のみなさんの演技を見せていただき、こういうふうにお芝居されるんだとか、たくさん刺激をいただきました。
でも、人には人の魅力があり、それぞれのやり方もあると思うので同じようにはできませんよね。私の恋人役の染谷(将太)さんも、染谷さんにしかできない役を演じていらっしゃったので、それを観て「私も、私がやるからこそできる役を作れるように頑張ろう」と勉強させていただきました。
俳優さんって、作品の中での役のイメージとかがあったりするんですけど、今回の出演者のみなさんは本当に温かくて優しい方ばかりで、ロケ中ずっと楽しかったです。それは清水監督がそういう空気を作ってくださったことも大きいと思いますが、みなさんと共演させていただけたことは、私にとって大きな宝物になりました。
「渋谷凪咲も怖がっているから大丈夫」
――演技や役作りに関して、監督とはどのようなやりとりが?
自分の中から出てくるものを大事にしたいと思い、監督とは、「もっとこんなふうにしたらどうだろう」など相談しながら役を作っていきました。
ただ、仕上がった映像を客観的に観ると、自分では頑張ったつもりでも、自分が思っているようにはできないんだな、ということがよくわかりました。
全力で自分のもてる力を出し切ったので、あれ以上何かできるかと言われても当時の私の実力では精一杯でしたが、そこはしっかり受け止めて、次作でもしまたお声掛けいただけたら、そのときはもっと自分の心を豊かにして、感じ方や表現の仕方をもっと自由自在に噛み砕けるように表現していけたらいいなと思います。
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――今作で、一番印象に残っているシーンやエピソードを教えてください。
ネタバレになるのであまり言えないんですけど、ひとつあげるとしたら、やっぱり、高谷さなの一家が出てくるシーンです。撮影現場でもすごく怖かったですね。
でも、実際はみな、優しくてあたたかい方なんですよ。私のお芝居を観ては「ほのかちゃんは本当にすごい一生懸命だね。私も頑張るね」って言ってくださるので、どれだけ励ましていただいたか。終わった後には、ハグして喜びをわかちあったくらいです。
そんな人となりを知るとまったく怖くないんですけど、でも画面で見るとやっぱり怖いので、そこはプロの役者さんだなと思いました。
――俳優の人柄を知ってもなお怖い作品なんですね。映画への思いをお聞かせください。
今回、監督からは、「キャストは見てくださってる方にいかに怖がっていただくかの仕掛け人だ」と言われました。
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「仕掛け人」という目線で、どうやって怖がったらより怖さが伝わるだろうかと考えると、怖いというより、楽しさやワクワクのほうが大きいんですよ。こうしたら驚いてもらえるかなとか、こうしたらもっと怖く見えるかな、と思いながら演じました。
普段は私も怖がりで、スクリーンのなかでも心の中で怖がっているので、ホラーが苦手な方も「渋谷凪咲も怖がっているから大丈夫」と思って観ていただけたら嬉しいです。
渋谷凪咲(しぶや・なぎさ)
生年月日:1996年8月25日
2012年、大阪・難波を拠点に活動するアイドルグループNMB48の4期生として加入。以降はグループの中心メンバーとして活動。バラエティー番組「イタズラジャーニー」(フジテレビ系)、情報番組「DayDay.」(日本テレビ系) をはじめとした多くのレギュラー番組に出演。ドラマ「だが、情熱はある」(日本テレビ系/23)では、山里が好意を抱く相手役を好演し話題に。2023年12月、NMB48を卒業し本作で映画初主演。
映画『あのコはだぁれ?』
7月19日(金)全国公開
■STORY
ある夏休み。補習授業を受ける男女5人。
この教室には、 “いないはずの生徒” がいる──。
とある夏休み、臨時教師として補習クラスを担当することになった君島ほのか(渋谷凪咲)の目の前で、ある女子生徒が 突如屋上から飛び降り、不可解な死を遂げてしまう。“いないはずの生徒”の謎に気がついたほのかと、補習を受ける生徒・三浦瞳(早瀬憩)、前川タケル(山時聡真)らは、“あのコ”にまつわるある衝撃の事実にたどり着く……。彼らを待ち受ける、予想もつかない恐怖とは……?
https://movies.shochiku.co.jp/anokodare-movie/
■出 演:渋谷凪咲 早瀬憩 山時聡真 荒木飛羽 今森茉耶 蒼井旬 穂紫朋子
今井あずさ 小原正子 伊藤麻実子 たくませいこ 山川真里果
松尾諭 マキタスポーツ / 染谷将太
■監 督:清水崇
■原案・脚本:角田ルミ 清水崇
■製 作:「あのコはだぁれ?」製作委員会
■企画配給:松竹
文=相澤洋美
写真=深野未季
ヘアメイク=橘麻耶( CO.CO.RO. )
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