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俳優・高橋文哉の「察する力」その原点は、男三兄弟の上下関係?「兄に怒られないよう…」

CREA WEB / 2024年8月8日 11時0分

「CREA」2024年夏号の「猫のいる毎日は。」特集より一部を抜粋し、掲載します。


 ピュアな恋愛が似合うその人は、真っ直ぐな目でこう言った。「人に喜んでほしいんです」。誰かのために、尽くせてしまう人。

 なぜそこまで。その原点は――。


監督のつくる画のなかで、どれだけ暴れられるか


高橋文哉さん。

「今日は全部フィルムですか?」

 顔見知りのカメラマンに気さくに話しかける高橋文哉さん。夜の撮影だというのに、疲れも見せず人懐っこい笑顔で現場を明るく照らす。3月には日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど、快進撃が止まらない。最新作の映画『からかい上手の高木さん』では、これまで見せたことのないような一面を披露している。メガホンを取ったのは、恋愛の機微を繊細に描いてきた今泉力哉監督だ。

「今泉監督のつくる画のなかで、どれだけ暴れられるかが大事だなと思いながらやっていました」

 永野芽郁さん演じる中学の同級生の高木さんに、からかわれる中学校の体育教師・西片役。ドキッとしたりビクッとしたり、リアクションが肝となる作品だ。

「高木さんに不意にからかわれても、ちゃんと返せるように常に意識していました。撮影に入る前は、家で数秒後に音の鳴る機械をセッティングして、鏡を見ながらどのくらいのテンションが自然に見えるか試してみたり。でも、初めてのリハーサルでは、自分でも想像しなかったような大きな声が出てしまってそれに驚きました(笑)」

役のオン・オフはつくらないタイプ


高橋文哉さん。

 撮影はすべて小豆島で行われた。眩いほど美しい海、空、木々。豊かな自然の風景が、登場人物たちの言葉にならない揺れる思いを鮮やかに彩る。高橋さんは島の空気感を体に染み込ませるため、どこへ行くにも自転車で島を巡った。

「もともと役のオン・オフをつくらないほうなのですが、無意識に役の仕草がプライベートでも出てしまうこともあるみたいです。島にいる間はもしかしたら、僕のリアクションも大きめになっていたかもしれないですね」

 本作では高木さんと西片の物語と並行して、西片の教え子の中学生の淡い恋模様も綴られている。ちなみに高橋さんの中学時代はどんな感じだったのだろう。

「バレーボール一色でした」

 ふたりの兄の影響で6歳からバレーボールを始め、中学3年生のときにはキャプテンも務めた。さぞかしモテたでしょう? と水を向けると「そうですね(笑)」とさらりと認めてくれた。

「ドラマに出てくるようなレベルではないですよ? 廊下を歩いていたら、教室から『文哉先輩!』と声をかけられるくらいです。いま思い返しても最高でした!」

 同性異性関係なく、みんなに好かれそうなタイプ。漏れ聞くところ、かなりの友達思いでもある。芸能界の友達も増えたが、忙しくなったいまも、休みが決まると真っ先に連絡するのは地元の友。自宅に招くことも多く、前夜に部屋の模様替えをしたりするそうだ。

「『また変わってる!』と友達が驚いてくれるのが嬉しいんです」

「まずは相手のことを知り、相手のことを考えます」


高橋文哉さん。

 友達や先輩に誘われれば極力出向こうとする付き合い上手でもある。誰とでも仲良くできるコツを尋ねると、「それは僕も知りたいです。誰とでも仲良くはなれないですよ」とボソリ。ただ、相手のことはものすごく考えると続けた。

「例えば初めて共演する相手だったら、いまはネットでいくらでも情報を集められますから、その方の過去のインタビューを読んだり、好きなものを調べたり、昔はよくしていました」

 それも仕事の一環と捉えていた。役柄にもよるが、相手の人となりを知っているほうがコミュニケーションも円滑になり、良い作品をつくる助けになると信じている。

 話を聞いていると、高橋さんは常に相手が求めることを察して、それに応えることに尽力しているよう。その気質はもしかして、三人兄弟の末っ子だったことが関係しているのだろうか。

「そうかもしれません。兄は僕とだいぶ歳が離れているので、(兄たちに)怒られないように、というのを小学生くらいから考えていた気がします。男三兄弟なので、家の中でもボールが飛んできたり、プラスチックの硬いおもちゃが飛んできたりして、物騒だったんですよ(笑)」

 兄と同じバレーボールチームに入り、休みの日も扱かれ、傷だらけになりながら練習に励む日々。上下関係の厳しさは、幼少期に教え込まれた。

「(兄たちのことは)すごく怖かったですが、ずっと尊敬していました。長男も次男もやりたい仕事を見つけて飛び込んだので、僕も好きなことを見つけて、早く大人になりたいと思っていましたね。いまでは兄が僕の家に来てゲームを一緒にするぐらい仲良し。友達みたいな関係になっています」

自分の頑張りで誰かが喜んでくれる

 高橋さんは大好きな料理を極めようと調理師免許を取り、料理人の道を目指そうとした矢先、縁あって俳優の世界に。料理と演技、まったく別の仕事だがどちらも根底にあったのは、「人に喜んでほしい」という思いだった。

「作品を作り上げる製作の方々や、応援してくださるファンの方々、事務所の方々。僕の頑張りによって、誰かが喜んでくれたり、幸せになってくれたりする仕事。最終的には自分のためではありますが、いろんな人の思いのためなら頑張れる。家族や地元の友達に『すごいね』と言ってもらえるような仕事をしたいという気持ちもあります(笑)」

 俳優は天職だと思っている。これからどんな俳優になりたいかという問いには、しばらく考えてこう答えた。

「困った時、『とりあえず声をかけてみよう』と思っていただけるような役者になりたいです。『高橋文哉に頼めばなんとかしてくれるだろう』と信頼されるような」

 自分よりも他者。誰かのためなら、惜しみなくすべてを与えられる。最強の武器を持つ青年俳優は、まだ底知れぬ可能性に満ちている。

高橋文哉(たかはし・ふみや)

2001年3月12日、埼玉県生まれ。2019年『仮面ライダーゼロワン』で主演に抜擢、以降ドラマ『最愛』、『君の花になる』、『フェルマーの料理』に出演。映画『交換ウソ日記』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。映画『ブルーピリオド』が8月9日公開。

衣装クレジット

ニット 640,000円、パンツ 220,000円、リング 76,000円/すべてディオール(クリスチャン ディオール)

 K-POP界のレジェンド、ドンヘさん、ウニョクさんをお迎えしたスペシャルインタビュ―、JOさんと愛猫ミントの貴重な2ショット、SNSで話題沸騰中のマンガ『猫に転生したおじさん』作者・やじまさんによる特別描きおろしマンガ&シール付録など、「猫のいる毎日は。」特集は「CREA」2024年夏号でお読みいただけます。

文=黒瀬朋子
写真=松岡一哲
スタイリング=Shinya Tokita
ヘア&メイク=池上 豪

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