1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 芸能総合

「愛する誰かを失っても人生を生きる」ダヴァイン・ジョイ・ランドルフが『ホールドオーバーズ』で演じた70年代

CREA WEB / 2024年6月21日 11時0分

『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』で、第96回アカデミー賞助演女優賞を受賞したダヴァイン・ジョイ・ランドルフ。名門校の寄宿舎を舞台に、年齢も人種も性別も違う3人が心を寄せ合うようになっていくこの映画で、彼女が演じたのは一人息子をベトナム戦争で亡くした料理長メアリー・ラム。

 人生の機微を感じさせる演技で、なんと世界中の67もの演技賞を受賞した全世界注目の才能に、幸運にもインタビューが実現した。表現豊かに語る彼女は、映画の中と同じ懐の大きさを感じさせる女性だった。


ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ Seacia Pavao / © 2024 FOCUS FEATURES LLC.

ーー 本当に素晴らしい演技でした。この映画を観たほとんどの人は、この映画を、そしてあなたが演じたメアリーを愛さずにはいられません。その理由をあなたはどうお考えですか?

 ありがとう。きっとメアリーは誰しもが親しみを感じる、共感できる人物なんだと思います。私も彼女を誰もが会ったことがある女性として演じようと努力しましたし、この物語にはこれはきっと自分のことだ、と感じられる部分あるんです。

 実際、人は愛する誰かを失ったとき、悲嘆に暮れながらも、その後も自分の人生を生きて行かねばならないわけです。その日々はどんなものなのか。『ホールドオーバーズ』の中ではメアリーがそれを経験して見せてくれるわけですが、できればそんな時、「自分は一人じゃない」と思いたいはず。この映画を多くの人が愛してくれる理由は、そこにあるのではないかと思います。

ーーあなたから見たメアリーという人物、そして脚本を読んだ時の印象を教えてください。

 彼女は怖いもの知らずで、自分の考えをはっきりと口にする女性です。仕事もきちんとする。そこが私は好きですね。脚本の段階で、すでに人物がしっかりと描かれているんです。一見、何も考えずに楽しめる映画のように見えますが、実は深いところがある。

 そして男性の脚本家であるデヴィッド・ヘミングソンが、女性の視点に立ってメアリーという人物を書いていることが嬉しかったですね。そしてこれは伝統的な楽しいクリスマス映画の形式を借りながら、クリスマスの持つ違う側面も描いているんです。そうしたものをひっくるめて、とても真実味があると感じました。

ーーメアリーはあなたの実年齢よりもかなり上の設定だと思われますが、どのように役作りをされたんでしょうか?

 メアリーはおそらく私より15歳くらいは上でしょうから、家族を参考にしました。また年齢に加えて、時代的にあの頃は動きなど全てにおいて今よりもゆったりとしていたと思うので、そこは意識して演じました。話し方も普段の私より少しゆっくりめにしています。たとえば「グラスを取ってちょうだい」なら「グラースを取ってちょうだーい」という具合に、語尾を伸ばしてしゃべってるんですよ。あの頃の中年女性らしく。

メアリーはある意味で聖母の象徴

ーーアレクサンダー・ペイン監督は、これはメアリー、ポール、アンガスという三人の人物による伝統的なクリスマス・ストーリーであり、メアリーはある意味で聖母メアリー(マリア)の象徴でもあると言っていました。

 確かに、その通りですね。でも監督は、私にはそんなことは一言も言ってなかったんですよ。メアリーは彼らとっての母親的存在だ、ということは意識していましたが、聖母メアリーとは思いもしませんでした。

ーーアレクサンダー・ペイン監督の素晴らしさはどんなところですか?

 彼は本当に親切で、環境作りがとてもうまいんです。彼の現場では、自分は守られていると感じさせてくれますし、彼は人をジャッジしたりしません。そしてエゴもありません。これはとても稀なことなんです。ほぼ完璧な素晴らしい環境で仕事をすることができましたし、だからこそ真に美しい映画を生み出せるのだと思いますね。


Seacia Pavao / © 2024 FOCUS FEATURES LLC.

ーーポール・ジアマッティと共演した感想を教えてください。

 彼は最高の人。彼は美しい心を持つ、美しい男性なんです。うちも外もね。気遣いがものすごくある人なんです。そして、とんでもない才能の持ち主。私は彼のためならなんでもします! 本当に寛大で、豊かな知識の持ち主で、人に与えることを惜しまないんです。最高に素晴らしい共演者ですよ。

ーーポールが演じた教師ハナムはちょっと偏屈な男ですが、少しも共通点はないんでしょうか?(笑)

 ノー、ノー、ノー! 全く似ても似つかないですよ(笑)。


Seacia Pavao / © 2024 FOCUS FEATURES LLC.

ーーもう一人の共演者、生意気な生徒アンガスを演じたドミニク・セッサについても聞かせてください。彼は全くの新人で、学校の授業以外、演技経験がなかったそうですね。

 そうです。演技の仕事をしたことがなったんです。この『ホールドオーバーズ』が彼にとって初めての作品になったことを、私はとても喜んでいるんですよ。プロの役者として、最高の現場を経験できたわけですから。私はドミニクのことを長老とか、グランパって呼んでいるんです(笑)。だって彼はとても若いんだけど、老成したところがあり、知性があって、あっという間に現場に馴染んでいました。本当に素晴らしかったですよ。彼はありのままの自分をそのまま表現することができたんじゃないでしょうか。とても親しみやすい、いい子なんです。

1970年代はアメリカの歴史において、非常に憂鬱な時代

ーーこの映画の設定は1970年から71年にかけての年末年始になっています。この設定についてはどう考えていますか? それほど大昔ではないけれど、すでに歴史劇的な要素もあります。

 1970年代というのは、ものすごく色々なことが起きた時代です。私はこの時代をあまり大袈裟に芝居がかったものにしないように、心がけました。ただしこの映画の背景には、ベトナム戦争があります。映画の中で彼らが暮らす世界は、暗い雲に覆われていたんですね。

 そして有色人種の女性として、メアリーは今の私とは違う現実を生きていました。この映画はアメリカの苦しい時を描いていて、とても悲しい側面もあります。アメリカの歴史において、非常に憂鬱な時代だったと言えますね。


Seacia Pavao / © 2024 FOCUS FEATURES LLC.

ーーところで、今後の作品の予定を教えていただけますか?

 レベル・ウィルソンと共演したガールズ・アクション・コメディの『BRIDE HARD』が、今年全米公開されます。

ーーでは最後に日本の映画ファンに対して、一言いただけますか?

 まず、『ホールドオーバーズ』に興味を持ってくれることに感謝を伝えたいです。ぜひ観ていただいて、気に入ってもらえることを祈っています。私たちのカルチャーは違うかもしれないけれど、この映画には日本の人も共感できる部分があると信じています。この映画には、人間の善の部分が感じられ、そして愛すべき人物たちが出てきます。ぜひ楽しんでください。

DA’VINE JOY RANDOLPH(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)

1986年生まれ。 本作で、第96回アカデミー賞、第81回ゴールデングローブ賞、第77回英国アカデミー賞をはじめとする世界各国の映画賞で助演女優賞をほぼ独占。イェール大学大学院で演技を学ぶ。2019年、『ルディ・レイ・ムーア』でエディ・マーフィの相手役レディ・リード役で注目を集めた。他に「マーダーズ・イン・ビルディング」(21)「THE IDOL/ジ・アイドル」(23)、『ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男』(23)などに出演。声楽も学んでおり、ブロードウェイ・デビュー作「ゴースト」(12)ではトニー賞ミュージカル助演女優賞にノミネートされた。

文=石津文子

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください