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もうすぐ3歳! 上野の双子パンダ シャオシャオ&レイレイの見分け方 ニンジンが苦手? 人の言葉が分かる?

CREA WEB / 2024年6月22日 11時0分

 ジャイアントパンダは同じように見えても、意外と千差万別で性格も異なります。東京・上野動物園で暮らすパンダの特徴や食べ物、飼育係の1日について、同園の冨田恭正副園長兼教育普及課長に伺いました。

 『CREA』2024年夏号 のBook in book「偏愛パンダ図鑑」で紹介しきれなかった内容を中心にお伝えします。



水浴びする2歳のレイレイ。2024年5月8日(水)。(筆者撮影、以下同)

 上野動物園で暮らす親子4頭のジャイアントパンダの飼育係は8人。子どもが生まれた時など特別な日を除いた基本的な1日は、まず午前8時30分に出勤してミーティングを行い、前日からの引き継ぎ事項などを確認します。それからエサを準備して、公開の準備。開園は午前9時30分です(パンダの公開は午前10時からだが早まることもある)。

 パンダが夜間に過ごした場所から出たら、そこを掃除します。夜間に過ごした場所とは、バックヤードと室内の公開エリア。夜間はこの両エリアをパンダが自由に行き来できるようにしています。職員が退勤して無人の間、基本的にパンダは屋外に出しません。

 おおむね午前9時30分~午後3時30分の間は、エサの交換、掃除、パンダの行動の観察・記録などをします。夜間の録画映像も確認して記録します(参照:パンダ4頭分の行動を1分ごとに記録 シャオシャオの異変に気づいたのも飼育係の小さな疑問からだった)。日によっては、パンダにトレーニングをすることもあります。

 公開が午後4時に終了したら(シャオシャオとレイレイの観覧受付は午後3時30分に締め切り、混雑状況によってはそれより早く締め切る)、夜間にパンダが食べるエサの準備や掃除などをして、日誌に記入。午後5時までに作業を終え、入浴してから退勤します。パンダに限らず、上野動物園の飼育係は基本的に衛生管理のため、飼育現場で作業した後は入浴(人によってはシャワーのみ)をしてから園を出ます。

 ちなみに職員はパンダの体を洗いません。パンダは自ら水に浸かったり、背中を草に付けてこすったりしています。上野動物園で副園長兼教育普及課長を務める冨田恭正さんは「おそらく綺麗の概念が人間と違うのだと思います。寄生虫がいるかは分かりませんが、もしかしたらパンダにとっては寄生虫を落とすことが綺麗にすることかもしれません」と話します。


室内の公開エリア。レイレイ。2024年5月8日(水)。

子どものパンダは1日に15キロほどの糞をする

 パンダは1日の大半を寝るか食べるかして過ごします。上野動物園で1日に1頭のパンダに与える竹の量は、大人で60~100キロ。子どもは5月8日(水)時点で30~50キロでしたが、現在は60~80キロに増えています。パンダはこのうち、かなりの量を食べずに残します。

 食べた量を把握するには、どうすればいいのでしょう。与えた竹の量から残った量を引いても分かりません。竹はミストをかけられるなどして、かなりの水分を含むためです。そこで飼育係は糞を全て集めて重さを量り、日々の採食状況を推測しています。1日の糞の量は、大人で約17~25キロ、子どもで約15キロです。

 主食の竹のほか、副食として「パンダ団子」も与えます。材料は大豆、米、トウモロコシなどです。1日に与えるパンダ団子の量は5月時点で、大人約400~600グラム、子ども約200~300グラム。通常なら大人は約600グラムですが、シンシンは高血圧対策で約400グラムに減らしています。副食は、リンゴやニンジンも少し与えています。

 このところ、「シャオシャオはニンジンが苦手なのでは?」との疑惑がSNSで持ち上がっていますが、シャオシャオもレイレイも6月20日(木)時点で、ニンジンについては「成獣と同様で、大きめに切って与えており、食べています」(担当者)とのことです。


タケノコを食べるシャオシャオ。2024年5月8日(水)。

 昨年2月21日に中国へ渡った長女のシャンシャン(香香)は、ニンジンが苦手としてファンの間で有名です。ただ、上野動物園にいた頃は「全く食べなかったわけではないのですよ。固形のニンジンを食べないだけで、すりおろせば食べました」(冨田さん)。そのことは、冨田さんがシャンシャンの渡航に同行した際、中国の施設の職員にも伝えました(参照:シャンシャン中国輸送大作戦の舞台裏 中国への伝言は、苦手なニンジンは「すりおろしたほうが食べます」 )。

 ちなみに最近、中国にいるシャンシャンが観客の日本語に反応したかのように見せる動画が国内外で拡散されました。しかし本当に日本語に反応したのか「信憑性はまるっきり分かりません」と冨田さんは指摘します。

「パンダが言葉の意味を理解しているかは分かりませんが、パンダに話しかけると反応するのは確かです。声を使ってトレーニングしますし。反応は、担当の飼育係が話しかける場合と、例えば私が話しかける場合で明らかに違います。おそらく音声だけでなく、総合的に判断していると思います」(冨田さん)。

「肝がすわっている」シンシン

 パンダの外見や性格はどのような違いがあるのでしょう。飼育係から見たパンダたちの性格なども含め、冨田さんに教えていただきました。ただ、基本的には「観客の皆さんがご覧になって、それぞれで特徴をつかんでいただくのがいいかなと思います」とのことです。

 オスのリーリー(力力)はやや面長で、頭がとんがっています。穏やかな性格で、慎重な面もあります。

 メスのシンシン(真真)は丸顔。ある日の朝、冨田さんがシンシンの様子を見に行くと「完全に無視されました(笑)。視界には入っているのでしょうけど。性格は、肝がすわっています」。


頭がとんがっているリーリー。2024年5月8日(水)。

肝がすわっているシンシン。2024年3月27日(水)。

 リーリーとシンシンの息子のシャオシャオ(暁暁)は、やや面長なところは父親似。「目がパッチリしていて、アイパッチ(目の周りの黒い部分)が少し四角。感情表現が豊かで、喜怒哀楽がはっきりしています。エサの好き嫌いなどを結構、明確に示します。もうこれは食べない! となれば食べないし、食べる時はしっかり食べます。行動は活動的です」。


活動的なシャオシャオ。2024年5月8日(水)。

「緑のライン」を最後に描いた日は?

 シャオシャオの体には、安全なマーカーで緑色のラインが描かれていました。夜間の録画映像などで双子のレイレイ(蕾蕾)と区別しやすくするためです。

 直接飼育が終わり間接飼育になってからは、柵越しに飼育係がエサでシャオシャオの注意を引いている間、別の飼育係が柵の間から手を入れてラインを描きました。ラインを描く間、シャオシャオが嫌がったことや、シャオシャオが暴れてラインがずれたことはないそうです。

 緑のラインは、シャオシャオが生まれた2021年6月23日から描かれてきましたが、今年3月26日(火)を最後に描かれていません。レイレイとのじゃれ合いが激しくなって、4月中旬から別々に暮らすことになり、区別する必要がなくなったためです(参照:上野動物園で暮らす双子パンダが2歳で離ればなれに。シャオシャオのトレードマーク「緑のライン」は!? )。今年6月20日(木)時点で緑のラインはうっすらと残っています。


シャオシャオの緑のライン。最後に描かれた日から1カ月以上が経ち、かなり薄くなっている。2024年5月8日(水)。

 双子が別々になり、暮らす場所が一部変わったため、時期によっては屋外でシンシンと隣同士になります(5月以降、シャオシャオとレイレイの場所は数週間おきに入れ替えていて、現在はレイレイがシンシンの隣の屋外エリアを利用)。パンダは単独で生きる動物。昨年3月に親離れした双子がシンシンを見た場合、何も起きないかもしれませんが、成長や独立に差しさわりがある可能性もゼロではないので、上野動物園はでき得る範囲で対応しようと、間に目隠しを設置しました。

 ただ、やぐらの上は、目隠しの位置より高くなります。筆者が観覧エリアから眺めていると、やぐらの上に登った双子から、シンシンのいる屋外エリアが視界に入っているように見えました。双子からシンシンは見えているのか上野動物園に確認したところ、「見えていると思います。実際に、シャオシャオはシンシンの存在を認識して、扉の前に居座ることがありました。しかし、今のところは採食や休息、行動に影響は見られておらず、独立への影響はないと判断しております」(担当者)とのことです。

 メスのレイレイは母親に似て、丸顔に近い輪郭。「目と鼻が顔の中央に寄り気味です。とにかく食べることが大好き。いったんエサを食べ始めると、なかなか動こうとせず、『隣の部屋に新しい竹があるから、そっちで食べなよ』と飼育係が言っても、動いてくれないこともあります」。


目と鼻が顔の中央に寄り気味のレイレイ。2024年5月8日(水)。

 双子の姉のシャンシャンは上野動物園にいた頃、「基本的に穏やかな性格でした。攻撃的になったというのは飼育係から聞いたことがありません。その一方で、聞き慣れない音などには少し神経質なところがあって、全ての行動が止まってしまうことがありましたね」。


穏やかな性格のシャンシャン。上野動物園にいた2023年2月19日。

 繁殖に向け、5歳で中国へ渡ったシャンシャンは今年6月12日(水)、7歳になりました。渡航期限はコロナ禍で5回延期されましたが、本来は、東京都と中国野生動物保護協会の協定で満24か月齢時の渡航が定められており、都と同協会の協議によって、2020年12月末が期限となりました。この期限の時、シャンシャンは3歳。シャオシャオとレイレイの渡航期限は「中国野生動物保護協会と協議して決めます」(東京都建設局の担当者)とのことで、まだ明らかになっていませんが、2頭は6月23日(日)に3歳の誕生日を迎えます。

●上野動物園

https://www.tokyo-zoo.net/zoo/ueno/


中川 美帆 (なかがわ みほ)

パンダジャーナリスト。早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(12カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著に『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)がある。
@nakagawamihoo


パンダワールド We love PANDA

定価 1,650円(税込)
大和書房

文・写真=中川美帆

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