チェリーとチョコ、パイナップルとスパイス…気鋭の女性パティシエの繊細で華やかなパフェをいち早く
CREA WEB / 2024年6月26日 11時0分
美しく華やかで、おいしいものが彩り豊かに閉じこめられたパフェ。その人気は止まるところを知らず、美しさも味わいも日々磨きがかけられ、進化しています。
グラスの中で醸し出されるハーモニーは、まさに“parfait”(フランス語で「完璧」の意味)! このシリーズでは、今注目の心躍る魅力的なパフェをご紹介します。
今回は、清澄白河の新店「Maison heureux(メゾンウル)」を訪ねました。
人気店でパフェの腕とセンスを磨いた
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2024年4月、東京・清澄白河に誕生した「Maison heureux(メゾンウル)」は、旬のフルーツを使ったパフェとお菓子が主役のスイーツ店。コンクリートの壁を生かしたシンプルでモダンな店内には、美しいドライフラワーが飾られ、ナチュラルで温かな雰囲気を醸し出しています。
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シェフ・パティシエ/ディレクターを務めるのは、石内恵さん。
2023年7月の同店閉店後は、故郷に戻って仕事をしようと考えていたそうですが、お付き合いのある地方の農家から、東京の店に自分たちの果物を卸していることがステータスでもあり、励みにもなっていると聞かされ、東京に残ることを決意。「Maison heureux」で新たなスタートを切りました。
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「いつも素晴らしい果物を届け、よくしてくださる農家のみなさんのために、頑張りたいと思いました。農家さんとのお付き合いは、私のなかでとても大切にしていること。農家さんが育てたフルーツをたくさん使ってパフェをつくり、たくさんの方に食べてもらってそのおいしさを知ってもらいたいと願っています」と、石内さん。
パフェの提供期間もあらかじめ区切らず、フルーツの旬の時期に合わせて柔軟に設定するといい、「そういうことができるのは、企業ではなく小さなお店だからこそのメリット。その果物が一番おいしいときにパフェにして味わっていただけるのは、うれしいことですね」。
◆パイナップル/国産グレープフルーツ/スパイス
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約15種類にものぼる多彩なパーツを細やかに重ね、多彩な味わいや香り、食感のハーモニーを打ち出した「季節のパフェ」は、常時2種類。
夏に差し掛かり、蒸し暑さが増してきた季節に登場したのは、「パイナップル/国産グレープフルーツ/スパイス」です。主役となるフルーツは、ジューシーで甘く、桃のように香りのよい白い果肉の沖縄県産ピーチパインと、酸味が少なく甘みがしっかりとした沖縄産スナックパイン、苦みと酸味、食感が心地いい愛媛県産のグレープフルーツです。
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トップにのせられたスナックパインのソルベには、クレーム・シャンティイ、フレッシュなスナックパインとピーチパインとともに、沖縄県産コリアンダーのチュールとスターアニス、レモングラスがあしらわれ、南国気分いっぱい。
そのまわりを、ピーチパインのスパイスロティ、フレッシュなグレープフルーツと2種のパインがごろごろと囲み、中には苦みと青々しい香りがさわやかなバジルとグレープフルーツのグラニテが隠れています。
それを支えるのが、ごく薄く仕上げたアールグレイのクレーム・ブリュレと香ばしいヌガティーヌ。芳しい香りと食感がアクセントを添え、グラスの中へと続く味わいのハーモニーへと誘(いざな)います。
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次に現れるのは、甘やかでありつつすっきりとしたココナッツとレモングラスのジェラート。その下に敷かれたポップとフェンネルシードのシュトロイゼルを噛み締めると、ホップならではの苦みがじわじわ広がって、フェンネルシードが後口をすっきりさせます。
最後は、チャイのシロップでコンポートにしたピンク&ホワイトグレープフルーツ、それぞれに食感の異なるライチとグレープフルーツのジュレと、アールグレイとカルダモンのジュレが香り豊かに調和。複雑味がありつつ清々しい余韻が、後を引きます。
「夏が近づくとスパイスが効いたカレーを食べたくなりますし、ビールも飲みたくなります。そんな気分を、このパフェに込めました。スパイスを随所に散りばめて、フルーツのフレッシュ感と混じり合って生まれるおいしさを意識してつくっています。グレープフルーツの苦みが、パイナップルの甘さを引き立て、スパイスがグレープフルーツやホップの苦みを心地よさに変えてくれます」と、石内さん。
「おそらくフルーツを買っても、お家で焼いたり、コンポートやソルベにしたりして食べようという人は、なかなかいないですよね。だからここでは、お家での食べ方とは違う新しい食感や味わい、味の組み合わせを楽しんでいただきたいと思うんです」
パフェにはおすすめのペアリングドリンクも必ず1種類提案され、「パイナップル/国産グレープフルーツ/スパイス」には、スパイスの効いた「チャイ」を。パフェに散りばめられたスパイスにそっと寄り添い、味わいの奥行きと香りの余韻をさらに深めます。
◆さくらんぼフォレノワール
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6月に登場した「さくらんぼフォレノワール」は、キルシュ漬けのさくらんぼを使ったフランスの伝統的なケーキ「フォレノワール」を、日本のさくらんぼを使ってパフェに仕立てたひと品。
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羽衣のようなグロゼイユのチュイールがトップを華やかに彩り、カカオ分70%のアマゾンカカオのソルベのまわりには、チョコレートのコポー(細く丸まった形に削ったチョコレート)や、砂糖掛けしたアーモンド、クレーム・シャンティイ、フレッシュなさくらんぼがあしらわれています。
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「さくらんぼは、山梨県産の紅秀峰を使用しています。大粒で、果実味たっぷりで気に入っています。アマゾンカカオは、フルーティで酸味もあり、ベリー系ととっても相性がいいんです」と、石内さん。その下には、薄いディスク状に焼き上げた杏仁風味のメレンゲが敷かれ、軽やかな食感をプラスします。
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グラスの中には、甘酸っぱいさくらんぼのグラニテ、卵不使用ですっきりとしたキルシュミルクのジェラートが。
「さらにその下には、酸味が強めの早生のさくらんぼ『紅秀峰』をキルシュ漬けにして、フレッシュな紅秀峰とともに入れました。キルシュ漬けのさくらんぼのしっかりお酒が効いてじゅわっとした感じが、私自身、すごく好きなんです。キリっと華やかなアクセントになっているかと思います」。
グラスの底で層を織り成すのは、赤シソとシェリーシュビネガーのジュレ、蓮茶ジュレ、杏仁ブランマンジェ、フランボワーズとグロゼイユのソース。色合いも鮮やかで美しく、すっきりした酸味と香り、やさしい甘みとミルク感が豊かな果実味と混じり合い、華やかなフィナーレをもたらします。
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「夏なので重たくならないよう、チョコレートはすっきりしたソルベにし、後にはサクランボのケーキを食べ終えたような満足感が広がるように仕上げました。苦みとフレッシュな果実味から始まり、甘い香りやミルクとのマリアージュが楽しめ、最後はジュレですっきり終わるイメージ。そのなかにさまざまな食感を散りばめました」と、石内さんは話ます。
そばに添えて提供されるチョコレートとクローブ、キャラメルのソースは、途中でかければ、まろやかな甘さとスパイシーさが加わり、フルーツケーキのような深みある味わいに。異なる表情が楽しめます。
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おすすめのペアリングドリンクは、「コーヒートニック」。挽き立て・淹れ立ての深煎りコーヒーに、トニックウォーターとすりおろしたライムの皮が加えられています。すっきりした飲み口で、青みのある香りと苦みがパフェとマッチし、さくらんぼの果実味を引き立てます。
「パフェの楽しさは、いろいろなところにスプーンを入れて、いろいろな味わいが楽しめるところだと思っています。フルーツとジェラートだけではなく、パティシエの技を生かしてつくられたパーツがいろいろ入っているのも、『Maison heureux』のパフェのポイント。できれば上から下へと順に味わうのではなく、全体をいっぺんに味わってもらいたいんです」と、石内さん。
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店内では焼き菓子や生菓子も販売されており、不定期でパフェの代わりにかき氷4種類を提供する「かき氷day」も開催。季節を追って何度も通いたくなる、期待のニューフェイスです。
Maison heureux(メゾンウル)
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所在地 東京都江東区白川2-14-2 レーベル1F
電話番号 03-4400-2064
営業時間 12:00~18:00(L.O. 17:00)
定休日 日・月曜
instagram @maison.heureux
文=瀬戸理恵子
写真=鈴木七絵
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