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北欧デンマークで愛される国民食 ライ麦パンの魅力を紹介する 多角的ガイド『ロブロの教科書』

CREA WEB / 2024年7月1日 11時0分

単なるパンの粋を超えたデンマークの象徴


食文化、健康の考え方、そしてパンの作り方から、料理、お菓子への展開までを学ぶことができる。

「ロブロ」という単語を、初めて目にする読者もきっと多いに違いない。ロブロとは、デンマークにおいて、1,000年もの長きにわたって造られ続けるライ麦パンのこと。断面がほぼ正方形を成すパウンドケーキのような実物を見れば、ああ、あのパンかと思い当たるかも。

 小麦に比べて耐寒性に優れ、養分の貧弱な土地でも育つライ麦は、北欧の厳しい風土でも栽培が可能な穀物として重宝されてきた。そのライ麦の全粒粉と塩と水とが基本となる材料を、イーストではなくライサワー種で発酵させたものが、ロブロとなる。

 デンマーク人にとって、ロブロは単なるパンの域を超え、母国を象徴するような存在。外国で暮らすデンマーク人は、じわじわとロブロを恋しく思うようになるという。


『ロブロの教科書』の目次の一部。単なるレシピ本にとどまらず、大きく視野を広げた内容となっている。

 このたび、ロブロに関し、歴史、文化、健康と栄養、美味しさ、サステナビリティといった多角的な観点からじっくりと読み解く書籍が登場した。その名は、『北欧デンマークのライ麦パン ロブロの教科書』(誠文堂新光社)。まさに、教科書と名乗るにふさわしい充実した内容に仕上がっている。

 著者のくらもとさちこさんは、コペンハーゲン在住。これまで30年以上デンマークに暮らし、食を中心に、この国の豊饒な文化について紹介を行ってきた。2020年に日本版が刊行されたカトリーネ・クリンケン著『北欧料理大全』(誠文堂新光社)では、編集、翻訳、そして序章の執筆を担当している。

 本書は、ロブロがいかにデンマーク国民の人生に根づいているかを詳述する。例えば、硬くなったロブロは、赤ん坊の歯固めのためおしゃぶりとして活用され、婚約したカップルは、婚前に二人でロブロを持ち上げ、食べ物に困らぬよう願いを捧げるのだとか。


デンマークの食卓では、一日に1、2回、どこかでロブロが登場する。

 ロブロは、三食において、さまざまな形で大活躍する。そのまま食べるのはもちろん、上におかずをのせ「スモーブロ」と呼ばれるオープンサンドにしたり、食材を挟んでサンドイッチにしたり、クルトン状やそぼろ状にしたロブロをデザートに加工したりすることも。お祝いの宴では、ロブロを使ったケーキも供される。

数日寝かせてから食べても美味しい!


1日目から5日目以降まで、ロブロを焼いてからの経過日数に合った美味しい食べ方を提案。

 ロブロの醍醐味は、日が経っても美味しく食べられるところ。焼きたては香ばしいアロマがたまらないし、その翌日からは味が馴染んでくる。そして、数日が過ぎれば、より熟成した味わいを楽しむことができる。食すタイミングによって、異なる魅力を放つのだ。


幅広い種類の食材がロブロを彩る。毎日の生活に北欧の味覚を採り入れてみては?

 本書の後半では、実践的なロブロのレシピを紹介する。ロブロを焼く方法から、ロブロをフィーチャーしたメニューまで、これはチャレンジしてみたいと思わせるレクチャーが満載だ。特に、ニシンやサーモンのマリネをのせたスモーブロは、まさに北欧ならではの逸品。スープや粥といった珍しいスイーツには、新鮮味を感じる。どのメニューも、プレゼンテーションがカラフルだから、写真を見ているだけで胸が躍ってしまうはず。

 なお、くらもとさんは広島出身。広島といえば、日本にデニッシュペストリーを広めた「アンデルセン」発祥の地である。本書では、「タカキのパン」として出発したアンデルセングループがくらもとさんに与えた影響も綴られている。


6月には著者のくらもとさちこさんが来日し、本書の出版記念したイベントを各地で開催。東京での会場となった飯田橋「モリ乃ネ KITCHEN STUDIO」では、ロブロを使った軽食が参加者に提供された。

 北欧好き、料理好きのみならず、素敵なライフスタイルに関心を持つ読者におすすめしたい一冊である。

文=CREA Traveller編集部

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