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神話の森で自然とアートを感じながら最上の「ととのい」体験を〈後篇〉自然の中で武雄焼の器と食事を堪能

CREA WEB / 2024年7月12日 11時0分


湖を望む「桃林窯」の「森のカフェ」。緑の中、お茶もできる。

 週末に、心が洗われる別世界へ出かけてみるのはいかが。少し車を走らせれば、そこにはおもてなしの心に満ちた極上の宿が待っている。

 旅行作家の野添ちかこさんが、1泊2日の週末ラグジュアリー旅を体験。今回は佐賀県・武雄温泉の「御船山楽園ホテル」へ。ホテル自慢のサウナでリフレッシュしたあとは、車で約20分のやきものの里・黒髪山陶芸村に出かけてみよう。


日々の暮らしに取り入れたい、シンプルで味わいのある器を探しに

◆桃林窯


桃林窯の器は普段使いにちょうどいい。ギャラリーで自分好みを探したい。

やわらかな空気をまとい、来訪者を温かく迎え入れてくれる、桃林窯の吉田求さん・嘉代子さんご夫妻。

 武雄の焼き物は、唐津焼のような粗めの土を使った素朴で力強い「陶器」と、有田焼のような白い陶石を原料にしたなめらかな肌触りの「磁器」の両方があって、窯ごとに作品の雰囲気はまったく異なる。

 その歴史は400年以上前に遡る。文禄・慶長の役で、武雄領主・後藤家信が朝鮮陶工を連れ帰ったのが始まりで、現在は5エリアに約90カ所の窯元が点在する。

 8軒が工房を構える「黒髪山エリア」はのどかな里山風景が魅力で、休日をゆったりと過ごすのにちょうどいい。

「桃林窯」は小高い丘を上った先に、ギャラリーとカフェ、そして工房をもつ。

 有田の磁器メーカーに7年間勤めていた吉田求さんは、30代前半で独立した当初は別の場所で作陶していたが、1994年からこの地で、奥様の嘉代子さんとともにギャラリー&カフェを営んでいる。


ランチの「薬膳カレーセット」。スイーツとお茶まで楽しめる。

ゆったりとくつろげる、木の温もりあふれる「桃林窯」のカフェ店内。

 お店は洒落た雰囲気で、工房で作られた土のぬくもりが伝わる、使い勝手のよい皿やカップなどが並び、カフェでは桃林窯の器で飲食ができるから、自分ならどんな料理をどのように盛り付けたいか、イメージを膨らませたあとに器選びができる。

 ランチの「薬膳カレーセット」(2,000円)は、黄色いターメリックライスに地鶏を使ったスパイスたっぷりのインドカレーが添えられている。1日8食限定だというから、予約してから出かけたい。ほかに「スイーツバスケット」1,200円、「珈琲・和紅茶バスケット」700円などのメニューも用意されている。

 ギャラリーから少し上ったところにウッドデッキを設け、2023年に「森のカフェ」をオープンした。天気のいい日には、緑の木々に包まれ、湖を眺めながらゆっくり過ごすのもいいだろう。


ろくろを回し、木ヘラで生地を薄くしていく。

わらをのせて焼くことで味わいが生まれたマグカップ。

 桃林窯が得意とするのは、粗めの土に白い化粧土をコーティングし、釉薬をかけて焼く「粉引」や、釉薬はかけず土の質感を出す「焼き締め」など、味のある器作り。

 土の産地はさまざまで、「鉄分が欲しければ信楽の土、砂目が欲しかったら唐津の土。天草陶石を使った嬉野の土も使えば、大牟田の海底の土もある。これらをブレンドして化粧土をいじると、種類は無限にできるんです」と求さん。

 炭や貝殻を入れると窯変して表情豊かな器になるし、わらをのせて焼くと、わらの成分が蒸着した味わいのある器になる。土を扱う職人は通常ヘラは用いないが、有田焼の工房で修業した求さんは、木のヘラを使い、鹿革で表面を滑らかにする。

 ネジキという植物でヘラを作ったり、石を拾いに行ったり、貝を採りに行ったりするのも陶芸家の仕事。

「気が多いので、一度作ったものはあまり作りたくない。作風が変わったねとよく言われます」

 工房では日々、新しい作品が生み出されている。

桃林窯

所在地 佐賀県武雄市山内町1832–1
電話番号 0954−45−6186
営業時間 11:00~16:00
定休日 水・木曜
https://touringama.com/

選べる佐賀のお茶とスイーツで心踊るティータイムを過ごす

◆いろえ工房


風に揺れるのれんが気持ちよさそう。「いろえ工房」の入り口。

窯主の妻である鷹巣由紀子さん(右)とお嫁さんの麻由子さん。

 次に向かったのは、有田焼の器に絵付けをしている「いろえ工房」。こちらも工房にギャラリーと喫茶室が併設されていて、窯主の妻である鷹巣由紀子さんとお嫁さんの麻由子さんの2人が出迎えてくれた。

 白磁の器に色鮮やかに描かれた、植物や花、四季の自然、魚などがかわいらしい。

 あまりに繊細で美しい絵柄なので女性が描いているのかと思ったら、描いているのは窯主の鷹巣陽さんだという。細い絵筆を使って、一つ一つ丁寧に描いている。

「若い女性が描いていますか? とよく聞かれますが、70歳過ぎの男性ですと答えると、みなさん驚かれますね」と麻由子さん。

 20年以上前、「辻修窯」に遊びに来たときにこの景色に惚れ込んで、同じ町内から工房を移転したのだという。黒髪山エリアの工房はそれぞれ個性的なので、いろいろ回ってお気に入りを探すのがおすすめだという。


ウッディな店内にカラフルでかわいらしい器が並ぶ。

アジサイやヒマワリなど、グラス一面に絵付けが施されたビアカップ。

 木の梁がむき出しになった店内はとても素敵な雰囲気で、器選びも楽しくできそう。

 赤や青、黄色、緑、紫などの上絵具でお花や季節の植物が描かれた器は彩り鮮やかで、カップの持ち手やお皿の端っこにちょっと絵が描かれているだけでも、ぐっと上品さが増す。

 窯主の鷹巣陽さんが下絵から絵付けまですべて1人で制作、由紀子さんは喫茶室の料理をし、麻由子さんは主に接客を担当する、家族で営む小さな工房である。

 繊細で華やかな絵柄は有田焼の伝統的な技法を用いながらも、現代の暮らしにマッチする絵柄をモチーフにしていて、日々の暮らしにぬくもりを与えてくれる。

 2023年5月に工房をリニューアルし、喫茶室を新設。「この器だと、こういうティータイムが楽しめる」というテーブルコーディネートの参考にもなる。


「選べる佐賀のお茶とスイーツセット」。波に千鳥柄の絵柄は勝負事、家族繁栄を願う吉祥柄の器。

ピンクの花柄のティーカップとティーポットもかわいらしい。

 喫茶は、店内・屋外、どちらでも可能。屋外ではブルーグリーンの湖を望みながら、ゆっくりとティータイムを楽しめる。

「選べる佐賀のお茶とスイーツセット」(2時間、要予約)は、前菜盛りと発酵バターのクロワッサンのサンドイッチ、さらにスイーツは3種(2,700円)または6種(3,300円)から選べる。

 スイーツの品揃えはその日によって変わるが、地元の人気店から届くチーズケーキやロールケーキ、どら焼きあんバターなどが陳列された中から好きなものを選ぶ。

 お茶は嬉野の和紅茶、武雄のレモングラス紅茶、伊万里の自然栽培茶など佐賀県産のお茶からセレクト。さし湯までつけてくれるから、時間が過ぎるのも忘れてくつろいでしまう。

いろえ工房

所在地 佐賀県武雄市山内町宮野1829-8
電話番号 0954−45−2000
営業時間 10:00~16:30
定休日 月曜(喫茶室は月・日曜休み)
https://www.iroe.net//


野添ちかこ(のぞえ・ちかこ)
温泉と宿のライター/旅行作家

「心まであったかくする旅」をテーマに日々奔走中。NIKKEIプラス1(日本経済新聞土曜日版)に「湯の心旅」、旅の手帖(交通新聞社)に「会いに行きたい温泉宿」を連載中。著書に『旅行ライターになろう!』(青弓社)『千葉の湯めぐり』(幹書房)。岐阜県中部山岳国立公園活性化プロジェクト顧問、熊野古道女子部理事。
https://zero-tabi.com/

文・撮影=野添ちかこ

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