田代万里生が語る、ミュージカル俳優 への「転機」恥ずかしいほど “ロマンチック”な次回作への思いも
CREA WEB / 2024年7月9日 6時0分
数々の作品の世界をテノールの美しい歌声と演技で表現してきた田代万里生さんは、2024年2月にミュージカルデビューから15周年を迎えた。熟練したその表現力をますます発揮している田代さんが次に出演するのは、ブロードウェイ発のミュージカル『モダン・ミリー』。
『モダン・ミリー』の原作は1967年に公開され、ジュリー・アンドリュースが主役を演じて好評を博したミュージカル映画。その約30年後に舞台化されてトニー賞作品賞などを受賞して大ヒットとなった話題作だ。ミュージカル俳優として歩んできた歩みや本作への意気込みなどを伺った。
ミュージカル俳優としての“入口”となったのは…
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――ミュージカルへの初出演は『マルグリット』ですが、ミュージカルと出会ったことは、ご自身にとってどんな意味がありましたか?
僕は“ミュージカル俳優”としてのデビューは遅かったので、“ミュージカル”自体に出会うのも遅かったんです。大学に入るまでは、オペラなどクラシック音楽にしか触れていなくて、大学に入ってから初めて『ジキル&ハイド』『ライオンキング』『オペラ座の怪人』などを観ました。でも、その頃のミュージカルへの印象は、PA(音響拡声装置)を使っていたので、映画を観ているような感覚でした。僕にとっての舞台とは“オペラ”だったので、“ミュージカル”を全く別の物として捉えていたんです。
でも、『マルグリット』のオーディションのお話をいただいて、ロンドンのウエストエンドで上演されているのを観たときに、ガラッとその印象が変わりました。それはまさに2008年の世界初演だったんですが、『椿姫』を題材としていて、作曲がミシェル・ルグラン、演出はオペラも手がけているジョナサン・ケントという方々だったので、オペラチックなテイストのあるミュージカルでした。それがミュージカル俳優としての“入口”となったわけですが、その時は自分がミュージカルを演じていくなんて、少しも思っていませんでした。
2作目で『ブラッド・ブラザーズ』のお話をいただいて、ひとつひとつの舞台をやっていくうちにミュージカル俳優と呼ばれるようになり、いつの間にか自分にとって主軸になっていきました。今となっては、出合うのは遅かったけれど、自分がやりたかったのはミュージカルだったんだと、思えるようになりました。
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――これを経験したからこそ今の自分があると思える作品はありますか?
グランドミュージカルだと『エリザベート』ですし、お芝居という意味では『スリル・ミー』です。
グランドミュージカルでは、役者は作品の中のひとつのパーツなので、それぞれが自分の任務を全うすることで作品として完成します。
だけど『スリル・ミー』のような二人芝居では自分のちょっとした瞬きや息づかいが芝居の中ですべて意味を持ってしまうんです。僕そのものが『スリル・ミー』という作品になっていく、ということを初めて体感しました。
この演出をなさった栗山さんとの出会いも大きかったと思います。栗山さんとのお稽古を通して、発見や驚き、喜びを感じ、100分間出ずっぱりの本番では劇場で自分が役として生きていることを実感できたのも初めての経験でした。それをお客さんにもキャッチしていただいて、作品のファンが増え、僕を知ってくださった方もたくさんいらしたと思います。『エリザベート』と『スリル・ミー』はどちらも再演を重ねていて、僕自身のキャリアでも何度も出演させていただいている大切な作品です。
『レ・ミゼラブル』よりビッグな作品が生まれるかも
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――オペラとミュージカル。それぞれのどんなところがお好きですか?
オペラは原語で歌うので日本で観る場合は字幕や音として楽しむことが多いんですが、ミュージカルは各国の母国語でダイレクトにお芝居や台詞、歌を楽しむことができます。
また、ミュージカルは、その時代をすごく反映しているのに対して、オペラの定番で上演されている作品は新しくても100年くらい前で、さらに古いモーツァルトの時代だと250年くらい前になってしまいます。いわゆる古典の作品が現在もスタンダードとして上演されていて、2000年以降の新作のオペラは一度上演されてもなかなか再演されない状況が多いと思います。
一方でミュージカルは毎年新作が生まれてトニー賞などで評価された作品が各国で再演されることもありますが、オペラにくらべるとまだまだ創成期ですね。でもこれから『レ・ミゼラブル』や『オペラ座の怪人』よりも、もっとビッグな作品が生まれるかもしれません。
古典のミュージカルを演じるのもすごく楽しいですし、今後新しく誕生した作品を日本のオリジナルキャストで演じることなどを考えると、ミュージカルのこれからがすごく楽しみです。そういう喜びがミュージカルにはあると思うので好きですね。
“これって恋なのかしら”と展開していく王道ストーリー
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――今回ご出演される『モダン・ミリー』や、田代さんが演じるジミー・スミスにはどんな印象をお持ちですか?
映画でミリーを演じているジュリー・アンドリュースがもちろん素敵ですし、もっと知名度が上がってもいい作品なのではないかと思いました。今回は台本に手が入って、新しい楽曲も加わるのでリニューアル版として世界初演のような形で上演されるのですが、作品が誕生した時代では当たり前だったことも、現代には適していないことがあるから書き換えたことを伺って、合点がいきました。
ミリーとジミーの出会いは最悪で、それがだんだん“これって恋なのかしら”と展開していくというブロードウェイミュージカルの王道ストーリーで、恥ずかしくなるくらいロマンチックなシーンもあります(笑)。
役に関してはまだ立ち稽古を2回やったくらいなので探っている最中ですが、ジミーには固定観念とか理想というものがあって、ミリーと出会うことでその理想がどんどん変わっていくんです。ミリーはジミーの正体を知らないので先入観なくズカズカと接していくことが、ジミーは嬉しかったのでしょう。その揺らぎをしっかりと押さえつつ、この王道の作品をしっかりと届けたいと思っています。
――『モダン・ミリー』に出演する上で、何か準備されたことはありますか?
禁酒法が施行されていた1920年代のニューヨークを舞台にした作品なので、僕がこれまでに出演した『ボニー&クライド』『エニシング・ゴーズ』『グレート・ギャツビー』『ガイズ&ドールズ』などでやってきた経験が、本作に生かせるだろうと思うところはたくさんあります。
当時は新しいファッション、新しい音楽、新しい文化が生まれた時代なのでとても魅力的ですし、狂騒の20年代と呼ばれる「ジャズ・エイジ」の音楽はたくさん聴いています。その時の空気感などを思い出すことができるので、これらの作品をやってきて良かったなと思います。
――作品の舞台でもあるニューヨークへの旅行にはどんな思い出がありますか?
僕はニューヨークにはデビュー当時に1回しか行ったことがなくて、そのときミュージカルは『メリー・ポピンズ』や『ネクスト・トゥ・ノーマル』を観ましたが、一番記憶にあるのは、メトロポリタン劇場で上演されたフランコ・ゼフィレッリ演出の『トゥーランドット』。
おそらく何億円もかかっていると思われる壮大なセット、何百人もの群衆として出てくる出演者などを観ることができて、とても嬉しかったです。当時は僕自身、ミュージカル俳優としてブロードウェイに行ったという意識はないので、今度ブロードウェイに行ったら全然違う視点でミュージカルを観ることになるのだろうなと思います。
「ヤバイ、開幕する!」と思って毎朝起きる
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――音楽を聴くうえで何かこだわりはありますか?
僕は朝起きる時に、その時に稽古していたり、出演していたりする作品の曲をアラームにしているんです。今はまさに『モダン・ミリー』のオーバチュア(序曲)を聞いて起きています! 朝の8時とか、9時に目覚まし曲が流れるとめっちゃテンションが上がるんです。それと同時に「ヤバイ、開幕する!」と思って絶対起きる(笑)。ですから、目覚まし音楽は、出演作によってどんどん変わります。
――自分のための時間には何をするのがお好きですか?
僕の自分時間の使い方には2種類あって、ひとつは一心不乱にピアノを弾くか、もうひとつは温泉やサウナで精神統一して、何もしない時間を作ることです。温泉やサウナだとスマホも持ち込まずに、音も情報も遮断できます。見てくれも気にせずにぼーっとしつつ、いつもなら考えもしないようなことを考えるのがすごく好きです。
ピアノは思いついた好きな曲をとにかくガンガンと弾きます。3分ですっきりする時もあれば、長い時は1時間ほど弾いていることがあります。静と動、それぞれ真逆の過ごし方ですが、僕にとってリフレッシュするのに最適な方法です。
田代万里生(たしろ・まりお)
1984年、長崎県生まれ。東京藝術大学 音楽学部 声楽科テノール専攻卒業。3歳からピアノ講師である母にピアノを習い、7歳からバイオリン、13歳からトランペットを始め、15歳からは、テノール歌手の父から本格的に声楽を学ぶ。13歳で、藤原歌劇団公演オペラ『マクベス』のフリーアンス王子役に抜擢される。大学在学中の2003年、東京室内歌劇場公演オペラ『欲望という名の電車』日本初演で、オペラデビュー。2009年ミュージカル『マルグリッド』のアルマン役でミュージカルデビュー。以来、多数の作品で活躍している。第39回菊田一夫演劇賞受賞。
文=山下シオン
写真=佐藤 亘
ヘアメイク=小森真樹(337inc.)
スタイリスト=ゴウダアツコ
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