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南イタリア特集号だというのに 東京で留守番を命じられた編集者が 自腹を切って南伊を旅した一部始終

CREA WEB / 2024年7月16日 11時0分

●CREA Traveller編集部だより Vol.001 
Southbound|オールマン・ブラザーズ・バンド

ナポリにもカプリ島にも行けなかった……


CREA Travellerは好評発売中。イタリア以外に、東北や軽井沢、出石など、日本の素敵な旅を提案している。72ページにもおよぶ別冊付録のウエディング特集も充実。

 こんにちは。林家ポンペイこと、CREA Travellerスーパーバイザーのヤングと申します。

 このたび、CREA Travellerの最新号「イタリア 理想の休日」が晴れて発売された。この特集では、ナポリやカプリ島、アマルフィ海岸を始めとした南イタリアの魅力を取材している。いわば、ニーハイのイタリアだ。弁慶の泣きどころ、ふくらはぎ、足の甲、そしてかかとまで、さまざまなデスティネーションが網羅されている。身内ながら、その仕上がりには心から驚嘆した。

 ……しかし、一つだけ不満がある。それは、この俺が南イタリアへの出張を命じられず、東京で留守番を余儀なくされたことだ。南イタリア、行く気満々だったのに。織田裕二主演の『アマルフィ 女神の報酬』を、すべての台詞を覚えるぐらい繰り返し観たのに。余勢を駆って、『アンダルシア 女神の報復』まで何回か観たのに。


『アマルフィ 女神の報酬』とその続篇『アンダルシア 女神の報復』。前者は、脚本のクレジットがないことをめぐり、トラブルとなったことでも知られる。

 ちいかわのキャラクターみたいな年若い女性編集長に「ピッツァとかパスタとか、本場のイタリア料理を食べてみたいんですけど」と直訴し(この時俺は、生まれて初めて「ピザ」ではなく「ピッツァ」と発語したのではないか)、さらに「あと、地元のルッコラとかセルバチコとかも」と付け加えたところ、「お前はその辺の草でも喰ってろ!」と即座に却下された。どうやら、前の晩にでも映画『翔んで埼玉』を観たと思われる。


こないだ、法事で実家に帰った時、ひざを「ヒッツァ」と発音してしまい笑われた。「最近ヒッツァが痛くて」って何だ。イタリアかぶれも大概にしたい。

 自分はどちらかというと従順なタイプなので、本当にその辺の草を喰ってみることにした。参考書は、名脇役・岡本信人さんの『道草を喰う』(ぶんか社文庫)である。いろいろと調理のバリエーションを工夫しながら、その辺の草を喰ってみたが、なかなか美味しいではないか。編集長、ありがとうございます! 次の給料日まではこれで喰いつなぎます!


左:映画『翔んで埼玉』の挿入歌といえば、さいたまんぞうの「なぜか埼玉」。クレイジーケンバンドの横山剣さんが週刊ポストの連載コラム「昭和歌謡イイネ!」において、この曲とキリンジの「エイリアンズ」の描いた郊外像と楽曲の雰囲気には近いものがあると指摘していて、鋭い視点だと感心したものだ。
右:『道草を喰う』では、俳優の岡本信人が、アザミ、オオバコ、ハルジオンなど、雑草と見なされる路傍の植物の食べ方を紹介している。散歩が楽しくなる一冊。

 羽田空港でイタリアへと赴く取材班一行に向かって社旗をぶん回しながら別れを告げ、編集部へと戻った俺は、特に当面やることもなかったので、さしたる意味もなく、会社の各階の給湯室にある五徳の頑固な焦げ付きを落としたり、ガレージに積まれた古タイヤを整理したり、ハードディスクに溜まった『赤い霊柩車』シリーズを一気見したり、大好きな要潤の物真似の練習に励んだりしていた。

 とはいえ、無聊をかこちながらも、南イタリア、略して南伊への憧憬が尽きることはない。俺は単身、自腹を切って南伊へと向かうことにした。もう、社業なんてどうでもいい!

 ということで、念願の南伊にやってきました。

南伊の絶景の数々に感銘を受ける


青の洞窟でも隠れていそうな壮大なる絶景である。南伊の底力を見た。

 えー、こちら、石廊崎(いろうざき)です。伊豆半島南端の、南伊豆町まで参りました。南伊、最高!


現在の石廊埼灯台は、1933年に建てられたコンクリート造り。「日本の灯台50選」にもその名を連ねている。ちなみに、地名としての表記は「石廊崎」だが、灯台の名は「石廊埼」となる。この機会に覚えておこう。

 弊社の最寄りである麹町駅から、有楽町線、山手線、東海道新幹線、伊東線、伊豆急線、そして東海バスとさまざまな路線を乗り継いで、ここまでたどり着いた。

 何しろ気まぐれなもので、突然、午前11時に南伊行きを思い立ったがゆえ、到着したのは15時過ぎ。最終のバスに鑑みた時間的な都合から、石廊崎での滞在時間は40分程度しかない。急ぎ足でこの景勝地を満喫する。


絶壁の窪みにはめ込むように建てられた石室(いろう)神社。

石廊崎の突端で太平洋を見守る熊野神社。縁結びの神として信仰を集める。

岬の東側に浮かぶ奇岩群もフォトジェニック。

 素晴らしい。本物の南イタリアにも負けない絶景を堪能した。Googleカレンダーに「在宅勤務」とか何とか適当なことを書きつけて平日の昼日中からやってきた甲斐があったというものだ。


伊豆七島展望図の三宅島という文言に「みあけじま」というルビが振ってあったのだが、「みやけじま」の誤りではないだろうか。珍しく建設的な提言を行っておく。ひょっとして、「みあけじま」という呼び方もあるかもしれないので、正直、自信はないのだが。

これが夢にまで見た南伊料理の数々。案に相違して、ピッツァもパスタもないけれど、問題なしです! 南伊豆ジオパークビジターセンターにて。

楽しい思い出ばかりと思いきや……


ひたすら「南伊」という2字のみに目を凝らすことに専心すれば、きっと、ここが南イタリアであると信ずることができるだろう。信じるんだよ!

 せっかくなので、ついでに、伊豆半島東岸を南下し北上したここまでの道のりを、写真とともに振り返っておくとしよう。


熱海と伊豆急下田を結ぶ列車「リゾート21」には、そこかしこにこの地を象徴する海の幸である金目鯛の意匠があしらわれていた。

南伊豆町の最寄駅となる伊豆急下田駅前にあったのは、「ホテルマルセイユ」だった。南伊と思いきや、ここは南仏だった。

伊豆急下田駅の近くには、こんな名前の会社があった、「南伊」ではなく、「南豆」と略す作法もあるらしい。社名を見つめているうちに、落花生が食べたくなった。

石廊崎までの途中に、「下流」というバス停があった。「下流」かと思ったが、「したる」と読むらしい。かつてラヴィ・シャンカールがこの地を訪れたとか、そういう謂れがあるのだろうか。

 東京への帰途、熱海での乗り換えの間に、俺がこよなく愛する五月みどりさんのタレントショップに立ち寄ることにした。恐らく、10年ぶりぐらいではないだろうか。


平和通り商店街のアーケードを通り抜けた俺の目に映ったのは……。

 ……五月さんの店「ヴィーナス」は、クローズしていた。店内はもぬけの殻だった。残念だ。俺は、五月さんの著書に倣ってデコレートしたティッシュボックス(いつも持ち歩いている)から数枚を取り出し、とめどない涙を拭いつつ新幹線こだま号に飛び乗った。


五月みどりさんがティッシュボックスのデコレーションを分かりやすく解説した『フローラルクラフト 暮らしを彩るティッシュボックス』(日本ヴォーグ社)。確か、恵比寿には教室もあったはずだ。

 なお、俺がいかに五月みどりさんのことを気にかけながら生きているかについては、弊サイトのバックナンバーである「芸能界のクイーン・オブ・ギフトこと あの熟女の魅力を徹底解剖します!」を熟読していただきたい。

南伊をさがせ! 南アもさがせ!

 なお、南伊に幻想の南イタリアを求めるこの試みは、実のところ、俺のオリジナルではない。インスピレーションを与えた元ネタがある。

 2010年に南アフリカ共和国にて開催されたサッカーワールドカップに合わせ、弊社こと文藝春秋が発行するスポーツ雑誌、Numberで短期連載が行われたコラム「日本の南アをさがせ」である。


なお、最終回となる第3回では、南明奈さんへの電話取材を敢行していた。アッキーナの南アに対する印象は「うーんまぁ、ゾウが多いですよねぇ」。

 日本の南アとして、南阿佐ヶ谷を探訪する。非常に秀逸なアイデアだ。

 この記事を執筆したライターは、秦野邦彦。大学生時代の俺がペットホテルの夜勤のバイトとして働いていた時、同じシフトに入ったことから親しくなって以来、幾星霜を経た。深夜のフロントで二人声を合わせ(犬や猫が目を覚まさぬよう、カヒミ・カリィばりのウィスパーボイスで)、島津ゆたかの「ホテル」の替え歌「ペットホテル」を歌っていたことを懐かしく思い出す。

 ♪あなたの小屋の電話番号が オスの名前で書いてある~
 ♪あなたは芝の草を食っていた 奥で子犬の声がした~

 ここで、この記事は、雑草を食する岡本信人さんに見事な回帰を果たす。もちろん、まったくの偶然だが。


カラオケで歌ってみたい名曲「ホテル」。ちなみに、島津ゆたかさんは、2002年にNHKのラジオ番組で不適切な発言を連発したため、生放送の途中で降板。その後は実質的に芸能界を引退し、現在も消息不明だという。

 ということで、次の南イタリア特集でも留守番を強いられたら、今度は三重県の南伊勢町を訪れる予定。ご期待ください! そして、その前に、まずはCREA Traveller最新号をご購入下さい!

ヤング(やんぐ)

元CREA WEB編集長、現CREA Travellerスーパーバイザー。「CREA WEB編集室だより」が、5年の時を経て、形を変え復活しました。パスタをゆでるお湯が沸くまでの間など、手持ち無沙汰な時間にお読みいただけましたら幸甚です。

文・撮影=ヤング

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