「くりぃむさんと仕事ができないなら…」くりぃむ愛強火ディレクターが有田上田からかけられた一言
CREA WEB / 2024年7月19日 17時0分
配信プラットフォームが活況を呈し、テレビの観られ方が大幅に変わりつつある今、番組のつくり方にもこれまでとは違う潮流が勃興しています。その変化の中で女性ディレクター/プロデューサーは、どのような矜持を持って自分が面白いと思うものを生み出しているのか。その仕事論やテレビ愛を聞く連載です。
今回は、くりぃむしちゅーファンの間では知らない人はいない!?、フリーランスで活躍する、岡部知穂さんにお話を伺いました。
「くりぃむしちゅーさんの番組しか好きなものがなかった」
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――この連載でフリーランスの方にご登場いただくのは初めてです。フリーのディレクターはどういった働き方をされているんですか?
企画を考えて台本を書いて、ロケに行って編集をして……と、フリーでもフリーじゃなくても基本的な仕事内容は変わらないですね。ただ、いろんな局の番組をやれたり、テレビ以外でもたとえば企業さんと組んだり、誰とでも仕事できるのがフリーのいちばんの魅力かなと思っています。
――くりぃむしちゅーさん(以下、くりぃむさん)が好きで、この仕事を志したそうですね。
そうですね。本格的にテレビの仕事がしたいと思ったのは中学2年くらいです。学校に行っていなかった時期があって、そのときにひたすらくりぃむさんの番組を観てました。好きなことがそれしかなくて。当時放送していた『くりぃむナントカ』(テレビ朝日/2004〜2008年)は大木(優紀)アナがくりぃむさんと並んで出ていて、「あの位置に行きたい」って最初思ったんです(笑)。でもアナウンサーは無理だと思って、何ができるか考えたときにディレクターという仕事をやってみたいなと思うようになりました。
――いつそんなにくりぃむさんが好きになったんですか? もともとお笑い好きでしたか?
親が21時以降のテレビを見せてくれなかったので、小学生の頃はお笑いをほとんど観たことがなかったです。初めてくりぃむさんを観たのは小学校5〜6年の頃でした。親戚の家に泊まった日に体調が悪くて寝込んでいて、深夜にパッと目が覚めたらリビングでおじさんがめっちゃくちゃ爆笑してたんです。「人ってそんなに笑うんだ!?」ってくらい笑ってて。ドアの隙間から覗いたら、そのときに観ていたのが『くりぃむナントカ』だったんですね。
そんなに笑ってたら気になるじゃないですか。それでおじさんの隣に行って一緒に観たら、それがもう、なんていうか、「こんな笑いがあるんだ」って衝撃で。そこから完全にどハマりしました。
「くりぃむさんと仕事ができないなら、この業界にいる意味ない」
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――夢を叶えてくりぃむさんと一緒にお仕事されるまで、どんな経緯があったんでしょう。
大学を出た後、東京の制作会社に入社してADを1〜2年やりました。でも、ハードな仕事が続いたので、体力的にバラエティ番組でやっていく自信がなくなってしまい、日本テレビの朝の情報番組に移りました。ただ、前の制作会社で鍛えられていた分、客観的に見たらスキルアップしてたんですよね。「お前はバラエティに戻ったほうがいい」って言ってくれる人がいて、1年ぐらいしてから「またバラエティやろう」と思ってテレ朝系列の制作会社に移籍しました。
――『くりぃむナントカ』から現在の『くりぃむナンタラ』(2021年〜)に至る『くりぃむ』シリーズはテレ朝ですよね。
最初に配属されたのが『夜の巷を徘徊する』で、その番組のプロデューサーである小田(隆一郎)さんが『くりぃむ』シリーズも兼任していたんです。同じ班でデスクが一緒なので、ずっと「『くりぃむナンチャラ』やらせてください」って猛烈にアピールしてました。私は局員じゃないから、所属してる制作会社側との兼ね合いもあるわけじゃないですか。なのに、そんな事情も考えずにずっと言ってましたね。それで『くりぃむナンチャラ』のスタッフに欠員が出たときに声をかけてもらって、入ることになりました。
――さぞ感慨深かったのでは。
マジで感動しました。入れることが決まったときも嬉しくて泣いたし、初めてエンドロールに名前が載ったときも泣きました。スクショして今も持ってます。
――1年目で辞めなくてよかったですね。岡部さんが相当なファンであることはご本人たちには早い段階で伝わったんですか?
はい。ADのときに『くりぃむナンチャラ』の「サイコロ選手権」という企画にジャッジ役で出たことがあって、オンエアには乗ってないんですけど、「30秒で◯◯の話」みたいなテーマで自分がしゃべることになったんです。そこでくりぃむさんを追いかけていたエピソードトークをしました。
上田(晋也)さんのお兄さんがやっている餃子屋に学生時代に行ったとき、店員さんが「なんで来てくれたんですか?」って声をかけてくれたんですよ。そこで「くりぃむさんのファンで、お兄さんに会えるかなと思って来ました」と言ったら、お兄さんと電話をつないでくれたんですね。経緯を話して、「絶対あの二人と仕事します」って言ったら「二人のことよろしくな」って言ってくれて。その話をしたらお二人は「俺らのこと、そんなに好きなの!?」ってびっくりしてましたね。
――推しの前で推し活エピソードトークを(笑)。その後、フリーになられたのには何かきっかけがあったんですか?
『ナンチャラ』でディレクターになって、『にゅーくりぃむ』(2020〜2021年)を経て『くりぃむナンタラ』にも継続して入ってたんですが、一度22時台の枠に上がってその後深夜に戻るとき、人員削減の対象になってしまって。「くりぃむさんと仕事ができないんだったら、この業界にいる意味ないな。ディレクターやめよう」と思って、会社を辞めました。ただ、その後も仕事がもらえたので結果としてフリーランスになったという感じです。
――「くりぃむさんと仕事ができないんだったら、この業界にいる意味ない」ってすごいですね。この世界を志望した動機がそれだったとはいえど。
判断基準が全部くりぃむさんなんです。進路を決めるときは「くりぃむさんに近づけるのはどっちの道か」で考えたし、今仕事を受けるときも「自分がいずれくりぃむさんの番組の演出をできるようになるために、必要なスキルを鍛えられそうか」で考えます。だから、くりぃむさんとは関係ない番組もたくさん受けさせていただいているのですが、どの番組をお受けする時も『今後くりぃむさんの番組を持つことができたら、その時に活きるスキルを身につけることができるのか?』を基準に考えます。今、情報系の番組を多く担当しているのは、バラエティで育った分、足りない力を伸ばすことができると考えているからです。いつかチャンスが巡ってきたときに、力不足にならないための修業だと思って、今いろんな仕事をやってるところはありますね。
――徹底している。そんなに“絶対”の軸がある人は業界でも珍しいのではないでしょうか。
そうかもしれません。偏ってるといえばそうなんですよね。さすがに私も「このやり方でいいのかな」ってずっと不安でした。でも最近、1年目の頃からお世話になっている先輩ディレクターに相談したら「お前はそのやり方があってるんじゃない?」って言ってもらえたんです。「周りの人から妬まれることも絶対あるけど、貫いたほうがいいよ」って。それは嬉しかったですね。「この道を突き進もう」と思えました。
岡部知穂
福岡県出身。フリーランスのディレクター。YouTube『ナンタラちゃんねる(くりぃむナンタラ公式チャンネル)』のほか、『街グルメをマジ探索!かまいまち』(フジテレビ)、『ZIP!』(日本テレビ)内「流行ニュース キテルネ!」コーナーなどを担当。なお、着用しているTシャツのQRコードは「ナンタラちゃんねる」のURL。
https://www.youtube.com/@creamnantara
文=斎藤 岬
撮影=平松市聖
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