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まずは“好みの恐怖”を知るのが大切 オカルト研究家・吉田悠軌が教える ホラーコンテンツを楽しむためのコツ

CREA WEB / 2024年7月27日 17時0分

ホラーの勢いが止まらない。この夏はイベントに動画、ホラー小説など“恐い”コンテンツが特集され、人気を博しています。オカルト研究家であり、実話怪談の語り手として20年近いキャリアを持つ吉田悠軌さんが、現代ホラーを牽引するクリエイターたちと、今日のホラーについて論考した本『ジャパン・ホラーの現在地』(集英社)を上梓。今、日本のホラーはどこにいるのか? 現在と未来について話を聞きました。

ホラーカルチャーの今を俯瞰する一冊


吉田悠軌さん。

――近年、ホラーカルチャーが一大ブームですね。2024年の夏はとても忙しくなるのではないでしょうか。

 ここがピークでないことを祈っていますが、20年弱、実話怪談を続けてきて、一般の女性メディアから取材が来ることになろうとは、と仲間内でも話しています。昔、90年代に男性ファッション誌の取材を受けた先輩は、それをずっと自慢にしていたくらいでしたから……。

――(笑)。ホラーはテレビだけでなくYouTubeやTikTokなどの動画メディアとも相性がよさそうですし、2023年、背筋さんが出されたモキュメンタリー・ホラー小説『近畿地方のある場所について』(KADOKAWA)が大ヒットして、文字メディアも賑やかな印象です。

 そう、それで“現在の”ホラーカルチャーを俯瞰してまとめておきたいなと思ったのが、今回の『ジャパン・ホラーの現在地』の企画なんです。実は2022年から、ある出版社から出す予定で取材を進めていたのですが、突然「諸事情で出せなくなりました」と。

――そんなことがあるんですね。

 あまりないですよね。幸い集英社から出すことができましたが、「このテープもってないですか?」を手がけたテレビ東京の大森時生さんにいち早く注目して取材をしていたのに、出版までに時間が掛ってしまって、ちょっと出遅れたのが悔しいです(笑)。


吉田悠軌さん。

――この本では、ホラーカルチャーの最先端にいるクリエイターと吉田さんの対談や鼎談が主体になっていますが、人選は吉田さんがされたのでしょうか。

 そうですね。できるだけ自分が専門の実話怪談以外の最前衛で活躍されている人とお話したいと思いました。

 フィクションとノンフィクションを問わず、テレビ、マンガ、ゲームなどさまざまな媒体を介して“恐い”コンテンツを作っているクリエイターと一緒にホラーカルチャーについて語り合っているという内容で、結果的にかなり濃厚です。

ノンフィクションか、フィクションか?


吉田悠軌さん。

 最近の風潮として思うのが、ノンフィクションかフィクションかは受け取り手にとっては大きな問題ではないということ。大森時生さんが作る番組にしても、背筋さんや梨さんの作品にしても、完全なるフィクションなんです。でも、その手触りのリアルさはフィクション以上。あたかもノンフィクションであるかのように感じさせていますよね。

 土台となるフィクションをしっかりと作り上げて、リアルな盛り付けをしていく手法です。

――「本当」でなくても、むしろリアルな恐怖を味わえるんですね。

 そうです。作っている彼らも、受け取る視聴者や読者も、実話であるかどうかにはまったくこだわっていない。ちなみに私はずっとこだわっています(笑)。

 一方で、いくら背筋さんや梨さんが「これはフィクションです」と注意書きをしても、「いや、本当だ」という読者が現れるんですよ。

――それがさらに恐怖を助長します……。わかりやすいのが、本の中でも多く語られている、遺された映像などを発端にストーリーが展開する形式の「ファウンド・フッテージ」でしょうか。

 モキュメンタリーの一種で、昔からあったホラーの手法ではありますが、若い世代にとっては新鮮なのかもしれない。同時に、大森時生さんが本の中で語っているようにTikTokのような切り抜きと相性がよくて、感度の高い人たちに一気に広まる、というのは新しい傾向です。その広がり方が「感染」や「伝播」を想起させて、これがまたホラー好きにはたまらないんです。

――新しい広まり方を見せているわけですね。さっきの例のように“「いや、本当だ」勢”の言い分も広がっていくから恐いのかもしれません。


吉田悠軌さん。

 そうです。ファウンド・フッテージの使い方や、フェイクドキュメントの表現も、これからたくさんの新しい方法やひねり方が出てくるでしょうね。それがクリエイターのみなさんの腕の振るいどころ。

――例えば、ガジェットになりますが、仮想現実(VR)とか。

 VRの世界で繰り広げられるフェイクドキュメンタリーは当然出てくるでしょうね。その辺は、プロの方にお任せして楽しみたいと思います。

 一方で、実話怪談界では既に怪談イベントには持ち込まれているんです。私もアーカイブ動画を鑑賞したことはありますが、VRゴーグルは持っていないので実際のVR体験をしたことはなくて(笑)。

 私は車座になって仲間とぽつりぽつり話す“怪談会”がいちばん好きなんですけれど、そんなノスタルジックな風景もテクノロジーによって多くの人に空気ごと伝えられるようになるのかもしれません。

――本にもありましたが、留守番カメラや車載カメラも普及していますし、新しい恐怖の表現は恐いけれど楽しみです。

好みの“恐怖”とめぐり合いたい


吉田悠軌さん。

――今、ホラーはコンテンツもメディアも多すぎて、正直、玉石混淆な状態だと思うんです。「面白そう! 恐そう!」と思って手を出した動画や本がフィットしないことも……。自分に合うコンテンツを探す人へのアドバイスをいただけますか。無論、この本に登場するクリエイターの作品は太鼓判だと思うのですが。

 まず、自分の好みの恐怖を知るのは大切ですよね。確かにここに登場してくれた方々の作品はおすすめなのですが、もしかしたら、パーソナルな恐怖の好みには合わないかもしれない。

 20年近くホラーやオカルトの世界に身を置いてきて、ホラー好きの中でも恐怖の好みって人それぞれ全然違う、としみじみ思います。

 例えば「超自然現象は絶対だめだけど人怖(ヒトコワ、生きた人間が引き起こす恐怖)とか血まみれは大丈夫」とか「ノンフィクションは絶対無理」とか。

 今は20年前と比べたら本当にいい時代。YouTubeには無料コンテンツがあふれているし、竹書房の怪談文庫だってKindle Unlimitedで読み放題なんですから、1カ月入って読み漁るとか、いいと思いますよ。


吉田悠軌さん。

――最高の夏になりそうですね! 『ジャパン・ホラーの現在地』の巻末には、本の中のお話に登場する作品のリストも大量に掲載されていて、コンテンツ選びにもぴったりです。

実は、7月にはもう1冊、『教養としての最恐怪談 古事記からTikTokまで』(ワン・パブリッシング)という歴史的な名作怪談のあらましを集めた本も出版されておりまして、2冊合わせて読んでいただけたら、ひと夏楽しめるのではないかと思います。

吉田悠軌(よしだ・ゆうき)

1980年、東京都出身。怪談・オカルト研究家。怪談サークル「とうもろこしの会」会長。実話怪談の取材及び収集調査をライフワークとし、執筆活動やメディア出演を行う。近著に『教養としての最恐怪談 古事記からTikTokまで』(ワン・パブリッシング)など多数。X:@yoshidakaityou

文=ライフスタイル出版部
撮影=佐藤亘

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