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「私の写真を見た父に『このおじさん誰?』と言われて」伊藤理佐の新作、キーワードは加齢&介護&韓国!

CREA WEB / 2024年8月3日 17時0分

 漫画家の伊藤理佐さんが家族との日常を綴った人気コミックエッセイ『おんなの窓』シリーズの最新刊『おんなの窓 わたし現在3K編(加齢・介護・韓国)』が発売されました。

 娘のあーこちゃんも無事中学生となり、育児も一段落と思いきや。物忘れに老眼にぎっくり腰、さらにはまさかの狭心症まで……。ジワジワとしのびよる加齢や介護の足音に動揺しつつ、「人生すべてネタ」精神で「韓国」をはじめさまざまな「好き」を全力で楽しみ、それについて家族でツッコみあう。伊藤さんの姿を見ていると、人生いろいろあるけど、おもしろがったもん勝ち! と思えてきます。最新刊からの読者もどんと受け止めてくれる、開きっぱなしの『おんなの窓』をのぞけば、日々をフルに楽しむためのヒントが見つかるはず。


「加齢」と「介護」と「韓国」の3K!


伊藤理佐さん。

――『おんなの窓』は、伊藤さんが2004年から20年に渡って描き続けてきたコミックエッセイです。

 1年か2年で連載が終わるかな、ぐらいの気持ちで始めたものなので、まさかこんなに続くとは思ってもいませんでした。

――伊藤さん自身、20年の間に結婚して、娘さんが生まれて、育児も幼稚園、小学校、そして中学受験――と思いもよらない変化があり、それを漫画に描いてきたわけですが、今回の本はなんと「加齢」と「介護」と「韓国」の3K!

 いちおう「3高(高学歴・高収入・高身長が結婚相手に求める条件)」世代なので掛けてみました。今は「3C」って言うみたいですけどね。あ、3Cは付き合うとめんどくさい男で、クリエイター、カメラマン、カレーをスパイスから作る男だった(笑)。

――読者もそれこそ3高の時代から、伊藤さんの出産・育児を我が事のように見守ってきたわけで。現在3Kとは、時の流れを感じずにいられません。

 加齢に関しては30代の時も40代の時も常々感じていたんですが、50代は心臓とか目とかメインのやつに来るんですよ。私はもともと近眼なので昔は老眼がどういうことなのかわからなくて、みんな近眼用のメガネをかけたらいいじゃんと思ってたら、それともまた違う。道具がすごい増えて、どのメガネかけて何見たいんだかわからなくなって、見るのを諦めることもある。

 とにかく30代40代とはまた違う、新たな加齢の階段を登ってる――いや、降りてるのか? とにかく別のステージに入った感じですね。

50代になると起き上がれない


伊藤理佐さん。

――(編集者)私も30代になって、朝起きた時に疲れが取れてないなと感じることが増えました。

 でも、ガバッと起きれるでしょ。50代になると起き上がれない。急に起きるとギックリ腰になるから、まずは足首を回して、横を向いてからそっと起き上がらないと無理なんですよ。

――加齢マウント出ました(笑)。

 加齢に関しては、みんな先輩風を吹かせたがるんですよね。こないだ年上のお姉様方からシンクロ――今はアーティスティックスイミングって言うんだよね――に誘われて、えー、足とか出せないから無理です!って言ったら、あなたまだ見られてるつもりなの?って言われた(笑)。

――加齢の階段も奥深いですね。最近、女優さんやモデルさんが更年期を語るなど加齢に関する情報が増えて、正しく知れば怖いものではないと思えてきました。

 まだまだ上があって、次は尿漏れらしいですよ。お姉様方は家見るだけで安心して漏れちゃうと言ってました(笑)。

父に「このおじさんはだれ?」と言われて


伊藤理佐さん。

――『おんなの窓』は、そういう伊藤さんしか描かない「くだらないあるある」がたまらない。「おばさんがメンズサイズを着るとおじさんになる」現象とか、まさに!って。

 50歳を超えると、男も女もだんだん性別を超えてくるんですよね。うちの父親も最近、おばあちゃんそっくりになってきてギョッとします(笑)。

――物忘れやデジタルに弱いエピソードも、加齢なのか元々なのか際どいところがおもしろい。

 元々その気はあるんですけど、世の中の流れが早すぎてヤバイですよね。

 これは本でも描いたんですが、私の写真を見た父に「このおじさんはだれ?」と言われて。その時に父をボケたことにして私を立てるか、父を立てて私を知らないおじさん扱いするか、妹が必死に気を遣っていたのが腹立たしくて(笑)。父もたまにうちの猫をうちで飼ったこともない別の猫の名前で呼んだりしてるから、そろそろ怪しいかもしれない(笑)。

――自分のことも心配だけど、それ以上に親も心配な年齢です。介護に関しては足を踏み入れた感じでしょうか。

 そうですね。うちの両親はまだ自力で生活できてるけど、足腰が弱くなってきたので、三姉妹で分担して様子を見に帰ってます。田舎暮らしで車を返納しちゃったので買い物が大変なんですよ。自分で通販とかやらないので一緒に買い出しに行ったり、うちから送ったり。ゆるやかな介護ですね。

BTSの後はプリキュアのターン


伊藤理佐さん。

―そして韓国。BTSにハマった話はいろんなところで描かれていますが、まさか伊藤さんが! と驚きました。

 自分でもびっくりですよね。周りに韓流ドラマのファンがいたり、『おるちゅばんエビちゅ(伊藤によるハムスターが主人公の作品)』が韓国でも発売されて韓国に行ったりしたのに、あんまり縁がなくて。

 それが、たまたまテレビの歌謡番組にBTSが出ているのを見て、何このかっこいい人たち?って(笑)。ちょうどコロナ禍のステイホーム中だったこともあって、気になって動画を掘りまくって、すぐにファンクラブに入って、娘も一緒だから余計に勢いが付いちゃったんだと思います。

――それまで「推し」みたいな人やモノはいました?

 歌舞伎は好きだったけど、この人! みたいな強烈な推しはいなくて。それがコロナ禍の鬱々もあって、爆発しちゃった(笑)。

――仕事前にBTSを流して、部屋をBTSでいっぱいにしておくというエピソードが最高でした。そんな伊藤さんたちを吉田さん(夫で漫画家の吉田戦車さん)はどう見てるんでしょう?

 何も言わず見守ってますね。で、私たちのBTS話をうんうんうんって聞いた後に、じゃあ次、俺話してもいいー?って。彼はウルトラマンとか戦隊モノとかプリキュアは昔からほぼ見てるので、吉田が話してるときは私の目が死んでます(笑)。

――お互いの推しの話を聞き合う! それが家庭円満の秘訣でしょうか。

 確かに、トイレットペーパーを替えるぐらい大事な家族の決まりですね。私、トイレットペーパーが交換されてない時はカンカンに怒っていいことにしてるんですよ。誰だー!って怒ると気持ちいいので、替えてないのを見つけるとやった!って(笑)。

――どっちに転んでも楽しそう(笑)。

 相手の話を聞くのは、自分が次に話すためでもあるんです。私これよりおもしろい話持ってるなーって思いながら順番待ちをしてる(笑)。ウケる話をすると家族内順位が上がるんですよ。私が勝手に思ってるだけなんですけど、昨日は飲みすぎたからお皿洗っとこうとかやって、自分の順位をバンバン上げるのが楽しい。

加齢は言い訳として使える


伊藤理佐さん。

――家族間って、つい相手のせいにしてギスギスしがちなので、ぜひ見習いたいですね。伊藤さんは着物や韓国語など、趣味や習い事も貪欲に楽しんでますよね。

 それも全部、40歳超えてからですよ。歌舞伎にハマって、着物にハマって、踊りにハマって、BTSから韓国語にハマって、まだ描いてないけど最近ピラティスも始めたんです。もともとドイツの負傷兵がリハビリのためにやってたものと聞いて、それなら私もできるかなって。身体が固すぎる!と言われながらもやってます。

――忙しそうですが楽しそう!

 昔は漫画ばっかり描いてたし、それ以外も家でダラダラしてたい人間だったのに。時間もお金も掛けて何やってるんだろうって思いますけど、ボケないため、寝たきりにならないため、脳と足腰を鍛えてるんだと言い訳して……。

 加齢って本当に使えますよ。行くのが面倒になっても、加齢予防のため!と思うと動けるし、逆に面倒で行けなくても、加齢だし……って言い訳できる。

 こないだ日本舞踊の発表会が国立劇場であって、白塗りの顔で出たら吉田がびっくりして、「理佐は金かけて遊んでんなー」って感心してました(笑)。

――そんなふうに「好き」を謳歌している母の姿を娘のあーこちゃんに見せることも、大事な教育ですよね。

 そう思います。娘も楽しそうだねってうれしそうにしているので、甘えて遊ばせてもらってます。

辛いことがあっても全て漫画のネタになる


伊藤理佐さん。

――『おんなの窓』以外でも、伊藤さんはご自身の生活を漫画に描くことが多い。プライベートを世間に晒すのは大変ではないですか?

 昔からずっと自分ネタを書いてるもんだから、辛いことがあってもネタになると思えるし、そうすると何かが下がるんですよ。私いまこんな辛い目に遭ってるけど、描けるから大丈夫、勝った!って(笑)。

――作家でなくても、その心意気は見習いたい!

 良くも悪くも垂れ流し、描き散らかしですよ。自分の漫画を読み返したりもしないので、前と真逆のことを言ってたり、逆に同じネタを何度も描いたりもしてるけど、それもすべて加齢のせい(笑)。

 加齢も介護も韓国も、まだまだ足を踏み入れたばかりのひよっこですが、何かあっても全てネタにして、加齢かな?で乗り切りたいですね。

伊藤理佐(いとう・りさ)

1969年、長野県生まれ。87年に「お父さんの休日」でデビュー。2005年『おいピータン!!』で第29回講談社漫画賞(少女部門)、06年に『女いっぴき猫ふたり』など一連の作品で第10回手塚治虫文化賞(短編賞)を受賞。24年春にドラマ「おいハンサム!!2」が放送され、6月には映画『おいハンサム!!』が公開された。

文=井口啓子
撮影=佐藤 亘

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