1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

来館者をきっかけにアートが生まれる八戸市美術館&立ち寄りスポット4選作家や歌人も通う八戸のブックバー

CREA WEB / 2024年7月27日 11時0分

「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」開催中


「八戸市美術館」外観。

 2024年9月1日までの期間、青森県の美術館5館が協働した「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」が初開催中です。このイベント最大の特徴は、フェス全体を総括するアートディレクターを配置せず、地域に根ざした各館のキュレーターが企画・運営していること。

 2024年度は、共通テーマである「つらなりのはらっぱ」を、それぞれが解釈し、展覧会やプロジェクト、パフォーマンスなどに落とし込んで展開します。

 CREA WEBでは、「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」の開催に合わせて、短期集中連載をスタート。5館の展覧会と、各館へ行ったら立ち寄りたいスポットを、青森県在住のライターがご紹介します。第4回は「八戸市美術館」です。


「八戸市美術館」のメイン企画は「エンジョイ!アートファーム!!」


ビジュアルのアートディレクションを担当したのは、アートフェスのロゴなども手がけた野間真吾。

「八戸市美術館」では、「AOMORI GOKAN アートフェス2024」のメイン企画として、「エンジョイ!アートファーム!!」を開催。

 2021年11月に開館した同館のコンセプトは、「種を蒔き、人を育み、100年後の八戸を創造する美術館~出会いと学びのアートファーム~」。美術館での活動に主体的に関わる市民を、“アートでコミュニティを耕し育む”ことから「アートファーマー」と呼び、アーティストとの創作活動などに取り組む「アートファーマープロジェクト」を継続して開催しています。


美術館に入ると、「ジャイアントルーム」と名付けられた大きな空間が広がる。

 エントランスを入ると迎えるのは、約18mの天井高を持つ「ジャイアントルーム」。

 展覧会の鑑賞者でなくても自由に出入りできる懐の深さが特徴で、打ち合わせやリモートワーク、勉強、飲食などに使うこともできる“室内化された広場”のような空間です。


GWに開催された「エンジョイ!パフォーマンスピクニック」の様子。人工芝が敷かれ、弁当を食べたり寝そべったりと、自由に過ごすことができた。

 八戸市美術館は、アートフェスのテーマである「はらっぱ」を、ジャイアントルームに再現。アーティストはもちろん、訪れる人たちによってあらゆる活動が育まれていくジャイアントルームを、関わる人によって変化し続ける「はらっぱ」であり、活動の種が成長していく「ファーム」でもあると捉えました。


東方悠平《自由の像、不自由なバナナ》2024年

 このジャイアントルームを舞台に、八戸を拠点に活動する5人のアーティストが、それぞれプロジェクトを展開。

 ベトナムに長期滞在するなど、東南アジアと関わりが深い東方悠平は、ベトナムで見つけた野生のバナナを手がかりに、「自由」について語り合ったり、表現したりしながら、ジャイアントルームに現代版の「自由」をモチーフにした像を建設します。

美術館を訪れる人たちとともに制作した漆畑幸男


漆畑幸男が来館者とともに制作した絵。

 馬や牛をモチーフとした、物語性のある具象画を描く画家の漆畑幸男は、これまでに手がけた作品の展示とあわせて、美術館を訪れる人たちとともに大きな1枚の絵を制作。


しばやまいぬ《くにゅぎの森3D》2024年。

 女子高校生を主題とした幻想的な世界観の木板画を創作する、少女板画作家・イラストレーターのしばやまいぬは、創作世界から不思議な森を出現させます。この森には木版画によって生まれた虫が住み着き、来館者は虫捕りを楽しむことができます。


「エンジョイ!パフォーマンスピクニック」のイベント時には即興で踊った磯島未来。

 ダンサー・振付家の磯島未来は、ジャイアントルームを訪れた人たちから聞きとりを行い、その話をもとにダンスの振り付けを考案。磯島か参加者自身が踊り、映像にして公開します。

 写真家の蜂屋雄士は、参加者を募って美術館の敷地内で家族写真を撮影し、「家族」と「写真」をめぐり、ワークショップを実施。8月中旬以降に「はちや写真家 家族と写真のプロジェクト」と題して、参加者自身が撮った家族写真と、蜂屋が撮った家族写真の両方を展示。見比べてみることで、家族のあり方を探ります。

 八戸市美術館のメイン企画は、訪れた人とともに育てていく、参加型のプロジェクト。後半になるにつれて展示も充実していくので、これからが本番です!


「tupera tuperaのかおてん.」を開催中。

 また、2020 年から7会場を巡回してきた「tupera tuperaのかおてん.」を9月1日まで開催中。亀山達矢と中川敦子によるクリエイティブ・ユニット tupera tuperaの「かおノート」や「こわめっこしましょ」などの絵本原画の展示をはじめ、映像作品《かおつくリズム》や、体を使ってオリジナルの顔を作る《床田愉男》など、参加・体験型の作品を展示します。

 美術館から徒歩3分程度の場所にある「八戸ブックセンター」では、「かおてん.の裏側展」を同時開催。周辺店舗では、かおをテーマにしたメニューの提供なども行っています。

八戸市美術館

所在地 青森県八戸市大字番町10-4
電話番号 0178-45-8338
開館時間 10:00~19:00
休館日 火曜日(8月13日は開館)
観覧料 無料「tupera tupera のかおてん.」は一般1,000円
https://hachinohe-art-museum.jp/

今年オープンの菓子店「P'tit Goulu(プチグリュ)」


「P'tit Goulu」ロゴ

 八戸市美術館でアートを楽しんだあとは、周辺を巡ってみましょう。美術館から徒歩約3分の場所にある「P'tit Goulu」は、2024年3月にオープンした小さな菓子店。金曜から日曜の週末のみ営業しています。

 店内に入ると、ガラスのショーケースにかわいらしいケーキや焼き菓子が並んでいるのが見えます。


ケーキや焼き菓子が並ぶ店内。

 店主の工藤慈子さんは、都内のパティスリーや飲食店、地元のカフェで経験を積んだのちに一度独立し、委託販売やインターネット販売を行っていました。その後、ドイツのハイデルベルクへ渡り、フランス菓子店で3年間勤務。40歳のときに帰国し地元八戸で開業したそうです。


ショーケースに並ぶのは、美しいケーキたち。

「帰国から開業まではグルテンフリーに特化していたため、その専門店だと思っていらっしゃる方もいるのですが、小麦粉や全粒粉を使ったお菓子も好きでいろいろ作っています。お客様にお好きなものを選んでいただきたいです。

 ショーケースの中には小麦粉を使ったケーキ、小麦粉を使っていないケーキ、アレルギー対応のケーキがあり、アレルギー対応のケーキは、専門の設備で、他の材料が混ざらないようにしています」(工藤さん)

 事前に予約すればグルテンフリー対応も可能だそう。


糖質控えめなスコーンや、キッシュなども。

 原材料には、八戸のお隣の階上町産の全粒粉や、県産の小麦粉に米粉、さらに果物なども、できるだけ地元のものを使用。

 糖質控えめなスコーンや、キッシュなどもあるので、甘いものを控えているとき、甘いものが得意でない人にもおすすめです。


(手前から時計回りに)タルトシトロン650円、いちごのダックワーズ550円、フラン500円。

 自腹で購入したケーキたち。小ぶりなサイズ感なのですが、「少量でいいから本当においしいものを食べたい」という欲求を満たしてくれます。

P'tit Goulu

所在地 青森県八戸市堀端町6
営業時間 11:00~19:00
定休日 月~木曜
https://www.instagram.com/ptitgoulu/

本好きが集まるブックバー「AND BOOKS」


2階が「AND BOOKS」。「アンドブ」の愛称で親しまれる。

 美術館から歩いて約10分、八戸市の中心街のはずれにある建物の2階。建物正面の右側は2018年にオープンしたブックバー「AND BOOKS」、左側は2021年にオープンした「AND BOOKS分室」になっています。店主の本村春介さんがほぼDIYでつくったという空間に、合わせて4,000冊もの書籍や雑誌が並びます。


壁際に本がずらりと並ぶ。

 店内にある本は自由に手にとり、読書してOK。古物商許可を取得しているので、気に入った本があれば購入することも可能です。


建築現場などで利用される足場板で自作したという本棚。

カウンターにはスコッチの瓶と、そのときの選書が並ぶ。

小説家や歌人、編集者なども訪れ、カウンターの壁にサインが残されている。

 ドリンクはスコッチがメインで、約50種類。ストレート、ロック、トワイスアップ、ハーフロック、ソーダ割りから選べます。メニュー表には地図も描かれ、それぞれのスコッチがどの産地のものなのかがわかる仕様。普段スコッチを飲む習慣がなくても、「ソーダ割りでおすすめのものを」など、相談にのってくれるのでご安心を。他にビールやちょっとしたカクテル、ソフトドリンクもあります。


キーマスパイスカレー950円。

 バーですが食事メニューもあり、名物はキーマスパイスカレー。くず野菜からとったダシと、ひき肉、オリジナルブレンドのスパイスで仕上げています。野菜由来の旨みと深みを感じられるカレーです。

 7月下旬には中心街のビル3階に、古本屋さんの「GERONIMO(ジェロニモ)」もオープン予定。それに伴い、これまでイベントなどを開催していた「分室」はギャラリーになり、「GERONIMO」でイベントできるようにするそう。

 昼は古本屋、夜はブックバーで、本漬けの一日を満喫できます。

AND BOOKS

所在地 青森県八戸市十六日町48-3 本多ビル2F
営業時間 19:00頃~24:00頃、日18:00~23:00
定休日  月・火曜
https://www.instagram.com/and_books2018/

子連れOKのナチュラルワインビストロ「NOMUU」


「NOMUU」外観。

 美術館から歩いて約15分、中心街から吹上方面へ。今年1月にオープンした「NOMUU」は、ナチュラルワインを楽しめるビストロ。手前味噌ですが、筆者の夫がやっているお店です。

 築70年ほどの建物をリノベーションし、内装は店主と私でDIYしました。


観葉植物やドライフラワーが吊るされた店内。

 店名の「NOMUU」は「ノムウ」と読みます。店名を考えているときに、当時1歳半だった第三子が「ミルク飲む?」と聞いたら「のむう」と言った気がして、人間は「飲む」機能を備えて生まれてくるんだよなと思いました。私たちはお酒を飲むのが好きだし、赤ちゃんにも発声できるのが気に入って「NOMUU」にしました。


5名程度まで利用できる小上がり席。

 そんな「NOMUU」は、小上がり席も用意しています。もともと飲みに行くのが好きだったのですが、八戸ではあまり子連れで飲みに行ける場所が少ないと感じ、子どもも落ち着ける空間をつくりました。育児カフェとかではなく、あくまでも飲み屋さんなのですが、お子さん連れは大歓迎です。


ウォークインセラーからボトルワインを選んでもOK。グラスワインは日替わりで900円~。

 店内にはウォークインセラーがあり、フランスを中心にニューワールドや日本など、100本以上のワインを揃えます。スパークリング、白、赤など、希望を伝えれば提案いたします。


手前は「田子牛ランプステーキ」3,000円。奥は「NOMUUのポテサラ」750円。オレンジワインを合わせて。

 料理はその日の仕入れ状況によって、20種類前後がラインナップ。できるだけ地産の食材を使い、そのときおいしいものを、最適な調理方法で提供します。


店内の随所にアート作品が。

 店内には「NOMUU」のロゴも手がけた店主の父が描いたアート作品も飾られており、購入も可能。気になる作品があればお声がけください。

NOMUU

所在地 青森県八戸市吹上1-11-18
電話番号 0178-32-6219
営業時間 18:00~22:30、土曜16:00~
定休日 日曜、不定休
https://www.instagram.com/nomuu_hachinohe/

観葉植物+カフェ+ライフスタイルショップの「植物屋ARAYA」


「植物屋ARAYA」外観。

 美術館から車で約7分。小中野エリアにある「植物屋ARAYA」は、築80年以上の古民家の中に観葉植物店とカフェ、ライフスタイルショップが入った複合店。

 玄関で靴を脱ぎ、スリッパを履いて“お家へお邪魔する”ように入店すると、そこには観葉植物が所狭しと並んでいます。扱っているのは、ホヤ植物やシダを中心に、八戸ではあまり見かけないような、珍しい植物たち。


筆者もここで観葉植物デビューしたのですが、窓の向きや生活スタイルをヒアリングして、初心者でも育てやすいものを選んでくれました。

「もともとはただのガーデニング好きの主婦だった」と話す店主の荒谷真奈美さん。生家でお母さんが観葉植物を育てていたため、植物のある暮らしが当たり前だったそう。

 10年ほど前に乳がんを患い、お見舞いでもらったコウモリランをきっかけに観葉植物のよさを再発見。治療が終わったときに自分で何かやりたいと思うようになり、観葉植物のお店を出すことを決意したといいます。


中央にあるのが、お店を出すきっかけになったのと同じ種類のコウモリラン。「力強くて生命力を感じた」とのこと。

 2015年に自宅の一角で8畳ほどの小さなお店をオープンし、2018年には空き家となっていた義父所有の古民家をリノベーションして現在の場所に移転。以前の店舗から夫の富宏さんがサービスで提供していた自家焙煎珈琲が評判だったため、併せてカフェを開くことに。

 進学のために上京していた息子の耕太郎さんもUターンし、現在はお店で自家焙煎珈琲を引き継いでいます。


カフェスペース。

 ランチメニューは「森のスープとパンセット」や、「回のスープ餃子セット」(各1,650円)から選べるほか、プリンやケーキ、あんみつなどのスイーツと飲み物のセットも。スイーツは県内で活動する菓子工房などに依頼しており、どんな経緯でお願いすることになったのか、おすすめのポイントなどが冊子で説明されています。


プリンセット 1,100円。自家焙煎珈琲は+100円で選べます。

 また、昔ながらの急勾配な階段をのぼると、衣服や雑貨、手仕事の工芸品などが並ぶセレクトショップになっています。どれも丁寧に作られた、センスのいいものばかり。


2階には衣と住にまつわるものが並びます。

 植物に食べ物、衣服、雑貨。暮らしを豊かにしてくれるものが集まるお店です。

植物屋ARAYA

所在地 青森県八戸市小中野4-3-55 
営業時間 11:30~17:00
定休日 月~水曜
https://www.instagram.com/shokubutsuya_araya/

文=栗本千尋

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください