【20年目のキュンとエロス】猛暑に大塚愛ソングが脳内無限ループあの名曲の数々を「もう一回!」
CREA WEB / 2024年8月2日 17時0分
大塚 愛=キュンの法則
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「あーたしさくらんぼー……♪」
最近、猛暑でモーロ―としている自分を鼓舞するべく、歌を口ずさむ(暑くてヘロヘロなので地を這うような歌声ではあるが)。特に大塚 愛。彼女の歌が自然と出る。
あっつ、暑っ。あっつー! という独り言が漏れるのと同じくらいのレベルで
「笑って笑って~」(「SMILY」)「ハッピーデイズ、ハッピーデイズ♪」(「Happy Days」)。
頭の中でサビがグルグル回りっぱなしである。記憶にある歌詞が正しいかチェックすべく、歌うだけでなく聴く。「ラ」を「ルア」と発音する舌ったらずな感じ、喉から出すような甘い歌声。あざとくて少しムカつくのだが、その10倍、ウキウキキュンキュンする。そして結局リピートを押してしまうのだ。「くっそー、もう一回♪」と!
唐突に大塚 愛ループが始まったわけではない。きっかけは忘れもしない先月末、仕事でご一緒している若きレディに「青春時代、よく聴いた歌手は誰?」と質問をしたところ、
「大塚 愛さんですね!」
と、笑顔で返ってきたことだった。その瞬間、ビビビと走ったのだ。私の身体に、甘酸っぱい感覚の稲妻が。そして思わず、
「おーおーつーかーあーいー!」
と叫んで身体をクネクネしてしまった。尋常ではないキュン。もう一度心でその名を反芻してみる。
「大塚 愛」
キュン♪
「大塚 愛」
キュンキュン♪
ヤダ切ない! 我ながら変態のようだが、この瞬間から頭の中で「さくらんぼ」「Happy Days」のリピートが始まった。しかもそれから数日後、YouTube人気企画「THE FIRST TAKE」で、彼女の名バラード「プラネタリウム」がアップされたのである。
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「THE FIRST TAKE」プラネタリウム
https://www.youtube.com/watch?v=kPFG14NWavI
運命かよ……! 若き日の恋の寂しさと嬉しさに加え、小栗旬にフォーリンラブしたドラマ「花より男子」を丸ごとブワッと思い出し、「いいね」を1万回くらい連打しそうになってしまった。
彼女の声はまったく変わらず、切なく美しい。これを聞くと「金魚花火」も聴きたくなる。コメント欄を観たら、同じ気持ちの方が多くいらっしゃるではないか。
これはもう、大塚 愛=キュンの法則を復習するタイミングかもしれない。ありがたいことに、彼女の歌は、夏にとても似合う――。
「もう一回♪」という大発明
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そもそも大阪在住の私は、間接的に、彼女にかなり長らくお世話になっているのだ。というのも、JRの大阪環状線桜ノ宮駅の発車メロディが「さくらんぼ」なのである。これがとってもかわいい!
思い返してみれば、「さくらんぼ」を初めて聴いた時は衝撃だった。繰り返しの合図を「ワンモーターイ(one more time)♪」と歌っていたアーティストはいたが、「もう一回」と日本語にし、歌詞として組み込むとはなんというナイスアイデア……! 現在売れに売れているCreepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」で「1番上」という歌詞を聴いた時の衝撃とちょっと近い。「その日本語があったか」である。脳への定着力も強く、21年も前の歌だが、いまだに「もう一回」と言う時、無意識に節をつけて歌ってしまう人も多いと聞く。
改めて「さくらんぼ」のMVを観ながら目を細める。かわいいのう。1990年代のギャル文化とはまた違う、2000年代ならではの、親近感と才能あふれる女の子って感じだったなあ。甘酸っぱくて、躊躇なくピンクに染まっていて、瑞々しくて。イェイ!
なんだか涙が出てきたわ(泣)。若いってすばらしい……。
衝撃だった「黒毛和牛上塩タン焼680円」
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改めて「さくらんぼ」を聴き、20歳若返ったような気分になった。となると、彼女のシングルをもっと聴き返したくなるのは当然の流れである。
友達(フレンズ)と戦隊ヒーロー(レンジャー)を掛けて「つらいときはすぐ駆けつけるよ」という気持ちを表した「フレンジャー」。桃の形を「ひっくり返る愛のマーク」と見立てた「PEACH」。チュー(キス)するリップ(唇)で「CHU-LIP」。ああ、甘酸っぱさのビッグウェーブに身体がクネる。ウエストが引き締まりそうなほどに。ワードセンスがキラッキラしてて、悔しい!
特に「黒毛和牛上塩タン焼680円」は世間の度肝を抜いたっけ。まさかの、網をベッドに見立て、女の子を上塩タンで表現し、熱い恋を描くという変化球。しかもB面が「つくね70円」。どちらも非常にエロチックな曲である。食とHを巧みに絡ませて描き、タイトルには金額(しかもかなり安い)を付け加えるあたり、さすが大阪出身。食へのこだわりと商人気質を見事に反映している。
ただ甘いだけの人じゃない――。2022年1月に配信された文春オンラインのインタビューで彼女は、自らの曲について「毒とか、駄菓子の体に悪い感じを表現しているというスタンス」と書いてあったが、なるほど、言い得て妙である。ちなみに「黒毛和牛上塩タン焼680円」を検索した途端、私の検索画面には、黒毛和牛肉の広告がガスガス出てくるようになった。いっそ上塩タンを購入し、食べながら聴くか……。
ミニアルバム「graine」のすばらしさ
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彼女の近年のご活躍も調べてみる。
やっぱりセンスの塊みたいな人である。2021年の「なんだっけ」の令和的疾走感、これはすごい! そして2024年にリリースされたばかりのピアノ・インストゥルメンタル・ミニアルバム「graine」がすさまじく良かった。心の底に流れる水って、こんな音がするのかも。この心地よさ、まだの方、ぜひ体感してほしい。歌がなくてもピアノの音までウルウルである。お手上げだぜ、大塚 愛……!
さらに検索すると、なんと彼女は個展まで開催していた。『AI OTSUKA 20th ANNIVERSARY ART EXHIBITION AIO ART supporting radio J-WAVE』! 7月29日まで……くっ、時すでに遅し。せめてニュースだけでもと辿っていくと、書道も絵も驚くほど美しい。とても才能のある方なのだと今さらながらしみじみ思う。
嫉妬するほど全方位かわいくて多才。ところが端々からなぜか感じる不器用さと、自己評価の低さ。それがまた不思議な色気と可愛さにつながるというループ。ちょっと面倒臭くもあるけれど、「その面倒くささ、なんか好き」と目を閉じ聴いてしまう。そうそう、そもそも恋とは、そしてLOVEとはとっても面倒くさいもので、それこそが醍醐味だった。
オバハンになって久々に聴いた彼女の歌声は、まさに長年忘れていた恋心そのもので、苦しい。持て余す。
けどたまらなく高まる。よし、せっかく出会えたのだ。この夏は彼女の歌で、誰かを好きになった時の、なんともいえない浮遊感を思い出そう。
あの幸せと楽しさを、もう一回!
田中 稲(たなか いね)
大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡出る単1008語』(誠文堂新光社)など。
●オフィステイクオー http://www.take-o.net/
文=田中 稲
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