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宮﨑あおいが『スプートニクの恋人』Audibleで“発見”したこと「村上春樹さんの文章を言葉に出せることが楽しい」

CREA WEB / 2024年9月6日 11時0分

 Amazonオーディブル(以下、Audible)で村上春樹さんの『スプートニクの恋人』を朗読した俳優の宮﨑あおいさん。村上春樹さんの作品を朗読する面白さと難しさについてお聞きしました。(全2回の後篇。)


「とにかく楽しかったです」

――宮﨑さんはナレーションのお仕事も多くされていますが、ナレーションとAudibleの朗読はどう違いましたか?

 ナレーションはよりフラットで、Audibleはそれより少しお芝居に近いイメージだなと思いました。

 ナレーションの場合は、映像の邪魔をしないように、よりフラットに読むことを心がけています。でもAudibleで小説を朗読する場合、全てフラットに読んでしまうと、聴いている方に登場人物の違いや場面の情報が届かないように思ったので、キャラクターごとに声色を変えたりしました。その点は少しお芝居に近いと感じたところです。

 ただ、あまり極端に差をつけすぎたり、感情を乗せすぎたりすると、聴いている方の負担になってしまうという難しさがあって。少しだけ語尾を変える、話すスピードを変えるなど、ちょっとした違いでキャラクターの違いを出さなくてはいけないところは、難しかったです。


27時間ほどかけて1冊を読み切った宮﨑あおいさん。

――1冊同じテンションで読むのも難しそうですね。

 毎回スタジオに入ると、前回収録した部分を流してくださっていたので、「ああ、こんなテンションで朗読していたな」と思い出して収録に挑むことができました。それでもいきなり新しいところに入ると少しトーンが変わってしまうので、重複になってもいいから、収録箇所の2〜3行前から声に出して読み始めるというやり方で進めていきました。

 お芝居でも、少し前のシーンから返して演じることがあります。やっていることは違いますが、そういう点でもお芝居と同じような感覚でできたところもあったように思います。

――1冊読み切るには相当お時間もかかったのではないでしょうか。

 今回は1週間に2日ずつ収録をして、合計6日間27時間くらいで読み終わりました。

 収録中は「休憩はなくてもいいです」というくらい、ひたすら読んでいましたが、とにかく楽しかったです。「今日はこれで終わりです」と言われても、「えっ、もう少し読みたいです」という気持ちでした。

村上さんの文章を言葉に出せることが楽しい

――本当に読むことがお好きなんですね。

 はい。本当に楽しいお仕事でした。毎日子どもに読み聞かせもしているので、私にとっては「本を声に出して読む」というのは、ごく日常なんです。だから読んでいることが苦しくなったり、疲れたから気分転換したいと思うこともなく、「楽しいな」と思っていたら読み終わってしまった、という感じだったのかもしれません。

――村上春樹さんの小説を読む難しさはありましたか?

 村上さんの文章は一文が長いものも多く、なるべく句読点のところで区切って読みたいと思っても、句読点までが長すぎてうまくできない、などの難しさはありました。ですから、まず一度読んでみて、句読点で区切るのが難しいと思ったら「このあたりで息継ぎしよう」というのを自分なりにチェックしてから現場に入っていました。

 それでも、私は村上さんの丁寧な日本語や、いろんな言葉を重ねて違う表現で説明する感じが好きなので、難しさを感じるというよりは、それを言葉に出せることが楽しい、という感覚のほうが強かったです。普段あまり耳にしないようなカタカナが入っているのも、「楽しい」と思いながら読んでいました。

 実は私、村上さんの作品を読んだことがなかったんです。

 今回の『スプートニクの恋人』が人生で初めて読んだ村上春樹作品なのですが、この年齢で、この作品に出会えたのは、まさにベストなタイミングだったと思います。他の作品もこれから時間をかけて触れていきたいなと、強く感じました。


宮﨑あおいさん。

――家で朗読の練習などはされましたか?

 家では軽く読み、本番で『スプートニクの恋人』の世界を楽しみながらしっかり読み進める、という感じで進めていきました。

 家で読んでいるときは、「次のページ、進みたくない。だって終わっちゃうもん、この時間が…!」と、最高の幸せを味わえて、それもすごく楽しかったのですが、本番で読むと、よりわくわく感が増したので面白かったです。「音として耳に入ってくると、こんなに世界が広がるんだな」と、自分でも発見の連続でした。

低めのトーンで朗読した理由

――全体に声のトーンが低めだったのはどのような理由からですか?

 基本的に「ぼく」の目線で物語が進んでいくからです。ちょっと低めで、かつ、自分が一番話しやすいトーンで「ぼく」の声を作りました。おかげで、苦労することなく最後まで楽しく読めたと思います。

 ただ、どちらも女性である「すみれ」と「ミュウ」は、区別しているつもりでも、時々似通ってしまい、混乱しました。監督から「すみれさんはもうちょっと若くて元気な感じで」「いまのミュウさんのセリフは、ちょっとすみれさんに近くなってしまっているから、もう少し落ち着いた大人の感じで」など、都度指示を出していただき、軌道修正しながら進めていきました。


宮﨑あおいさん。

――演じやすいキャラクターなどはいましたか?

「すみれ」がメインで登場する章は、言葉が頭にすっと入り、流れるように出ていったので、気持ちよく朗読できました。ただ、自分の気持ちよさが聴いてくださる方にとっての心地よさになるかどうかは、また別なので、そこは悩ましいところだと思います。

 今回は小説だったので、キャラクターの差別化もやや変化をつける程度でしたが、これが例えば子ども向けの本だったりすると、さらに遊び心を加えた方が楽しんでもらえるのかもと思いました。

――どんな方に聴いてほしいですか?

 私自身がそうだったように、まだ村上春樹さんの作品に出会ったことがない方にぜひ聴いていただきたいです。これが村上春樹さんの作品1作目となって、世界が広がるきっかけになったら、とても嬉しいです。

 もちろん、村上春樹さんの小説をたくさん読まれている方にも聴いていただきたいです。「村上さんの世界観をちゃんと声で出せているな」と思っていただけたらありがたいですが、誰がどんなふうに聴いてもいいのがAudibleの魅力のひとつでもあるので、自由に楽しんで聴いていただけたらと思います。

衣装クレジット アクセサリー:@mamelon

文=相澤洋美
写真=三宅史郎
スタイリスト=藤井牧子
ヘアメイク=中野明海(nakano akemi)

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